でも正直なのです!のガンマはちょっと見たい
アルファを拾ってから3年。
私とシドくんは13歳になり、なんとクレアさんは15歳。
15歳になると、この国の貴族はミドガル魔剣士学園という魔剣士になるための学校に通うことになる。
そして、今日はクレアさんの出立日の前日。
私は、クレアさんを見送るためにカゲノー家を訪れ、一日泊まることになった。
「学校に行ったらしばらく稽古つけてあげられなくなるし、一戦やりましょうか。シド、合図をお願い」
「えー僕やりたいことがあるんだけど」
「いいからやりなさい」
「……わかったよ」
ということで、クレアさんと模擬戦をすることになった。
なんだかんだ言ってこの三年間は、クレアさんとシャドウガーデンのみんなと剣術の修行に励んでいたし、かなり私も剣の腕は伸びたはずだ。
……まぁ残念ながら、私にそこまで剣の才能はないらしいのだけど。
スライムの力に頼らない、純粋な私の実力をクレアさんにぶつけてみよう。
「よろしくお願いします!クレアさん!」
「えぇ、本気でかかってきなさい」
「えーじゃあ始め!」
シドくんの間の抜けた掛け声で戦いが始まる。
相変わらずというか、クレアさんの剣術は以前にも増してさらに熾烈さを増している。
剣術だけではなく、魔力の込め方もさらに上手になっている。
うまくシドくんから学んでいるようだ。一応実力を隠しているつもりではあるんだろうけど、シドくんはたまにその一端が見える時がある。
なんでも、シドくん曰くクレアさんも悪魔憑きらしく、魔力暴走は魔力の内蔵量が多い人間がなりやすい病気なのではないかというのが私たちの立てた仮説だ。
実際、私もシドくんより魔力量は多いし。操作技術でその分を取り返しているシドくんがどれだけすごいかがよくわかる。
剣同士を打ち付けあうと、その度に衝撃波が広がって近くの水を揺らす。
私だって、クレアさんだけじゃなく、近代的な剣術を極めたシドくんや同じ剣術を学ぶシャドウガーデンのみんなと練習してるんだ。負けるわけにはいかない。
「本当に……強くなったわね、サイカ」
「クレアさんのおかげですよ」
「本当に?……やっぱり、少しだけあなたに嫉妬しちゃうわ」
「ん?どういう意味ですか」
「なんでもないのよ、ちょっと羨ましいだけ!」
クレアさんが何を言っているのかいまいちよくわからないが、多分褒められてるんだろう。
会話しながらも攻撃の手は緩めない。
剣は拳や銃と違って、得物同士をぶつけ合うタイミングが多い。
その分だけ相手との技術が如実に現れる。
そして今回は、お互いとも互角の勝負といったところだろうか。
クレアさんにここまで喰らいつけるようになったことが嬉しいが。
やはりまだ足りない、彼に並び立つには、もっと!
「……もう!なんかそういう態度が……ずるいのよ!!」
「え、えぇ?!」
何かよくわからないけどクレアさんの攻撃がさらに激しくなる。
え、今怒らせる要素あった?
