イリヤ in MCU   作:抹茶アイス大好き

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なんか急に伸びたね


ラボにて

「暇ね……」

 

ソファに寝転がるイリヤはうーんと呻き声をあげ、そう呟いた。

 

アイアンマンとキャプテン・アメリカの活躍で、事態の首謀者であるロキは囚われの身となった。がそれはヘリキャリアのS.H.I.E.L.D職員の慌ただしさを落ち着かせることはなかった。

 

ロキの目的とキューブの行方。そして、彼に洗脳された仲間たちの安否。

 

それらが何一つ分からないまま事態に歯止めがつかず、時間だけが過ぎ去っていく。

 

 

そんな彼らとは裏腹にイリヤスフィールは暇だった。とてつもなく暇だった。

 

何やら物々しい集団に囲まれた変な格好の男が連れられているのを見た時は、何かが起こる予感に胸を躍らせたが残念ながらそんなことは全くなく、イリヤはバナーのラボで一人、待ちぼうけを喰らっている。

 

コールソンという男が暇つぶしにとくれた薄い──というより後ろが透けて見えるタブレットをいじるのも、もう飽きてしまった。

 

バナーは楽しそうな会議に出かけたというのに、自分は仲間はずれ。

ソファに力なく横たわり、窓からほんの少しだけ顔を覗かせる空をただただ眺め続ける。

 

なんて退屈な時間だろう。

これならいっそのこと──

 

そんな物騒なことを考える時間は外から聞こえてくる足音によって終わりを告げた。

 

ドアの開く音にバッと顔を上げるイリヤ。バナーを待ち構える彼女の目に映ったのは見知らぬ男だった。

 

「君がバナーの言ってたイリヤか、今いくつだ?」

 

どこか気取った歩き方、初対面にしてはあまりに気安い口調、自信に満ち溢れた立ち居振る舞い。整った豊かな髭を携え、なぜか心臓の部分が光ったシャツを着ている男にイリヤは戸惑いを隠せなかった。

 

「えっと………18歳」

 

「おい嘘だろ、バナー。もう大人じゃないか。そうならそうと言ってくれればよかったのに」

 

「いや、トニー。今のは冗談だ」

 

「違う!」

 

バナーがトニーの驚きを否定するが、それにイリヤも抗議の声を上げる。

イリヤとしては自分の言った齢は全くもって冗談ではなかった。

 

イリヤとバナーが共に過ごした約2年間。二人の共同生活はまず、価値観のズレから始まった。

社会の闇まで知ってしまった男と文字通りの世間知らずな少女。合わない方が当然である。

しかし大人であるバナーが根気よくイリヤに教え、イリヤもまた我が強いものの悪目立ちすることはなくなっていた。

そんな両者が唯一譲れなかったもの。

それはイリヤの年齢だ。

 

イリヤの見た目は幼い。

彼女がいくら自分は大人だと主張しようがイリヤ自身が自分の歳を証明することができない以上、彼女の扱いは見た目相応のものになる。

結果としてイリヤは、旅の最中では子供扱いを受けいれてはいたが、それは無用なトラブルを避けるため。

ここでは違う。

 

人の年齢は見た目じゃない。中身だ。

そう考えるイリヤの中には確固たる自信があった。見た目はともかく、自分の中身は立派な大人であると。

しかし悲しいかな、トニーはあっち(バナー)側だった。

 

「子供は子供扱いを嫌うというやつか。分かるぞ、僕にもそういう時期はあった」

 

「……は?」

 

私の話を聞いていなかったのかと唖然とするイリヤの頭をポンポンと笑いながら軽くたたくトニー。

キャパを超えたのだろう、目を白黒させるイリヤにバナーは助け船を出す。

 

「イリヤ。彼はトニー・スターク。これから仕事を手伝ってもらうんだ」

 

「じゃあ、この部屋にその男もいるわけ」

 

嫌らしい物を見るかのような視線を向けるイリヤをトニーはおどけた様子で揶揄う。

 

「おっと、これは手厳しい。怒らせたかな。やっぱりお子様だな」

 

スタークにとってはコミュニケーションの流れで零れた、しかしイリヤにとっては聞き捨てならない言葉。イリヤの中でスタークに対する好感度が急降下していく。

 

イリヤは気づかない。

その言葉に目くじらを立てることが、その言葉が正しいということを証明する何よりの証拠だと。

 

「別にどうとも思ってないから」

 

「そうか、なら僕の仕事ぶりをそこで見とくといい」

 

トニーはそう言うと、バナーの待つ作業台へと向かう。

その背中にソファに再び寝ころびながらイリヤはジッと視線を向けていた。新しい暇つぶしへの喜色を滲ませながら。

 

 

 

 

 

 

数十分後。

 

