魔法少女まどか☆マギカ ~全てを開きし者は英雄となる~   作:ぼけなす

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「さあ、始まりと終わりを始めよう」

by??


第四十一話 英雄の意思を継ぐ者

 

 

 

 アスナロ市。見滝原から離れた都市で、ここも不思議な造りをする建物が多い。

 

 そんなアスナロ市のとある喫茶店『レパ・マチュカ』にて立花宗一郎は店を開くために扉を開ける。

 

 彼はかつて店の土地権を奪われそうなところを『天ヶ瀬』という少女の気まぐれで救われた。

 

 彼は彼女に恩返しをしたいが彼女は必要ないといい、代わりに困った人がいたら自分に危害がない程度に助けてあげればいいと言って去っていた。

 

 以来宗一郎は困った人を放っておけないややお人好しな人間となっていた。そんな彼の最初の災難が訪れた。

 

 誰かが店の前に倒れていた。歳は自分より年下でまだ二十歳にもいっていない男だ。彼が何者かこの際は放っておいて宗一郎は彼を起こす。

 

「しっかりしろ。オイ!」

「ん……ここ、は?」

「俺の店の前だ。君は?」

「オレは……そ…………? ……!?」

 

 黒髪の少年は頭を抱えて混乱していた。出かかっていた名前が言えない。いや思い出せないのだ。

 

 名前だけでなく自分が何者だったのか。

 

「わからない……オレは何者なんだ?」

 

 宗一郎は記憶喪失という単語が頭によぎる。とにかく彼は警察に連絡するも身元がわからないままとなった。

 

 宗一郎は混乱する彼に一つ提案する。

 

「俺のところで働かないか?」

 

 それが彼――――『鍵無 零(かぎなし れい)』の最初の記憶である。

 

 そして月日は二年流れる――――

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 桜も散る並木道。鹿目まどかがこの道を通るのは二年目だ。見滝原中学を卒業し、今は花も恥じらう高校生。

 

 見滝原高校に通う彼女は親友であるほむらと共にまたこの道を歩いていた。

 

「桜が綺麗だねほむらちゃん」

「そうね。でもまどかの方が綺麗よ」

「ほむらちゃん……」

 

 何やら良い雰囲気になる二人に「オッホン」と咳払いする少女がいた。

 

「なーに百合百合しい空間作ってるのよ」

「いけませんわお二方! こんな往来の場所でキマシタワーを建設してはいけませんわ!」

「キマシタワーってなに仁美? てか、あんたまさかそういう手の本を購入しているの?」

「さやかさん、淑女の嗜みですわ」

「いや恭介がなんか最近の仁美がスゴい魔境にいるとかで心配してたから。そのうち遠い場所に行くんじゃないかなってぼやいていたから」

「わたくしは帰ってきますわ……新たなネタを仕入れて」

「この二年間あんたに何があったの!?」

 

 元々は慎みのあるお嬢様だったが何者かと知り合って以来、腐の道に目覚めつつある。恭介もたまに遠い目をしていて心労がたまっているらしい。それを糧にコンクールでは優勝しまくりだったりするのだが。

 

(怖いのを充分知ってるからもう怖くないっていう状態だったね……あれは)

 

 逆に心が軽くはないからもう怖くない宣言。それはどっかのマミる魔法少女と似たようなフラグだが、死亡フラグでも失敗フラグでもなさそうだ。

 

 それは安心してはいいのだが、悲しみの戦士となった恭介が永遠に報われることが無さそうな気がしてきた。

 

「そのうち仁美が恭介を襲いそう……」

「もう既に補食済みですわ」

「ちょっと待てやコラ。往来の場所でその発言はアウトだって」

 

 覚醒者志筑仁美。もう誰にも彼女を止められる気がしない。するとほむらは呆れながらさやかに言う。

 

「もう諦めなさい美樹さやか。あなたに彼女は止められないわ」

「じゃああんたが止めてよ」

「愚かね。私が動くのはまどかのためよ」

「うわー……予想通りでもうなんも言えねー」

「ティヒヒヒ、さやかちゃんの犠牲は無駄にしないよ」

「ちょい待てまどか。あたしの犠牲ってどゆこと? もうあたしは仁美の仲間として見られてるの?」

「「え? 違うの?」」

「違うに決まってるでしょォォォォォ!!」

 

