『聖・杯・逃・争』   作:レイノート

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今回からはお待ちかねのメインパートです。
逃走者達は無事に逃げ切ることが出来るのか、大変見ものとなっております。


忍び寄る魔の手

「さて、ゲームが始まったけど緊張してきたな……」

 

現代都市エリアにて散策を行う江宮とエミヤ。

比較的二人が慣れているフィールドを選び、隠れる場所や逃走ルートの確保をしていた。

 

 

 

「何、緊張する必要は無いさ

 

まだゲームは始まったばかり、焦らずゆっくりと作戦を立てていこう」

 

 

 

幸いにも他の逃走者は別のエリアに集中しているという事もあり、二人でじっくりと作戦を立てる時間がある。

 

 

 

「ありがとうエミヤ

 

それにしても本当に賞金が一秒ごとに増え続けてる」

 

 

 

逃走者達全員にはゲームマスターから支給されたスマートフォン、エリアマップ、マナプリズム10個が渡された。

ほかの装備品としては時計と令呪が三画刻まれたグローブ。

これらとサーヴァントを駆使して逃げ延びる。

 

 

 

「明確に金額を表示させることで、自首という選択をさせる効果もあるんだろう

 

最も私のマスターは、最後まで逃げ切る気でいるようで安心したがね」

 

 

 

冷静に分析をし、ゲームの意図を理解するエミヤ。

現代よりの英霊である彼からすれば、この手のゲームは問題ないだろう。

 

 

 

「他の人たちは大丈夫かな……」

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

「とりあえず勢いでここまで来たけど大丈夫かな」

 

 

 

竹宮とアストルフォが逃げてきたのは城砦エリア。

見晴らしいの良く、ハンターを見つけるのには最適だが自分達も見えやすいデメリットもある。

 

 

 

「大丈夫だよマスター、いざとなればこの世ならざる幻馬で空飛べるし」

 

 

 

アストルフォの宝具の一つ「この世ならざる幻馬」。

ライダークラスであることを存分に活かせるには、城砦エリアは非常に相性がいい。

現代都市エリアと比べて、特に障害物はなく広い視野を確保出来る。

 

 

 

「確かにそうだけど、まだ俺たちはハンターが誰かも分かってないんだから油断はできないよ」

 

 

 

楽観的に見てはいけないと考えている竹宮。

楽に逃げられる程、こういったゲームは甘くないことを知っている。

それ故に常に思考を巡らせては、アルフォート食べていた。

 

 

 

「考えすぎも良くないよ、ほら今度はあそこに行こうよ!」

 

 

「ちょ!待てよ!」

 

 

 

暴走気味の相方を追いかける竹宮。

どうやら手綱は上手く逃げれていないようだ。

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

「なんか静かですね」

 

 

 

雪野達が逃げてきたのは、江戸エリア。

江戸時代の街並みが再現されており、和という文化がこれでもかと溢れだしている。

しかし、彼女らを除き人っ子一人もいない。

 

 

 

「気配はどうやら私達だけのようね」

 

 

 

周囲に気を配る式。

ハンターは近くには居ないようだが、警戒は怠っていない。

ゲーム開始から二分ほど経っているが、ハンターと遭遇した逃走者の報告もないので、油断はできない。

 

 

 

「あっ、あそこなんか書いてありませんか?」

 

 

「あら本当ね、尋ね人を探しています?」

 

 

 

二人が見つけたのは誰かの人相書き。

しかし所々が破けており、全体像が把握できない。

 

 

 

「なんでしょうこれ」

 

 

「今は分からないわ、でも覚えておいて損は無いと思うわ」

 

 

 

何か分からないが重要なものであると感じ取った式の発言を聞き、雪野はこの場所のメモを取る。

後に、これらが重要なヒントになるとは思わないだろう。

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

「本当にしつこいですよ!」

 

 

「まあまあ、俺たちの運命の出会いを祝してホテルで語り合わない?」

 

 

 

