「ということで、今日から新しい仲間が入った」
「シド・カゲノーです。よろしくおゃいしゃーす」
気の抜けた声で挨拶をするシドくん。
アレクシアが言っていた通りなら、罰ゲームで告白してきたところを、いい感じにダメダメな男だったのでゼノンの求婚をかわすための当て馬にしたらしいけど。
……モブムーブが裏目に出たな?
少し手伝ってあげた方が良いだろうか。
剣術の授業は、アレクシアがシドくんと組んだせいでいつものペアがいなくなって他の人と適当にやった。
そして授業終わり。
「シドくん、何やってんのさ」
「しょうがないだろ?僕は必死にモブムーブに務めてたってのに、まさかこんな展開になるなんて予想もしなかったよ。というか、僕的には君が王女と友達だったことに驚きなんだけど?」
「それは、まあ……国の要人から情報を抜き取る、的な?」
「……普通に学園生活を満喫してたように見えたけど?」
楽しそうなイベントも陰謀もないのでサボってました!とも言えぬ。
いや、まあちゃんと修行はしてたので……。
「あら、私の彼氏に何か用?」
「あ、アレクシア」
そんなこんなで話していると、アレクシアもこっちにやって来た。
どうやらゼノンとの会話が終わったようだ。
「言ってなかったっけ、シドくんとは幼馴染なんだ」
「そう、通りで剣が似てると思ったわ」
いつもより少し機嫌が悪い。ゼノンと会話した後はいつもこうだ。
アレクシア曰く、ゼノンは欠点がなくて信用できないらしい。
私に対する最初の印象もそれだったらしいけど……。
「今日は一緒に帰りましょうね、シド」
「ちょっと待って、僕は学園外に住んでるんだけど」
「帰りましょうね」
「……はい」
「ということで、しばらくサイカと剣の練習はできないわ、ごめんなさい」
「あ、うん」
「じゃあ僕は次の授業があるのでこれで……」
あ、逃げた。アレクシアが追いかけた。
……友達と友達が仲良くしてて自分がハブられるのって悲しいね。
思わず顔がシュンとなる。
「アレクシアは自分の身分をわかってないね。言っちゃ悪いけど、あんな下級貴族を相手にして本当に僕から逃げられると思ってるのかな」
「ゼノン、先生」
今の様子を見ていたのだろうか。
ゼノン先生が私に話しかけてきた。
……やっぱ胡散臭いよなぁ、こいつ。
「それに、本人には自覚がないだろうけど……君の思いに気づかずに裏切るなんて、ひどいよね。それも本当の気持ちじゃなくて自分の目的のために」
「……どういう意味ですか」
本当にどういう意味?
知らないうちに私アレクシアに裏切られたの?
とりあえず深刻そうな顔をしておこう、深刻そうな話っぽいから。
「わからないふりをする必要はないよ。僕に協力してくれないかい?アレクシアには少し痛い目を見てでも、自分の立場をわからせる必要があると思うんだ」
「……」
「おっと、今すぐにでも決めろなんていうつもりは無いよ。でもただ少しアレクシアを懲らしめたいだけなんだ。それには友達である君の力が必要でね」
どうしよう、本当にこいつが何言ってるかわからない。
……とりあえず、ここは魔法の言葉で誤魔化しておこう。
「……考えておきます」
「あぁ、その気になったらいつでも連絡してくれ」
保留!!
……何をしようとしているんだ、ゼノン。
そのまま今日一日、アレクシアはずっとシドくんと一緒に過ごしていたようで私とはほとんど喋らなかった。
寂しいなぁ……。
そして、ゼノンのいまいち理解できない誘いに私は乗ることにした。
別にアレクシアに悪感情があるわけではない。
……まあ、私だけ仲間はずれっぽいのはちょっと寂しいけど、それはアレクシアがゼノンから逃げるためだとわかっているので問題ない。
ならなぜ乗ることにしたのかというと……。
……スパイっぽいことをしたかったからだ。
いや、別に自分の欲求のために友達を貶めようとかそういうわけではなくて、アレクシアを害するつもりがあるならゼノンを止めないわけにはいかないし、でも一学生の立場である私からはなんともできないわけでだからえっとそのうん。
まあ、しばらくはゼノンに協力してみようと思う。
程よいタイミングで裏切って、どっかに突き出すなり殺すなりすれば私も幸せでアレクシアも幸せ!二人とも幸せでラブアンドピース!完璧だね。
というわけで翌日。
「……ゼノン先生」
とりあえず複雑そうな顔しとこ。
「あぁ、サイカさん、例の話だね?ここじゃなんだし、場所を変えようか」
ゼノンについていく。
連れて行かれた場所は、人気のない学校内の薄暗いスポットだった。
密会っぽいところだなあ。
「僕に話しかけてくれたってことは、乗る気になったってことでいいのかな?」
「はい」
「優等生のふりして君も意外と悪いね」
「……ゼノン先生こそ」
ゼノンを信用できないというアレクシアの評価は間違ってなかったというわけだ。
いや、私もこいつが結局アレクシアに何をしたいのかわからないんだけど。
「じゃあ、作戦を説明するよ」
そして、ゼノンの悪巧みの詳細を聞いた日の夜。
私の部屋に意外な侵入者がいた。
「久しぶり、イプシロン」
「お久しぶりです、師匠」
イプシロンが私の胸を凝視してくる。
なんだこいつ……にしてもまた胸に盛ったスライム増やしたな?
「イプシロン、また盛った?」
「なっ……?!ま、まさか気づかれるとは」
「逆になんで気づかれないと思うの?」
割とずさんだから君の側近あたりなら気づいてると思うよ。
「そ、そんなことより!まさか師匠がすでにゼノンと接触しているとは驚きでした。しかも仲間として」
「え?あ、あぁそうだね」
「奴はディアボロス教団の次期ラウンズ候補。おそらく覚醒者3rdに到達しているものと思われます……当然ご存じでしょうが」
いやごめん全然知らない。とりあえずしたり顔で頷いとこ。
にしても、まさかゼノンのことをディアボロス教団設定にしてくるとは……。
私の日常生活の中からごっこの設定を用意するとはなかなかやりおる。
……いや、これもしかして暗に変なことに関わるなって言われてる?
ゼノンは危険人物だから今のうちに手を引いといた方がいいよ、って言われてるのか?
優しいなあイプシロンは……。
でも悪いな、私も今回ばかりはやりたいことがあるんだ。
それにゼノンの計画を知った以上、アレクシアを傷つけずに済むなら傷つけたくないし……。
「考えがあるんだ、とりあえずは見ていて」
「っ、せめて護衛でも」
「一応、いつでも動けるようにしておいてくれると嬉しい。どちらにしろゼノンは倒さないといけないし」
「……わかりました、シャドウ様には?」
「……今は連絡しなくていいや。イプシロンたちが動くときに必要だと感じたならよろしく」
とりあえず、ゼノンを倒す意思があること、イプシロンたちを巻き込むつもりはないこと、シドくんを除け者にするわけには行かないからイプシロンたちと一緒にしておいてほしいことをロールプレイ的に伝えたつもりだ。伝わってる?
「わかりました、どうかお気をつけて」
理解したようで、イプシロンが部屋から立ち去っていった。
ゼノンがいうには、決行は2週間後らしい。
頑張るぞ〜!
色々やりたいこととやらなきゃいけないことが積み重なってきた感じです
少し投稿ペースが遅れるかもしれません