魔法少女まどか☆マギカ ~全てを開きし者は英雄となる~ 作:ぼけなす
by神威ソラ
真実を知り、里見を殺してしまったかずみは美佐子に保護され、宗一郎の家に訪れた。彼女は海香達と離れて一週間という月日が経っていた。
シャワーを浴びる彼女の身体に枝のように伸びた模様があった。その模様が自分を包めば理性を失い、魔女化するに違いない。
これこそが魔女の肉体から作られた自分が待つ結末だと思っている。
(どうすればいいのかな……)
自分はミチルのクローンで魔女に近い存在。人間ではない自分がみんなと一緒にはいられないことは明白だった。
「零さんも行方不明のままだし……どうすればいいのかなホントに」
かずみがシャワーから出て着替えると、一人の男が宗一郎と話し合っていた。
「捜していたんだが、こうあっさり帰ってくるなんてな」
「すみません宗一郎さん。ちょっと行方された場所が自分の故郷だったので……」
「もしかして見つかったのか? お前の家族が?」
「はい。記憶も序でに。だからここから出ようかと思います。もうここにはいられなさそうですから」
「残念だ」と呟く宗一郎に、男は申し訳なさそうな顔をしていた。かずみはその男を知っていた。宗一郎の相方であり、見滝原の少女達が求めている少年――――
「零、さん……?」
「よっ、元気していたか? かずみ」
彼はいつもの調子で挨拶する。宗一郎は紙袋から日記らしき本をかずみに渡した。
「これは……?」
「カオルって子がいるかいないか関係無しに渡せって」
宗一郎が渡したのは日記だ。ミチルの生前が記されたその日記を読み始めたかずみに、零は宗一郎にお願いした。
「宗一郎さん、かずみのことをこれからも見守ってください」
「当たり前だろ。コイツのおかげで救われたんだ。妹感覚だよ、もう」
「じゃあついでにあの婦警さんも」
「いや、ついでとはなんだついでって。あの人は美人で実は優しい人なんだぞ」
「おんやぁ? もしかして惚れた?」
「そのニヨニヨ顔やめろ。たくっ……」
零はクスクス笑う。それはどこか吹っ切れた顔だ。そして目には決意が宿っている。
だから宗一郎の元から離れるのだ。宗一郎は元より、この弟みたいな相方の意思を尊重するつもりだ。ゆえにここからいなくなっても、それは彼が帰る場所を見つけたことだと理解している。
「いつでも来いよ。そのときは家族諸とも歓迎してやる」
「楽しみにしています」
家族なんていないけど、と内心謝る零だった。
☆☆☆
宗一郎と一緒に『いちごリゾット』を作ったかずみはそれを三人と一緒に実食した。本当に楽しい一時だった。かずみが『初めて』ご飯を食べさせてもらったのが宗一郎だった。
だから彼にお礼を言った。
「立花さん、本当に……本当にありがとう」
かずみはそう言って自分が終わらせるべきモノを目指す。一方、呆然とする宗一郎に零が肩を叩く。
「まるで今生の別れみたいだな……ま、死なせるつもりはないけど」
彼もまた『最後の仕事』を終わらせるつもりだった。宗一郎はそう感じ取ったのか彼の肩を掴もうとした――――しかしスルッと抜けた。
信じられないという顔で零を見ていた宗一郎に零は微笑む。
「大丈夫。これは元から……オレの元から在り方だったんですから」
「元からって……」
「
「婦警さんにもそう伝えてくださいね」とそう警告した。呆然としている宗一郎を放って零はかずみを追いかけた。その身体は既に半分だけ透けたり、実体したりを繰り返していた。
かずみがテレパシーで誰かに伝えた後、後ろにいる零に聞いた。「なぜ自分についてきたのだと」と。
彼はクスクスと笑って答えた。
「なに、お前が何かを終わらせるために見届けにきた。それだけさ」
「今から行く場所は人が簡単に死ぬんだよ?」
「あいにくオレの本体はそれよりもえげつないところにいたんだよ」
「本体?」と復唱すると零は頷く。そのとき彼の身体が透けていたのをかずみは目を見開いた。
「オレはソラの残留思念が具現化した亡霊だったんだよ。だからいずれは消える運命なんだ」
「怖くないの?」
「ソラはもっと怖い思いをしていたよ。そして辛く苦しい思いをしていた……。だからオレは自分が消えることに怖いとは思えない」
零は笑っていた。それはこれから死ぬような人がするようなモノではなかった。
「そっか……わたしは怖いな。今から死ぬのは……」
「それが普通さ。ソラは異常だから怖くもなんとも思えなくなっていたからなぁ……」
「ソラってどんな人だったの?」
