魔法少女まどか☆マギカ ~全てを開きし者は英雄となる~   作:ぼけなす

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「彼が作った軌跡は彼女を強くする」

by暁美ほむら


第四十三話 私は一人じゃない!

 

 まどかは結界に閉じ込められた。しかも魔女による。

 

 なぜ千香がこの結界を展開できるのかまどかは疑問に思うが、それに答えたのは背後にいたほむらだった。

 

「不思議そうな顔をしているのは当然よね。だってこの結界は天ヶ瀬千香が作り出しているのだから」

「千香ちゃんが? でも彼女は……」

「気づいていないの? 彼女は魔法少女だった女よ」

 

 魔法少女。キュウべぇと契約することにより生まれる強力な女の子。しかし当のキュウべぇがどこにいったのかわからないし、彼を見かけたことが一切ない。

 

「天ヶ瀬千香はキュウべぇと契約した魔法少女だったわ。けれど契約したときの願いが上手くいかずに絶望し、魔女となった」

「千香ちゃんの願い?」

「『ソラの魂を呼び戻す』。そんな願いよ」

 

 ならばまどかの神器がソラの元に戻るのでは、という新たな疑問が出てきた。ほむらは嘆息を吐いて千香の失敗談を話す。

 

「だけどその願いは『抑止の存在』によって中途半端な願いとなった。今、彼女が『ソラ』を喚ぶわ」

 

 千香の召喚により確かにソラは出てきた。しかしその目には生気はなく、死人のように無表情な顔だ。

 

「彼の身体には中途半端に定着した魂がある。結局、死者蘇生は失敗だったのよ。だから絶望して魔女になった」

 

 しかし、とほむらは続けた。

 

「魔女になってなお、千香はソラを想う化け物だった。彼女が次に狙いをつけたのはまどか――――あなたが持つソラの神器よ。中途半端ということは魂が半分だけということ。だからあなたを狙っているのよ」

 

 まどかの心臓が跳ね上がるように高鳴った。ほむらの口ぶりは明らかに千香に味方についてますという説明でもあった。そしてその説明通り千香はまどかの神器を狙っている。

 

「まどか、お願い。その神器を私たちに譲渡して」

「譲渡――――確か神器を任意に渡すって言う魔法だよね?」

「そうよ。またはその神器の所有を他者にわけ渡すということね」

 

 ほむらちゃん達にこの神器を渡せばもしかしたら……ホントにもしかしたらソラくんが生き返るかもしれない。今のほむらちゃんは理を覆す悪魔。だから抑止さんすら黙らせるかもしれない。

 

「けどそれだと駄目なんだ」

「……どうして?」

「ソラくんはほむらちゃんに普通の女の子として生きてほしい。何も枷がなく、孤独では普通に生きてほしかった」

 

 ほむらちゃんの力はいずれ討伐されるためのモノだ。おそらくソラくんはほむらちゃんが全ての敵になることを良しと思えず、彼女が悪魔の力を捨てるように言った。その果てに彼は逝った。

 

「だから私はあなた達と戦う……。それがソラくんの最後の願いだから……!」

 

 ソラくんの神器を召喚してへっぴり腰な構えをとる。それに対して千香は笑みを浮かべて拍手する。

 

「すばらしい。ホントにすばらしいよ鹿目まどか。彼女は彼の願いのために弱き身でありながらボク達に挑もうとする。スゴい勇敢な女の子じゃないかほむら!」

「ええ、そうよ。同時に他人から愚かって言われるくらい他者に優しすぎる……」

 

 最後の「優しすぎる」は皮肉にも欠点でもある。ほむらは苦虫を噛む想いでそう呟いた。

 

「そうかい……。でもほむら、わかってる? 彼の神器がないと彼は蘇らない。君が自分から彼女と戦うことを拒否しても、ボクは戦うよ?」

「……私の願いがあるとしたらまどかを死なせないで、苦しませないで」

「それは彼女次第……さ!」

 

 千香の背中からズモモモモと黒い布に仮面しかない身体の化け物が出てきた。

 

 千香の魔女――――『混沌の魔女』

 

