ある日、グリード王国でこんな噂が流れていた。
「ふーん、凄腕の治癒士ねぇ」
「通常の治癒魔術では治せない体の不調すら治してしまうと評判な様だ、アゼリアがこんなチラシを持ってきてな」
俺はアルから1枚の紙を受け取るとそこには広告のような文面が書かれていた。
「『慈悲の神の生まれ変わり』『あらゆる傷を癒すグリードの救世主』……胡散臭いなぁ」
「私もそう思う、だがアゼリアがどうしても興味があると言っていてな。折角だからマスターもどうだ」
俺は顎に手を当て考える、アストラでは医者は存在しない。というよりは外科医にあたる存在がいないというのが正しいか。
基本的に切り傷などは治癒魔術で治せるし、毒などの中毒にかかってもそれに対抗できる薬草等が見つかっている為あまり医療技術が発展しなかったのだろう、だが病気などは魔術で治すことは出来ない(魔術で治癒する場合その部位に対するピンポイントな術式を作らなければならない為誰もやらない)。
その為アストラで癌のような病にかかったら基本的に呪いと認識され俺達から見れば余り意味の無い祈祷をされる。
「治癒士の仕事を否定はしないが、正直誰がやっても似たようなものだと思うがな」
「どうにも、その治癒士と言うのは治療中の姿を他者に一切見せないらしい。そのせいか噂も加速しているのだろうな」
「じゃあ……行ってみるか? どうせ暇だし」
「そうか、それでは日取りを決めておいてくれ。私はアゼリアに伝えてこよう」
そうして大体1週間後……昼のグリードの街
俺とアル、アゼリアは街の住人に聞いて噂の治癒士のいる場所まで来たのだが
「……治癒士って言うから教会所属かと思ったが、ただの家だな」
「でもマスター見て下さい、沢山人が並んでいます」
ザザが作った編笠を被るアゼリアが指を指す先には10人以上の列が扉の前で待機していた。
「本当だ、しかし……思ったより並んでいるな」
「うーむ……マスター、この人数だ。怪我がある訳でも無いのに私達が並ぶのはどうだろう……」
「流石に迷惑だよな、アゼリア……悪いかもしれないが……」
「はい、お医者様の邪魔をしてはいけませんよね」
急遽俺達はグリードの街巡りに予定を変更し、それなりに楽しんだのだが……夕方頃に事件は起きた。
「アイスとか何年ぶりに食ったかな」
「マスターはアイスは嫌いなんですか?」
「最近甘い物への執着が減ってな……」
「ふむ、この世界にもバニラの様な物があるんだな……今度探してみ……マスター、あそこを見ろ」
アルが指を指した先を見ると、一人の男性が胸を押さえて苦しんでいた。
俺達は男に近寄ると肩を支え話しかける。
「おいあんた、大丈夫か?」
「だ……大丈夫です……いつもの事なので……少し待っていれば収まります……」
そう言う男は尋常ではない表情をして苦しそうにしている。
「でも苦しそうですよ、治癒士の所に行けばいいんじゃ……」
「いえ……これくらいで先生に迷惑はかけられません……」
「先生?」
「私に医療技術を教えてくれる先生です……見習いとは言え医者が病気にかかる訳にも行きませんから……」
その言葉に俺とアルは違和感を覚えた、この世界で医療や医者と言う言葉は馴染みが無い。この世界での通称は治癒士だ、なのにこの男ははっきりと
「あんたの言う医者の所に連れていけ、俺達も用があるんだよ」
「え……し、しかし……」
「お前を助けるのではない、お前の言う先生とやらに会ってみたくなったのだ」
苦しそうな顔をしながらも悩む男を二人で担ぎ上げると男も諦めたのか場所を指定してくれる、そしてその場所まで行くと……
「なんだ、噂の治癒士の所じゃねぇか」
「という事は、治癒士は本当は医者だという事か」
幸い並んでいる人はいなくなっているようで、割り込みする必要なく入ることが出来た。
「医者はいるかぁ!」
「患者を連れて来た、先生とやらはここにいるのか」
