<<DNAシークエンスをロード中>>
無機質な電子音声が癪に障る。
彼は静かに息を吐き、額に汗を浮かべながらも、一切の声を出さなかった。彼の目は、痛みと苦しみで赤く染まっていたが、彼は自分の耐え忍ぶ姿勢を崩すことはなかった。
すると、彼に声がかかった。
「大丈夫?」
彼は静かに答えた。
「信頼しています。僕を裏切るということは、貴女がエツィオとの思い出を裏切るということです。」
嫌な言い方だ。
『安心してくれたまえ。私は君が壊れた時のために、備えを万端整えているさ。』
彼女は冷たく皮肉を返した。
だが、彼の運命が普通の少年では居られなくしたことを思い出すと、後悔の念を感じた。
ほんのすこしだけ。
それでも、少年は彼女を信じ、彼女もまた彼を信じていた。
それだけが、この瞬間における唯一の真実だった。
深淵なる記憶の海に沈む感覚。
それは彼にとって初めてのものだったが、嫌いだったわけではなかった。
むしろ、彼は自分の意識を手放すことを快楽のように味わっていた。しかし、その思いの中断を告げる異常な音と振動が響き渡った。不気味な静寂を切り裂くような、鋭く尖った音。
まるで、世界が彼に牙を向くかのような爆発の音だった。
「埋めるのがっ・・・! 速いっ・・・」
つぶやく彼の言葉が、暗闇に消え去った。
<<シンクロを開始します。>>
街なのか?
無秩序に広がる切り立った壁はかつて来たりし者の遺構とは違うものだが、同じように死にゆく運命を辿っていた。
その場所に足を踏み入れた瞬間、彼は背中に絡みつくような視線と、殺気を感じた。
迫る何かを避け、刃を差し出す。
思考を差し挟む余地もない流れる動きは、叔父と積み上げてきた日頃の修練の賜だった。
死にゆく仮面の男の最期の言葉を聞き、疑問に満ちたこの場所で成すべきことは理解した。
「眠れ、安らかに、兄弟よ」
彼は、自分が何者であるのかを再確認した。アサシンであり、まだ見ぬ敵との戦いに備え、大きく息を吸い、周囲に目を配った。
「起きてください、先輩。」
「寝てはいない。そのまま無視していればやり過ごせるのかもしれない、と思っただけで。」と、少年は答えた。
少女は、少年の顔を写すような悲痛な表情を浮かべた。
「僕は今そんなにひどい顔を?」
窓の外は極寒の雪原の夜の。窓ガラスには土気色の表情が映る。
「確かにひどい顔だね」
少女の目は、彼が悲しそうな表情をしていることに気づき、心配そうに彼を見つめていた。
彼女は、彼の苦悶を理解しているような、優しい眼差しを向けていた。
「笑いなよ。 無理にでも」
空元気も元気の内。彼の母親の言葉だ
それに答えた両者はぎこちない笑みを交わす
この女性は信頼できる、ただの直感だがそれが外れることはまずありえない
「あまりこういうのは得意じゃないんです。」
「奇遇だね。僕も。」
「エツィオ・アウディトーーーーレ!!! 相変わらずあなたは流麗で無駄がなく美しい!!!」
エツィオ・アウディトーレその名を呼ばれて振り向くと、朝日を背に立っていたのは見知らぬ女性であった。
彼女の髪は、朝日に照らされるとより一層赤みがかって見えた。髪の毛の先には、少しカールがかかっており、清らかな小川の流れを連想させる。
彼女の唇は、淡いピンク色で、やわらかそうに見えた。
微笑んでいるときには、丸みを帯びた口角が、さらに彼女の可愛らしさを引き立てた
。
彼女の姿勢は、自信に満ちていた。背筋を伸ばし、しなやかなラインを描いた肢体は、彼女の美しさをより一層際立たせていた。
彼女の瞳は、深い青色で輝いていた。それは、ヴェネツィアに向かうときに見たアドリア海のように清澄で、瞳の奥には何か秘めたものがあるように感じらる。
「どこかでお会いしたかな? シニョリーナ?」
ただの定型句だ。一度でも目にしていれば忘れられるはずがなかった。