魔法少女まどか☆マギカ ~全てを開きし者は英雄となる~ 作:ぼけなす
このお話は主人公の交代とほむらの悲劇を書いています。
どうしてこうなった……がホントの意味で書かれてるかもしれませんね。
では……どうぞ。ソラの最期を――――
「なんで……なんでなのよ……私はこうするつもりなんて………………」
by悪魔ほむら
千香はソラのいる世界に入ろうとしていた。しかし送還術が発動せず、そこには行けない。
(世界が隔離されている?)
何者かがその世界を覆う結界を作っている。そう予想した千香は結界を解くプロセスを考えるがビクともしない。何よりこの結界を解く鍵がなんなのかわからない。
「くそッ、どういうことだい!? なんで、なんで……!」
届かない。彼の元に行けない。
苛立ちが募るだけでなく自分が惨めになっていく。千香は涙を流していると、ノエルが肩を叩いて励ます。
「師匠?」
「大丈夫。鍵がきっとある。ほら、見て」
ニコリと笑って彼女が指差すところには綻びが生じていた。ソラがその世界に入ったときにできた軌跡だ。
「これなら行ける。あの綻びを使って見滝原に入る術式を編めば……!」
彼のところへ行ける。千香の中に希望が沸いた。それを見たノエルも満足そうだ。
ただし――――
(ま、その彼が最期の戦いを始めてるけどねー……)
千香が綻びを見つけたときにはソラとほむらの戦いが始まろうとしている。おそらく千香が来たときには戦いは終わっている。
そしてそれは――――
(ま、我が弟子が絶望を前にして何を思うか楽しみだねぇん♪)
この女にとって世界は遊び場であり、ドラマのスタジオだ。彼女が望むのは混沌とドラマ。
そのドラマが必ずしもハッピーエンドとは限らない……。
☆☆☆
今のほむらは兵力も、火力も圧倒的。羽虫が人間に挑むようなものだ。
ソラは勝つつもりはない。けれど、負けるつもりはない。
ただ彼女に自分の想いを伝えるだけだ。
「ぐぶっ!」
彼の腹部に衝撃が走る。ラクガキのような使い魔の突進にやられたがそれに耐えきる。
飛ばされたオレの背後にメガネ兵隊達が銃口を構えていた。
「だ、りゃあァァァァァ!!」
彼は吹き飛ばされた遠心力を使って発砲する前に斬撃を飛ばした。使い魔が無惨な姿を確認し、内心ガッツポーズをとる。
だが、安心するのも束の間、今度は魔女が拳を降ろしてきた。ソラは降り下ろした拳に飛び乗り、魔女の顔面に向けてフルスイング。
……大してダメージ受けてなかった。
それもそうだ。どっかの銀色の侍じゃないから無理だ。
ゴッと迫ってきた魔女の手に叩き落とされた。今ので彼は肋骨がやられた。
「いってェェェ…………だけど、まだ動ける!」
身体が動く限りソラは戦い続けてやる。彼は止まることは死を意味する。
立ち上がったとき、使い魔達は一斉にソラに飛びかかる。
それを薙ぎ払い、蹴り飛ばし、殴り飛ばしたりして払いのける。
迫り来る使い魔達を凪ぎ払い、魔女に再び近づくことができた。
「はあァァァァァ!!」
ソラの師匠直伝『斬鉄剣』。
本来は居合い斬りの構えから行うものだが、中途半端のままで覚えたからそのままの状態から行うことにした奥義。
そしてこの奥義の真髄は――――斬れないものはないということ。
脱力から活力へ変える力加減は鋼を切り裂くことも可能だ。
ソラは魔女を斬ることに成功する。バターのように三角の形に分けてバラバラにした。使い魔も大半を倒している。
彼は魔女を倒したことで安堵していたかもしれない――――『間違い』だと気づかないくらいに。
パンッと銃声が鳴る。ほむらによってソラは腹部を撃ち抜かれたのだ。
そう、ソラはこのとき失念していた。敵は魔女だけではない。
魔女が本体ではなかったはずなのに、ソラは彼女が何もしないと油断していた。
「カフッ……」
口から少量の血が噴き出す。
ほむらに腹部を撃たれたため、動きが鈍くなる。さらに使い魔達が一斉に飛び込んできた。
ほむらはまるで興味なさそうに背中を向けた。そして惨劇が行われた。
ザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザク!