中に入ると規模の小さい待合室の様な部屋だった、受付の女性も俺達が男を担ぎ上げて入って来るのに驚いたようで、しかし男の顔を見ると直ぐに顔を青ざめた。
「リディ君!? 一体どうしたの!?」
「街で胸を押さえていたからな、ここにこいつの言う医者を呼んできてくれ……いや、俺達から行った方がいいのか?」
「その必要は無い」
すると、奥の部屋から現れたのは────
「ドワーフ?」
「なんだ? ドワーフが治癒士やってちゃ悪いのかよ」
ドワーフだった、立派な髭を蓄えた背丈の低い種族。本来は鍛冶だったり工芸品だったりと物作りの印象が強いのだが……このドワーフは髭が無い、恐らく剃っているのだろう。
「リディ、お前自分が病気なのを黙ってたな」
「す、すみません……病気を治す側が病気だと思われたら恥ずかしく……っ!?」
ドワーフの医者は男に平手打ちすると胸ぐらを掴み上げて静かに怒鳴った。
「恥ずかしいで治るなら医者はいらねぇんだよ、お前もよくわかってるだろうが」
そのまま引きずると一度俺達の方を見た。
「俺はケセド、アホ弟子を連れて来たのには礼を言う」
それだけ言うとケセドは奥の部屋に引っ込んでしまった。
「……ケセドか」
俺が思わず呟くとアルは俺の考えを悟った様で神妙な顔をしていた。
「マスター、どちらにせよ今日の所は帰ろう。もう日が傾き始めている」
「ああ、それじゃ。俺は蓮司、何かあったら今度は患者としてくるよ」
「ありがとうございました!」
受付の女性がお礼を言ったのを聞くと俺達は一度ギルドに帰る事になった。
そしてその日の夜、ギルドの酒場でアルは俺に話をしていた。
「マスター、昼の反応だが……」
「ああ、あいつは間違いなく転生者なんだが……確信が持てない」
「何? マスターがそんな事を言うとはな」
「確かに俺の眼は反応した……だが何というか、今までとは違うんだ。例えるなら今までの転生者は暗闇の中に光る蝋燭みたいなものだ、ほのかに輝いてそれを見分けられる……それがあのケセドとか言う男の光は、太陽だ。今までの転生者とは比べ物にならないくらい強力な光を放っていたんだ」
俺が主観的ではあるがあの男の反応を話すとアルは何かを思い出したようだった。
「そう言えば以前、マスターは神の話をしていたな」
「うん? ああ、サリエルの事か……」
「そうだ、その時確か……ああ、その神達が一部の転生者に強い加護を与えたと言っていたな?」
その言葉に俺はハッとなり、おもむろに立ち上がると外へ向かった。
「マスター!? もう夜だぞ!」
「気になった事が出来たからな! ありがとうなアル!」
そして改めてグリード王国、俺は魔術を使って街中を探索していた。
「これじゃない……この像も違う……これか!」
俺はある物を発見するとその場所へ降り立つ、そこは街の隅に存在するボロボロになった羽の欠けた女性の像だった。
俺はそこに本気で祈る、すると景色が変わった。
「──―あれ? どこだここ」
俺はてっきり真っ白い空間だと思ったがそこは小さな森の小屋だった。周囲を見渡すと小さな小道具が置かれており素人目に見てもセンスが良く温かみを感じる。
「あらぁ? 人の子がどうしてここにいるのかしらぁ」
声のした方向を見ると女性が立っていた。銀色の髪を一つに纏め所謂ナース服に身を包んだ……その、胸部の大きい女性が立っていた。
「グリード王国の神、メタトロンか?」
「そうよぉ、元だけどねぇ」
メタトロンはゆったりとした話し方をし、椅子を用意すると俺に座るようにジェスチャーをしてくる。
「貴方は誰かしらぁ? マモンの手の者かと思ったけど悪意を感じないしぃ」
「簡単に説明すると……」
俺はサリエルと会い、そこで各自が転生者に特別な加護を与えた事を把握している事を伝えた。
「良かったぁ、サリエルちゃんも無事なのねぇ」
