異世界ギルド『あさかわ』   作:ヘルメットのお兄さん

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2 若き戦士 ゴードン 170年目

 冒険者ギルド『あさかわ』──―170年も前から存在している最も有名なギルドだ。どの国にも支部が存在し依頼するのも受けるのも困らず、あさかわの冒険者だと知れば誰もが安心して仕事を任せられる、それ程実力と信頼が高いギルドなのだ。

 

 俺、ゴードンは転生者だ。前世の名前などどうでもいい、俺はこの世界での主人公といってもいいだろう。

 

 俺は高校時代顔が醜く酷い肥満体系のせいで虐められていた、そしてある日学校の不良達のに鞄を道路に投げられ、その日偶然好きだったラノベを入れてて……それで慌てて取りに行ったもんだからそのまま異世界トラックに。

 

 正直なところ、マジで異世界転生するとは思ってなかったし魔法……じゃなくて魔術か、魔術があると聞いて俺は興奮した。だって正しくラノベの展開じゃないか! いじめられっ子が転生して無双、英雄として持て囃されハーレムを作る! その為に俺は鍛えに鍛えた。

 

 俺の家は騎士の家系で平民上がりだからか苗字は無かったが剣技を教えてくれた親父には感謝している。おかげで俺は村一番の戦士だった、幼馴染のカレンとも結婚する約束をしたり……俺は正に主人公だった。

 

 そうして俺はある日冒険者というものがあるのを知った、ますます興奮したぜ? 冒険者ギルドに入ってメキメキとランクを上げる! そして瞬く間にギルド一の冒険者になってハーレムが……とにかく、俺は冒険者になる事を決め、今日この『あさかわ』スロウス支部に来たのだった。

 

 俺は勢いよく扉を開ける、中は酒場になっていて若い俺を見てベテランが侮る! そしてベテランが「おいおい、ここはガキが来るところじゃねぇぞ?」と言ったところを俺がひと捻り、すると周りの冒険者が「あ、あいつゴールド級のAを!」「何者だあの小僧!?」となって俺の華やかなスタートを切る……と思っていたのだが

 

「いらっしゃいませ! ギルドの依頼受け付けはそちらの彼女に、冒険者登録はこちらです!」

 

 ……なんだか様子がおかしい、酒場かと思ったら皆長椅子に座って整理券の様なものを持って待っているしなんというか……市役所みたいだった。

 

「あ、あの……」

 

「はい! 冒険者登録ですね! それではこちらの履歴書にプロフィールを記入してください! 代筆も出来ますよ!」

 

「り、履歴書……」

 

 ますます役所っぽい……お爺さんもいるし……なんか違う……俺が予想してたのは酒場みたいな場所で荒くれ物と美人冒険者が居て……

 

「あのー……プロフィールを……」

 

「おい! どういう事だ!」

 

 俺が項垂れていると隣の受付から怒鳴り声が聞こえる、横を見ると大柄な斧を背負ったこれまた大柄な男が受付のお姉さんに怒鳴りつけている。

 

「なんで俺が不採用なんだよ!!」

 

「ですから、何度も申し上げた通り既定の審査の結果残念ながらあさかわでは貴方を冒険者として登録できないのです、他のギルドへの斡旋は行っているのでそちらへどうぞ」

 

「ふざけんなよ!! 俺はあのグリードギルドでBランクだったジーカ様だぞ!!?」

 

「そうですか……ごめんなさい私他のギルドには疎いので……」

 

「……っこんの……っ」

 

 ────―これだ! これだよ俺の求めていた展開は!! ここで俺が颯爽と割り込み受付のお姉さんを助ける、そして『ありがとうございます! 良かったらお食事でも行きませんか?』となってラノベ展開まっしぐら!! 

 

 俺はジーカと名乗った大柄な男を止めようと肩に手を置こうとした時

 

「おい、その手を「ただいま」」

 

 決して大きくない声で、しかしこの受付全体に響く声が全員の動きを止めた。

 

 声の主は槍を背負った男だった、一瞬女かと見間違うほどの美貌だったが体格とやや低めの声が男だと修正してくれた。

 

「リリ、今日の討伐記録、更新しておいて」

 

 男はジーカを対応していた受付のお姉さんにカードを投げ渡すとジーカに視線を移した。

 

「……? 誰?」

 

「……ッグ……ッガ……テメェこそ誰だよ!? 今俺が……話してる途中だろうが!!!!」

 

 怒り心頭といった様子のジーカは我慢の限界といったようでとうとう斧を取り出し男に振り下ろした。

 

 俺は思わず剣を抜いたが男はそれを片手で制した。

 

「大丈夫」

 

 男はそれだけ言うと余った片手で斧の刃先を掴むと────

 

 そのまま握り砕いた。

 

「「へっ?」」

 

 ジーカも、思わず俺も間抜けな声が出ると男はジーカの胸ぐらを掴むと軽々と持ち上げ地面に叩きつけた。

 

「ぐへあぁっっ!!?」

 

「僕はカイル・ミストラル、覚えておいた方が良いよ」

 

 一撃で気絶させたカイルの名前に俺は覚えがあった、いや、正確にはミストラルの方だ。確か……そうだ、昔の偉人が載っている本で読んだことがある、名前は……

 

「ホッホッホ、流石あのカナデ・ミストラルの子孫、カイル・ミストラルじゃの」

 

 そうだ! 100年前の魔王戦争で前線を張った英雄の一人、”剛弓”のカナデ・ミストラルだ。その子孫が今目の前にいる……これが有名人を見た気持ち……? 

