魔法少女まどか☆マギカ ~全てを開きし者は英雄となる~   作:ぼけなす

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第四十五話 混沌と魔女とまどかの敵

 

 

 

 暁美ほむらは本当に疲れていた。彼女だけでなくさやか、杏子などの敵対している側も疲労で息を荒げている。

 

「美樹さやか、佐倉杏子……提案があるわ。今は休戦しましょう……」

「あんたの提案に乗るのは尺だけど、同感よ」

「あ、アタシも……」

 

 なぜ彼女達が疲れているのか?

 

 その理由は残りの面子が原因である――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さあ、ボクの華麗なステップを見ろ!」

「ほっ、はっ! 私も負けないよ!」

「あらあら……二人は元気ねぇ♪」

 

 ゲームセンターで見かけるダンスゲームをかれこれ二時間ぶっ通しで踊っていたのだ。まどかは体力ないという印象だったのだが、抑止さんの体力トレーニングで走り込みをしたり、ときおりダンスゲームで鍛えていたりしていたのだ。

 

「アタシもやり込んでいたのになんでアイツはあんなに踊れてるんだ!? 持久力皆無じゃなかったのかまどかは!?」

「まどかの皮を被ったナニカでしょあれは……。てか、なんでいつの間にダンスゲームで勝負になってるのよ……。あたし達、さっきまで戦ってたじゃない」

「千香のノリよ……。彼女は時折、予想の斜めを上にいくことをしでかすのよ……。あとなんで私まで踊らされるの?」

 

 千香はときどき常人では考えられないことを仕出かす。ソラがその尻拭いに何度も汗を流したことか計り知れない。

 

「おまけになんだあのギミック! こんにゃくを頭から落とすとか、食い物を無駄に仕掛けるか普通!?」

「ああー……アンタも可愛らしい悲鳴あげたあれね。あたしなんかいきなりクイズを出されたんだよ? おまけに間違ったら電撃ビリビリって……」

「さやかはまだマシよ……。私なんか恥ずかしい写真を写されながら踊らされたのよ? おかげで点数はゼロよ。どこで入手したのよ私の過去の写真……」

 

 協力者は実はほむらの両親だったりする。海外にいる二人に千香が交友関係を持ち、写真を入手する経緯をほむらはまだ知らない。また両親がほむらの萌えについて語っていたのを彼女本人はまだ知らない。

 

「あんなギミックの中で踊れるまどかは異常だろ……。あ、またクイズ正解した」

「なんかまどかかどうか疑うよ。あ、こんにゃくを掴んで……ってこっちに投げんな!」

「それが今の鹿目まどかよ。受け入れなさい。それにしてもまどか…………なんと華麗で美しい。あ、鼻から愛が……」

「「ほむらまでおかしくなった!?」」

 

 常識人二人はある意味汚染されていく悪魔にツッコまずにはいられない。ちなみにマミはお茶の準備をしていた。

 

 なぜかって? この後お茶会するから。

 

「アタシ達って敵対してたよな?」

「仮面ライダーだってショッカーから年賀状届いてたらしいよ」

「なにそのユルユルな敵対関係」

 

 場は混沌としていていた。というか千香の計画通りかもしれない。

 

 

 

閑話休題

 

 

 

 それはさておきお茶会である。なぜか敵対してるのに仲良くお茶会していた。

 

「へー、幼いソラってこんな感じなんだ♪」

「そうなのよ! もう抱き締めてチュッチュッしたいくらい照れ屋さんで萌え萌えなのよ!」

「さすが巴マミ。いやマミさんだね! ならばこの写真を見よ!」

「こ、これはソラくんの風呂上がり(ver大人)! ……ゴクリ」

「ふーふっふっ、その写真とこの写真を交換するならいいよーん?」

「だ、駄目よマミ! おとうとに欲情するようなことなんて……! でも、いや、でも……!」

「さあさあ、ボクと契約して同志になってよ!」

 

 マミと千香がソラの大人と子どものときの写真を見せ合い。

 

「まどか、これ美味しいわ」

「あ、それはマミさんと一緒に作ったんだよ♪」

「そう、私なんか料理なんかできないし……」

「今度は一緒に作ろうよ! たまに謎の物体になるかもしれないけど、きっと愛があればいけるよ!」

「そうね……私、がんばるわ! ところで謎の物体って何?」

 

 まどかとほむらは談笑し合い、さやかは和みながらただ紅茶を飲んでいた。

 

 ただ一人内心ツッコまずにはいられない少女がいた。

 

(なんで敵同士が仲良くお茶会してるんだよ!? てか、写真ってなんだ!? ソラがあの世で泣かせまくりじゃねぇか!)