 ウナーと叫ぶさやかにキャーキャーと逃げるお茶目な女の子達。彼女達は中学校で知り合い友人となった少女達だ。当初、さやかはほむらを敵視していたがいつの日か身を潜めてこうやって仲良くなっていた。

 

(敵視はしない。でもあたしは忘れてはいない。あんたがしたことを……)

 

 ほむらがまどかを陥れ、『円環の理』として無くしたことを許したわけではない。しかしこんな幸せそうに笑うまどか(かつての親友)を目にしていては険悪な雰囲気になれない。

 

 彼女は今幸せの絶頂期だ。だから邪魔することはさやかにはできなかった。

 

(ソラ……あんたは今はどこにいるの?)

 

 さやかは消えていったかつての友を想う。

 

 

 

閑話休題

 

 

 

「皆さん、玉子焼きにかける調味料は醤油ですか、ソースですか!? はい、土方くん!」

「マヨネーズ」

「………………」

「いや黙らないでくださいよヒス子。てか、高校生の担任なんだからいい加減に中学から離れろよ」

「シャーラップ! なんですかマヨネーズって! そんなんじゃ彼女ができませんよ!」

「いや自分マヨラーなんで。あと自分風紀委員なんで彼女つくったら近藤さんにブチブチ言われんで」

「シャーラップ! というかヒス子ってなんなんですか!?」

 

 土方はヒス子こと早乙女和子に疲れた目で対応していた。なお、中沢くんは別の学校に入学したらしくこの高校にはいない。

 

 まどかはそんな新しいやり取りを見て苦笑しながら、ふと首飾りにいるAIに尋ねる。

 

(抑止さん、抑止さん。ホントにほむらちゃんがこの神器を狙っているのですか?)

『肯定。何度か死者を呼び起こすというこちらが動き出すような事態に陥りましたが、ギリギリなところで逃げられています。おそらくですが我々がかつて対峙した切り裂き魔の知識を何者かが持っている可能性があります。ゆえに暁美ほむらは何者かと結託してあなたを狙っていると思われます』

(そうなのかな? ほむらちゃんは少しおかしいときがあるけど、別に悪い人には見えないけど)

『悪意であなたの神器を狙ってません。エゴであなたの神器を狙っているのです』

 

 『抑止の存在』こと抑止さん。まどかの首飾りに住むAIであり、『全てを開く者』を使うのにサポートとして動く。

 

『というわけで今日も訓練です』

(ええー……今の私魔法少女じゃないし、剣とか苦手だし)

『つべこべ言わずに鍛える。あなたが神器を変形させることができれば希望がありますが、それができないあなたなどただのマダオ(まるで駄目な女)です』

(うう……抑止さん。容赦ないよ……)

 

 厳しいのはまどかを思ってのことだ。主だった男が残したAIは彼女が戦えるように、彼女がまた戦いの舞台で傷つかないように今日もビシビシ鍛えるつもりである。

 

 まどかがズーンと沈んでいると生徒達が騒然とする。まどかの視界には一人の美少女が教卓の前で微笑んでいた。

 

 スラリとした容姿に白髪の髪。女性らしいところは出たとこは出ると言った容姿の美少女だ。まどかは綺麗だなという同時に妖しいという奇妙な感情に支配された。

 

「転入生の天ヶ瀬千香さんです。皆さんよろしくしてくださいね」

「ボクの名前は天ヶ瀬千香です。みんなよろしくね♪」

 

 パチリとウィンクした千香にさやかは彼女の手を見て驚いた。

 

(ソウルジェム!? まさか魔法少女……でも今の魔法少女はこの見滝原には確認されてないはず…………)

 

 目の前の少女にさやかは警戒心を強める。一方、まどかも心境は穏やかではなかった。

 

(どうしよう抑止さん!)

『なんですか鹿目まどか』

(ボクっ娘が現れた! こういうキャラが出てきたら私の萌え要素の影が薄くなるよ!)

