魔法少女まどか☆マギカ ~全てを開きし者は英雄となる~ 作:ぼけなす
「外道で結構。オレは守るためならなんでもしてやる」
byソラ
清太郎の聖剣――――『浄化の剣』は文字通り『魔』を浄化する力がある。この剣は神器ではない『切り裂き魔』の称号を持つ錬金術師が造り出した聖なる剣だ。元々は遊びのつもりで造り出した退魔だが、それをいたく勝った聖勇教会はこれを聖剣として崇めた。この聖剣のデメリットと言えば『魔』の因子を持つ者では持てないことだ。
ゆえに清太郎は魔力はなく、召喚のときに持てた何者かの身体能力の増強という特典による恩恵でこれまでの戦いに勝ってきた。
清太郎は武器と特典に助けられている。もっとも自身の力だと勘違いしているこの男に
閑話休題
清太郎とソラの戦いはワンサイドゲームとなった。清太郎が斬りかかればソラはヒラリとかわし、ソラがヒラリとかわせば足払いして体勢を崩させ転がせる。
ソラは遊んでいる。それは第三者から見ればの見解だが、彼は遊んでいない。
遊んでいないが――――『相手もしていない』
敵として見られているが相手すらしてもらえない。
「真面目に戦え!」
「ヤだ。お前が弱いからこれで充分だろ」
「てんめェェェェェ!!」
完全に眼中にはない。単調な攻撃をしている限り、ソラは本気を出す気にはなれなかった。
しばらくソラは全く攻撃しないままだったが、嘆息をして失望していた。清太郎の本気がこれだけだったのだ。
「もういいや」
「何を――――が!?」
ソラは清太郎を蹴り退け、筋肉を『封印』の概念で止める。
「この程度かよ……。所詮勇者なんておとぎ話。理想の中でしか生きられない幻想か……」
「お前だけは……お前だけはァァァァァ!」
必死に倒れた身体をもがくが筋肉が止まっているため、動けない。ソラは冷めた目で見下ろしているとスマートフォンにラインが届く。
ノエルからだ。彼女からの『ある国』を終わらせたことの連絡だ。
「バッドニュースだ元聖女に勇者。それを届けにきたぜ」
ドコでもドアを展開したソラが扉を開けるとそこには――――
――――滅び行く教国
――――死屍累々な騎士達
そんな光景が広がっていた。教国は何者かに滅ぼされた。
「これは……いったい!?」
「まあ何が起きたのかは彼女が説明してくれるさ」
ドアから現れたのは長く伸ばしたポニー。凛とした顔立ちの美少女とゆったりとした雰囲気を持つ青少年だった。
ユミカとサトル。清太郎の親友達が起こしたのだとミランダは理解した。
「どうして……どうしてあなた達が!」
「最初から裏切ったあなたが言える立場じゃないでしょ」
「……ッ。……ですがここまでする必要は……民や騎士を皆殺しにする必要はないでしょうに!」
ミランダは民や騎士を殺す必要はないと思っていた。デウスもミランダの考えには賛同していた。
しかしそれはもう不可能だ。皮肉なことに勇者の親友が滅ぼした。
するとユミカは笑って答えた。
「甘いわねミランダ。ええ、甘すぎて笑える」
「なんですって!」
「だって敵なのに助けようとするなんて、クスクス」
それは狂喜。何をおかしく笑っているのか。どうして彼女がこんなにおかしくなったのか。
(おかしく……?)