 

 ツッコミたい。しかしツッコめばなんか均衡が崩れそうで嫌だ。こんな和やかな均衡を壊したくないがために彼女は耐える。

 

「それじゃあ王様ゲーム!」

「わーい! ほむらちゃんと熱いベーゼ♪」

「ま、まどか……そんなことしなくとも私は」

「それじゃあ、お茶のお代わりしてあげるわ」

「あ、マミさんお願い」

 

 ブチッと杏子のナニカがキレた。

 

「何してんだアンタらァァァァァ!!」

 

 とうとう彼女達のボケに耐えきれなくなったのだ。こうなった杏子さんは止まらない。まずはまどか達に指差してツッコむ。

 

「なにイチャついてるんだよまどかは!? ほむらとは敵同士じゃねぇのか!」

「ほむらちゃんとソラくんは攻略ヒロインだからイチャついてなんぼだよ!」

「同じく私もよ!」

「黙ってろギャルゲー脳共! てか、ソラはヒロインじゃなくて攻略する側だろ!」

 

 次に指差したのマミと千香だ。

 

「てか、千香もなぜマミと仲良くしてる! 写真ってなんだ。いつの間に撮ったんだよ!」

「違うわ佐倉さん。これはソラくんの成長記録よ。彼がお嫁にいくとき流す予定だったのよ」

「字が違うだろ! 嫁はアタシ達女の子の言葉だろ!」

「ちなみにボクは己の欲望を満たすため! 夜のお祈りに使うためのネタだよ!」

「堂々と答えるな変態盗撮魔!!」

 

 最後に指差したのはさやかだ。彼女は関係ないはずなのだが、杏子にとっては重大なことがあった。

 

「てか、さやかも呑気に茶を飲んでるんじゃねぇよ! ツッコめよ!」

「いやーあたしってツッコミよりボケ役だし、ぶっちゃけ苦労人は杏子じゃん。だからあたしは傍観者だよん」

「逃げるなコラ!」

「逃げてないよ。これも円環の理の導きだよー、アーメン」

「神様の導きみたいなこと言ってるじゃねぇよ! てか、アーメン言うのはアタシ!」

 

 元修道女が言うべき言葉をとられて少しイラッときた杏子だった。すると誰かが現れた。彼女達が戦っていたのは路地裏で人気のないところだ。

 

 なので誰も来ないように細工はしておいたが、誰かがいる。

 

 まどか達は臨戦態勢に入る。

 

「へぇ……魔法少女と思ってたけど、アンタ達は違うみたいね」

 

 飛鳥ユウリは舌舐める。それに対してほむらは警戒心を強めた語意で聞いた。

 

「だったらどうしたって言うの?」

「魔女になれ、ってね!」

 

 ユウリが投擲した黒い何かはまどか達が破壊したがマミだけ当たってしまった。

 

「ぐっ、う……」

「マミさん!」

 

 マミは苦しそうに呻き、徐々に埋まっていく黒い何かを取りだそうと躍起になっている。まどかとほむら、さやかはその兆候に見覚えがあった。

 

「魔女化!? でもマミさんはもう普通の身体なんじゃ!」

「関係ないわ! まどか!」

「うん! お願い、『解放』して!」

 

 まどかはマミに向けて『解錠』を撃ち、黒い何かから分離させた。ユウリはそれを見て感心した声を出す。

 

「へー。イービルナッツを分離させる力か……。アタシとしては邪魔な力だね!」

 