「あぁ、邪神に立場奪われてるから無事とは言い難いだろうけど……あんたもそうなんだろ?」
「そうなのよねぇ、サリエルちゃんに話は聞いていたんだけど、寝てる間に奪われちゃってぇ」
「……寝てる間?」
「まぁまぁ、その話は後でしましょう。他の用事があって来たのよねぇ?」
俺は喉まで出た言葉を呑み込んでケセドの話をした、するとメタトロンは顎に手を当てて考える。
「うーん……多分その子で合ってるとは思うけどぉ……魂の時の顔しか見てないから何とも言えないわねぇ、加護はどんなのだったぁ?」
「いや、まだ……ただ医者をやってるみたいだった」
「あらぁ、素晴らしいわねぇ……あ! それならきっとその子だと思おうわぁ」
「急に断定したな、何かあるのか?」
「実はねぇ……あの子が地球に居た頃、とっても悔やんでたのよぉ」
「悔やんでた?」
「そうなのぉ、あの子地球でも医者をやってたみたいなんだけどねぇ、患者を一人死なせちゃったみたいなの」
「……」
「勿論あの子は頑張ったわぁ、難病だった子だけどしっかり治したみたいなのぉ。でもねぇ……それから退院した後に全く別の病気で亡くなっちゃったの」
メタトロンは俺の手を撫でると愛おしそうに遠くを見ていた。
「治療して誰もが喜んで、気づかなかったんでしょうねぇ。潜伏し続けた感染症が、患者だった子の弱った体を蝕んだの。あの子はその時別の病院に居て、最後に会う事も出来なかったのよぉ。それからあの子は苦しんで悔やんで、ずぅっと人々を治していたら自分の体に気づかずに過労で死んじゃったの」
「私があの子を選んだのはねぇ、優しい子だからなの。魂だけの状態で、ふわふわとした意識の中でもずぅっと人を救う事だけ考えていたのぉ。そんなの、助けたくなるでしょう?」
「そうだな……」
俺は立ち上がるとそっとメタトロンの手を退ける。
「ありがとう、メタトロン」
「それは何のありがとうかしらぁ?」
「……色々意味があると思ってくれ、それじゃあ俺は戻るよ」
そうして景色が切り替わると、俺はボロボロの神像を担いでギルドに戻るのだった。
「……はぁ?
翌朝、俺は一人でケセドの下にやって来ていた。
「あぁ、俺のギルドは医者が居ないからな。怪我した時に詳しい人間がいるってのは頼もしいもんだ」
「断る」
キッパリと断られてしまった、俺が何か言う前にケセドは続けて語る。
「今までも他のギルドからそういう誘いは来たが……俺は金が欲しくてやってる訳じゃない。他の治癒士でも充分だろう」
「治癒士じゃなくて医者が欲しいんだよ」
その時、ケセドは眉をピクリと動かした。
「そうか、医者か……お前、治癒士と医者の違いがわかった上で言ってんのか?」
ケセドは恐らくハッタリ……というより自分以外に転生者が居ないと思った上で医者を使っていたのだろう、だが生憎こちらも転生者だ。
「あぁ、悪い……そう言えばあんたが何科の医者か聞いてなかったな、外科医か? 内科医か? それとも元は産婦人科だったりするのか……」
直後、俺の喉元にメスが突きつけられていた。患者を治す道具が、今一歩でも動けば人を殺す道具となっている。
「お前……どこでその言葉を知った?」
「何だ……日本人なら医者には一度はお世話になるだろ? 前世は腰痛が酷くてな」
ケセドは周りを見渡すと受付にまで聞こえる声で叫んだ。
「ユナ! 扉の札裏返しとけ! 今日はもう閉めるぞ!」
そして慌ただしく扉の音が聞こえると、受付の女性が入ってきた。
「どうしたんですか先生?」
「悪いな、ちょっとこの男と話がある。少し外で時間潰して来てくれ」
「は、はぁ……わかりました」
受付の女性は不思議そうな顔で引っ込むとケセドは改めてこちらを見た。
「さぁ、話せる事全部話してもらおうか」
「マジかよ……転生者って俺だけじゃなかったのか……」
「まぁ、そんな言いふらすことでも無いしな」
ケセドは俺のギルド周りの話をすると手で顔を覆い絶句していた。