まあそんなこんなで剣を交え。
決着は最終的に、母親に呼ばれたクレアさんが離脱する形で幕を閉じた。
「本当はシドにも稽古をつけたかったけど……まあいいわ」
「ほっ、良かった」
「今度帰ってきたらその分扱いてあげるわね」
「ひぇ……」
「はぁ……」
私、クレアは道を歩きながらため息をつく。
「やっぱり、最後にシドと戦っておきたかったな」
サイカの実力はここ数年で一気に伸びた。
ちょうど彼女がシドと出会ってからだ。
やはり、シドは何かを隠している。
何を隠しているかまではわからないけれど……。
そして何より。
サイカが私との戦いの中でずっとシドのことを考えてそうなのが気に食わないのだ。
こっちを見ているようで、私の向こうにシドを見ているような感覚。
シドは昔はお姉ちゃんお姉ちゃんってついてきてくれたのに、いつの間にかサイカとばかり遊ぶようになっちゃって……。
サイカも、私から剣を学ぶだけじゃないみたいだし……。
「これが姉離れなのかしら……悲しい……」
私は少ししょんぼりした。
その夜。
私とサイカは、突如訪れた盗賊に誘拐された。
「魔力は量ではなく使い方だと教わったわ」
「いい父を持ったな」
「あのハゲが?教わったのは弟によ」
「弟?」
「戦えば必ず私は勝つわ、だけど私はいつも弟の剣から学んでいる。なのにあの子は私からは何も学ばない。せめてサイカくらい私の剣から学んでくれれば少しは面白いのに」
私は隣で鎖に縛られたまま意識を失っているサイカを横目に見る。
私がどうなっても彼女だけは返さないと……。
すると、彼女がゆっくりと目を覚ます。
「あれ、ここは……あれ、縛られてる?一体何が……」
「サイカ、落ち着いて聞いて。この変態ジジイに私たちは誘拐されたの。助けがくるまであなたは大人しくしてなさい」
「……う、うん」
彼女の目が恐怖と困惑に震える。
「サイカ……反抗的なお前より、先にこっちを調べるかな、いや、弟も気になるがな」
その言葉が終わるか終わらないか、私は腕を削ぎ落として枷を外し、男に攻撃を仕掛ける。
「シドにも、この子にも、何かあったら絶対に許さない!」
「貴様っ……!」
鎖を剣に見立てた私の不意打ちは躱されてしまうが、これで戦える!
「お前も、愛する家族も友人も全て殺して……ぐぁっ!」
男の拳が私に振るわれる。
魔封の鎖で封じられた体では思うように動けず、その拳を思い切り顔で受けた私は、壁に叩きつけられた。
「クレアさんっ!」
遠くでサイカの声が聞こえる。
こんなところで、私は終わるの……?
弟も、妹も守れないまま……。
私は、そのまま意識を失った。
いや、まさか誘拐されるとは。
完全に寝込みを襲われ、運び出されたが……。
私だけでなく、クレアさんまで一緒に攫われるとは思わなんだ。
移送の時暇すぎて少し寝てしまっていたが、気づいたらクレアさんがぶん殴られていた。痛そ……。
しかも鎖のせいで魔力が思う用に練れない。いや、少し頑張れば練れるんだけど……。
「さて、まずはこっちから血を……」
「ひっ……」
とりあえず怖がっとこ。
まあ多分何もしなくても彼らが助けに来そうな気がするし。
ごっこ遊びにしては実力を持った彼らが。
「オルバ様!侵入者です!」
ほらね。
「ありえん、ここには王都の近衛に匹敵する騎士を……!」
あ、おじさんが駆け出して行った。
おいおいおい死ぬわあいつ。
さて、私もそろそろ脱出しますかね。クレアさんの治療もしたいし。
「くそ、なんでこんなことに。このガキの鎖を付け直さねえと……」
「あのっ、私、これからどうなるんですか?」
残された下っ端に適当に質問する。
前世から、どんな状況でも対応できるような演技力は身につけておいた。
女スパイといえば、やっぱり演技も大事。
「あ?知らねえよ、黙ってそこにいろ!」
「……ふーん、そうですか」
魔力が練れたので暇つぶしの会話は終了です。ごめんね。
魔力を解放して鎖を破壊する。
「体勢きつかった……腕いた」
「お前、どうやってその鎖を」
「さぁ、どうしてでしょうか」
「くそっ、動くと斬るぞ!」
「どうやって?」
「え……ぐぁっ!」
シャドウが盗賊狩りでよく使っていたテクニック。
スライムを用いて下から爪のような刃で敵の四肢をもぎ取る技だ。
一撃で殺しても良かったんだけど……クレアさんを殴られて気が少し立っている。
だから少しぐらい苦しめても文句は言われない、よね?