ふと疑問に感じる。ユミカは凛々しく真面目な女の子だ。しかし今のユミカはどこかおかしい。サトルも終始無言だ。
ミランダがそう考えるとユミカは再び口を開いた。
「私は気づいたの。崇高なるお姉さまにありのままの自分を見つけることができたの」
「ありのままの自分ですの?」
「そう……その自分が――――」
バッと服を脱いだ。ユミカの身体には黒いボンテージ。腰にはムチと蝋燭が帯刀されており、右手にはサトルの首輪に繋がる鎖が握られている。
女王様。まさしく変態化したユミカがそこにいた。
「これが、これこそアタシよ!」
「ホントにどうしちゃったのユミカ!?」
かつてを百八十度逆走したユミカがそこにいた。サトルは涙ぐみながらなぜこうなったかと言う経緯を伝える。
「ユミカが教国を滅ぼす女性に戦いを挑んだんだ。僕と生き残った民達を安全なところへ避難させようと……。でも避難させた後に、僕が駆けつけたときにはユミカは……ユミカはァァァァァ……」
変態化した、と。ソラはそう思った。いや犯人はわかってる。唯一変態ハザードを起こさせる究極生命体がいる。
ドアからユミカをこうした元凶が出てくるのはそう時間はかからなかった。
「やあやあ、ユミちゃん。楽しんでる?」
「ええ、ノエルお姉さま! 最ッ高にハイってヤツよォォォォォ!!」
キャッホォォォォォと叫びながらユミカはサトルを引きずって走り去る。おそらくサトルの未来は彼女に振り回され、SUN値をゴリゴリ減らす苦労人な毎日になるだろう。
「にゅふふふ……これぞノエルハザードだね!」
「死ねシリアスキラー」
ソラの回し蹴りが彼女の側頭部に直撃し、壁を破壊しながら叩きつけられる。潰れたカエルのような声をあげながらノエルは幸せそうな顔をしながら立ち上がる。
「いい! 最ッ高!」
「師匠、頼むから早く転生なりなんなりしてこの世に帰ってきて。こいつマジで疲れる」
「大丈夫! 『とある憂鬱』で帰ってくるから!」
「わけがわからないよ」
メタ発言に呆れながらソラはノエルが持つ鎖を手に取り引く。すると、ドアからルーズベルトがボロボロな姿で現れた。
「お父様!?」
「貴様……何を!?」
デウスは変わり果てたルーズベルトに驚愕しながらソラを睨む。
「何って処刑。もう教国は『最凶』に滅ぼされた。もうこの宗教は滅んだんだよ」
ソラはアルスの剣をルーズベルトの首に向ける。ルーズベルトは呻きながらミランダを見ていた。
「ミランダ……お前は…………」
「お父様……申し訳ありません。これがわたくしの答えです」
「そう、か……私は裏切られていたのだな…………天にも、そして自分の娘にも」
「……ッ。お父様……」
「貴様はもう私の娘ではない。魔族だ。ゆえに自由に生きろ。お前が望むままに。お前が生きる限り自由に……」
「お父様……」
感動なシーンに普通ならば誰もが目に入れ、心に響くだろう。しかしここにいるのは最低最悪な者達。ルーズベルトは首をはね飛ばされた。もちろんソラの剣で。
「お父様ァァァァァ!!」
「貴様……よくも」
デウスもこればかりには怒りを示す。わかり合えたかもしれないのに。それをソラが否定した。
「わかり合えるはずがない。教国のメンツに関わることだし、何より娘をとられた父親としてはデウスの存在は好ましくないしな」
「どうしてですか! どうして殺す必要があったのですか!」
「単純な話だ。お前の父親はオレの大切な人を奪おうとした。自らの利益のために……自らの目的のためにな!」
声を張り上げた。ソラは怒りに満ちていた。
教国は絶対滅ぼすことを決めていた。ゆえにルーズベルトの死は絶対だ。滅びの証として。
するとここで清太郎は声を張り上げた。
「人殺し! この外道が!」
「外道で結構。オレはオレの大切なモノを守るためなら手を汚してでも守る。邪魔する者、奪う者ならば皆殺しだ。友人だろうが仲間だろうがオレの敵であるならば殺す」
ソラは嘲笑うかのように反論した。
「殺さずして戦争は終わらない。いいかお前ら。現実は残酷で理不尽だ。暴力的で排他的で最低最悪な物語だって当たり前にある――――けど、それでも生きていく。だって生きたいから。一緒にいて笑いたいから自己満足を満たすために戦っていく……。それが現実だろ」
夢物語は絵本だけでいい。ソラの夢物語はこの戦争で死んだ。師を失うことで絵本は閉じて現実を見るようになった。
白馬の王子様が助ける物語や勇者が魔王を倒す物語などのみんな幸せという物語はない。現実には理不尽と過酷な結末がある。
「お前は……どこまで……」
「さあな。だがこれだけは言える――――弱者の理想なんて絶対に叶わぬ夢物語だ」
ソラは神器で清太郎にとどめをさした。それからデウスと対峙する。
「我とも殺り合うつもりか?」
「当然。お前が雇った傭兵団に二人の大切な人を奪われた。……絶対に根本を潰すって考えていた」
「……やはり傭兵団は失敗だったな、本当に」
デウスは玉座から立ち、手から闇の剣を造り出す。神器だ。ソラはその神器の知識があった。
「『闇を統べる者』か……」
「知っているのか?」
「まあな。文字通り闇を支配する強力な神器。ま、倒せないこともないけど」
ソラは千香に合図を送り、シールドの結界でデウスと二人のフィールドを造り出した。神器をデウスに向けて彼は目を閉じる。
「後悔しろ。懺悔しろ――――ここがお前の墓場。だから安心してとっと死ね!」
「ほざけ小僧!」
ソラとデウスの神器はぶつかり、周囲に突風を起こした。
勇者死亡。教皇も死亡。
なのに魔王とも戦う我らの主人公。さて問答無用な彼は果たして魔王を生かすでしょうか?
次回、魔王と英雄
――――終わりの始まり、始まりの終わり