 ユウリは銃弾を放ち、さやかと千香は魔女を展開してみんなを守るように前に出した。

 

「ッ!? アンタ達魔女かい?」

「魔女の力がある人間ってところだね」

「ボクは魔女だけどね!」

 

 ユウリは舌打ちし、攻撃の失敗を知るや否や次の一手を先に出した。路地裏から白髪の小学生が現れる。彼女の背中からズモモモとデイダラボッチのような巨大な化け物が出てきた。

 

「魔女!?」

「いや結界がない辺り魔女じゃないよ。偽の魔女だね」

 

 デイダラボッチの魔女――――名乗るならば嫉妬の魔女が大きな手で彼女達に向けて叩きつけた。

 

『ワタシノヒロインルートガナーイ』

「ねぇ……あの魔女。なんかヒロインがどうとかメタいこと言ってない?」

 

 さやかは魔女の嘆きが他人事じゃない気がしてならない。ほむらは冷たい眼差しで魔力矢を放つ。

 

「大方別作品のヒロインが魔女化させられたんでしょ。ちなみにヒロインはまどかよ」

「違うよ、ほむらちゃんだよ!」

「ノンノン! 感想欄でヤンデレと言われたこのオールマイティーなヒロインこそボクだよ!」

「全てのヒロインはこのお姉ちゃんのモノよ!」

「テメーら真面目にやれ!」

 

 ぶちギレる杏子がツッコミついでに槍を投擲した。

 

 そこを狙ってユウリは背後にまわり彼女にイービルナッツを仕掛けようとしたが、触れた直後消える。杏子の魔法『ロッソ・ファンタズマ』だ。

 

 幻想に惑わされたユウリにまどかの『封印』の魔力矢が迫る。それを辛うじて回避したが今度はマミのリボンが拘束にかかる。

 

 ユウリはニタリと笑い、とある人物に変わる。単純な姿を変える魔法だ。

 

 ユウリは意図してなったわけではない。しかしそれはマミには効果的だった。マミはその人物を見てしまい、リボンと身体の動きが止まってしまった。

 

「え……ソラ、くん?」

「マミさん! 右!」

 

 直後、マミは衝撃を受けた。それはユウリの魔法『コルノ・フォルテ』。

 

 食品を元来の姿に戻す。その牛の魔法生物がマミを突き飛ばした。車に引かれる衝撃を受けたマミは地に倒れる。

 

 普通の人間の身体とは言え、マミの身体は一般人より丈夫だ。それは魔法少女だったときの恩恵だ。

 

 ゆえに重傷ではなく軽傷で済んだが受けた衝撃は肉体だけでなく、精神的にもきた。

 

「あなた、その姿は!?」

「なんで君がその男のことを!?」

 

 ほむらと千香、まどかは衝撃を受けた。その姿は彼女達の知る男にそっくりだったのだ。

 

「ん? まあ魔女候補にしていた男のことか? まさかアンタもこの男の知り合いとはねぇ」

 

 ま、どうでもいいがとユウリは言ってイービルナッツをマミに投げつけた。マミは悲鳴を上げて姿を変えた。

 

 人形のような小さな姿でフヨフヨ浮く魔女――――かつてまどかの知る平行世界のマミの結末の一つ――――『おめかしの魔女』がそこにいた。

 

「はっはっー! こりゃいい。協力な魔女の誕生だ!」

 

 おめかしの魔女はリボンを駆使してまどか達の動きを止めようとする。幸いなのはこの魔女には使い魔がいないところだ。つまり遊撃の心配がないことだ。

 

(マミさん……!)