 性質は継承。この魔女は主に模倣にしてるのはソラなのかもしれない。その証拠に燕尾服に身を包んだ仮面の男性達が出てきて、手には剣が握られていた。

 

「さあ、君はこの数をさばけるかな?」

 

 使い魔の数は圧倒的。今のまどかの力量ではおそらく勝てるのはほぼ不可能だろう。

 

 しかしまどかは構えた。戦うつもりだ。

 

「戦うつもり? たった一人で?」

「私は一人じゃない……!」

 

 刹那、使い魔達に風穴が開いた。それに目を開く千香にまどかは「やあァァァァァ!」と掛け声を出しながら斬りかかるが見えない壁に弾かれた。

 

「ッう、今のは……!?」

「彼女の神器です。魔女化したことで更なるパワーアップしたものかと」

 

 抑止さんの言う通り千香が造り出したシールドは魔女の保有スキルとなっていた。彼女の保有スキル――――『絶対防御』により、千香という少女にあらゆる攻撃危害を与えることができない。

 

 千香は使い魔に風穴を開けた少女に対してまどかの協力者であることを理解した。

 

「へぇ……鹿目まどかに協力者がいたみたいだね」

「さすがベテランね。ねぇ――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――巴マミ」

 

 マスケット銃を向けたマミが姿を現した。彼女の表情は剣呑で二人に対して警戒心を表していた。

 

「暁美さん、鹿目さんを襲うなんてあなたらしくないわね」

「私は襲ってないわ。まどかにお願いしただけよ。襲ったのはこの転校生よ」

「どうも巴マミさん。ボクの名前は天ヶ瀬千香。見ての通り魔女っ娘だよん♪」

 

 人なつっこい笑みを浮かべた千香の頬にマミの銃弾が掠る。マミは険しい顔をしながら言う。

 

「魔女……かつて私達の敵であり魔法少女のなれの果て。私達の敵は魔獣だったはずだけど、あなたは違うみたいね」

「正解。ボクは円環の理に導かれず魔女化した。というか見滝原以外の地域では度々魔女化が起きてるのを知ってる? まあ円環の理(鹿目まどか)の不在による影響が妥当かもしれないけど」

 

 まどかが記憶を取り戻したことにより、円環の理としての力を少し取り戻した。しかしそれと同時に外にいる『円環の理』の影響が弱くなり、魔女化する魔法少女が出てきた。

 

 魔女となった魔法少女はグリーフシードになるが一度使用すれば消失するというルールがある。そのためキュウべぇが無くともグリーフシードから再び魔女が生まれることはない。

 

 ちなみに消失する理由はグリーフシードが円環の理に導かれたということである。

 

「それで君もボクの敵になるのかな? ソラの姉と豪語する君が」

「何が言いたいの?」

「ボク達の目的はソラの蘇り。ソラを生き返らせることだよ。巴マミ、君もそう願っているんじゃないかな?」

 

 つまり仲間になれと千香は言っている。マミなら飛び付きそうな提案だ。ソラのお姉ちゃんとして彼の家族だった少女が、その提案に乗ると誰もが思っていた。

 

「お断りするわ。私はそんなこと望んでないわ」

「ありま? 嫌なの?」

「嫌じゃないわ。ええ、魅力的な提案ね。飛び付きたくなるくらい」

 

 でもね、とマミは続けた。

 

「鹿目さんは言っていたわ。あの子は満足そうに逝ったって……満たされた顔であの子は死んだ。生き返らせるってことはそれを無下にすることになるじゃない……!」

「つまり君は生き返らせるべきじゃないと? ひどいお姉ちゃんだね」

「ええ、私はひどいお姉ちゃんよ。あの子がどんな結末を迎えたのか知らないまま幸せそうに笑って過ごしていた女よ。 けど、だからどうしたの? あの子は私達の幸せを願い、戦い続けた。私達が幸せにならないとソラくんは報われないじゃない!」

 

 マミはマスケット銃を向けたまま宣言した。

 

「見くびらないで天ヶ瀬千香、暁美ほむら。私は弱い頃の私じゃない。お姉ちゃんとして弟が守ろうとしたモノを守ってみせる。それがソラくんに対する弔いよ」

 

 マミの宣言に千香は「やれやれ」と嘆息を吐いた。

 