「元は純粋無垢な少年。んでいろいろあって歪んでぶっ飛んだ思考回路になった青年。……あれ? ぶっ飛んでいたのは元からだっけ?」
「クス、なにそれ……」
談笑する二人だったが次第に言葉が少なくなり、静かになる。
「……さてと、そろそろか」
「止めないんだね……」
「お前が決めたことだろ。なら、その覚悟を尊重するさ。それに……。…………」
「どうしたの?」
「……いや、懐かしい感じがしたんだ」
フッと笑う零にかずみは首を傾げる。そして海香達が入ってきた。
――――かずみの最後の戦い
――――和沙ミチルと決別するための戦いの幕が上がる……
「と、言いたいんだろ? 和沙ミチル……」
零がそう呟く。彼の後ろにはかずみに似た少女が頷いていたことを彼以外は知らない。
閑話休題
なぜかずみにミチルの記憶を入れなかったのか。それはミチルが拒絶したらしい。拒絶したミチルの記憶を持ったミチルのクローンは殺人衝動に呑み込まれ、惨殺する殺人マシーンになるそうだ。
その話を聞いた零はここで彼女達の目的を理解した。プレイアデス聖団の目的はミチルの蘇生と魔法少女システムの否定だ。
この施設――――レイトウコは魔法少女を如何に普通の少女に近づけるかという実験だ。
さらに彼女達が生み出す結界でキュウべぇの干渉をできなくさせた。
だから彼女達は魔法少女のソウルジェムを集めていたのだろう。
零が推理した結果は間違い
ではない。正解だ。
サキは「ミチルにもう一度会いたかった」と口に出たことがその証拠だ。
「認めない。絶対に認めない!」
しかしかずみは否定する。サキの願いを否定するのではなく、魔法少女システムやミチルの蘇生による結果で生み出された
それを否定する。その責任を果たすべきだと言う。そして彼女は言った――――「自分を殺して」と。
かずみは魔女化する。人型の魔女とは珍しいが、かずみだからこその存在だろう。
イービルナッツを咀嚼し、さらに魔女に近づける。そこで零は理解した。
――――かずみは魔女になったフリをしている
「名演技だな。女優になれるぜあいつ。そう思うだろ――――
――――神那ニコ」
零を後ろからブスりと殺ろうとしたバールがニコの止まる。彼女は眉をしかめて彼から距離をとる。
「なぜわかった?」
「伊達に長くは戦ってないヤツの経験から気配がわかるんだよ。ま、どのみちオレはまがい物の命――――霊体化して消え去る運命だからそのバールは意味ねぇよ」
「へえ……やっぱりまがい物なんだ。なら、私と来ない? 同じ紛い物として、ね!」
言い争うサキとカオルを余所にみらいがかずみを真っ二つに切り裂いた。しかしそれはニコがすり替えた偽者であった。本物のかずみが入ったシリンダーを持つニコにカオルは「ナイス!」と喜ぶ。
後はそれを持って逃げるのだが、ニコは逃げない。そして彼女の視線の先にはジェムが濁りきりそうなサキの姿だった。
ニコは分身を作り出し、イービルナッツをサキに埋め込む。
「ホイ、カクシアジ♪」
「ぐ、あァァァァァ!?」
魔女化するサキは抵抗するために雷を自身から発電させる。もし、これが解除されればサキは魔女化する。しかもサキの魔女化は避けられない。
『全てを開く者』――――鹿目まどかがいれば彼女は救われていた。しかし今は彼女はいない。零は彼女と連絡をとるために携帯を繋げるが、電話に出ない。
おかしいと零が思っているとニコは笑いながら言う。
「あ、君の知り合いは既にみんな死んでるから」
「なんだと……?」
「だって邪魔なんだもん。強力な人間がいたら私の野望がうまくいかないもん」
ウィンクするニコに零は地面を蹴って殴りかかる。しかしそれは第三者の存在に阻まれる。
「ッ、『ソラ』!」
「新たなマスターを傷つけることは許されない」
『ソラ』は零の拳を受け止め、彼の身体にヤクザキックを食らわした。実体化していたため零は吹き飛ばされ、壁に叩きつけられる。
「スゴいよね彼。たった一人で魔法少女だったヤツらを五人も始末してきた。驚くべき強さだよ」
「『ソラ』に……何をした!?」
「イービルナッツを埋め込んで魔女化させたよ。そして私の魔法で言いなりにした」
『ソラ』の腕がウニョウニョと変化し、ソードとなる。形態変化を持つ魔女――――鍵の魔女と呼ぶべきか。
その性質は『虚無』。空っぽで何もなく、ただ命令を忠実にこなすマシーンだ。
「あ、ぐ……がァァァァァ……」
「およ? サキももう限界みたいだねぇ」
「お前はなんなんだよ! なんでこんなことをしたんだよ!」
ニコの服が魔法少女服になる。その姿は飛行士の格好ではなく黒を基調にした衣装だ。闇の魔法使いがしそうな格好だと零は思った。
