魔法少女まどか☆マギカ ~全てを開きし者は英雄となる~ 作:ぼけなす
byソラ
海香は混乱した。
サキは狼狽していた。
かずみ以外は頭が空っぽになった。
目の前にいる少女――――和沙ミチルの幻想がいることに彼女達は焦っていた。もし仮に誰かが口走り思わず、かずみの前で彼女の正体を明かせば彼女は絶望する。
海香はギリッと歯を噛み締め、幻想を生み出した張本人を睨む。
「みんな惑わされるな! あれはかずみの偽者だ!」
心苦しいが今は彼女を偽者と仕立てあげるしかない。サキは雷魔法で道化師の魔女へ放つ。
しかしそれも幻想だった。本物はフラフラと動き回っていた。
「また景色が……」
「ここは見滝原みたいだね」
里美とみらいがそう呟いているとカオルは何かに気づいた。そう道化師の魔女が使ってる魔法に見覚えがある。
「『ロッソ・ファンタズマ』みたいだな……」
それはまだ十二歳の頃、風見野まで来たときに助けられた魔法少女のことだ。あれから二年後、風見野はまた新しい魔法少女を迎え、助けてくれた紅い魔法少女はどこかに行った。
カオルはそんなことを思い出しているとミチルが驚くことをした。
「ひどいなぁ。わたしが偽者だなんて……」
しゃべったのだ。幻想の彼女はしゃべることなどあり得ないと思っていた。海香とサキは困惑した。そしてそれも
道化師の魔女がここで口を開いたのだ。
「お前……なぜしゃべれる?」
「幻想だからしゃべっちゃダメなの?」
「あり得ない。お前はただ彼女達が思い浮かべさせた大切にしてきた者を具現化させた存在――――ただのしゃべらない幻想だ」
道化師の魔女が望んだ存在ではない。彼の能力で作り出せる幻想じゃない。
では誰が?と彼が思ったとき、また新たな幻想が彼の肩を叩く。振り返ったとき、彼は殴り飛ばされた。そして殴ったのは零より二つ歳上の少年だ。
大人に近づいた零のそっくりさんが零を殴り飛ばしたとかずみは思った。
「断片。お前がこの能力を使うのは早すぎる。『自分』を知るのは早すぎる。だからこの能力をキャンセルさせてもらう」
零のそっくりさんはカギに似た剣で幻想の空間を振り切った。空間はなくなり、消えていくミチルは「ふーん?」とかずみをジロジロ見ながら言った。
「みんなをお願いね? わたしのそっくりさん」
「あ……はい!」
姉にお願いされたような感覚で言われて緊張した返事をしてしまった。かずみの返事に満足してミチルは消えていった。
残された零のそっくりさんも消えていくが、海香に聞きたいことがあった。
「どうしてミチルが……いえ、あなたは何者?」
断片とは?
どうしてミチルが幻想として出てきたのか?
そして彼がなぜ零に似ていたのか?
それが聞きたかった。しかし彼が答えたのはミチルのことだった。
「……先ほどの幻想空間を介して
「まだ聞いてないわ。あなたは何者なの?」
「……
彼は消えていったところを彼女達が見届けたとき道化師の魔女が狂ったかのように苦しみ出した。これをチャンスだと思い、カオルは『カピターノ・ポテンザ』を使い、魔女を殴る。
今度は透過せずに直撃した。魔女は首を反対にして倒れた。
「やった……の?」
それがフラグだったのか道化師の魔女は立ち上がり、首を元に戻した。
「気持ち悪いね……さっさとくたばればいいのに」
みらいの毒舌の言う通り、この場にいる全員はしぶといと思った。すると魔女がブツブツと何かを言っていた。それを聞き取ったとき全員は目を見開く。
「魔女は魔法少女……彼女は否定したのに、どうしてまた魔女が……魔女が…………敵は皆殺し。皆殺ししなきゃ自分達に危害が及ぶ。みんな殺される……。そうだ。殺せ。敵は皆殺し皆殺し皆殺し皆殺し皆殺し皆殺し皆殺し皆殺し皆殺し皆殺し皆殺し皆殺し皆殺し皆殺し皆殺し皆殺し皆殺し皆殺し皆殺しミナゴロシミナゴロシミナゴロシミナゴロシミナゴロシミナゴロシミナゴロシィィィィィ!!」
仮面はまた変化し、ニコちゃんマークの仮面となった。彼女達はリボンによって身動きをとれなくなり、そして道化師の魔女はまた仮面を変える。
『喜』の仮面から『楽』の仮面となったのだ。その仮面はまどか達が会いたいと望む男の顔だった。
彼女達からすれば素顔と変わらないが、この際どうでもいい。問題はこの仮面の能力だった。
剣は弓となり、魔女は天に向けて構えていた。
「あれは魔法陣?」
「もしかしてアレに当たれば……」
魔力矢のスコールが降り注ぐ。そんな未来が彼女達の脳裏を過る。もし成功すればソウルジェムは破壊されるし、運が良く破壊を免れても致命傷だ。
彼女達はその弓が引かれるとき覚悟した。その刹那、魔女の腕にピンクの魔力矢が突き刺さった。それにより彼が作り出した魔法陣は消失した。