 

 まどかは弓を構えるがユウリの発砲で妨害された。そしてデイダラボッチの手がまどかをとらえようとした。

 

「まどか!」

「チッ、さやか!」

「わかってるわよ! けど、あの魔女が――――マミさんが!」

 

 さやかの分身体はリボンで身動きをとれなくされた。それはほむら達も及んでいた。このままではまどかが危ない。

 

 ほむらはやむ得ないと思い、悪魔の力を使おうとしたが千香はそれを制止する。

 

「どういうつもり!?」

「その必要がないからだよ。ほら、『彼』が来た」

 

 千香がニヤリと笑い、デイダラボッチの手で砂煙が舞う。しかしそこにはまどかの遺体はなく、まどかをお姫様抱っこにして抱える男がいた。

 

「え……ソラ、なの……?」

 

 さやかと杏子は唖然とした。まどかを助けたのが死んだはずの青年だったからだ。

 

 しかし千香はそれを否定し、説明する。

 

「それはボクの願いで動く『ソラの肉体』さ。ほら、言ったじゃん。ボクは願いでソラを生き返らせようとした。結果は中途半端だったから命令を聞く人形になっちゃったけど」

 

 千香が呼んだのはソラだった肉体だ。彼女の趣味なのか、彼の服装は執事服である。その執事はまどかを下ろし、手にアルスの剣を引き抜き構える。

 

「人形ごときがアタシの魔女が負けるかよ!」

 

 デイダラボッチだけでなくおめかしの魔女まで加えたユウリの連携が執事に迫る。デイダラボッチは巨体とその手で逃げ場所を無くし、おめかしの魔女はリボンで彼を拘束しようとし、ユウリがとどめの銃を構える。

 

 逃げ場がない。これなら当たると彼女はそう考えていたが、千香はそれに対して嘲笑した。

 

「愚かだよ君は。その程度の攻撃は過去に彼は避けきっている(・・・・・・・)

 

 執事にはソラの記憶はない。ソラとしての人格はない。しかし身体にある戦いの記憶は覚えている。

 

 彼はまず対処したのはリボンだ。迫るリボンを切り、最小限に回避し、デイダラボッチを足場にしてユウリに向けてナイフを投擲。やむ得ずユウリは拳銃で防御したが、アルスの剣が彼女の銃を切り裂き、ユウリは蹴り飛ばされた。

 

 おめかしの魔女はまた彼を捕らえようとしたがその前に剣を投擲され、突き刺さる。おめかしの魔女がやられたことにより、マミも元の姿に戻る。だが、デイダラボッチは握り拳を作り、彼に向けて叩きつけた。

 

 直撃はした。しかしなんと彼はあのパワーに耐えきったのだ。それは魔法少女のように丈夫でもなければ、魔女のような化け物でもない。

 

 ユウリから見れば折れそうなくらい普通の身体だった。しかし衝撃によりはだけた身体を見てゾッとした。

 

(なんだあの傷だらけの身体!?)

 

 それはかつて受けた傷。多くの戦いで死闘を掻い潜り生き延びた証。デイダラボッチの攻撃など既に受けていた。慣れていた。

 

 つまり彼の耐久力は魔法少女を越える。そして彼は力だけでその拳を押し返し、千香が投げたアルスの剣を握りバラバラに切り裂いた。

 

 バラバラにした魔女は消え、白髪の小学生が姿を現した。

 

「これが彼――――ソラの実力」

「『人形ごとき』とか言えるくらいあなたにあるかしら? ねぇ、小娘」

 

 ソラの強さを知る少女達は不敵に笑う。完敗。ユウリは完全に敗北した。

 

「見滝原は化け物の巣窟かよ……。魔法少女じゃないヤツが化け物染みてるなんて……」

「失礼ね。私のような普通の少女が化け物のはずがないでしょ?」

「そうだね……よくてもスタンド使いだよ」

「いやそこの黒髪は翼を生やして時点で普通じゃないから! てか、そこのボクッ娘。アンタ魔女とか言ってたじゃない!」

 

 ユウリは納得したくなかった。こんな普通と変わらない少女達が魔法少女や魔女を越えるなんて。マミも呻きながらも起き上がり、ユウリを剣呑な顔で睨む。

 

 しかしユウリには余裕がなくなっていた。当然だ。言葉からすれば戦力はユウリに軍配が上がるはずだったが結果は完敗だ。彼女は声を荒げて叫んだ。

 

「なんなんだよ……アンタ達なんなんだよ!?」

 

 それに対して彼女達はそれぞれ答えた。

 