このHENTAI……半澤はまたしてもやらかす。

同じ炭鉱エリアに逃げてきた玲とモルガンを見つけてはそのままナンパを仕掛けていた。

当然ながら拒否をされるが気にせずにアタックしている。

 

 

 

「僕は男ですよ!同性です!」

 

 

「え?男の子だろうと女の子として扱えば女の子なんだよ!」

 

 

 

まるで話が通じない。

何故こいつはこの聖杯逃争に参加しているのかさえ疑問に思う。

余りの執拗さに先に痺れを切らしたのは、玲のサーヴァントであるモルガンだった。

 

 

 

「下郎、それ以上我が夫に近づこうものなら消し炭になると思え」

 

 

 

モルガンは杖を翳し、何時でも魔術を撃てる体制を整える。

 

 

 

「おぉ~と怖いねぇ~」(CV石塚運昇)

 

 

 

流石に身の危険を感じた半澤は距離を取り、酒呑童子の後ろに隠れる。

逃走者同士での私闘は厳禁であるとはいえ、モルガンの目は妖精國の愚かな妖精を見るかのように殺意を込めた冷たい目であった。

 

 

 

「やっぱり俺の一番は酒呑ちゃんだよ……なでなでして?」

 

 

「もう~仕方ないのない人やな~」

 

 

 

猫を愛でるかのように頭を撫でる酒呑。

最早これは信頼というべきか、それともただのそういうプレイなのか。

正直、見ていて気持ち悪くなる玲とモルガン。

足早にその場を去るのであった。

 

 

 

「あぁ……ぁぁ……」

 

 

 

いつの間にか二人がいなくなってる事に気づかず、ひたすらに甘える半澤。

正直いってゲームマスターも直接手を下したいのを我慢している。

流石にムカついたので、放出したハンターに位置情報を今回限り伝えていた。

 

 

 

「ん?」

 

 

 

半澤に迫る黒い影。

忍び寄るハンター。

その気配に気づく酒呑は撫でている手を止めて、半澤をお姫様抱っこする。

 

 

 

「酒呑ちゃん!俺はまだ心の準備が!」

 

 

 

何か勘違いしてるこの男。

もうこいつの頭はピンク一色だ。

そんな事はお構い無しに酒呑は鬼の力をフルに使い、その場から大きく跳躍する。

コンマ数秒の後、先程まで彼女らのいた場所に黒い外套を羽織ったハンターらしき者が立っていた。

 

 

 

「ふぅむ……やはり気づかれてしまったか

 

流石は大江山の酒呑童子……一筋縄ではいかないか」

 

 

 

半澤達に迫ってきたハンター……それは呪腕のハサン。

気配遮断を使い、彼等の背後を取ることができたが宝具を使用し捕まえようとしたが聖杯逃争のルールにより通常よりも気配に気づかれやすくなっている仕様により、あと一歩のところで逃げられてしまう。

 

 

 

「しかし、闇に潜むは我らが得てなり……

 

次はこうはいかないぞ」

 

 

 

再び別の逃走者を捜索するハサン。

ゲームはまだ序盤……ここからが面白くなる。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

「…………」

 

 

「…………」

 

 

「…………」

 

 

 

この通夜のように静まりかえった空気。

茶乃榮・龍谷の二人の逃走者達は、同じこの遺跡エリアへと逃げてきたのだが…………如何せん会話が弾まない。

人見知りが多く集まったのもあるが茶乃榮の厳つい見た目もあり、龍谷がビビって話をかけられないのだ。

エレシュキガルも同様に、どんな話題をふればいいのか分からずに悩んでしまっている。

 

 

 

「だぁーも、折角こんなに人が集まってんのに通夜みてぇになっちまってんじゃねぇか

 

少しは盛り上がろうぜ?だろうマスター?」

 

 

「あぁ……」

 

 

 

この空気に耐えきれないクーフーリンは場を盛り上げようと前髪茶乃榮に喝を入れる。

彼もこの悪い空気を変えたかったのもあり、先陣を切ってくれた己のサーヴァントに感謝していた。

 

 

 