腹部を刺された。
肩を刺された。
脚を刺された。
手を刺された。
片目は潰されたが、頭だけ刺さなかったのは、ソラをただでは殺さず苦しみながら死なすことの意思表示なのかもしれない。
――――痛い、苦しい
だけどまだ動ける。激痛にさいなまれながらもソラは倒れた身体を動かした。
「あ、がァァァァァ!」
獣の雄叫びのように上げて、ソラは周りにいた使い魔達を切り裂いた。その形相は修羅そのものだ。
――――まだ…………まだ伝えてないんだ!
血をたくさん流し、息を荒らしながらもソラはそう思って前を向いた。そこにいたのは――――
「驚いたわ。これでもまだ生きているなんて。けど、これで……――――おしまい」
そう呟いたほむらは引き金をひいてソラの胸に向けて発砲した。
避けることができず、ソラはその銃弾を受け、後ろへ倒れる――――――――
ダンッ
――――しかしそれを耐える。倒れてやらない。倒れてたまるか。
後方に倒れそうになったが、ソラは足を前へ踏み込み、耐えたのだ。
ソラはほむらを見る。驚愕と恐怖に歪んだ顔をしていた。
(嘘……心臓を撃った。なら、今度は!)
ほむらは今度は頭を撃った。撃ち抜かれたソラはまた倒れそうになるがそれすらも耐えきった。
(そんな……!? ただの人間が……ただの男が頭や心臓を撃ち抜かれてなおも立つというの!?)
ほむらはソラを化け物に見る目をしていた。
いやそれだけでない。満身創痍な彼の隣に、幻影が見えた。
――――例えば金髪の青年……ライトが
――――例えばソラの相棒だった男……アルスが
――――例えばバックラーを装備した少女……千香が
――――例えば眼帯をつけた小さな少女……キアラが
まだまだいる。多くの人が彼の隣にいる。
彼の隣には多くの仲間が――――
そしてその前方後方には屍が――――
――――そこにいた。
それは誰かの幻だったのかわからない。しかし誰の幻と言えばソラのモノだとほむらは思った。
(こんな……こんな世界で生きてきたって言うの!?)
その幻はソラの軌跡。
彼の絶望を示す道標だったモノ。
ほむらはかつてこの光景を見たことがある。彼女が悪魔になる前に何度も見た悪夢だ。
彼は理想を捨て、現実に生きるようになったきっかけがこの幻だ。
ほむらは恐怖した。この男は本当に危険だ。敵対したら最後、自分やその大切な人にまで危害が及ぶ。
(そうは、させるモノですか……!)
トリガーを引いた。何度も何度も引いてソラを撃ち抜こうとした。しかし銃弾はソラに逸れ、虚空を貫くばかり。
ほむらは無意識の恐怖で標準が定まっていないのだ。
(どうしよう……もう弾が……!)
ソラはフラリフラリと近づいていた。もし彼が自分をどうするかと言われれば間違いなく『死』の未来だ。
自分を殺すに違いない。自分を殺し、まどかまで殺すに違いない。そうはさせないと撃った。けれど自分は恐怖に負けた。
そして遂にソラが間合いにきたときほむらは死を覚悟した――――
「お前、も……オレを…………そう見るんだ、な……」
「え………………」
しかし満身創痍な彼が紡ぎだされたのは悲しい一言からだった。彼に戦う力もしゃべる力はもうない。
「ほむ……ら……。悪魔なんて……なるな……」
それでもソラは伝えるために口を開く。
――――これはオレの願い
「ああくそ……お前……を……一人に、したくなかったのになぁ……悔しいなぁ……………」
――――これはオレの後悔
「でも……その役目は、おひめさま……のあいつに……任せるか……」
――――そしてこれはオレの彼女へのバトンタッチ。
お姫様――――鹿目まどかが暁美ほむらをなにもかも戻してくれると信じてソラは保険をかけた。
ソラが死んだとき、まどかの首飾りに『全てを開く者』が宿るようにした。
これは神器使い達の継承である。自身の死を悟ったときにこうして神器は受け継がれるのだ。
だけどソラはまだまだ未熟者。もしかすると不完全で失敗してるかもしれない。
それでもまどかがこれを使ってくれることを祈って託そうと思った。
