別にティアキンに向けて予習しとこうかなとか思ってブレワイ四周目始めたら楽しくてクエストやり込んでたとかじゃないんです。
ゼノンから持ちかけられたよくわからん協力から、はや二週間。
シドくんはなんやかんやアレクシアと仲良くしているようで、私は相変わらず蚊帳の外だ。
いいもん!シドくんが意図しない王女の彼氏とかいうポジションに収まっている間に、私は密かに暗躍しているのだから。
ということで、ゼノンの悪巧みとは。
まあつまり、彼はアレクシアのあーいう自分と結婚したがらない態度が気に食わないわけで。
少し脅してやろう的なニュアンスみたいだ。
ということで、裏方を使っていい感じに誘拐するらしい。
いい感じの中身はよく知らないけど、騎士団の人なんだし、容疑が向かないようにうまくするんじゃないかな?よくわかんないけど。
あ、もしかしてあれかな?アレクシアがピンチの時に助けに入って惚れてもらうとか?
ひどいマッチポンプもあったもんだ。
そして、私の役割は非常にシンプルなものだ。
アレクシアを誘い出す餌。
つまり、アレクシアを適当に遊びとか、大事な話とかそういうので呼び出して、誘拐するらしい。
ゼノン曰く、私に捜査の目が及ばないようにしてはくれるらしいけど。ほんとかなぁ?
まあそんなことして実際捕まったら、絶対アレクシアは私のこと疑うし、なんなら王様とかに報告して騎士団通さないで私殺してきたり……はないよね?
何気に友情ブレイク寸前だよね。
というかゼノンも私がまるでアレクシアと縁を切りたがってるみたいな言い草で喋ってたけど、マジでなんなんだろうね。
ゼノンが何考えてるかマジでわからん……。
まあそんなこんなで、決行日。
デートに行くであろうアレクシアを、デート終わりのちょっと暗め、夕方と夜の間くらいの時間に校外に呼び出した。
そこで待ち受けて、アレクシアを捕まえる、手筈だって聞かされてたんだけど……。
「お前はここで死んでもらうぞ」
「えぇ……」
黒い服を着た、謎の連中が私を取り囲む。
意外と用意周到。ゼノンが雇った傭兵とかなのだろうか?こんな汚れ仕事までするなんて、闇の世界の住民か?シドくんが聞いたら喜びそうな響き。
……もしかしてアレクシアをこっち方面に呼び出すのが目的だっただけで、私はそれさえ終われば用済みってこと?
ゼノン、図ったな!
……いやまあ私も悪巧みしてたんだけど。
とにかくこれはまずい。
アレクシアの誘拐現場に立ち会えなければ、私がアレクシアを助けることができないし、そもそも女スパイとして、この敵にしてやられた状態は非常にまずい。
……いや、案外女スパイも雇い主にしてやられること多いかな?まあいいか。
早くアレクシアのところに向かわないと。
「……こいつら、ディアボロス教団ってことにしたらシャドウガーデンのみんなノってくれないかな」
とりあえず手早く襲撃者を片付けた私は、これからの動きを思索していた。
アレクシアは今どうなっているだろうか?今も戦闘中か、それとも不意を突かれてすでに捕まっているかもしれない。
アレクシアがどこに運ばれるかとかは聞いていないし、割とピンチだ。
どうしよ、襲撃者がポロッと私の名前とかこぼしたら終わりだよ。
アレクシアとは友達のままでいたいんだけどなぁ。
いや、やっぱりシャドウガーデン、そしてシドくん、みんなの力を借りるしかない。
巻き込むつもりはないとか言っといてなんだけど、やっぱ助け合いだよね。
犯罪組織の撲滅だし、平気平気!
