ぼっち・ざ・ろっく・おぶ・ざ・ひーろー! 作:あいむ
前回のあらすじ
後藤ひとりは売れる曲を作ろうと意気込むものの作詞に行き詰まっていた。
そんな中、山田リョウの助言により調子を取り戻したことで無事結束バンドのオリジナル曲が完成した。
しかし、店長から理不尽にも「ライブに出さない」と言い渡されてしまう。果たして結束バンドの明日は……
「なぁ、新年1発目の投稿なのに挨拶とかしなくて良いのか?」
「いや店長さん、今あらすじ中なんですよ。それにもう25日ですよ?1月も終わるのに今更挨拶も無いですって」
「投稿すんの遅すぎだろ」
「それはそうとなんであの時突っぱねたんですか? これ、理由言わないと伊地知さん達納得してくれませんよ?」
「ちゃんと13話で説明するっての……。
とにかく今年も本作をよろしくお願いします!」
「あ、それ俺のセリフ……」
「え……? な、なんで? オリジナル曲も出来たのに……」
「それはこっちには関係ない」
「あ、集客出来なかった場合のノルマ代もちゃんとあるよ?」
「お金の問題じゃなくて実力の問題」
「こ……この前はあっさり出してくれたじゃん!」
「あれは思い出作りの為に特別にってことだ」
「お……思い出作りって……」
なんかどんどん雲行きが怪しくなっていく。これ……大丈夫なのか?
「普段デモ音源審査してるの、知ってんだろ」
「そう、だけど」
「悪いけど、5月のときみたいなクオリティなら出せないから」
「じゃ……じゃああたし達は……」
「一生仲間内で仲良しクラブやっとけよ」
その言葉に、空気が凍った。
いや、店長さんの言ってることは解る。幾ら身内がいるとはいえ、実力も無いのに優遇してたら他のバンドも面白くないと思う。結束バンドは最初に比べたらそれなりに成長した筈だが、他のバンドの実力を俺は知らない。だから下手にフォローに入ることは出来ない。
……傍観、してるしかないのか。
「み……」
そんな中、伊地知さんは声を振り絞って……
「三十路なのにぬいぐるみ抱かないと寝れないくせにーーー!!!!」
「まだ29だ!!」
捨て台詞を残して、走り去って行った。
「なんだ今の捨て台詞は……」
年齢を暴露されたものの、店長さんはそれ以外に大した反応は見せなかった。
真実は残酷というか……店長さんの言い方の問題というか……まあ、あまり気持ちいい雰囲気ではないような……。
「ぬいぐるみってこのシワシワのウサギとパンダのこと?」
「あら可愛い」
「お前っ! その写真どこから……! 今すぐ消せ!!!」
山田さんが何やら気になる写真を見せてきて、PAさんと店長さんでわちゃわちゃし始めた。
……うん、今回ばかりは山田さんが空気読めなくて良かった。
「何してるんですかリョウ先輩! 追いかけますよ!」
「ええ〜」
「面倒くさそうにしないで! ほら、後藤さんと星乃くんも!」
喜多さんが伊地知さんを追いかけようとするが、山田さんが面倒くさそうにした為背中を押しながら連行する事に。後藤さんもあわあわしていたものの、喜多さんの後を追う。
そしてその後藤さんの後を俺が……
「あ、ぼっちちゃんちょっと待って。ついでに星乃も」
いや俺ついでかよ。
それから数分後、無事店長さんから解放された俺たちは伊地知さん達がいる場所を聞き現場へ向かった。
「ふう……ふう……あ、おまたせしました……」
「えーっと、星乃くん……なんで後藤さんを背負ってるの?」
「いや……それがですね」
そして遡ることSTARRYを出る前……
「って事だから虹夏たちに伝えといて」
店長さん曰く、ライブに出たいならまずオーディションを受けてから。1週間後の土曜日に行いその結果を元に出演可能か決めるとの事だ。
いや、最初からそう言お?