『さっさと強くなれ馬鹿』

 

 まどかのアホな発言に呆れて抑止さんはセメント率を上げるのだった。

 

 また千香もまた鹿目まどかを見て気づいた。彼女は笑っていた。

 

(なるほど……あれが鹿目まどか。暁美ほむらの最愛の少女。……かわいらしいよホント。昔のボクだった迷わず手を出していたね)

 

 今は違うと聞かれれば千香は迷うことなく違うと言う。今の彼女は『彼』とまた会うためならどんなことでもする。

 

(人質候補が一人いるのは良いことじゃないか。ね? ほむら)

 

 射抜くような目でほむらは千香を見ていた。彼女はどこ風構わず、そのまま席に座る。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 佐倉杏子と巴マミ。二人はかつては魔法少女だったが今は普通の少女だ。杏子とマミはいつものようにみんなが待つ屋上に向かっていた。

 

「ワリーワリー。遅れた」

「遅いわよ杏子」

「仕方ないわ。あの購買部はカオスだったわ。『豚』やら『狼』やら変な呼び名をしてる人達と戦うはめになったのだから」

「え……それって杏子は問題児共と戦ったってことですかマミさん」

「ええ……格闘での完封勝ちってああなのね……」

 

 何を見てきたのかマミは遠い目をしていた。さすが我らの杏子たん。食べ物に関しては最強になれる。

 

「そのうちあんたが食べ物でスタンド出しても驚かないわ」

「そりゃさやかだろ。たまにあんたの後ろに騎士甲冑で足が魚の霊が見えるぞ」

(オクタヴィア? なぜオクタヴィアが!?)

 

 内心まどかはツッコミを止められずにいた。アステカのお土産の影響なのかさやかがスタンド使いになったのではと戦々恐々だったりする。

 

「魔法少女じゃなくてスタンド使いになるつもりなの美樹さやか」

「あたしは『ジョジョ』にならないわよ。そこは条太郎に任せるわよ」

「どうでもいいけどとんでもない会話だなオイ……」

「そんなことよりお弁当にしましょう♪」

「マミも最近マイペースになってきたなぁ……」

 

 杏子はマミの変化に嘆息を吐く。なぎさという少女と知り合ってから彼女のお姉ちゃんが拍車をかけてるような気がしてならない。

 

 しばらく昼食をとっていると千香が扉から現れた。

 

「ねーねー。ボクも入れてくれない?」

 

 これに対して反論したのはほむらだが、まどかとマミはそれを抑えて千香を混ぜた昼食会になった。

 

「そういえば君達ってソラって言う男の子知ってる?」

「千香!」

 

 唐突に聞かれた質問に周りは黙った。ほむらは責めるように千香を睨むが彼女はニコニコしたままだ。最初に口を開いたのはマミだった。

 

「……どうしてそんなことを聞くのかしら?」

「当たり前さ。なんせ彼はボクのフィアンセ――――つまり婚約者だよ♪」

「「「ええェェェェェ!?」」」

 

 まさかの爆弾発言にほむらとまどかを覗いた三人が一斉に千香を見る。

 

「ま、まさかアイツがこんな美少女と婚約していたとは……」

「信じられないって……」

 

 杏子とさやかはやるじゃんと感心していたがマミだけ違った。

 

「そんな認めないわ! お姉ちゃんに秘密に婚約していたなんて認めないわ!」

「でも事実だしなぁ」

「事実だろうがなんだろうがソラくんはなぎさちゃんのお兄ちゃんで私の弟よ! 認めないわ天ヶ瀬さん!」

「千香でいいよん巴マミ。君とは良いライバルになりそうだ」

 

 バチバチと睨み合う二人。未来の話をすればマミが癒しを、千香が心労とある意味ライバル関係だったりする。

 

 そんな中でまどかはソラのことをこの婚約者に話すべきか迷った。彼は親友である少女が殺した。そして自分の過ちに後悔し、嘆き悲しんでいた。

 

 もしかすると千香はほむらを怨むかもしれない。せっかく仲良くなれたのに亀裂を入れるのはよくない。

 

 しかしこんな純粋な彼女を騙すように真実を話さないのはどうしたものか。意を決してまどかはソラのことを話そうとした刹那、抑止さんが待ったを出した。

 

(どうして? フィアンセなんだよ? だったら……)

『おそらくそれは嘘です。ソラにはフィアンセなんて一人もいません』

 

 それを聞いたまどかはなぜかホッとした。あれ、どうしてとその次に疑問に思ったが抑止さんは自身の推理を述べる。

 

『おそらくこれは我々を浮き彫りにするための罠。つまりあなたと私の関係を見つけるための罠です』

(どうして罠なの?)