イプシロンのやつ、律儀に一人側近を私の近くに置いてるし、その子に連絡役を頼もうか。
「オメガ、ちょっといい?」
「っ、気づかれていたのですか」
オメガ。確かイプシロンの友達、というか部下みたいな子だ。
ボーイッシュな格好をしていてかっこいい系の美人さんだ。
「イプシロンに伝えてくれる?こいつら……ディアボロス教団の手の者を殲滅する」
「りょ、了解しました。サイファ様はこれから?」
「シャドウに報告して、それから二人で動く。あなたたちは教団の動きを察知したら教えて」
「分かりました」
オメガがその場から消える。
そのひゅん!って消えるやつかっこいいよね。私もやろっと。
ひゅん。
「シドくんしくじったごめん助けて」
「えぇ、どうしたのさサイカ」
ところ変わってシドくんの安アパート。
唐突に現れた私に急に土下座されて、困惑しているようだが、流石に力を借りないわけにはいかないし。
仲間はずれにするのもなんか悪いからなぁ。
「……ということでして。できればお手伝いいただけたらなと……」
「えー、僕的にはアレクシアが僕との関係を切ってくれるなら全然いいんだけど」
「お願い、友達の友達を助けると思って!」
「……しょうがないなぁ。で、場所はどこかわかるの?」
「わ……分かんない。一応イプシロンにお願いして探ってはもらってるけど……」
「え、だとしたらイプシロンとかがここに来るかもしれないってこと?陰の実力者セットの準備しなきゃ」
「え、あ、あれ?!あれ出すの?!」
「あれ出さないと陰の実力者感ないでしょ!ほらサイカも手伝って!」
「こんなことしてる場合じゃないんだけどなぁ!」
「……はっ」
私は、見たことのない地下室で目を覚ました。
確か、私はサイカに呼び出されて、それで……。
腕には魔力封じの鎖。
そして……。
「誰かいるの?!……っ」
黒い肌をした化物。白い髪が生えており、人の形ではあるが巨大な体をしている。
一つ鉄格子の向こうにいるその存在は、私を一瞥するとすぐに目を逸らした。
サイカは無事だろうか。
「やぁ、アレクシア」
「……ゼノン」
鉄格子の向こうに、いけすかない笑い顔を浮かべた男が現れる。
「あなたが私を誘拐したわけ?そんなに私が好きだったの?」
「別に君に興味はないよ。彼の研究に出資してね、それに王族の血が必要だったのさ。アイリスの方が本当は良かったんだけど」
「お、王族の血、王族の血」
汚い、白衣を着た男が注射器を持ってこっちに近づいてこようとするのを、ゼノンが止める。
「まぁ待て。僕はアレクシアに一つ教えて置かないといけないことがあったんだ。君も気になるだろう?大事な友人の今を」
「……あなた、まさかサイカを?!」
「今頃バラバラにされて埋められでもしてるんじゃないかなぁ。シドだったかな?あの平民も、君とサイカを誘拐した罪で明日には拘束されるだろうね。拷問した後はこっちで処分するつもりだよ」
「う、嘘よ、そんな」
「本当さ。ふふ、君が余計な悪知恵を働かせさえしなければこんなことにならなかったのにね。教えてあげるよ、君は気づいてないだろうけど実はサイカは……」
唐突に天井に穴があき、何かが降りてきた。
砂煙が舞い、視界が遮られる。
かろうじて見えるゼノンの影は、その穴から降りてきた何かにぶつかった。
ゼノンの呻き声と、白衣の男の悲鳴が聞こえる。
そして、砂煙が晴れた。
「……随分と悪趣味なのね」
黒いスーツを着込んだ女。
顔は仮面で隠れた、武器も持っていない謎の女が、ゼノンを踏みつけていた。
白衣の男は衝撃で気絶している。
「き、貴様!」
「……あ」
女が足を退けると、ゼノンは転がるように脱出する。
そして何事もなかったかのように、喋り出す。
「その黒い装束……シャドウガーデンだったかな?近頃教団に噛みついてくる野良犬」
「そう、案外有名なのね、私たち」
「小規模拠点を潰したところでいい気になっているようだが、君たちが潰した拠点に教団の主力は一人もいない」
「さぁ、そんなことどうでもいいけど」
「君たちでは、教団の主力たるラウンズには勝てない。当然この僕にもね」
「……そう」
「次期ラウンズ、ゼノン・グリフィ!君の命、僕の手柄とさせてもらうよ!」
ゼノンの構えた剣が、女に向かう。
相手はこの国の剣術指南、急に現れたこの女が何者なのかわからないが、勝てる相手では……。
「……ぐっ!」
「剣は速いね、私より速い。いい勉強になるよ」
女が、剣を止めていた。手には、ナイフのようなものを持っている。
「そういえば私名乗ってなかったね。……我はサイファ。陰に潜み、陰を狩るもの」
こういう時剣でキン!ってな感じで弾けたらかっこいいんだろうけど、流石にゼノン先生は強いや。剣で防げる気がしない。
