魔法少女まどか☆マギカ ~全てを開きし者は英雄となる~ 作:ぼけなす
by鍵無零
零は夢を見ていた。この二年間で度々見る少年の物語だ。
その夢は一人の少年が大樹とも言える化け物に立ち向かい、そして敗北する夢だ。黒髪の美少女は泣いていた。
少女が願いを代価に自分の存在を誰もが忘れてしまうという最悪な結末を迎えさせたことに。
少年も悔しそうに泣いた。自分が救えない少女を作り出してしまったことに。
この物語は悲劇で終わる。黒髪の少女と少年が報われない――――そんな悲しい物語。
だが、その終わりには救えなかった少女は笑っていた。少年が少女に、黒髪の少女のために彼女を迎えにいくと約束した。
それは理想だ。概念化した少女を普通の少女に戻すなんて、叶わない願いだ。零はそう思った。
しかしなぜかこの少年にはできそうな気がした。真っ直ぐに生きる純粋な彼に。
だから概念化した少女は笑っていたのだろう。彼がきっと迎えに来てくれると信じて。
零の夢はそこで終わる。その続きはまた明日なのか、はたまた一ヶ月後かわからないがまた少年の物語を見たいと思うのだった。
☆☆☆
オフの日である零は自分探しの外出をしていた。自分には記憶はないが、どうもこの変わった建物からどこから見たことあるような気がしてならない。そしてデザイナーが共通の出身地であるのだ。
(見滝原……か)
来週にでも行ってみるといいかと思いながら彼が歩いていると誰かにぶつかった。零はすぐに謝ると、ぶつかった人を見て顔を強ばった。
(あ、あの女刑事は……!)
「ごめんね君。怪我はない?」
「あ、はい。平気……です」
唖然とした。この女刑事は詐欺師と結託したこと予想して報復に備えたが、その事件は最初から
そのため今日まで女刑事の報復に警戒していたが、今日出くわした上に身を案じられれば思考が回らなくなるのは無理もない。
どうやら根は悪い人ではないようだと零は理解した。
「あなたは……どこかで会いましたか?」
「……いえ。それよりも刑事さんは昼休みですか」
「まあそんなところかしらね。昨日の記憶がさっぱりないのだけど」
(何者かによる干渉? いや暗示? ……そんな理論で解明できるもんじゃない。そうまるで……)
――――魔法?
その言葉がつい出た。なぜかは知らない。現実にあるとは思えない力だが、なぜかあると思えた。
「あ、すみません。オレ、変なこと言っちゃって……」
「いいえ、気にしてないわ。……ねぇ」
女刑事――――石島美佐子は零に向かって言った。
「そこでお茶をしない?」
「は?」
まさかの逆ナンパにあんぐりである。
☆☆☆
「魔法少女?」
零は自分が記憶喪失であることを語る。当初は心配されたが今の生活が幸せであることを言うと彼女は安心した息を吐く。
石島美佐子が語ったのは現代科学では説明できないことだらけだった。ここ最近、少女達の失踪と家出が起きている。そしてその手がかりは行方不明者の中からあった『Hyades』というメールアドレスが届いていた携帯電話のみだ。
本文は何者かに消されている上に電話会社にはそのアドレスが登録されてなかった。
「ギリシャ神話の七人の姉妹をアドレスにしてるって何者だろうね……」
「そうね。あなたもそういう怪しいアドレス届いた覚えはない?」
「『ピュエラ・マギ・ホーリークインテット』っていうアドレスで立花さんに登録したが」
「何その痛々しいアドレス。というかふざけてる?」
「ふざけてるのはこの事件さ。事件性が認められてない行方不明者続出、手がかりがないなんてシャーロックでも解けない謎だ」
事実、どうしようもない。なのにこの女性はこの不可解な事件を調べるべきと言っている。その理由が気がかりで零はなぜと聞いた。
美佐子は自分の過去にそんな行方不明があることを話した。