「で、ぼっちちゃんは何してんの?」
一方の後藤さんは……なんか仰向けになってた。
これ犬がよくやる服従のポーズじゃ……
「せ……精一杯服従心を表現しようと……」
マジでそれでしたね。
「……お手」
「わんっ!」
「おかわり」
「わんっ!」
「……心まで犬になってません?」
「後藤さん、ハウス」
「わんっ!」
すると後藤さんはゴミ箱の中に入っていった……ってそこハウスなんかい。ん?ハウス=犬小屋とするなら……
「前回の伏線、回収しちゃったね」
「そんなもん伏線にすんな」
ふざけてたら店長に怒られました。因みにどこが伏線なのか分からない人は是非前話を読み直してください。
「お前も何やってんだ。早く行かないと見失うんじゃ無いの?」
「わ、わんっ!」
「ほら、後藤さん行きますよ。ゴーゴーゴー」
「ワンワンワンッ!」
これ懐かれたってことでええんかな?
後さっき店長さんしれっと後藤さんの服従写真撮ったよね? 一体何に使うつもりだ。
「と、言う訳です」
「で、後藤さんをおぶってるのは……」
「ここに来る途中酸欠起こしてゾンビ化してたので緊急事態で……」
「なるほど……」
最初追いつこうと走ってたからね。そんでぶっ倒れて今に至る。
「要するにライブ出たいならオーディションからって事ですね」
「もー、お姉ちゃんも最初からそう言えば良いのに。意地悪」
持っていたドリンクを一気に飲み干しながら伊地知さんは言った。
「んで、ちょっと後藤さん起こしませんか? このまま背負い続けて話すのもアレなんで」
とりあえず後藤さんを背中から降ろし、何とか意識を呼び戻してみる。いや、あのまま背負っても良かったんだけどなんて言うか……当たるんだよね背中に。何がとは言わんけどうん。
「はい、これぼっちちゃんの分でこれは星乃くんのね!」
「あ、ありがとうございます……」
「すみません。あ……っと……」
「あ、お金はいらないからね。あたしの奢り!」
財布を取り出そうとしたら直ぐに伊地知さんに言われてしまった。ポカーンとしてると伊地知さんはニヤリと笑ってこっちを見た。
あれ? もしかして俺の思考掌握されてない?
「まあ、後はオーディションまで頑張るだけって事か〜」
「つまりこれまでとやる事は変わらないって事ですね!」
「あっ、うん。そだねー」
「この2人が1番不安なんだけどって顔してる」
山田さんに確信的なことをつかれ、伊地知さんは少し動揺していた。
「とりあえず2人のパートはオケ流しとくからアテフリの練習はしっかりするように」
「「は、はい!」」
「2人はそれでいいの……?」
「ダーメ! エアバンドじゃないんだから! 下手っぴでも頑張れば熱意は伝わるから!」
うん、シレっと追い討ちかけてませんかね? 後藤さん、それ聞いて土管に潜り始めちゃったし。
「虹夏、追い討ちかけた」
「ちょっとフォローしてよ! ぼっちちゃんも土管に引きこもらないでー!!」
ん? でもちょっと待てよ?
確か後藤さんってギター上手くなかったか? 何回か喜多さんとの練習に付き合わせて貰ったりしたけどその時は結構いい感じだったはず。いや、でもファーストライブの件もあるからな……。
あれ? 何がどうなってるんだこれ。
「まあ大丈夫だよ! リズム隊が上手ければ大抵どうにかなるって!」
「そういうもんですかね……?」
「うん。リョウ並に演奏出来ることを求めているってより……バンドとしての成長?ってのを求めてるんじゃないかな?」
「成長……」
その後、無事に?後藤さんを引きずり出しなんとか話の続きをすることが出来た。
しかし、伊地知さん達がオーディションについて話している中後藤さんは何かを考え込んだように俯いていた。
「あ、星乃くん今来たの?」
数日後、ライブハウスでのバイトに来た際に入口で伊地知さんと遭遇した。
「はい。今日、委員会の集まりがあって少し遅くなりました」
「まだ始まってないから全然平気だよ〜」
伊地知さんはいつもと変わらない様子だった。
「……あの」
「ん?」
「オーディションの方、大丈夫ですか?」
「……あ、もしかして心配してくれてる?」
「ええ……」
俺の質問にキョトンとした顔をしていたが、彼女はすぐ様何事も無かったかのようにいつもの笑顔に戻っている。
「ま〜不安に思うことはあるけどさ、でもこれを乗り切らなきゃライブは出来ないわけだし!