「改めて……俺は茶乃榮だ

 

よろしく頼む……」

 

 

「で俺がクーフーリンだ

 

敵ってわけじゃねぇし、仲良くやろうや」

 

 

 

交流も兼ねて右手を龍谷に向けて差し出す茶乃榮。

 

 

 

「お、俺は龍谷荒太です……宜しくお願いします」

 

 

 

外見とは裏腹に礼節がしっかりしてる方だと認識した龍谷は握手を交わす。

見た目で判断したのを謝り、互いに打ち解けいった。

 

 

 

「わ、私は冥界の女神……エレシュキガル

 

宜しくお願いするのだわ……」

 

 

 

緊張しながらも挨拶を返すエレシュキガル。

 

 

 

「あぁ……こちらも宜しく頼む……」

 

 

 

エレシュキガルとも握手を交し、全員の緊張が解れていく。

先程までの通夜のような空気が嘘だったと思うぐらいに明るいものとなった。

流石はケルトの大英雄クーフーリン。

 

 

 

「さて、ここからが本題だ

 

マスター……こいつらなら信用出来ると俺は思うんだがどうよ?」

 

 

「そうだな……彼らならば同盟を結ぶに足り得ると思う」

 

 

 

同盟。

この聖杯逃争において逃走者同士の私闘は禁止とされているが、協力をすることに関してはこれといって禁止事項は無い。

同盟を組むことでハンターへの対処、ミッションを達成させるのも比較的楽になるメリットもある。

 

 

 

 

「同盟か……俺はいいとは思うんですが……

 

エレシュキガルは同盟についてはどう思う?」

 

 

「わ、私はマスターの判断に任せるのだわ」

 

 

 

同盟は必ずしもメリットだけとは限らない。

ハンターが襲来した場合、囮にされる危険もある。

聖杯戦争とは違い、幾つかの制約があるとしても不安だ。

だが意外にも龍谷の答えは……

 

 

 

「その同盟……受諾した」

 

 

 

特に考える必要もなかった。

この二人なら信用出来ると龍谷の中では既に決まっていたのだから。

茶乃榮と龍谷は互いに笑みを浮かべる。

 

 

 

「改めて宜しく頼む」

 

 

「こちらこそ宜しくお願いします」

 

 

 

両者は再び固い握手を結んだ。

今ここに、二つの陣営の同盟が決まる。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

『これはなかなか面白い事になりましたねぇ、早い段階から同盟を結ぶとは…………

 

実に素晴らしい……予測不可能な自体こそエンターテインメントに相応しい』

 

 

 

ゲームマスターは大いに喜んでいた。

序盤は互いに距離を置くものだとばかり思っていたが、予想を裏切り同盟を結んだ陣営がいる。

オーディエンスを盛り上げるにはいい展開であった。

しかし、一方あの陣営に対しては早めの措置を検討している。

 

 

 

『酒呑ちゃんにお姫様抱っこされたから俺が嫁になる!』

 

 

『じゃあ、思う存分抱いてあげるわ……うちは激しいからね?』

 

 

 

この特級呪物のHENTAIをどうにかしなければならない。

ゲームマスターは携帯端末を取り出し、何処かへと電話をかける。

 

 

 

『すまない私だ、とある逃走者が余りにもやりすぎるようであれば君に始末を手伝って欲しい

 

君の拳ならば、彼をどうにかできるだろう……

 

わかった……君の協力には感謝する』

 

 

 

半澤への措置が決まる。

しばしの猶予を与え、様子見をする運びとなった。

 

 

 

『さて、ぞろぞろ逃走者達への試練をプレゼントしなければね』

 

 

 

そういうとゲームマスターは端末を弄り、逃走者達へとメールを送る。

困難を超えなければ、願いは叶えられることは無い。

さあ、試練の開始といこう。

 

 

 

 

[to be continued]

 

 

 

 




次回、半澤死す!デュエルスタンバイ!

と本当かもしれないし、嘘かも知れません。
次回は初ミッションがスタートしますので、良かったら読んでみてください。
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