「で? 転生者は皆それぞれ加護……能力みたいなのを持ってるって?」
「そうそう、俺は事情があってな、他の転生者を見分けられる眼を貰ってるんだ」
「成程な……それじゃ俺の
ケセドが虚空を視るので俺は質問した。
「これ?」
「あぁ、見えないんだよな。簡単に言うと俺は目の前の人間の健康状態が見えるんだ、名前、身長体重、血圧なんかもな……ただ一度は調べないと情報は表示されないが」
「医者にうってつけの能力じゃないか」
「そうでも無い、今も言ったが患者の健康状態は調べないと表示されない……この世界にCTスキャンがある訳でもないしな」
「CTスキャンねぇ……」
「話を戻すが、俺はやっぱりここから離れるつもりは無いな。弟子もまだまだ未熟だし、俺がいないと困る奴も多いからな」
これ以上の説得は難しいと悟ると俺は立ち上がった。
「そうか、今日の所は諦めるよ」
「あぁ、だが勧誘は今までで一番惜しかったぞ」
「慰めか? 受け取っとくよ」
扉に向かい帰ろうとすると突然勢い良く開き、俺の鼻を打ち付けるとグリード王国の兵士が入り込んできた。
「だ、大丈夫か? おい、ノックくらいしろよ! それに今日はもう閉めてるんだ」
「す、すいません……ですが貴方の力を貸してほしいんです!」
俺とケセドは顔を見合わせると兵士の話を聞く事にした。
そしてグリードの街、門の外壁の上にて俺とケセドは外にいる魔物達を見ていた。
「……マジで一斉に来てるな、500匹はいるぞ」
「
兵士がやってくると10名程度の治癒士を連れてきた。
「そいつらが俺の指揮下に入る奴らか?」
「はっ! 現在あの魔物達に対処する人数は冒険者36名、兵士51名、治癒士が10名です!」
ケセドがその言葉に頷くと俺は思わず声を上げる
「は? たったそんだけしか集まってないのかよ、あの群れが全部ゴブリンならまだしも色んなもんが混合してんだぞ? しかも見る限り上位の魔物も居るっぽいし」
「はっ……恥ずかしながら、あの魔物の群れを見て多くの冒険者は逃げました、我々兵士達も半ば全滅する覚悟できています」
ケセドはそれを聞くと俺の方を向き、険しい顔付きで答えた。
「お前は逃げた方がいい、無駄に怪我人を増やす必要も無いしな」
「何言ってんだ、俺だって戦うぞ」
「お前はギルドのトップなんだろ?お前は俺と違って待っている奴らが沢山いる筈だ。わかったら避難しな」
その言葉に俺は、こいつは色んな感情が混ざった表情をし、頭をかき、悩んだ末に溜め息を吐くとケセドに言い放つ。
「もうめんどくさい。決めた、俺が全部終わらせればお前はウチのギルドに入ってくれるな?」
「は? 何言って……」
言うやいなや俺は外壁から飛び降りると魔力を固めて魔術陣を描き始めた。
「おい!? 何やってんだ戻ってこい!」
「俺さぁ! こういう真面目な雰囲気嫌いなんだよ!」
「はぁ?」
「誰かが命をかけて何を守ろうとか! 何のために何を犠牲にするとか! 何歳になってもそういう真面目なの本当耐えらんねぇ! だから!」
最後に俺は言い放つと魔術陣と並行して詠唱を開始する。
「一回だけ無茶してやるよ! お前らのその話全部茶番にする為にな! 『詠唱開始!』」
「な……何だあれは……」
門の傍にいた兵士の一人が思わず呟く、目の前の男が突然幾つもの魔術陣を浮かせながら詠唱を始めたのだから
「『一に詠むは宙ノ唄、天を支配し悲哀を読む。
二に詠むは星ノ唄、地を支配し義憤を読む。』」
魔術陣は不規則に動きながら少しづつ一つの方向に重なっていく。
「『これより起こすは神の説法、跡に残るは塵も無し。
これより視えるは天変地異、僅か数瞬の地獄なり。』」
魔術に乏しい人間でもわかる程の魔力の奔流が、たった一人の男に集まっていくのを感じている。
「『有象無象は無に還り、古強者は敗者也。』
見せてやるよ陣と詠唱の混合魔術!!