名前は椎名レミ。彼女は美佐子の親友で良い女の子だった。しかしある日、境に彼女は失踪した。手がかりにあったのはレミの三歳になる妹が『魔法少女』と言っていたことだ。
魔女と戦い、そして世界を守るというおとぎ話のような手がかりに零は納得したような声を出した。
「んで、美佐子さんはそんなあり得ない話を信じて今日まで捜しているってことか?」
「あり得ない話じゃないわ! 現代科学では説明できない遺留品だって――――ごめんなさい。熱くなりすぎたわ……」
熱くなる美佐子に対して零はブラックコーヒーを口に含み言った。一般人からすれば馬鹿馬鹿しい話だろう。だが、そんな馬鹿馬鹿しい話が本当だったら悪夢だ。
では、自分が生きる世界に魔法少女がいなくなればどうなる? 破滅になるじゃないかって予想する。
だから馬鹿馬鹿しい話だって否定したがる人もいる。
「まず刑事さんに事実を言うとすれば椎名レミはもうこの世にはいない」
「ッ……」
「否定したいのはわかるが刑事さんが中学生の頃の話で一切音沙汰無しだ。これはつまりもうこの世にはいないってことなる」
「でも私は……!」
「そうだ。遺体を発見できるまで納得できない。だが、遺体すら残ってないとすれば捜査しようもない。灰に変えられ、海に捨てられたらそれまでだしな」
美佐子は苦虫を潰した顔になる。そんな彼女に零は人差し指を立てる。
「だが、美佐子さん。一つだけ手がかりがある。現代科学では証明できない奇跡の力が」
「『魔法』だって言うの?」
「それ以外ないさ。第一今回起きてる事件も不可解だ。手がかりがほとんどないだけでなく、そのアドレスに登録された少女達の共通点も謎だ。失踪した少女達全員の学校、誕生日、髪などの共通点が不可解だ」
なぜこの少女達なのか?
どうして彼女達なのか?
知り合いでもなんでもない少女達がいなくなるのは無差別と言いたいが、何かしらの共通点はあると零は考えていた。
(『魔法少女』って言う単語を聞いたときにはオレの中にあるナニカが、知識が蘇った……。あの夢に関係することだろう)
それ即ち自分を知ることできる手がかりだ。
あのピンクの少女や黒髪の少女も……。
だから零は美佐子に協力しようと思った。
「美佐子さん、もしかしたらオレは魔法少女について何か覚えてるかもしれない」
「知ってるって言うの!?」
「思い出した……って言うべきだな。それに魔法少女は安易になるべきではない者だと言うことは断言できる。まあ、それは追々説明するけど見返りを要求する」
「見返り?」
「ちょっと調べてほしい人がいます」
零が思い出したのは魔法少女ではない。そう、夢の中の少年の苗字――――
「『一ノ瀬』という少年について調べてくれませんか?」
それがこの少年が立ちはだかる壁になろうとは誰も気づかない。
☆☆☆
かずみと海香、カオルは魔女化した化粧品販売の女性を救いだした。彼女は肌が痛むことに気に病んで魔女化したとかずみとカオルは考えていた。
その一方で海香はまた見つけた。
(零さん……?)
前に零のことを調べた彼女だが何一つわからなかった。経歴、学歴、年齢が不明。自分のことを記憶喪失と言っている少年は今日も自分達を影から監視していた。
(まさか……ね)
(もし彼が私達の邪魔をするなら……)
そこにはもう少年はいなかったが、彼に向けて睨む。
(あなたを排除する……!)
少年は何者か?
少年は何者だったのか?
それを知るのはある魔法少女だった少女のみだ。
零くんは円環の理ではありませんし、『ソラ』でもありません。
零くんは最後の布石です。ある人物達を転生させるきっかけを与える最後の道標です。殺しはしませんが。
さて次回は第四十五話 混沌と魔女とまどかの敵
――――飛鳥ユウリ……お前なんてことを(やってしまった感)