伝えるべきことを伝えてソラは最後の力を振り絞り、空に向けて解錠の波動を撃った。
暗い夜空が青空になった。綺麗な青空へと戻ったのだ。
ほむらも見惚れるくらいの綺麗な青空――――――――最期にソラはこれが見たかった。
なぜかって? 彼ならこう答える。
――――だって暗いままなんてなんか寂しいじゃないか
それを最後に神器はどこかへ行くように消えていき、ソラの身体は力が抜けて後ろに倒れ込こむ。
彼が倒れる間際に考えていたのは謝罪だった。
巴マミにはお茶会の約束に行けないことを。
美樹さやかには初恋の人の演奏会を一緒に見ることができないこと。
佐倉杏子には約束していたケーキバイキングは一人で行かせることになること。
そして、鹿目まどかには交わした約束はほむらだけ行かせることになること。
ソラはもうみんなと一緒にはいられない。交わした約束は果たせられない。
悔しくて涙を流したいがどうもできない。
けれど、満足だった。ほむらに自分の想いを伝えることができたのだから。
――――だからこそ、ソラは最後の最期で笑った
優しく、満面の笑みでほむらの前で笑い――――そして…………――――
――――…………倒れて息を引き取った
「ソ、ラ……?」
返事はない。満足に笑う遺体は眠るように目を開けない。
「寝ているのでしょう? そうでしょう?」
懇願するかのようにほむらは倒れたソラを揺する。しかし彼女の手には紅い液体に触れたとき理解する。
彼は死んだのだ。そしてそれを実行したのはほむらだ。
ほむらは邪魔するソラが許せなかった。
憎かった。
嫌いになった。
だから、殺すつもりでその勝負を受けた。
怒りで冷静な考えが出来ていなかったのだ。しかし今さらになって理解した。
――――今まで誰が私やまどか達を助けようと躍起になっていた?
――――今まで誰が無器用な私につきあってくれた?
誰よりもほかならぬソラではないか。
だけど死んだ。誰が殺した?
――――ワタシガコロシタじゃないか…………
自覚したときほむらは声にならない叫びをあげて狂ったように声をあげた。
「起きて起きて起きて起きて起きて起きて起きて起きて起きて起きて起きて起きて起きて起きて起きて起きて起きて起きてェェェェェ!!」
殺してしまった。
相棒だった彼をこの手で。
王子様が白馬を殺してしまったのだ。最悪のバッドエンドだ。
ほむらは悪魔の力で何度も彼の名前を叫びながら、生き返らそうとした。
「ソラソラソラソラソラソラソラァァァァァ!!」
何度も起きてと願う。生き返ってと願う。しかし不可能だった。
何かがないから蘇生術が発動しない。死者が生き返らない。
理を覆す存在なのに。
理を叛逆する力があるのに。
その理由を知るものが現れたのは、不可能だと思い知ったときだった。
「ソラ……?」
やっとたどり着いたとき千香は愕然とソラの遺体を見ていた。それはとても満足そうに笑って逝った最愛の人の最期の姿。
誰が殺したのかは容易にわかった。泣いてるこの女の仕業だ。千香は早くも行動を起こした。
ナイフを取りだし、ほむらを切り裂こうした。彼女はバックラーでそれを防いだ。
「お前が……お前がソラォォォォォ!!」
かつて人形だった少女とは思えない形相だ。ほむらはこの女がソラの知り合いだとすぐにわかった。だからこそ、聞いた。
「ねぇ……私が蘇生術を使ってもソラが生き返らなかったの。どうしてかわかる?」
千香はそれを聞いて冷静になる。この女は蘇生術が使えるが発動しない。すぐに理由としてあげるのなら『抑止の存在』の影響だ。死人が生き返るということは許されないというこの世界のルールがあるからと考えられるが、この女はそれを行使してなお無事だ。
つまり暁美ほむらは『抑止の存在』に許された蘇生術を持っていると千香は推理した。
(でも生き返らなかった……それは何かしらの原因がある)
千香は考える。どうして彼女はこうもすぐに切り替えたのかと言うとほむらが流していたのは涙だったからだ。
