魔法少女まどか☆マギカ ~全てを開きし者は英雄となる~   作:ぼけなす

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「また会えたな……」
「はい……」

byデウスとミランダ達


第三十六話 魔王と英雄

 

 

 『闇を統べる者』――――文字通りにこの神器は『闇を支配する』能力を持つ。『闇』という概念を考えると『光がない』、『暗い』、『黒い』などという印象がある。

 

 この神器はそれらの概念を持ち合わせており、物質を飲み込むことや影などを操作することが可能である。

 

 ソラは影の突起から前へ転ぶことで回避し、すぐに立って地面を蹴る。するとソラがいたところから黒い渦が現れ、その周囲を凄まじい勢いで吸引し始めた。

 

 幸いこの渦の規模は小さく、何より出現時間が短いためすぐに消えるが飲み込まれたら最後、ソラはあの渦の中で凝縮された肉塊に成り下がっていただろう。

 

(小規模だがブラックホールを造り出すとはな……)

 

 自然でできた産物でなければソラの神器なら解除できるが、いくら彼とて人間を一撃で殺せる力に飛び込めと言われたら嫌に決まっている。

 

 ソラは雷魔法で魔王の動きを止めようと放ったがそれもブラックホールで無力化される。やむ得ない。ソラはまどかの魔力を借りることを決意し、内包する己の力に集中する。

 

 まどかの魔力を感じたことでソラは五人の魔法少女達と同じ力を使える権限をもった。

 

「魔法少女の力、見たいか?」

 

 不敵に笑い、彼は巴マミの力を行使する。黒いリボンが魔王を拘束しようと伸びていき、魔王が闇の剣で切り裂く。

 

 しかしそれは囮だ。金色の髪だったソラが赤い髪に変わり、幻想である分身を造り出す。魔王はそれに目を開くがすぐに冷静になり、造り出された五人の分身を消し飛ばすかのように影の突起で串刺しにした。

 

 ソラは既に次の行動に移っていた。今度は青い髪になり、二刀流で魔王に斬りかかる。舞い踊るかのようにドンドン斬り込む。

 

 魔王も二刀流となりそれに応じる。すると魔王の足元からサーベルが突起する。予想外の攻撃に魔王は肩を傷つき、驚嘆した。

 

(このサーベル、地面からにも伸びるのか!?)

 

 『魔法少女』――――初めて聞く単語だが、ソラの味方に違いない。もし彼女達がこの場にいたならば魔王軍は恐らく敗北していただろう。

 

 これほどの力ある少女がいるなら幹部とて敗北する。

 

 ソラは右手のサーベルを手放して水魔法で魔王を突き放す。

 

 魔王は疑問に感じた。なぜ自分を突き放す?

 

 その答えは次々に生えてきたサーベルが示した。串刺しにするために突き放したのだ。そう考えた魔王は「図に乗るな!」とばかりに黒い魔力の波動でサーベルを吹き飛ばした。

 

 今のでソラは間違いなく自らのサーベルで串刺しになるはずだ。魔王の目に移ったのはソラの髪が黒に戻り、次の瞬間に消えた光景だった。

 

 魔王は咄嗟に背後から逃れるかのように飛び退いた。それは長年の勘によるモノだったかもしれない。まさしくそれは正解だった。

 

 ソラの神器は魔王がいたところで虚空を斬っていた。

 

(いつの間に!?)

 

 ここで話すならばソラが使ったのは時間停止。暁美ほむらの固有魔法だ。

 

 ソラは召喚術で左手にカスタマイズしたグロックを喚び、再びその力を使う。

 

 この力のタイムリミットはたったの十秒。長くは止められない。『抑止の存在』による影響もあるかもしれないが、ソラの魔力保有量が平均よりやや高めというのが原因かもしれない。

 

 彼女達の力を使うことによるデメリットは大規模に発動できないことにある。例えば巴マミの超大型砲撃魔法『ティロ・フィナーレ』を撃ち合ったとするとオリジナルと比べて小さいし、威力も高くない。

 

 よってオリジナルより劣化している形で顕現されたということだ。

 

(十秒しか止められない……なら、足を使えなくさせる!)

 

 ソラがトリガーを引こうとした刹那、銃を弾かれてしまう。弾いた犯人はなんと聖女ミランダ。千香と一緒に止まっていたはずだった。しかし彼女は現に結界の向こうでも動いている。

 

(チッ……オレと同じく時の干渉を受けない体質だったのか!?)