トニーの粗を見つけてやろうと目を輝いていたイリヤはその瞳を虚ろにしていた。

なぜなら彼が──ナルシスト気味で気安いこの男が天才であることが分かってしまってたからである。

 

たかが数十分で何が分かるというのか。だが、イリヤはトニーとバナーが自分とはかけ離れた場所で会話していることに気づけるだけの知識があった。

何せこの場にいるもう一人の天才と年単位で行動を共にしていたのだ。

自分がかじった程度の専門用語を湧き上がる湯水のように使い、自分の知る天才と対等以上に語り合う彼をイリヤは内心、見直していた。

 

それを本人に伝える気も、態度を改める気も全くなかったが。

 

そうしてバナー一人では日が暮れたであろう作業は瞬く間に進み、緊張を孕んだ空気は緩み始める。そうして専門用語だらけの会話は徐々にイリヤを交えた雑談へと変わっていく。

 

「今度、スタークタワーを見に来てくれ。上十階は全部ラボのまさに夢の国だ。イリヤも暇しないよう、準備しとくよ」

 

「ありがたい申し出だけど、この前ニューヨークでハーレムをめちゃくちゃにしちゃってね」

 

「なら、ストレスのない環境を約束するよ。ドッキリもなし」

 

トニーはそう言いながらも、前言を無視するかのようにバナーに突然ピンを刺す。

 

「うわっ!」

 

「変化なし?」

 

ドッキリはないと言いながら不意打ちで軽い電流を流すという凶行。

叫び声を上げたバナーの様子を目の前で見つめるトニーだったが、そんな彼に荒げた声が掛けたのはイリヤでも電流を流されたバナーでもなかった。

 

「おい!スターク、気は確かか!?」

 

それはまるで図ったかのようなタイミングでの入室だった。

 

スティーブ・ロジャースは、言ってしまえば暇だった。

懸念すべきことはあるが、それは自分の気にする領分ではない。

故に任務の合間にすることもなく、現時点で最も重要な仕事をしているバナーの様子を見に来た、そんな時だった。

 

トニーがバナーにちょっかいをかけた瞬間を見事に引き当てたスティーブはトニーに詰め寄る。

しかしトニーはそれを目の前にしても顔色一つ変えずバナーとの会話を続けた。

 

「すごいね、怒りを抑える秘訣は?メロウジャズ?ドラッグ?」

 

「精神統一よ」

 

「なるほど、それはいい。ドラッグはクソだ。チーズバーガーの味が悪くなる」

 

「使ったことがあるの?」

 

「一時期は。イリヤは絶対にやるなよ」

 

「ふ~ん、分かった」

 

そもそもそんなものに興味のないイリヤは適当に相槌を打つ。

二人の会話はほんの少し、二人の関係に改善の余地を見せた。

だがロジャースとトニーの関係には全く、これっぽっちも影響を与えることは出来なかった。

 

「何でもジョークにするつもりか」

 

「面白ければね」

 

「みんなの命を危険にさらして何が面白い」

 

生真面目な男と遊び人の男、気の合わない二人の口論。

そう簡単には止まるはずのないそれに、少女の澄んだ声が割って入る。

 

「どうしてロジャースは、バナーを怖がってるの?」

 

「怖がってるだって?」

 

「そうよ、バナーを何だと思ってるの。頭のいい、中年じゃない」

 

「君だって知ってるだろう。バナー博士は心拍数が一定を超えると──」

 

このヘリキャリアに乗る人間なら誰もが知っているであろう、バナーの秘密。それを言っていたロジャースは、発言の途中ではたと気づく。

 

 

 

『バナーの付き添いよ』

 

『彼の?』

 

『彼、癇癪持ちだから』

 

 

 

 

数時間前のイリヤとの会話がロジャースの脳裏をよぎる。

 

「なるほど。イリヤ、つまり君がバナー博士のストッパーか」

 

やっと腑に落ちた。

そんな表情で語るロジャースにイリヤは言う。

 

「そうよ、そのためにここに来たの。じゃなきゃ、こんな子供(小娘)、あの男が乗せるわけないでしょ」

 

「あれ?さっき18歳って言ってなかったか?」

 

「黙ってて」

 

したり顔で語るイリヤは、茶々を入れたトニーを睨む。

その視線につられ、ロジャースもトニーとの会話に話を戻す。

 

「スターク。いいから君は自分の仕事をしてろ」

 

「してないとでも?そもそもフューリーはなぜ我々を呼んだ?フューリーは何を企んでいる?」

 

「悪巧み?」

 

「その可能性がある。それに僕らが何も知らないまま参加する義理はない。だから今、ジャービスが探ってる」

 

「……今なんて?」

 

「実はジャービスにS.H.I.E.L.Dのハッキングをさせてる。あと数時間もすれば、S.H.I.E.L.Dの秘密が丸裸ってわけさ」

 