 「円環の理」と答えるまどか。

 「それを陥れた悪魔」と答えるほむら。

 「魔女ッ娘」と答える千香。

 「魔女の力が使える美少女剣士」と答えるさやか。

 「ただの中学生」と答える杏子。

 「ただのお姉ちゃん」と答えるマミ。

 

 答えはバラバラで内容もカオスだ。ユウリは「ふざけるな」と怒鳴ると彼女達はヒソヒソ話を始める。

 

「オイ、なんか怒ってるぞアイツ」

「美樹さやか。あなたが美少女とか言うから」

「いやほむらが悪い。悪魔とかあいつには理解不明だから」

「理解不明ならマミさんもそうじゃないかな? ただのお姉ちゃんってなんだよ。明らかに通りすがりが前につくでしょ」

「ごめんなさい。それしか思い付かなくて……」

「はっきり言ってお馬鹿ちゃんだからじゃないかな?」

「「「「「それだまどか!」」」」」

 

「聞こえてるぞアンタ達!!」

 

 上から杏子、ほむら、さやか、千香、マミが話し合い、まどかが答えを出して納得した。ユウリがぶちギレるのは無理もない。すると、まどかはまとめた。

 

「まあ要するに私達は」

「「「「「元魔法少女だ」」」」」

「ということで納得してね♪」

 

 それも納得できないがどうも彼女達が使っていたのは魔法だ。しかもソウルジェム無し魔法だ。理解し難いが納得するしかない。

 

「覚えてろお前ら!」

「また明日ー!」

「もう来ねーよ!?」

 

 まどかに手を振られながらユウリは逃げていった。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 さて話すことが増えた元魔法少女達。彼女達が話すのはソラの姿をユウリがどこで見たのかをだ。

 

「他の魔法少女について調べてもらおうとアスナロ市に彼を送ったんだけど、いやーまさかアスナロ市が楽しいことしているじゃないか♪」

「なんで魔法少女を狩るの? どうして魔法少女なの?」

 

 さやかの質問に千香は「さあね」と答える。まだわかってないようだ。

 

「だけど、重要なのはそこじゃない。『ソラに似た男』と飛鳥ユウリは一度会っている。そこが重要さ」

「千香、もしかして……!」

 

 ほむらの問いに然りと答えた。

 

「ボクが願った『ソラの生き返り』。それが不完全で失敗だと思われてたけど、失敗じゃなかったんだ。ソラは違う形で蘇った可能性がある」

 

 千香の答えに正答を言うならば半分だけ正解だ。まだ彼女は真実にたどり着いていないが、半分だけ近づいている。

 

「ソラくんが、あすなろ市?」

 

 まどかは自分の持つ神器を見た。ソラの魂であり剣。それは本来ならば、ユウリが遭遇した彼が持つべき神器ではないのかと頭に浮かんだ。

 

「これはビッグチャンスだね……。まどかちゃんやマミさんとも敵対せずにソラの魂が手に入る――――アハ♪ 最高のハッピーエンドじゃないかほむら」

「……そうなるわね」

 

 二人の言葉に杏子とマミは捕らえようとしたが彼女達はそれをなんなんく避けて、ビルの上に飛び乗る。

 

「テメー……それはソラの新しい人生を否定するってことだろが!」

「ソラくんが転生したならば、その次の人生をめちゃくちゃにして良い道理はないわよ?」

 

 二人の言葉に千香は笑う。それは狂気だった。なんとも滑稽で正しいことだろうかという自虐と馬鹿正直なことに対する嘲笑だった。

 

「ソラは勝手に死んだ。勝手にほむらに殺された。

 

 だからボクも勝手にする。自分のエゴで、自分勝手に彼を生き返らせる。彼に感謝を求めないよ。

 

 なぜならこれはボクのエゴだからね」

 

 狂った少女は笑う。三日月に口を割るその姿は魔女――――化け物という意味ではなく魔性なる女の妖しい微笑だった。

 

「ほむらちゃん……」

「………………」

「ほむらちゃんもそれでいいの? ソラくんの……ソラくんの生まれ変わりをほむらちゃんは自分のエゴで無茶苦茶にするの?」

 

