隻眼の信濃さんが不器用可愛い   作:コロリエル

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息抜き作品投稿してました。よろしければ息抜きにどうぞ。

https://syosetu.org/novel/327171/


45.モーニングコール

 

 むくり、とアラームも無しに目が覚めたのは6時。

 隣のベッドですやすや眠るしーと、しーに布団を持っていかれ寒そうに震えるつーの姿を確認。

 軽く伸びをしてベッドから降りて、自分が使っていた布団をつーに被せる。

 

 さて、今日も一日頑張ろう──そう思いながらスマホを付けようとする。

 

 

「ん? 通話中…………あー、そうだった」

 

 

 通話中になっていた画面を見て、昨日の出来事を思い出した俺。

 7時間近い通話時間。寝る時に外していたワイヤレスイヤホンを付け直して音声を聞いてみると、未だに聞こえてくる穏やかな寝息。

 

 スマホを持った俺はそっと部屋から出て、誰も居ないリビングへ。お袋もそろそろ起きてくるだろうが、今は1人きりだ。

 

 

「……起こそうか、どうしようか」

 

 

 モーニングコールする、という話は昨日したが、時間については『奏くんが起きた時にして』と言われていた。

 しかし、一般的には早い時間であるこの時間。ここまですやすやと寝ているのを起こすのも忍びない。

 

 

『…………んっ…………んー…………』

「…………これ、心臓に悪いな」

 

 

 許可が出ているとはいえ、同級生の寝息を聞いているというのは流石に年頃の男子高校生には刺激が悪い。

 

 ──起こすか。起こせって言われてたし。

 

 優しさと約束を天秤にかけて約束を取った俺は、コップに1杯水を入れて一気飲み。そして、んんっ、と軽く咳払い。

 あーあー、あめんぼあかいなあいうえお、と滑舌チェック。

 

 

「さーきーさーんっ。おっはよー。朝だよー」

『…………んー…………んぁ…………かなで、くん…………?』

「うん。君の友達の奏くんだよー。よく眠れたかな?」

『…………うん』

「準備できたら、リビングに来なよ。待ってるから」

『…………わかった…………おはよう…………』

 

 

 ぽろん、と電子音を立てて通話が切れる。

 暫く沈黙したスマホを眺めていたが……朝ごはんの準備でもするか、とスマホをポケットにしまって鍋に水を張る。味噌汁でも作っておこう。

 弁当用の卵焼きとウインナーもついでに焼いて……野菜は作り置きのきんぴらごぼうでも入れればいいか、と鍋に顆粒出汁を入れながら思考を働かせる。

 

 ──寝起きの咲さんの声、めっちゃぽやぽやだったなー。

 

 なんて惚けた考えが、寝起きの頭を支配する。咲さんめっちゃ声可愛い。

 ふんふふん、と気分よく鼻歌を歌いながら鍋にわかめと切ったネギ、豆腐を入れる。後は味噌を溶かして完成だ。

 

 お玉にすくった味噌を少しずつ溶かしていると、とてとてという家族のものでは無い足音。

 

 

「…………いい匂い」

「おはよう、咲さん。よく寝れた?」

「…………うん」

 

 

 まだ若干眠いのか、目が開き切っていない咲さん。そのままこちらへ寄って来たかと思うと、俺が使ったばかりのコップを手に取る。

 使っていい? と聞かれたので洗ってからならと答える。こくり、と頷いた咲さんは丁寧に洗剤で洗った後、1杯分の水をくぴくぴ飲む。

 

 

「……こんなにぐっすり寝たの、久しぶり」

「そう? なら良かった」

「……なんか、奏くんの声聞いてたら、凄い落ち着いた。寝ても大丈夫って、思えた」

「…………へぇ。あ、味噌汁味見してみる?」

「…………ん」

 

 

 小皿にすくった味噌汁を手渡す。ふぅふぅと息を吹きかけて冷ます咲さんを眺めながら、ひとり安堵する。

 自分の選択肢が間違っていなかったこと、咲さんが安心して眠れたこと、これで咲さんの健康状態がさらに上向くだろうということ。

 

 健全な魂は健全な肉体に宿る。更に1歩前進と言って間違いないだろう。

 

 

「…………美味しい」

「ん、良かった。じゃあ味噌汁はこれで完成っと。後はー……」

「……何か、手伝わせて」

「んー……じゃあ、みんなの分の飲み物お願いしていいかな? 親父がブラックコーヒー、俺とお袋がカフェオレで、しーとつーは牛乳ね」

「……分かった」

 

 

 戸棚にあるマグカップを出してもらい、どれが誰のマグカップが指示していく……所で、咲さんのマグカップが無いことに気付いた。

 ちょっと待っててね、と戸棚の奥から使われていないマグカップを取り出す。

 

 

「これ、取り敢えず咲さんの」

「ありがとう……何飲もう」

「一応、紅茶やココアもあるけど……」

「……奏くんと、同じのにしよっと」

 

 

 キッチンに置いていたインスタントコーヒーの蓋をパカリと開けた咲さん。

 ううん、悩んだ挙句わざわざ奏くんと同じのにしよっと言う……あざとい。可愛い。

 

 朝から既にもう幸せになりつつある。今日が最高の一日になる予感を感じながら、俺は冷蔵庫の中身を確認する。

 

 

「あら、咲ちゃんおはよう! ありがとうね、手伝ってくれて!」

「おはようございます、お母様」

「あらあら、まだ気が早いわよー。奏もおはよう。ありがとね」

「ん、咲さんおはよう」

「ふぁあああぁ…………おはよー…………ございます」

「おっはよーございます! 咲さん」

 

 

 やがて、数分後に起きてきたお袋と、その後に起きてきた親父やしーやつーと共に、テキパキと朝食の準備。

 

 俺の家族に囲まれて居る咲さんを眺めて、なんだか心の奥が擽ったかった。

 

 

 

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