ナイフなら前世で練習して使えるけど、この世界のとんでもパワー魔力による剣との戦闘ではあんまり役に立たないのが現状だ。
インファイトに持ち込めさえすれば使えるけど、泥臭い殴り合いになるのもちょっとあんまりかっこよくないし……。
このままゼノンをボコボコにしてもいいんだけど、シドくんを無理やり連れてきた時に強そうなやつは残しといてって言われちゃったし……。
とりあえずゼノンを蹴り飛ばして距離を取り、アレクシアの方に近づく。
「あなたはいったい何なの?私の味方?」
「……さぁ、どうでしょう」
女スパイムーブに徹する。とはいっても彼女の方にきた時点で味方って言ってるみたいなものだけど。
シドくんがどこにいるのかわからない。
多分こっちに近づいてきてはいるんだろうけど、迷ってはいまいな。
心配だ、アレクシア連れて逃げながら探してみるか。
ナイフで鎖を切り落とす。
「とりあえず一緒に来て」
「……わかったわ」
物分かりが良くて助かる。
いつもなら知らない相手にもうちょっと反抗しそうなものだけど、流石に今はそういう状況じゃないのかな。
「彼女を逃がされるわけにはいかないな」
「そこ、どいてくれる?」
ゼノンに攻撃して傷負わせるとシドくんの楽しみがなくなるからなぁ。
いい感じに逃げたいな。
「どくと思ったか!?」
「動くよ、アレクシア」
「え、うわぁっ!」
アレクシアの手を握って移動する。
ひゅん!の応用だ。
ゼノンを迂回して回り込み、後ろに回る。
「何?!」
「逃げるよ」
「あ、はいっ」
アレクシアの手を引きながら走る。
めっちゃ後ろからゼノン追ってきてるよなぁやっぱ。
足片方撃って走れなくする……のはダメだよなぁ。
5体満足じゃないとシドくんに文句言われそう。
「あ、あのサイファさん、これどこに向かってるんですか?」
「……今はついてきて」
なぜかいつの間にか敬語になっていたアレクシア。ちょっと新鮮だな。
どこにといわれてもシドくんがどこにいるかわかんないから適当になんだよな。
うーん、どうしたものか。早く来てくれ〜!
「逃がさないぞ!」
剣を投げてきた。咄嗟にアレクシアを庇いながら剣をナイフで弾く。
「あ、ありがとうございます」
なんか塩らしいな今日のアレクシア。やっぱ怖かったんかな?
……あ、シドくんの足音だ!やっと見つけたぞ、これでこのめんどくさい逃避行も終わりだ。
「ここでいいかな」
「ほう、観念する気になったかな?」
剣を拾い上げたらしいゼノンがこちらに剣を向ける。
「サイファさん……」
「……私たちの主が、あなたに会いたいそうよ」
「主?力の差を感じて仲間に泣きついたのかい?」
「待たせたな、サイファ」
「……シャドウ」
本当に待ったんだぞ、おい。
まあ、その後の結果は予想がつくと思うけど。
シャドウがゼノンをボコボコにした。
流石に街一つ吹き飛ばすレベルでアトミックを使うとは思わなかったけど、まあ必要経費だろう。
王女を助けたんだ、そのくらいは多めに見てくれ。
アレクシアはちゃんと帰した。
なんかサイカ……私のことを心配してくれてたので、助けといたよと言っておくとすごい感謝されてどっかいった。
また会えますか?とかいわれた。毎日会ってんだよなぁ。
変なことバラされて友情ブレイクにはならなかったらしい。良かった良かった。
あと、後日イプシロンから聞いたことだけど、私とアレクシアがよくわかんない奴らに襲われたりしたおかげで、教団の動きがわかって王都内の拠点を一掃できたらしい。良かったね。
まあ私がアレクシアを守り損ねたフォローなんだろうな。相変わらず優しい子だなぁ。
後は、とある悪魔憑きの少女も回収できたらしい。
色々と実験を施されていてヤバい状態だったけど、イータがなんとかしてくれるそうだ。
……そんな子いたっけ?まあ多分そういうストーリーなんだろうな。
そして、何よりのビッグニュースは……。
「私、好きな人ができたわ」
「……え?」
誘拐事件から数日後。
何だかんだ学校に復学したアレクシアは、私にそう言い放った。
「……もしかしてシドくん?」
「あんな冴えない男を好きになるわけないじゃない。彼とはこれからも友達としてよろしくってお願いしたわ。断られたから斬ったけど。そうじゃなくて、私は運命の出会いをしたの」
「は、はぁ……」
「私が誘拐されてた時にね、颯爽と駆けつけて、手を引いて一緒に逃げてくれた人がいたの!まるで物語の王子様みたい……またお会いしたいわ……」
「え、あ、うん……」
アレクシアが乙女のような顔でうっとりと語る。
……ごめんアレクシア、私は君にとんでもないものを背負わせてしまったかもしれない。
アレクシア救出RTA
別にアレクシアがサイファのこと好きになる展開は全く考えてなかったんですけど百合脳が働いてしまったので……。