 

 ソラはその場から離れた。魔王にかかった時間停止が解除されたからだ。魔王は剣呑な表情でミランダを見ているソラを推理して彼女に感謝した。

 

(ミランダ……そうか。お前のおかげで我は助かったのだな)

 

 魔王は優しい目でミランダを見た後、ソラを睨む。

 

「残念だったな無血の。我をせっかく倒すチャンスを無力な娘に邪魔されて」

「最初に聖女を殺しておけばよかった。ま、教訓となったし別にいいや」

「教訓よりも辞世の句になるやもしれんがな」

 

 魔王はここで勝負に出た。剣の形をした闇を顕現し、弾幕にしてソラへ放つ。ソラはそこから回避するために動き回らなければならなかった。

 

 ソラはまんまと魔王の策略にかかったのは魔王が造り出した球体に捕まったときだ。ブラックホールより大きな黒い塊だ。

 

 この短時間で吸引し、凝縮させるブラックホールではないことは明白だ。しかし魔法ではなく神器の力だ。おそらく自分を閉じ込めるための檻だ。

 

 ソラは抜け出そうと力を籠めるが、捕まった手に力が入らず徐々に意識が遠くなる。

 

「闇に沈め――――無血の」

 

 それを最後にソラは闇の球体に呑み込まれていった。

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 

 黒い世界。何もない世界でソラは浮遊していた。意識はあるようでない。

 

 まるでレム睡眠に入ったかのように頭だけ起きてる状態だ。おそらく直に頭も眠りにつくだろう。

 

 それは死を意味するのかとうかはわからないが、ソラの敗北になる。

 

『なぜ彼を閉じ込める必要があったんだ?』

『人質と言えばわかるだろう混沌の弟子。無血のを人質にして王国軍に優位を立つ。おそらく戦争はこちらで敗北になるが無条件降伏させることをこじつけさせることができよう』

 

 まさしく魔王にとって好ましい降伏だ。なぜなら自分は英雄でみんなから頼られる優秀な人材だ。軍が利益のために自分を見捨てれば、今度は確実に軍が民から見捨てられる。

 

 そして無条件降伏をすれば王国軍に利益はない。逆に言えば損失にかもしれない。それではキアラが責任をとらされてしまう。

 

 それが嫌だと思いながらも身体は動けない。やはりもう駄目かもしれない。

 

『なるほど……平和主義ってことかい?』

『その通り。争いを無くすために我は望む敗けを認め、そしてミランダと共に生きる。魔王としてではなく魔族という人として……』

 

 魔王もまた人なのだ。心ある男なのだ。それは『人間』と言っても良いくらいの。

 

 ソラはこのまま終わるのもいいかもなと頭の意識が朦朧としていく――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――だが、すぐに目を覚ますこととなる

 

――――キアラや千香ではない少女二人の声が彼の目を覚ませる

 

 

 ピンクの少女は言った――――『助けて、ソラくん!』

 

 黒髪の少女は言った――――『早く来て、ソラ!』

 

 

 次の瞬間、ソラは神器でこの世界を破壊した。

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

「なんだと!?」

 

 デウスは驚愕した。この男はあの『眠りの檻』の睡魔を破り、檻を破壊したのだ。どんな強靭な精神でもそれは不可能だと実証済みだった。

 

 しかしソラはそれを実現した。不可能を可能にした。

 

 デウスは目の前にいる男はただの神器使いには見えなかった。人間ではないナニカ。

 

 しかし彼の目は修羅のような剣呑ではない。慈愛に満ちて優しい目をしていた。

 

 それはデウスでも千香に向けられているのではなく、空――――ここではない誰かに向けられている。

 

「感謝しなきゃなぁ……あの優しい概念と不器用な時間遡行者に……」

 

 いったいどこの誰にと言いたかったがソラの髪がピンクに変わる。いやそれだけでなく青い瞳が金色の瞳になっていた。

 

 彼が持つのは弓。そして構える矢とその背後に幾何学な模様が展開されていた。デウスはそれが何かわからなかった。魔法ではないナニカだ。

 

 いや魔法かもしれない。デウス達が使う魔術的な魔法ではなく、『奇跡』と呼ぶべき魔法をソラが使おうとしていた。

 

「食らっとけデウス(・・・)。これが円環の最後の置き土産だ」

 

 放たれた弓矢は無数の散弾(バレット)となり、流星群のごとく魔王に襲いかかる。

 

 ブラックホールを展開した。

 闇の盾も造り出した。

 

 しかしそれを否定するかのように矢はそれを貫き、デウスへ全て直撃させた。矢の流星群が止んだのはデウスがズタボロになったときだ。

 

 ソラは膝についたデウスに近づく。すると結界を破りミランダがデウスの前に立つ。

 

 ソラは構うことなくデウス達に神器を向ける。

 