「どうもこのお姉ちゃんとやら厄介だね。まあ彼の意思を大切にする――――それは好ましいことだよ。ならばボク達がすることは決まってる」

 

 千香が再び使い魔を出してきた。そしてマミへ一斉に襲いかかる。

 

「ボクはボクのエゴ()のために自分勝手にさせてもらうよ! 彼には悪いけどね!」

「悪い女の子に私の弟の願いを否定されてたまるモノですか!」

 

 戦いの火蓋は切って落とされる。マミの銃弾が使い魔を貫き、使い魔はワラワラと数で攻める。優劣の話をすればマミが次期に不利になる。

 

 まどかはどうしようか迷った。今の自分にはマミに加勢できる力がない。魔法少女の力がない自分は全てを開く力がある神器しか使えない。

 

「まどか、それを渡して」

「……駄目だよ。これはソラくんが」

「そう、私がしたことを知っているのでしょう?」

「うん……ほむらちゃんはソラくんを殺しただよね。そしてそのことを悔やみ後悔している。だからどうしてソラくんにここまで執着するの?」

 

 まどかは疑問に感じていた。

 

 記憶から察するにほむらは自分のことを愛している。憎悪も痛みも愛しいとさえ、言っていた。だからソラにここまで執着する理由がわからない。

 

 まどかを一人しか愛しているのならソラはどうでもいいはずじゃないのか?

 

「過ちを正しいたいから?」

「否定はしないわ。……ねぇ、まどか。『恋』ってわかる?」

「えっと……人を好きになるってこと?」

「そう、『恋』とは人を好きになる。愛も同じように聞こえるわ。でも私はそれが違うと思うのよ」

 

 ほむらは踊るように回り出す。彼女の背後から彼女の使い魔が出てきた。

 

「愛は育むことで起きる好きだと言う気持ち。植物に水を与えて育てていくようなモノが愛だと思うの。だけど『恋』は違う。同じ好きだけど、『恋』は育むことなく起きる――――病気。悪い言い方をすればそれね。でも間違ってないわ」

 

 だって、とほむらは言った。

 

「ここまで『恋しい』と思えるくらいソラがほしい。まるで病気にかかったみたいにソラを思うと身が焦がれそう……」

「ほむらちゃん……」

「だからまどか。ソラの神器を渡して。出ないと、私――――あなたを傷つけそう」

 

 恋は盲目という言葉があるようにほむらにはもうまどかは写ってない。ソラという一人の男を求めている。まどかを傷つけることは絶対しない。しかし、彼女がソラの神器を持っていれば話は別だ。

 

 ほむらの『恋』は重く、そしてどこまでも深い情熱的な想い。まどかが身を後ずさるほど彼女は盲目的だった。

 

(ほむらちゃんが私に危害を与えないと踏んでいた。けど、抑止さんの予想は外れた)

 

 仮にほむらと戦うならばまどかにアドバンテージがあった。しかし盲目的となったほむらではまどかにアドバンテージはなくなり、圧倒的な差が生まれた。

 

(どうすればいいの……)

 

 ほむらとは戦いたくない。しかし戦いは避けられない。さらに自分がこの神器を使いきれてない。

 

 絶体絶命のそのときにまどかが持つ神器が光だした。

 

「きゃ!」

「これは……まさか」

 

 抑止さんが驚愕する声を出した。なんと『全てを開く者』が弓に変形したのだ。

 

「抑止さん!」

「ええ、サポートは我々が!」

 

 まどかが臨戦態勢に入ったところでほむらは使い魔をけしかけた。眼鏡をつけた兵士達だ。その使い魔一人一人は抑止さんの拘束で身動きを止められ、まどかから弓矢が放たれ、貫かれた。

 

「まさか……魔法少女の力が!?」

「マミさん、離れて!」

 

 まどかの矢は一本だけ遠くへ行き、それ以外は千香に直撃した。

 

「ハハ、単なる魔力矢でボクが――――」

「なら、これならどう?」

 

 まどかはニタリと笑って放った一本の矢。それは単なる魔力矢ではない。

 

 千香のよく知る最強の一矢。

 

「ガハッ、か……『解錠』!?」

 

 一本の矢でシールドは解かれ、そして残りの魔力矢が直撃して傷を負う千香。彼女から余裕の顔がなくなり険しい顔となってまどかを睨む。

 

「よくもこのボクに……!」

 

 使い魔が一斉にまどかに襲いかかる。今のマミは使い魔と交戦で助けにはいけない。まどかは動かなかった。いや動く必要などなかったのだ。

 

「オイ、人のダチに何しやがる!」

「さやかちゃん参上!」

 

 使い魔は二人の魔法少女――――さやかと杏子によって葬られた。

 

(まさか……まどかが最初に外したあの矢も『解錠』!?)

