魔法少女まどか☆マギカ ~全てを開きし者は英雄となる~ 作:ぼけなす
by北郷一刀
北郷一刀は美国邸にお世話になっている。彼は織莉子の執事の真似事をしてお世話している。
まあ、衣食の恩を返すためと思っての働きである。
「織莉子は学があるなぁ。この知識はもう中学を越えているぞ」
「あら、先生が優秀だからですよ。あなただって公式も知らずに高校の数学の難問題を解いたじゃありませんか」
「学がないからこうやって新たに構築しているのさ。おかげで時間はとったから効率が悪い」
「過程はどうあれ結果が異常ですよ。おまけに英語なんか日本のことわざや故事に訳してしまうなんて……」
「カッカッカッ、こう見えて教訓は好きなのさ。数々の残した言葉はワシ達に経験と知識を与えてくれるからな」
一刀の見た目は青年だが実年齢は織莉子と変わらない。そのことは話していない。まあ、なんと言っても信じてもらえないのが主な理由だった。
「ソラくんの剣術の方はどうですか?」
「順調順調。まあ、織莉子やキリカの名前を未だに覚えてないのがたまに傷だが」
「……あの子、まだ私のことをオリゴ糖って呼んでるのですか」
ソラのウィークポイントの名前忘れは今に始まったことではない。ついこの間、再会したとき「あ、『世紀末のミクちゃん』!」と織莉子のことを呼んでいた。
私のどこが世紀末か問い正しくなった今日この頃である。
「……むー」
「膨れるなって。まあ、そのうち覚えるはずさ。アイツとていつまでも名前を忘れるはずはない」
「だと良いのですが……」
すると美国邸にベルが鳴る。一刀は肩を竦めながらも扉を開けて客を招き入れる。
「織莉子ーーー!」
「落ち着け」
「グェ!?」
襟首を掴み織莉子にハグするキリカの暴走を止めた。いつもの光景になりつつあったやり取りだ。
「コンビニから早一週間――――キャラが変わりすぎだろ」
「ふっ、私の織莉子に対する愛に不可能ではない!」
「それが恋愛ではなく友愛であることを祈ろう。なんというか未来でお前みたいな百合っ子いそうだ」
メタい一刀はやれやれとため息を吐いた。ちなみに彼は織莉子とキリカが魔法少女であることを知らない。
人ならざる力の持ち主と気づいているが深くは追究しない。彼女達にはそれぞれ辛い過去があるに違いないだから踏み込むことは無粋。
また一刀とて彼女達に秘密があるのだから人のことは言えない。
だから彼は特に彼女達が魔法少女であることに対して追究はしなかった。
「あと一刀。また塀にパッシングの落書きがあったよ」
「……そろそろワシの堪忍袋も限界だ。監視カメラで人物特定できたら本気の嫌がらせをしてやろう。……ケケケ」
「ほどほどにね……。ついこの間した一刀さんの嫌がらせでクラスメイトが登校拒否したのだから」
「何を言う。ワシの氣で作られた呪いのビデオは最高じゃろう」
「いやポニーテールの女の子が飛び出て偃月刀を振り回して追いかけてくるんだよ!? トラウマになるよ!」
「愛紗は嫉妬深いおなごだからなぁ、カッカッカッ♪」
とキリカの言う通りの呪いビデオ――――もといお仕置きビデオで現れた美少女に追いかけられたクラスメイト達は鬼の形相にやられてトラウマになったらしく、織莉子の言う通りになった。
これまで織莉子に対して行ったパッシングと嫌がらせの罰だと思えば軽いが、廃人まで出すほどの形相とはこれ如何に。要するに一刀の嫌がらせはホントにシャレにならないのだ。
まあなんにせよ。これが織莉子達の日常。友人達とお茶を楽しむそんな関係である。
閑話休題
「よし、これまで」
「やっと……終わった」
ヘトヘトとなって倒れたソラとさやか。一刀はほうと呟く。
「成長してるのかなぁ……」
「さやかよ。しっかり成長しているぞ。しかもこの短時間でこれだけ動ければ上出来上出来」
「そうですかー? なんか実感が沸かないのですけど」
「カッカッカッ、まあワシが強すぎるというわけで納得するのだな!」
「魔法少女より強いってもう人間じゃありませんよ……」
マミは呆れながらソラを介抱していると一刀はふと顔を歪める。気づいたソラは一刀の顔を見ていた。
「? お兄ちゃん。どこか怪我したの?」
「……いや。まあ、そろそろワシも故郷を捜す旅をせねばなと」
「そうなんだ。これで最後になるの?」
「そういうことになるな。ま、生きてさえいればまた会えるさ」
カッカッカッと豪快に笑う。ソラは一刀が遠くに行くのではなくいなくなるのではないかと考えていた。
ここではもう会えないようなそんな気がした。それゆえに一刀と最後に模擬戦をした。
全力全開。全てをかけて。結局、ソラは敗北してしまったが最後に誉められて満足して三人は帰った。
残された一刀は夕陽に当てられながら美国邸に帰ってきた。
するとそこには織莉子とキリカが談笑をしていた。一刀は自室に戻り、遺書を書いていた。
誤字ではない。一刀は消えるから遺書なのだ。
(これまで数々の外史の終末はワシがいつの間にか消えていたことになっていた。もしかすると今夜、ワシはいなくなるやもしれないな)
寝ているときにははたまた今このときなのかわからない。一刀の身体は徐々に透けていた。
やはり、とため息を吐いて一刀は遺書を書き終えた。これで思い残すことはない。