「お願いします……この人は! この人だけは!」

「駄目だ。こいつはオレの大切な二人を奪ったヤツらの元凶だ。例外は許さん」

「それならばわたくしも! わたくしも殺してください!」

「ミラン、ダ……やめよ」

 

 デウスはミランダを押し退け、彼女を庇うかのよう前に出る。

 

「我の敗北だ……ゆえに然るべき罰は我が受けねばならぬ……」

「しかし……しかしッ」

「いい……我がその罰を受ける。代わりにどうか、ミランダを……」

 

 デウスもまたミランダを庇う。しかしソラは冷めた目でデウスを見ていた。

 

「勘違いするな馬鹿二匹。お前ら二人共だ。お前ら二人を殺す。元凶仲良く死ね」

 

 甘えは許さない。

 情けも与えない。

 

 これまでしてきたことを許せるはずがない。仮に彼が命じたことではないにしろ、それを束ねる長として死ぬべきだ。ソラは神器を振りかぶったとき、プツンとソラの中にあったナニカが切れた。

 

 それを感じたソラは神器を仕舞う。

 

「……やめだ」

「え……?」

「殺せるのは一人になった。『無血の死神』が返り血を浴びるようなことを軍は許さなそうだし、お気に入りのこの服を捨てられるのは嫌だ」

 

 デウスとミランダはそれを聞いて安堵したが、今度はソラは二人に『隷属の腕輪』を嵌めさせ、そして言った。

 

「お前らは今日からオレの奴隷だ。そして最初の命を出す」

 

 二人は再び訪れた死に恐怖する。自害しろと言われればこの腕輪がそれを実行するように脳に命令される魔道具だ。ゆえにソラが出す命令は自害だと考えていたが、予想外の命令が出た。

 

「『軍に危害のない範囲で自由に生きろ。期限はオレが死ぬまで』」

「「は?」」

「二度は言わん。失せろ」

 

 ソラはドコでもドアを展開し、二人をドアの先へ放り込んで閉めた。ここからかなり離れた土地だ。軍には悟られないくらい離れたところだ。

 

 千香はなぜ二人を見逃したのか疑問だった。それをソラに聞くと彼は答えた。

 

「面倒だったから」

「嘘。君は殺すと決めたら殺すよ。でもなぜか見逃した。それは甘えや情けじゃないのかな?」

「情けじゃないが、甘えか……かもな」

 

 ソラはふとどこかに視線を向けていた。目を閉じて彼は呟く。

 

「あの二人の顔を思い出したからかな……」

「何?」

「いや。それよりキアラに報告するぞ。『最凶』に手を出した勇者が返り討ちに合い、逆鱗を触れたことを」

「魔王は?」

「実は勇者が魔王だったでよけね?」

「いや無理矢理だから無理じゃないかな……それ」

 

 と戦後処理に関して話し合うのだった。だが、ソラは他にも懸念することがあった。

 

 これまで戦場で繋がっていた彼女との絆。それが彼の次の目的地を示していた。

 

 

(見滝原……久々に帰るか。まどかとの『団結せよ(コネクト)』が途切れた理由がわかるかもしれないし……)

 

 魔王にとどめをさすときまどかの絆を感じられなくなった。そのため神器で使える魔力がほとんどなくなった。つまるところ回数に再び制限ができたのだ。

 

 ゆえにソラは魔王を見逃すことにした。もう軍には危害を及ばないと独断したのだ。

 

 とは言え、合理的な理由だけでなくあの魔法少女五人のことを思い出したことが主な理由だったりするわけだが。

 

「ま、せいぜい生きな。もうオレには関係ないし」

 

 ソラはもういない玉座に背を向けて城から出る。

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 神器使いの戦争から幾年の時が経った。千年以上もとっているかもしれないし、まだ百年かもしれない。デウスとミランダはまだ生きていた。

 

 ミランダはデウスと結ばれてから歳をとることがなくなり、もう高齢にも関わらず二十歳の美肌を保っていた。

 

 デウスの魔王としての特性が移ったのだろう。そして彼と彼女の息子と娘も独り立ちしている。

 

 デウスとミランダは自分達で開いた魔道具屋を営んでいた。午後から休むことと決めており、彼と彼女は散歩に出かけた。

 

 デウス達が住む町は海が見える綺麗なところだ。ふと彼は海を見つめていた。

 

(あの戦争から約三年後で『隷属の腕輪』は砕け散った……)

 

 それ即ちソラがこの世を去ったことになる。彼がなぜ自分達を見逃したのかわからない。けれど強敵として、大切な恩人として彼には感謝している。

 