『考えて見てください。この事実を知るのは本人のみです。その事実を知っている。それは継承されたから知る情報です。よって天ヶ瀬千香は暁美ほむらの協力者――――敵です』

 

 ドクンと胸が鳴る。目の前に敵が現れた。もし大切な人が一人もいない状況で、ソラならばここで問答無用で斬り込むがまどかにはできない。

 

 彼女は問答無用に斬り込む度胸も覚悟はまだできてない。心優しいところが逆手に出てしまった。

 

(ッ……でもその心優しいところをつかれてソラくんはトラウマを負った……)

 

 『鹿目まどか』だった頃の――――魔女がまだいた世界で幼い彼は人の死を目の辺りにして壊れた。そして自らも殺人を犯すという罪深い結末を迎えた。

 

 まどかは覚悟を決めろと何度も言い聞かせるがそこでまたもや抑止さんは待ったをかけた。

 

『今、ここで戦うことは得策ではありません。そして天ヶ瀬千香は戦闘力はあなたより上です。無力化された末に殺される可能性があります』

(じゃあどうすれば……)

『後手にまわるしかありませんが待つしかありません。それからあなたはとにかく襲撃されるまで味方を作る必要があります』

(味方?)

『神器で魔法少女達――――かつての仲間達の記憶を呼び起こすのです』

 

 それはまどか以外の人間を巻き込めということになる。心優しい少女にとってせっかく日常に生きてる者達を巻き込むのは心苦しいことだ。

 

『思い出してください。彼の願いを……彼の意思を……』

 

 あ……とまどか思い出す。それは二年前、ソラが死んで自分に神器が継承されたときのことだ。

 

 

 

 抑止さんとの邂逅でまどかはソラの死を知り、泣いた。それを慰めるとはいかないが抑止さんは言った。

 

「泣く暇があるのならあなたは強くなってください。でないと彼は浮かばれません」

「どうして……私に?」

「あなたが、親友であるあなたが暁美ほむらを助けるべきだと判断したまでです。ホントに愚かな人です。自分が暁美ほむらを抹殺か解放すれば、死なずに済んだものの」

「あなたにはわからないよ……。ソラくんは、あの子がどうして力を使わずにして逝ったのか」

 

 彼はほむらに自分の意思で悪魔の力を捨ててほしかった。しかし結果は敗北して逝った。彼が何もできないことをどれだけ悔やんだか想像もできないこともない。

 

 だからこそ、自分に託したのだろう。自分ならほむらは話を聞いてくれる。自分ならほむらを助けられる。

 

 立場が逆になってしまったがまどかは剣をとり、言った。

 

「ソラくんの願い……聞いてる?」

「『暁美ほむらを救え。頼むぜ、お姫様』。何を言ってるのかよくわかりませんでしたが……」

「そう……抑止さん。お願いがあるの」

 

 まどかはもう逃げない。

 まどかは決意した。

 

 たった一人の大切な恋しい友達を救うために、そしてそのためにこの世を去った恋しい異姓の願いを叶えるために。

 

「私を鍛えて。契約でもなんでもいいから私を強くして」

 

 

 

 

 それが二年前、彼女が強くなろうとしたきっかけだ。だが、今の彼女では身が重い。

 

 このままではほむらを救えず、自分は千香に神器を奪われるかもしれない。

 

(大切な友達を救うために……ソラくんの願いのために)

 

 まどかの目には決意が宿る。そして彼女が最初に呼び起こそうと思ったのは――――

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

――――避けられぬ戦い

 

――――避けられぬ宿命

 

 もはや歯車は止まらない。運命は魔法少女達を巻き込んでいく――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「宗一郎さん……いくらオレが人質にされたからってそんな少女を連れて…………」

「違ァァァァァう!! 俺はロリコンじゃなァァァァァい!」

「む、お兄さん失礼ですね! こう見えてもしっかりおっぱいありますから!」

「どうでもいいわ!」

 

 アスナロ市ではかずみ☆マギカが始まっていた。なお、零が人質にとられて宗一郎はやむ得ず爆弾を使うという原作とは違う状況からだが。

 

 




なぜだ……なぜ最後にカオスになる……。
どうも千香が絡むとギャグが最後に出てしまうのがデフォルトなのでしょうかねー(棒読み)

まあ混沌の弟子ですから……。

さて次回は、鍵無零くんのターン。かずみ☆マギカの一巻の最初です。

次回、鍵無零は考える

――――推理しろ、予測しろ!
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