一刀は最後の執事職をこなそうと執事服に着替え、談話している織莉子達ところへ向かった。
「む? どうしたのだ織莉子とキリカ。そんな辛そうな顔を――――」
「一刀さん、あなた。今夜いなくなるのでしょう?」
「…………」
「沈黙は肯定、ってことですね」
なぜバレた。一言も言ってないはずと顔に出ていた。
「私達が何者かまだ説明してませんでしたね。私達は魔法少女。願いによって人間じゃなくなった者達です」
「そうか。だから氣が……」
「一刀さんから見れば私達は死人の身体ですよね」
織莉子は自嘲気味に笑う。氣は全ての生命に宿る力だ。死人には宿らない。ゆえに魔法少女には氣はない。なぜなら身体は死人近しい者なのだから。
「……まあかと言ってお前とキリカの印象が変わるわけじゃないがな」
「ありがとうございます。話を戻しますと、私とキリカは魔法というモノが使えます。そして私の魔法は未来予知。だから一刀さんがどうなるのかがわかっていました」
全てわかっていた。北郷一刀がどうなるのかを。
とは言え、呉キリカとの出会いしか視ていなかったため、北郷一刀や一ノ瀬ソラとの出会いがあるとは知らなかった。
しかし北郷一刀と一ノ瀬ソラが巡り合うことにより最悪の未来は回避された。
最悪の未来とは鹿目まどかの魔女化。彼とソラ、織莉子達との出会いは間違いではなく必然であり偶然だった。
「カッカッカッ……これはまた面白い力だな」
「……対して驚きませんね」
「何かあると知っていたからな。まあやぶ蛇が出てくるとと思い気や、まさかのビックリ超人間とはな……」
一刀はクスクスと笑う。そして彼の身体は半透明になっていた。
「……怖くないのですか?」
「まあな。何かの使命を果たさなければいられないのかと腹を括っていたが、一時の休息のようだ。ここから消えたらまた戦場――――乱世の世界だな」
「一刀さん……」
「そのような顔をするでない。また会えるさきっと」
ソラに言った。生きてさえいればまた会える。
また巡り会える。人生は何が起きるかわからないから。
「短い間だが世話になった」
「……いえ、私もあなたがいて楽しい日々を送れましたわ」
「まああれを退屈とは言えるのは、な……」
主にキリカの暴走がメインだが楽しい毎日だったのは変わりない。そんな日々も今日でおしまい。
だから一刀は言った。
「じゃあな。また会おうぜ」
彼は笑う。これが最後だと言わんばかり。彼の身体は光となって旅立った。
残された少女は人知れず泣いた。
「……織莉子」
「大丈夫。また会えるわ、きっと……」
彼女に温もりを教えてくれた人はもういない。織莉子は旅立った一刀のことを想う。
そしてその数日後――――
――――美国邸が魔法少女に襲撃された。
キリカは事切れており、白い魔法少女服の織莉子は真っ赤に染まった虫の息だった。
「一刀、さん……」
それを最期に二人は死んだ。襲撃犯は快楽殺人鬼。彼女は死んだ二人を見て満足そうに笑う。
「クヒヒヒ、ホントっ馬鹿らしい~。男を想って死ぬなんてウケる~♪」
少女は魔法で美国邸を燃やす。そして彼女が次に標的にするのは、
「さあて、ソラって子はどんな死に方してくれるかな~♪」
一刀の待ち人はもう帰らぬ人となった。そして死神と開きし者の邂逅は近い。
「ふんぬゥゥゥゥゥ! あらん。こんなところに管理者の器になりそうな娘が二人。どふふふふふ、これは面白いわん。助けてあげましょう♪」
死後、復活した彼女達二人は自称都の踊り子を見て悲鳴を上げたことは言うまでもない。
(織莉子after)
美国織莉子はとある写真を見ていた。
その写真は彼と初めて出会ったときの思い出だ。
「かつての私はなんのために生きてるのか……そんなことで悩んでいたら貴方は言ってたわね」
――――『知るか。そんなもん誰だってわかるはずがない』
無責任な答えだが彼の言う通りだ。
なんのために、どうして生きているのか――――そんなものは誰だってわからない。
――――『だけどな、その答えはいずれわかるはずさ。気長に待てばわかる……そんなものさ』
彼は言った。いずれわかる、と。まさにその通りだ。
今の彼女には使命がある。
過去の彼を外史に導くという使命が。
「貴方は私達の管理者の
今日も彼女はハニカム顔。自分のやることがわかってる彼女に迷いはない。
――――過去は未来へ
――――未来は過去へ
そんな風に繋がる物語。
「織莉子~……ヤバい。あの人、すっごくよかったぁ……ハァハァ」
「キリカ、貴女に何が起きたの!?」
このときにキリカはエールという
ちょっと強引ですが織莉子達の管理人化の話です。
前作で織莉子は管理人としてその責務を全うしてしていましたしね。
ちなみに北郷一刀が外史に訪れる前、管路となった織莉子が彼を導いたというややこしい裏設定があります。
要するに卵が先か鶏が先かというややこしい話です。
最後のヤツですが――――あれ? シリアスどこに言った? まあいいやカオスで、ということにしておいてください!
さて次回、カオス警報発令
――――私じゃない! それでも私はやっていない!
あと今さらだけどこの作品ではマミさんがおかしいし、変態っぽいになってきましたか?