 

 手を打たれていた。一本の矢で記憶を呼び起こしたのだ。杏子は先程の一矢で記憶を取り戻し、さやかを連れてここに来たのだ。

 

「というかあたしがなんで魔法少女だとわかったの?」

「アホだからもうしてるかと」

「オイ、あんたはあたしをどう思ってるの?」

「「アホ」」

「まどかまで言われた!?」

 

 ショックを受けるさやかを尻目にまどかはまだ警戒心を解いていなかった。確かに千香の魔女は引っ込んだが、千香が倒れたわけではない。

 

 まどかは剣に戻したり、弓にしたりを繰り返した。それが『できる』と確かめるために。

 

「……まさか、ソラの力を使ったの!?」

「その通りよ千香。ああ、まどか……やっぱりあなたは予想を遥かにいく」

 

 ほむらはどこかうれしそうだ。千香は不満そうに口を尖らせた。

 

「ズルいズルい……あの変形だってソラがマスターするのに、約三年もかかったんだよ……」

(え……ホントなの?)

「肯定。ソラが知ったら泣きます」

 

 苦労した変形がこうも簡単に実行されたら泣きたくなる。そんな涙目なソラを妄想したまどかの頬が緩む。

 

 千香までそんな妄想したのか顔が緩む。

 

「あのまどか? 何その顔……」

「なんというかあの子も同じ顔をしてるわね……」

(ああ、まどかがどこか遠くへ……)

 

 マミとさやかは仲間の変化にゲンナリしていた。ほむらが仮にソウルジェムだったら濁っていただろう。それほどまどかの豹変ぶりに泣けてきた。

 

「とにかく今日のところはここまでだね! 退かせてもらうよ!」

「千香、鼻血を拭きなさい」

「だまらっしゃい! あのまどかって子も鼻血を出してんじゃん! 妄想して萌えてるじゃん!」

「グッ……精神的に来るわね」

 

 ほむらは頭痛の種を残しながら千香に連れられて去った。残されたまどかが〆の一言。

 

「天ヶ瀬千香……私のライバルになりそうだね」

「色々ちがくね?」

「ほむらが宿命のライバルじゃないんだ……」

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 

 かずみは海香の豪邸にて戦いを終わらした。女刑事こと石島美佐子が魔女化し、彼女を追い詰めるがそれを魔法少女となったかずみが倒したのだ。海香とカオルは熟睡状態に陥るかずみを支えながら彼女が無事であることに安堵の息を吐いた。

 

(ん? あの人……)

 

 視線を感じた海香が振り返るとそこには今日知っている顔ぶれがいた。その男は事の結末を知るや否や立ち上がり去っていった。

 

「どうしたの海香?」

「いえ……人違いかも」

 

 海香が見た男は――――零だ。しかしその表情には生気も活気も感じさせない無表情な能面顔だ。

 

(調べてみる必要があるわね……)

 

 海香が独自で調べる対象が増えたのだった。

 

 

 

一方、その頃。零本人(・・・)は――――

 

 

 

(うぉ!? なんか悪寒が……。なんだろう。知らない女の子二人に変な妄想でもされてるのかな?)

 

 ゾッと身を震わせて仕込みを準備していた。

 

 

 




零が感じた悪寒は変態達に目をつけられた嫌な予感です。

というか千香ハザードが原因でまどかの変態化は加速する!

……まどかファンのみなさんごめんなさい。シリアスにいきたいけど、千香が絡むとギャグになっちゃうですよね……。

さて次回、魔法少女ってなんぞ?

――――自分のルーツ。それは魔法少女に有り
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