そんな私にも感想を頂けたのでなんとか投稿です。
文章能力がただでさえなかったのに、より落ちているので、リハビリで書いた駄作になりますが、よろしくお願いします。
「クロメ…クロメええええ!!」
辺り一面に広がる荒れ果てた大地にウェイブの咆哮が轟いた。
ウェイブの瞳にはクロメの影すら映ってはいない。
しかし、叫ばずにはいられなかった。
それが徒労に終わろうとも……
何もしなくては何も起こらない。
「ウェイブ…」
隣で走るランにはウェイブがあまりにも痛々しく感じ、胸を痛めていた。
宮殿でウェイブと落ち合いそれから走り続けていた。
クロメは一足先に姉のアカメと死合うためにアカメの元に向かっていた。
目的地は左京亮により口伝されていた。
「あれは!?」
「えっ」
思案の海に潜っていたランがウェイブの声に視線を先に送る。
夕日が地に沈み、夜の戸張が辺りを覆い、詳細に全貌が見えぬなか、多くの何かが地に伏す中に佇む人影が。
「クロ……違うあれは!!」
「中村さん…」
驚きと悲しみ、怒りという矛盾した感情を瞳に湛えたウェイブの先にランが件の人物の名を上げた。
近づくにつれ、見えてくる像。
幾多の死骸。おそらく、暗殺部隊と思われる様相の死骸の山の中に、着古し年季のいった愛用のマフラーを目深に巻き、同心羽織をそよ風にはためかせる中村主水がそこにいた。
「来ると思っていて待っていた」
「中村さ……」
「時間がないんだ!そこをどけ!!」
ウェイブがランの言葉を遮り叫び、瞬時にグランシャリオを纏い、地面を踏み込み突っ込んだ。
踏み砕かれた砂塵は舞い、弾丸のごとき速さで主水に肉薄する。
以前の容赦ないやり取りゆえに、元来甘さの抜けきらぬウェイブですら主水を敵と認識を改めていた。
「簡単に退くなら、こんなとこにはいねぇよ」
暗闇を裂き間近に迫るウェイブに、呆れるように目を細めた主水は、ため息をつくかのように、マフラーごしにふっと息をつくと、体を回転しつつウェイブの拳を紙一重にかわし、腰から刀を鞘ごと抜くと、ウェイブの首にあてがい、回転の勢いを合わせて巻き込むように振り切りウェイブを弾き飛ばした。
「くそっ!」
ウェイブは空中で身を翻し、着地し、再び地面を蹴ろうとした刹那、
「がはっ!!」
ウェイブの視線は宙を巡っていた。
そして、次に気づいた時には地面に仰向けで伏し、主水によって鐺(鞘の先端)で鳩尾かたりを押さえられつけられている状態だった。
「覚悟がたりねぇな。俺が金をもらってりゃあ、お前は既に四回死んでるぞ」
「覚悟…だと!!」
「あぁ、人の死合いを妨害する覚悟がな」
「………」
主水の『死合』という言葉にウェイブは言葉を無くす。
分かっていた。ただ頭で考えようといや、意識しようとしていなかっただけ。
いつも、笑顔で迎えてくれていたクロメが死ぬという現実に目を背けていただけだった。
それを主水に目前につきつけられたのだ。
ウェイブの脳裏にクロメとの思い出が走馬灯のように駆け巡る。
仕事を共にこなしたあの日々。
幾多の辛い経験を共有したからこそ乗り越えられたこと。
いつもクロメのその笑顔に癒やされていたこと。
自分が苦しい時には必ず言葉を発せずとも、寄り添っていてくれたこと。
頬を一筋の涙が流れ落ちた。
それと共に沸き上がる熱き思い。
「絶対に……絶対に止めて見せる!邪魔をするなああああぁぁ!!」
ウェイブの体から熱気が溢れ出す。
完全に動きを止められていたはずのウェイブが主水の鞘を弾き天高く舞い上がる。
漆黒の暗闇に覆われた闇夜と同化するかの如くウェイブの姿が消える。
「………」
主水はウェイブの姿を見失ったのか、静かに鋭い視線を辺りに巡らせつつ、周辺の気配に五感を研ぎ澄ませる。
身動ぎ一つせずにあること数秒……静寂を破るが如く主水は身を翻し、黄金の十手を構えガードの体勢に入る。
刹那、闇より黒い影が主水に降り注いだ。
「くっ」
主水はその衝撃を受け流すこと止めきることも出来ずに遥か後方に弾き飛ばされ粉塵を巻き上げ地に伏した。
「これが俺の覚悟だ!!」
息をきらせつつウェイブは噛み殺すように呟く。
まるで、自分に言い聞かせるように。そして、主水に回答を告げるかのごとく。
「ラン行こう」
「いえ、私はここで成り行きを見守りたいと思います。後はウェイブあなたにすべてを任せます」
ランは優しく微笑んでウェイブに行くように促した。
クロメは大事な仲間には違いない。しかし、この件に絡むには何かが足りないと感じていた。
姉妹、仇、恋愛関係?など入り乱れつつも、強いしがらみのごとき関係の中ではあまりにも薄弱な『仲間』という関係。
ランは場違いに感じ始めていた。
自分が果たしてその中に割って入っても良いものなのかと。
ただ、それだけではないここに留まらなければならない理由も存在してはいたのだが………。
「分かった必ず止めて二人で戻ってくる」
「ええ待ってます」
ウェイブはランの意思をも背負い強い思いで走り出した。
ここに至るよりも数段強い覚悟を瞳に灯していた。それははからずも主水との戦いが灯したものかもしれない。
「悪役も大変ですね中村さん」
ウェイブが走り去り、姿が見えなくなり、わずかに時間をおいた後に、ランは仲間に語りかけるように数間はなれた先の暗闇に声をかけた。
その声には敵意も、警戒するかのような色も含まれてはいない。以前と全く変わらないものだ。
「人を殺すやつが悪くないはずはねぇだろ」
身体に付着した埃を払いつつ暗闇にからスッと姿を表した主水は、ランの声かけに答えるように呟く。
以前の仲間であった時と変わらぬような、掛け合いではあるが、主水の発することばにはどこかトゲトゲしさを感じさせられる言葉遣いである。
「で、何故残った?」
「少しお話ししたいことがありまして。以前の中村主水と」
ランの声色は先程の優しく艷のこもったものではなく、どこか真剣みを帯び、悲しげなものとなっていた。
暗さゆえに共に表情は分からなくとも、声色と仕事を共にしていた時間、経験則からお互いに真意は計れているのだろう、見えぬ中で微かに笑みを湛えていた。