「S.H.I.E.L.Dが君を煙たがるわけだ」

 

溜息ながらぼやくロジャース。

そんな(老人)の小言を無視してトニーは話の分かるイリヤ(若者)に話を振る。

 

「イリヤはフューリーを信用できるか?」

 

「無理」

 

即答である。

こんな少女にも信頼されていないフューリーに、トニーは僅かに哀れみを覚えながらロジャースへと視線を移す。

 

イリヤ、バナーがトニーの側につき、場の空気は明らかにトニー寄りになる。

そんな彼らを前にロジャースは警告する。

 

「ロキは僕らを煽ってる。戦争を前にこちらが仲間割れをすれば奴の思う壺だぞ。使命を全うすべきだ」

 

当然皆、仲間割れがロキの得であることくらい分かっている。だが、ここにいるのは奇しくも我の強い人間ばかり。トニーに至っては隠し味程度しか協調性がない。

そんな彼にとって大事なものは──

 

「それは僕のスタイルじゃない」

 

自分の在り方だ。

組織のために自分を曲げる。そんなの冗談じゃない。

トニーは今の自分が積み重ねによって出来たものだと信じている。

 

成功、栄誉、失敗、犠牲、別れ、後悔、死。

ありとあらゆる経験が今の自分を創り出している。自分を曲げることは、過去に対する裏切りだ。そんなこと、できるわけがない。

 

トニー・スタークの譲れない一線。しかし、その一線は協調を重んじるロジャースにとっても譲れない一線。故に話は平行線を辿るはずだった。

乱入者がいなければ。

 

「なぁスティーブ。君は何か怪しいとは思わないか」

 

口を挟んだバナーが、ロジャースに鋭利なナイフを突き立てる。

 

何か。

そんな一言では言い表せるわけがない。キューブを研究していたというのになぜ天才発明家のスタークをキューブの研究に加えなかった。

キューブ捜索のためとはいえわざわざ危険を冒してまでブルース・バナーを招集したのはなぜだ。

この空飛ぶ巨大な空母がいずれ来るかもしれない脅威に備えていたというのならまだ分かる。だがロキを入れている牢屋はなんだ。なぜそこまで準備されていた。

 

挙げだせばキリがないほどS.H.I.E.L.Dは、フューリーは怪しいことだだらけだ。

それはここにいる全員の意見が一致していた。

 

「キューブを見つけろ」

 

だからロジャースはそう言うしかなかった。

その瞳に疑念の思いを宿しながら。

 

 

 

 

 

 

ロジャースの去ったラボ。

そこでトニーはバナーに話をしていた。ドッキリ程度では理解しえない、彼の本質に踏み込んだことを。

 

「君の事故に関する資料も読んだ。普通ならあの量のガンマ線を浴びたら死んでいただろう」

 

「こう言いたいのかい。ハルクは、僕の命を救ったんだと。……でも、何のために?」

 

トニーが語る、バナーとハルクの関係に一石を投じる仮説。

しかしバナーの疑問に即答できる答えをトニーは持ち合わせていなかった。

だが、イリヤは確かに持っていた。

 

 

「私と出会うためでしょ」

 

 

イリヤとバナー、二人にしか分からない答え。

何のことだか分からず、怪訝そうに二人を見るトニーを置いてイリヤはバナーに言う。

 

「バーサーカーが、ハルクがいなかったら私は今、ここにいなかった」

 

認めたくない、認めざるを得ない揺るぎない真実。

それを言われたバナーは、イリヤの視線から逃げるように視線を逸らすことしかできなかった。

 

普段のバナーならイリヤの小さな変化に気づけただろう。だが彼には考えることが多すぎた。キューブを探すという作業、S.H.I.E.L.Dの企みに対するストレス、それらが心に重く圧し掛かっていた。

 

 

視線を作業へと戻したバナー。

彼は気づけなかった。イリヤがどんな目で自分を見ているかを。

 

 

 

 

 




一旦、情報整理も兼ねて各々のハルク・イリヤ関連の感情まとめ

ナターシャ:ハルクはガチの化け物。イリヤはバナーの理性の最後の砦、ストッパーだと思ってる。
フューリー:ハルクへの感情は前回の通り。ナターシャの報告を受けたが内容を疑っている。なぜ孤児の少女がバナーに連れられているのか、なぜその少女がバナーのストッパーになっているのか疑問に思っている。
その他:ハルクへの認識はナターシャと同じ。イリヤはバナーの連れ子。
ロジャース:イリヤの自己申告で初めてナターシャと同じ認識に。
トニー:ハルクとバナーは別物とはっきり認識している。イリヤは年頃の子ならこんな感じだろうなと達観している感じ。
バナー;イリヤがハルクを操作できることを隠したい。その意思はイリヤに共有済み
イリヤ;ハルクに会いたい

気になったら書き直します
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