「私の名前は聖カンナ――――いや、神那ニコこそ私かな。なんせ魔女化して死んだのは私のオリジナルの聖カンナなのだから」
黒幕、聖カンナは顔を歪める。そして彼女が語るのは過去である。
☆☆☆
聖カンナはアメリカに住むごく普通の少女だった。友人と遊び、普通に笑う少女だった――――しかし事件が起きる。彼女は好奇心で拳銃を持ってしまったのだ。それが暴発し、友人達に直撃し、殺してしまう。以後、彼女は笑わない少女となる。
罪悪感と後悔が彼女を蝕み、懺悔の毎日を過ごすこととなる。そしてキュウべぇと出会い彼女は『自分』を造り出した。『合成魔法少女』、つまりかずみと同じまがい物だ。
その少女こそ聖カンナの偽者である。彼女は『聖カンナ』と生きていき、そして人生を謳歌していた。カンナは幸せだった。
だが、世界はそれを否定する。カンナはニコの戦っていたところを見てしまったのだ。そして気づいてしまったのだ。
自分は偽者で、あいつは本物。
それがカンナを絶望に陥れた。自分の存在はカンナの観察される事象だったと考えたのだ。ifの自分を作り出し、どんな人生を送るか観察していたのだ。
カンナは決意した。自分が本物になる――――という決意ではない。ニコに復讐してやる。あいつを繋ぐ力を願いにキュウべぇと契約したのだ。
「コネクト――――それが私の魔法だよ。そしてこの力でカンナの魔法も使えるし、魔女をコントロールすることができる」
「イービルナッツもお前が?」
「そ、おかげで杏里あいりや双樹姉妹をけしかけることができたよ」
零は剣呑な顔でカンナを睨む。そんな中でサキの魔女化は進んでいく。
「そんなことよりも早くサキを助けてよ!」
「無理さ。魔女となる魔法少女は救われない。どのみち円環の理に導かれることになる。まあ、その円環の理も死んだし……」
みらいは泣きながらサキを呼び掛けながら『ラ・ベスティア』をレイトウコにいる魔女化に使う。サキは彼女を安心させるために、みらいの頬に触れる。
思い出すのはあの頃――――魔法少女となったばかりのみらいが自分の口調についてサキに聞いたときだ。彼女はそれがおかしいことではない当たり前なことだとみらいに言った。
それが孤独だった彼女にどんなに希望を与えたことか。ゆえにみらいはサキに依存するくらい彼女にベッタリだった。
誰にも彼女を渡したくない。
誰にも彼女という理解者を取られたくない。
全てはサキのためがみらいのスタンスだ。そしてサキのジェムがグリーフシードとなる。
彼女の身体は事切れた人形となった。みらいの背後には魔女が誕生していた。丸い球体の魔女――――『あすなろの昴』が口を開いていた。
「サキ、大好き――――」
みらいの結末は決まった。
このまま頭を食い潰されて殺されることだ。
ここで原作のお話をすればみらいの結末はマミる――――つまり頭から食い殺される。まさに原作通りの結末だ。
――――そう、このとき
『あすなろの昴』にピンクの弓矢が刺さる。
『ぐぎゃあァァァァァ!?』
「サキーーー!!」
側面から直撃した魔女はドドーンと巨体を倒させられた。
「やったよ! どう―――ちゃん!」
「さすが―――ね。百発百中の弓兵ね」
「てか、―――のせいで遅刻したじゃないか」
「そういう――ちゃんだってたっくんの萌え萌え写真を撮っていたじゃん!」
「それも―――ちゃんが悪い! なにあの可愛いメイドちゃん。ホントに男の子!?」
会話がなんとも残念だ。しかしカンナにとっては信じられない光景だ。なぜなら死んだことを確認したヤツらが目の前にいるのだから。
「な、なぜお前らが!」
「ティヒヒヒ、それは私達が『異常』だからだよ♪」
鹿目まどか――――いや『朱美まどか』はシタリ顔でウィンクするのだった。
来世の繋がり――――『神威ソラ』の大切な少女三人がここに集結したのだ。
まどかがいなくなると思った? 残念。彼女は不滅なのだ!
とまあ『鹿目まどか』は死んで来世の『朱美まどか』が出てきたのは『抑止の存在』の仕業です。
『ソラ』というチートバグの身体が魔女化しているし、またラスボスが強化されています。というか原作通りにかずみ、海香、カオルだけで倒せるのはまずあり得ないという考えもありましたので召喚されました。
まあとにかく彼女達が帰るときは肉体年齢は変わらず、過ごした年数の経験を得るというくらいです。
さて、彼女達が喚ばれたということは……?
次回、さあさあ悲劇を喜劇に変えましょうか!
――――『蘇生』と『復活』は何かが違う