「見てくださいまし。あそこで誰かビーチバレーをしていらっしゃいますわ」

「確かにそうだな。……随分騒がしいが」

 

 銀髪の少年が赤毛の少女にビーチバレーで狙われているという奇妙な光景だ。ピンクの少女は鼻息を荒げながら涙目になる少年の写真を激写し、黒髪の少女が愉悦に笑う。青い髪の少女は赤毛の少女に協力する形で便乗し、黄色の少女は「あらあら」とヤンチャな子どもを見守るような微笑みをしていた。

 

 なお、身体を砂に埋まっている少女がハァハァと息を荒げているのはミランダはつい目を背きたくなった。

 

「……カオスだな」

「カオスですわね」

「というかビーチバレーとはあのような戦闘民族のような競技だったのか?」

「さあ? わたくしは箱入りですので……」

「嘘つけ。お前、昔娘と遊んで知っていたのだろう。現実逃避するな」

 

 「死ねソラァァァァァ!!」やら「だが断るゥゥゥゥゥ!」と叫びあっている。するとボールが彼らの前に転がってきた。

 

(やれやれ……全く。若い……――――!?)

「すみません。うちの女の子達がヤンチャしちゃいまして……」

 

 申し訳なさそうに少年は謝るが、デウスは目を開いて驚いていた。ミランダも同じだ。ボールを取りに来た青年があの恩人に似ていた。髪の色は違うが雰囲気や顔立ちが似ていた。

 

「じゃあ失礼」

「貴様は……無血のなのか?」

 

 ふとデウス声に少年は立ち止まる。青年は振り返るとデウスの目にはあのときの『無血の死神』が見えた。

 

「はて? それはどこの誰の異名ですか? 自分は生まれたのはかれこれ十五年前ですから、そんな百年以上ですとわかりませんよ?」

 

 少年はいたずらっ子な顔で笑う。確信した。デウスはこの男は『無血の死神』の親族か何かなのだと。

 

 ミランダは警戒していた。もしかすると自分達を見逃さず追ってきたのではないかと。

 

「そんな恐い顔をしないでください。オレは単にここで彼女達と遊びにきたのですから」

「遊びに、か?」

「はい。ホント、まどかやほむらのヤツ行動が早いったらありゃしない」

 

 疲れた息を吐く。彼はどうやら苦労人のようだ。ふとデウスは彼に聞いた。

 

「貴様は今は幸せなのか?」

 

 その答えは当然と言わんばかり彼は言った。

 

「はい。また彼女と出会えて、そしてこんな楽しい時間を過ごせる今が幸せです」

 

 すると赤毛の少女が少年を呼ぶ声をあげる。少年は彼と彼女に背を向けて急いで彼女達の元へ向おうとする。デウスは最後に、と彼に聞いた。

 

「貴様――――いや、君の名前は?」

「『神威ソラ』。それがオレの今の(・・)自分さ」

 

 最後までソラは『無血の死神』と名乗らなかった。しかしデウスはわかっている。だから彼が今日することが決まった。

 

「ミランダ、今夜彼と彼女達を孫娘の誕生会に誘わないか?」

「いいのですの?」

「ああ。それにこれは同時に恩人()との再会の祝いだ」

 

 過去は悲しみばかりで辛いことばかりだった。けれど彼と彼女は今日も生きていく。

 

 

 主であった死神の命を遂行するために――――

 自由に生きて笑って生きたと言えるように――――

 

 

 




馬鹿な!? ソラが見逃した!?

はい、というわけでデウスとミランダは例外です。
彼がなぜ見逃すと考えたのは本当に気まぐれです。

殺せるのが残り一回だけではデウスかミランダを殺せばどちらかの報復が待っていそうですし、何より中途半端なのでいっそのこと見逃しちゃえと思ったのでしょう。

デウスとミランダはもう既に戦う意思とかなさそうてましたし、ソラが彼と彼女を殺そうと考えたのは悪魔でも私怨と軍に牙を迎える僅かな可能性だったからです。

魔王は後に普通の家庭を作り、そして転生した後のソラと再会します。あの冷血な青年がばか騒ぎの苦労人になってることにデウスは笑って「大変だな」と言うでしょう。

敵にもハッピーエンドを――――そう考えてしまって作ってしまいました。

さて、次回はやっと叛逆の物語
少しオリジナルを入れた叛逆になりそうです。

次回、じゃあな。

――――また会いましょう。また会えるとは限らないけど


あ、まどマギ続編考察中らしいですって奥様

まどか「え、マジで?」

ほむら「嘘だったら殺るわよ? 作者」

インターネットで載ってるって……
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