というわけで、下っ端を殺し、クレアさんに魔力で治療を施しておいた。
多分私とクレアさんを助けに来たであろう彼女らに、無事を伝えておかなければ。
オルバとか呼ばれてたやけにいい声なおじさんの方に走っていく。
……あ、いたいた。
オルバは、シャドウガーデンと名乗る七人の少女に仲間のほとんどを殺されたことを知った。
しかし、自分もすでに悪魔に魂を売った身であり、ここで引くことは許されない。
それゆえに剣を抜き、彼女らに立ち向かおうとしたその時。
「楽しそうなことしてるね、私も混ぜてよ」
「っ!?……貴様、どうしてここに」
背後にいつの間にか立っていたのは、魔封の鎖で捕らえていたはずの、13歳ほどの少女。名前は確か……サイカ。
悪魔憑きの兆候はあったが、なぜかいつの間にかその症状が消えていた謎の多い少女。
シャドウガーデンの奴らと同じ、黒いスーツを身に纏っている。
適合者の疑いをかけ、クレアとともに攫ってきたが……。
「サイファ、無事だったのね」
「師匠!お怪我はありませんか?」
「あー大丈夫大丈夫。ちょっと肩は凝ったけど。奥にクレアさんもいるよ」
「……なるほど、貴様はこいつらの仲間か」
それなら合点がいく。
なぜかディアボロス教団や悪魔憑きについて詳しかったこいつらであれば、悪魔憑きを治すことができるということか。
……ミリアが生きているうちに出会っていれば、運命は変わっていたのだろうか。
いや、今更何を。もうすでに自分はこの世界の闇に飲み込まれたのだ。
「悪いけどここは譲ってくれるかな?アルファ。やり返すくらいはしたい」
「えぇ、それは構わないけど」
「ありがと」
「……やる気か?この私と」
「うん」
剣を構える。
こんな小娘程度にこの私が負けるはずが……!
するとサイカは、どこからか取り出した武器をこちらに向ける。
「奇妙な武器だな、いや銃か?魔剣士にそんなものが通用するとでも!」
「さぁ、試してみる?」
弾丸が発射される。
この程度、剣で切り裂いて……何?!
「なんだこれは、弾丸が、曲がっている?!」
自分に向かって発射されたはずの弾丸が曲がって自分の周りを飛んでいく。
いや、違う、これは!
銃弾に、包囲されている!
「潰せ」
「う、おぉぉおおおぉ!」
弾丸が一斉に四方八方から飛んでくる。
剣で防ぐが、その全てを防ぎ切ることはできない。
しかし、致命傷は防いだ、次の一手を。
「よそ見しないの」
「ぐあぁっ!」
銃弾に気を取られていたうちに近づかれていた、体を縦に切り裂かれる。
こいつらと戦うのは分が悪すぎる、あの錠剤を使ってでもここから撤退を!
懐から取り出した小瓶の中の真っ赤な錠剤を飲む。
そして地面を叩き、穴を作って私は情けなくも逃走した。
……その先に、さらなる絶望が待っているとも知らず。
その後の顛末を話そう。
地下に逃げていったドーピング誘拐犯は、シャドウがしっかり倒してくれた。
そして私は、クレアさんを解放し、彼女と一緒にカゲノー家に帰宅した。
なんと流石クレアさん、次の日には馬車に乗って学園に出発したのだ。
まあなんやかんやで、誘拐事件は幕を閉じたのだった。
そして、悲しいこともあった。
シャドウガーデンのみんなが、ついに私たちの元を離れる……つまり、このごっこ遊びをやめてしまったのだ。
長い時間一緒に過ごしてきただけあって、少し寂しい気持ちになった。
正直ちょっと泣いた。
まあ彼女たちには私とシドくんがいろんなことを教えたし、きっと大丈夫だろう。
できれば、彼女たちの人生に幸があることを心から願っている。
そして、それからもまあいろいろあって。
具体的にいうと、霧の龍を倒したりして。
まあ、私とシドくんも15歳。
つまり、ミドガル魔剣士学園に通う年齢となったのだ。
そういえばカゲマスのムービーシーンで銃連射してね?ってシーンがあったんですけど使ってる銃は多分単発っぽいので単発ってことで話を進めます