この少女は自分がしてしまった過ちに嘆き後悔している。その過ちを無くすために『抑止の存在』に恐れず、蘇生術を行った。だから信用できる。
千香の答えはすぐに纏まった。
「恐らく『魂』がないからだと思う」
「魂が?」
「『魂』は一つのハードディスクみたいなものさ。それがなければ人は『意識』や『精神』、『人格』を保てなくなり、『生きている』という概念を持たなくなるんだ」
「つまり、魂さえあればソラは……!」
「でもそう簡単じゃない。反魂術でこれまでこの世に去っていた者達の中から一人をこの世に呼び出すことは不可能だし、『抑止の存在』が黙っていない。反魂術はルールがあろうがなかろうが絶対に許されないんだ」
ほむらはそれを聞いて愕然した。でも、と千香が紡ぎ出したのは希望だった。
「神器さえあればなんとかなると思う。あれも魂の塊みたいなモノだし、個人を特定する情報の媒体さ。だからソラの神器があれば生き返るはずさ」
「でも彼の神器は消えて行ったのよ……」
「彼が君をそのままにしておくと思う? 間違いなく誰かに彼の神器は継承されている」
とは言え『全てを開く者』の継承はなぜか失敗しやすい。彼の神器がまだこの世界にある確率は低い。それでも千香とほむらはまた彼と出会うためにその低い可能性にかける。
「ボクの名前は千香。君は?」
「暁美ほむら……悪魔よ」
こうして二人のヤンデレコンビが誕生した。ある意味最凶の敵が誕生したのだ。
☆☆☆
一方、鹿目まどかは一瞬だけ空が青空になった怪奇現象に驚いた。真夜中が青空になるのは誰だって驚く。
(なんでだろ……あの青空が消えてから胸騒ぎが止まらない)
まどかはふと机にある首飾りに目が入る。かつて誰かが自分にプレゼントしてくれた物だ。
(パパでもママでもない……誰だったのだろ、あの男の人……)
それは夢のような現実のような世界で自分に託されたアクセサリーだ。そのアクセサリーが突如、光だした。
彼女は悲鳴をあげて、光が収まるのを確認すると首飾りが黒いカギのような剣になっていた。
「何……これ?」
思わず触れて見るとまどかの頭に誰かの記憶が流れてきた。
――――少年がほむらや知らない少女達と共に戦う光景
――――自分と同い年の男の子が戦争を駆け抜ける光景
――――自分より歳上の男性がほむらと戦い……そして死ぬ光景
(――――ソラくん? ッ…………!?)
学校でほむらにある質問をされる前、まどかは元に戻りかけた。しかしほむらの力でそれは無効化された。
まどかには言い様のない違和感があった。まるで喉に小骨が刺さったかのようなおかしなところが。しかし神器から流れた光景でパズルのピースがはまった。
まどかは思い出した。自分は『円環の理』であり、魔法少女だったことを。
そしてソラがこの世を去ったことを。
「ソラ、くん……」
思い出したがまどかが力を取り戻していない。つまり戦える力もないし、ソラを生き返らせる手段はない。
無力な自分に彼女は涙を流すのだった――――
「疑問。あなたはなぜ泣いている?」
「え?」
まどかが振り返るとそこには透けている少女がいた。幽霊と頭に過るが彼女は幽霊ではないとなぜか頭で理解した。
「あ、あなたは?」
「『抑止の存在』。そう言われていますが、今はその神器に取りついた九十九神というところですかね」
――――それは新たな戦いの火蓋を切る幕開け
――――叛逆に続く物語
鹿目まどかを主人公にして彼の魂は剣となる。
ほむらが見た幻覚はソラの想いの力で具現化した彼の絆です。
攻撃も何もしないためただ見せるだけの幻覚ですがほむらにとっては効果的でした。
正直、これを書くのには断腸の思いでした。主人公を殺すことは自分は好きではありません。けれどそうしなければ来世(前作)との繋がりが書けません。
なのでソラには逝ってもらいました。まあソラが残したモノが後の戦いに影響します。
次回はオリジナル展開です。そして自分なりの叛逆の続きです。
成長した彼女達とかずみ☆マギカのキャラ達が関わっていきます。
次回、英雄の意思を継ぐ者
――――鹿目まどか十六歳。彼女は神器使いです