『森羅万象は我が手中、全部纏めてぶっ飛ばせ!!』
『アナイアレイト!!』」
直後、魔術陣は砕け散り、迫り来る魔物達に異変が現れる。
動きが鈍ったかと思いきや、突如地面が拳の如くせり上がり全ての魔物は上空へと放り出された。
そして息付く暇も無く、空は曇り始め天からの罰だと言わんばかりに激しい雷が無防備な魔物達を襲った。
魔物の中には雷に耐性がある魔物も居ただろうに、悲しいかな大地に吹き飛ばされた衝撃で殆どの魔物は備える事も出来なかった。
そして静寂を取り戻すと、そこは地獄の様だった。全ての魔物は炭と化し、生きている者は誰一人居なかった。
「お前……一体何者なんだ?」
「言ったろ、ギルドのマスターだって。じゃ、考えといてくれよ、ケセド」
そう言うと俺は凱旋の様にギルドに戻るのだった。
後日、ケセドはギルドにやって来ていた。
「あれから大変だったんだぞ」
「そりゃ大変だ、どんな風に?」
「兵士や冒険者達がお前の事を誰だ誰だって俺に聞きやがって! まるで警察の事情聴取みたいだったわ! 俺に後始末丸投げしやがって!」
「まぁまぁ、誰も怪我せず終わったんだから良いじゃない」
「……はぁ、それはそうだが」
そしてケセドは表情を引き締めると改めて本題に入る。
「……あれからリディ……俺の弟子の所に戻ったんだ、そしたらよ、あいつに怒られた。ここの事は心配しなくてもいいってよ、俺がいない間立て札戻して患者を診てたみたいなんだ。結果はどうだったと思う?完璧だったんだ。あいつは未熟だと思ってたが、ずっと成長してたんだな」
「人は自分の知らない所で強くなってるもんだ、俺は何度も見てきたよ」
「俺はここから離れたくないとずっと街医者をしてたが……どうも本心は違ったみたいでな」
ケセドは立ち上がると俺に手を差し出した。
「入るよ、アンタのギルドに。世界中駆け巡ってどんな奴でも治してやるさ」
「そりゃ頼もしい限りだな、ようこそギルドあさかわへ」
俺は手を握り返すとケセドは笑った、この日新たな仲間がギルドに加わった。
「はい次、ゴードン……172cm体重71kg……筋肉量が落ちてるな、任務サボったか?」
「あー、最近朝メシ食ってねぇからかな……」
「ダイエット目的なら何も言わんが不摂生で痩せるのは許さん、暫く早起きして飯増やせ。それ以外は問題なし、次」
「よ、よろしく頼む」
「カナデか、158cm体重59kg……まぁ問題ない、強いて言うなら足周りが太いか、まぁ冒険者なら普通だな。次」
「ふ、太いとか言わないでくれないか……!?」
「よ、ケセド」
「マスターか、アンタ朝健康診断受けただろ……いや、カナデで最後って事か」
ケセドはカルテを書く手を止めると椅子にもたれ掛かる。
「お疲れ、水飲むか?」
「あぁ、助かる……ふぅ、今月はアル中もヤニカス患者も無し。毎月こうだといいんだが」
「……そろそろ100年近く経つが、どうだ?」
「もうそんなに経ったか、ドワーフの体になってからは時間が緩慢に感じるな」
「グリードの病院もかなり立派になったじゃないか、わざわざ他国から治療しに人が来るらしいぞ」
「確かにリディに技術を教えたのは俺だが、それだけだ。俺が居なくなってからあそこまで大きくしたのは紛れもなくあいつの力さ」
「謙遜だな、病気って概念が広く伝わったのは確実にお前の力だぜ」
ケセドは誤魔化すように水を飲み干す
「それで? 用はそれだけか?」
「サミュエルの奴が医療装置のメンテナンスをするらしいから、要望があるなら早めに聞けってよ」
「そうか、ならまずCTからだが───」