それにバンドとしての成長をお姉ちゃんに見せつけてやるいい機会だと思うからさ!
つまりはやるしかないって事だね!」
だいぶ元気そうに振る舞いながら伊地知さんは言った。
……うん、余計な心配だったかな?
そう思い、伊地知が入っていったスタジオに俺もお邪魔した……
「……え? 何その髪型」
すると、さっきまでの元気な声とは真逆の低音が彼女の口から発せられた。
まあそれもそのはず……
既にスタジオ入りしていた後藤さん、喜多さん、山田さんが謎のキノコヘッドにスーツという謎スタイルをしていたのだから。
「星乃くん、どう思う?」
「なんじゃこりゃ」
「あ、えっと……バンドマンとしての成長を見た目で表現……だそうです」
「ということはやっぱり……」
俺と伊地知さんの視線は山田さんへと向かう。大体こう言うことをやらかすのは決まって山田さんだからな。
「決めつけ良くない」
「日頃の行いですよ」
俺がそう言うと「なんの事やら」といった顔をされた。
「飲酒、喫煙、女遊び、そして髪型をキノコヘア。これがバンドマン」
「「イメージがコテコテ過ぎる!!」」
いや、そもそもバンドマンってそんなイメージだっけ? 何年前の話だよ!?
そんな事を考えてる間に喜多さんは「はい、キノコー!」という掛け声で後藤さん、山田さんと共に写真を撮っていた。いや楽しそうだな。
「虹夏には斜め髪片目メカクレ枠が……」
「いらないよそんな枠!」
「んで、湊音にはそんなバンドマンに良いように遊び倒される純粋女の子ファン枠が」
「いりませんよ。なんで性別逆にしてるんですか」
「折角ウィッグ用意したのに」
山田さんの手には黄色いキノコヘアと白色のツインテールのウィッグがあった……。いや、なんであるんだよ。
「いらん時だけ用意周到ですね」
「湊音には服もある」
「私が選びました!」
「一体俺をどうしたいんですかあなた方は!!」
喜多さんが選んだ服は……白ブラウスに膝丈くらいのスカート。しかもなんかフリル付いてるやつ……。うん、流石喜多さん、いいセンスだ。
絶対着ないけど。
「あっ、あの……私女遊び無理です。私と遊んでくれる女の子がいません」
「大丈夫。下北のピレバン前でギター背負って気だるそうにしてれば多分誰かが寄ってくるから」
「偏見に満ちた情報教えない! 真面目にやるの!」
「でも成長って見た目じゃ分からないし、判断基準ぼんやりしてるし」
「はっきりしてるよ! お姉ちゃんを納得させれば良いんだから! いいから練習!!」
まあ山田さんの言い分もわからんでもないが……流石にキノコヘアで店長納得しないでしょ。
「いい案だと思ったのに」
「いや、これで納得してくれなかったらどうするつもりだったんですか」
「その時は店長の概念をグーパンでぶっ壊すしかないね」
「物騒! 後その髪型でグーパン言うの止めましょ?!」
「先輩! シュークリーム買ってきたんですけど食べますか!?」
「なんでこのタイミングでシュークリーム!?」
まあ、こんな感じで……結束バンドは絶賛迷走中……っと。
「……………」
そんな中、後藤さんは一言も話さずキノコヘアのウィッグを外していたのだった。