 まどかは親友の彼女がそんなことするのは見たくもなかった。彼女はほむらがそんなことしてほしくないことを望んだ。

 

「……まどか、あなたはソラにまた会いたくないの?」

「会いたいよ! でも……!」

「会いたいなら会わせてあげる。それが罪だと言うのなら、その罪は私が被る。あなたはその神器を次に会うときにソラに渡せばそれでいい」

「ほむらちゃん……そんな……」

 

 ほむらもまた彼の生還を望んでいる。もはや彼女達が止まる道理などない。

 

 そしてその気持ちがわかるからこそ、まどか達は何も言えなかった。しかし一人の――――彼女一人が否定した。

 

「ふざけるなよ……!」

 

 さやかは震えた声で言った。

 

「あんた達の自分勝手で他人の人生を無茶苦茶するのか!? ソラが満足で逝ったのにあんた達はまたあいつを苦しめるのか!?」

 

 さやかは見返り無き願いをして、結果悲劇的な魔女化を迎えた。それは自業自得だ。

 

 しかし彼女は自分勝手に初恋の人(上条恭介)の人生を無茶苦茶していない。それは恭介の人生を台無しにしたくなかったからだ。

 

「好きだと思うならその人が望むことをするのが『恋』でしょ! あんた達の自分勝手なエゴであいつの願いを否定するな!」

 

 さやかの叱咤に千香は「チッチッチッ」と指を振るう。

 

「己の欲望、願望、希望を果たすために自分勝手になるのが人間でしょ? どんな正義の味方だって最終的には自己満足で済ませるエゴ。だからエゴで他人の人生を狂わせても心を病む必要性がボクには感じられない」

「ッ……あんた!」

「それに『台無し』を求めるのがボク――――『混沌を継ぐ者』の望む結末さ」

 

 ゆえに彼の願いを台無ししよう。

 ゆえに彼の望みを台無ししよう。

 

 全ては自らの幸せのために、みんな(第三者)が笑える滑稽でみっともない結末を彼女は望む。

 

 さやかはわかり合えないことに対して苦虫を潰した想いをする。するとまどかが前に出て宣言した。

 

「……だったら私は、私達はあなたを止める。ほむらちゃんが悪魔じゃなくなるように、千香ちゃんが魔女じゃなくなるような結末にしてみせる」

 

 まどかの宣言に千香は面白いと思った。ほむらもまた彼女の強き決意に頬を緩ませる。彼女の強さが、優しさが自分に向けられていたから。

 

「はいはい、そこまでよみんな」

 

 パンパンと手を叩いてマミがまとめた。なぜこんなことをしたのかとまどかは考えるが、マミはすぐに答えた。

 

「その前に期末テストを終らしましょ。それからまた戦いを再開するの」

 

 その必要はないんじゃ……とほむらは思うが千香はそれに抗議した。

 

「えー? 勉強なんて二の次じゃん。それにテストなんてぶっちゃけひつよ――――にゃいん!?」

 

 マスケットの銃弾が千香の眉間に直撃した。殺傷性のない魔力弾だが、当たればめちゃくちゃ痛いことを千香が呻き声を上げながら転んでいることで証明していた。

 

「あら、勉強を疎かにするのは学生の本分じゃないわよ。それに何か文句でも?」

「「「「ありません!!」」」」

 

 お姉ちゃんの笑みと無数に構えられたマスケット銃が口答えすればどうなるか物語っていた。こうして彼女達がアスナロ市に来たのは夏休みに入る前となった……。

 




最後の最後でお姉ちゃん化マミが制裁。学業や人間関係をしっかりしてなかったら説教するのがマミお姉ちゃんです。

お節介の中では彼女の右に出る者は少しいたりします。

さて零くん=千香の願いで生み出された『ソラ』が判明しました。海香を監視していたのは『ソラ』です。

なぜかは後々判明しますが、再度言っておきます。零くんはソラではありません。

では彼は何者か? それはユウリ様がやっちゃうことでまどか達は理解します。

次回、プレアデス聖団

――――運命は止められない。彼の魔女化も止められない……
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