何事かと目を向けると彼女達の前に飛び降りてきた少女達がいた。自分より三歳歳上の高校生達だ。
「やっと見つけたわよ断片」
「君を回収させてもらうよ」
と言う悪魔と魔女。それに対して残りの少女達は否定した。
「そうはさせねーぞ」
「お姉ちゃんがさせません」
「とにかくまどか、あいつを止めるよ」
「うん、この神器で!」
まどかが魔法少女服の姿に変えたとき、ここに三つ巴となった第二ラウンドが始まった。
☆☆☆
海香は彼女達が何者か、そして誰なのか聞きたかった。しかし、今は彼女達が戦うことになっている。それを邪魔するのは野暮だと思い、喉に押し込めた。
「あー! あのときの赤い魔法少女さん!」
カオルだけ何かを言っているようだが、杏子は首を傾げていただけだ。そんな中で道化師の魔女は『怒』の仮面となり、六人の少女達に迫ってきた。
「慌てん坊ね」
「!?」
マミのリボンが彼を捕らえ、さやかが背後から切り裂く。怒号をあげて彼はリボンを引きちぎり威嚇していた。
「うひゃー……あの魔女硬いわよ……」
「じゃあ、一撃必殺だね!」
まどかは弓を引いて魔力を溜める。その矢は『解錠』の概念が籠っている最強の一撃だ。本能でそれが危険だと理解し、回避行動をとろうとしたが杏子とさやかが前に現れ、「ニヒッ」と笑っていた。
「にーがーさーなーいーぞー?」
「一名様ごあんなーい!」
道化師の魔女は力任せに剣を振るうが、直撃した杏子は消え、地面から生える槍が突き刺さる。そして回避していたさやかが彼の目を剣で斬り、暴れるところを杏子が『アミコミ結界』で拘束する。
「これがホントの『ロッソ・ファンタズマ』だ!」
「さあさあ、とどめが来るぞ~?」
道化師の魔女は暴れ続けるが今度はほむらにグロックの弾丸で足を貫かれ、腹部を千香の使い魔に串刺しにされ、苦しみの呻き声をあげる。
苦しそうな彼にまどかは慈愛を込めた微笑みで言った。
「苦しかったんだね。辛かったんだね。でも、もう大丈夫。あなたをその苦しみから助けてあげる」
その微笑みを見た者全てが思わず、手を伸ばしたくなるくらい彼女の慈愛は深かった。道化師の魔女は手を伸ばしていた。そして仮面が剥がれ落ちて素顔が出る。
彼の顔は真っ黒で口しかない。しかし目がないのに涙が溢れ出ているではないか。
「円環の……理?」
誰かがそう呟いたときまどかの一矢が放たれた。強烈な光がドームを支配し、それが止んだとき零の姿が現れた。
そして肝心のイービルナッツは灰となって風に流された。そんな中でまどかは動けないでいるかずみ達に告げる。
「クラスのみんなにはナイショだよ♪」
それはかつてほむらに告げた言葉をお茶目に舌を出して言ったのだった。
「もうヤダぁ……。おウチ帰るぅ……」
「あ、ヤバ! 千香ちゃん。彼女を忘れてた!」
「むむ!? 『ソラ』から脱獄してここに来るとはなかなかだね! こうなったら彼女を着せ替え人形第一号にしちゃおっか!」
「萌えと夢が広がるね! そのときはほむらちゃんや私も混ざろう!」
「よしきた!」
「誰か助けてェェェェェ!!」
かずみ達は見てしまった……。
飛鳥ユウリ――――いや杏里あいりが亀甲縛りで拘束され、まどかや千香の毒牙にかかるところを。
先ほどまで美しくかわいらしい女神ではなく、そこにいるのは萌えを探究する変態だった。
「えー……なにこの最後の最後で台無しなの……」
「ま、まあ、しかしこれで一件落着よ。だからもう大丈夫……かしら?」
カオルと海香は解決したんだとそう自分に言い聞かせた。するとサキがポツリと呟く。
「……かずみもコスプレしたら似合うだろうか」
「サキ!? なんかとんでも発言したよね今!?」
「でも……見てみたいかも。猫耳かずみちゃん……ふふ♪」
「オイィィィィィここに二人が変態感染したぞォォォォォ!」
みらいはサキと里美の変態感染にジェムが濁りそうだった。唯一、魔女が倒されるまで静観していたニコだがぶっちゃけた話、変態達の話が始まったときには現実逃避して寝ていた。
熟睡するニコに、オロオロするかずみ。
零を介抱するマミに、何やら言い争っているさやかと杏子。
そして涙目なユウリに衣装を持って迫る
それを見た海香はふぅと息を吐いて呟く。
「そうだ……同人誌書こう」
「海香さァァァァァん!? しっかりしてェェェェェ!!」
現実逃避しようととんでもないことを呟く辺り、海香も染まり始めているのではないかとかずみは思った。
なぜだ……なぜ最後にカオスになる!?
ノリで書いてみたらカオスになっちゃうなんて……恐るべし千香、恐るべしまどか……。
さて、次回。零の正体
――――彼は断片。ゆえにソラではない?