 

「やめてよ爺さん、僕に弓は無理だし、ばあさんの名誉を借りたくない」

 

「そうじゃの、お主には槍が向いておろうて」

 

 爺さんとカイルの会話を聞いていると受付のお姉さんが咳払いと共に俺に一礼をしてきた。

 

「お騒がせしました、事態は収束致しましたので安心して記入してください」

 

「あぁ、はい……」

 

 なんというか、気力が削がれてしまった。それでも書けるだけ履歴を書くと最後に水晶玉に魔力を流させられた。

 

「それでは番号の書かれた紙をお持ちください、順番が回りましたら隣でお呼びいたしますので」

 

 俺は頷くと長椅子に座る、正直、受かる気がしなくなってきていた。最初は転生して初めてラノベの主人公らしい展開が出来ると思ったらギルドは役所みたいだし荒くれ物は本物の英雄が止めちゃったし、なんというかやる気も少し削がれていた。

 

 俺はため息と共に下を向いていると話しかけてくる人がいた。

 

「……君、少しいい?」

 

「えっ?」

 

 顔を上げると目の前に居たのはカイルだった、カイルは俺の返事を聞く前に隣に座ると何も言わずじっと俺を見てくる。

 

「あ……あの?」

 

「……君、名前は?」

 

「え、ゴ、ゴードン……」

 

「そう、どうしてここに?」

 

「どうしてって……冒険者になれば……その……モテると思って……

 

「? ……まぁいいや、君、きっと冒険者になれるよ」

 

「え……」

 

 カイルはそれだけ言うと立ち上がり、隣の部屋に行ってしまった。

 

「27番のゴードン様ー」

 

「あ、はい!」

 

 呼ばれた俺は慌てて立ち上がり受付まで行くと受付のお姉さんは笑顔だった。

 

「ゴードン様、このまま面接に移行致しますのでよろしければこのまま着いてきてください」

 

「面接? ……あ、はい」

 

 なんだか異世界に来て初めて前世の事を鮮明に思い出していた、俺は2分程廊下を歩くと執務室と書かれた部屋に着いた。

 

「こちらです」

 

 お姉さんが4回扉をノックすると中に入っていった、慌てて俺も入ると中には一人の男が居た。

 

 和風寄りのインテリアの中、今世では未だ見た事の無かったスーツを纏い、黒革の椅子に座る良い歳の取り方をしたと思えるような初老の男性が俺を待っていた。

 

「こんにちは、ゴードン君」

 

「は、はい」

 

 思わず背筋を伸ばす、緊張からか喉が渇いていく。

 

「単刀直入に聞こう、前世は高校生かな?」

 

「────―」

 

 声が、出なかった。

 

 途端、目の前の人物が酷く恐ろしい物に見えた。すべてを見透かすような……人間とは違う眼をしていると、思ってしまった。

 

「あぁ、説明不足だ……えーっと、このギルドは子孫とか身内を除いて基本的に転生者だけを冒険者にしてるんだ。で、一応年齢の齟齬を減らすために前世の事を聞ける限り聞いているんだが……悪いな」

 

 今度は別の意味で声が出なかった、転生者だけを集めている? というかなんか雰囲気が一気に変わったせいで情緒がぐらぐらしている。

 

「えっと……前世は17で、今は15です……」

 

「オーケー、17と15ね……戦闘経験とかは?」

 

「……父が騎士だったのでそれを習いました」

 

 ……いや、何で俺は真面目に面接をしているんだ。しかし今更引き下がるわけにも行かない……

 

「よしじゃあリリ、後は任せた」

 

「えっ」

 

「はい、かしこまりました。それではこれから冒険者カードの制作とギルド内の酒場へ案内しますね」

 

 言われ執務室を退出するとリリと呼ばれた受付のお姉さんは着いてくるように促す、道中ふと気になったことがあり俺は質問した。

 

「あの、貴女も転生者なんですか?」

 

「いえ、私は母が召喚された勇者だったんです。母もギルドのお世話になっていたのでそのご縁で職員になれたんです」

 

「……ここのギルドは何人の冒険者がいるんですか?」

 

「職員を除くと……今は200人程でしょうか、皆さん転生者かその身内なんですよ?」

 

「結構……いるんですね」

 

「いえいえ、他のギルドは普通に何千人もいるので私達はかなり人数が少ないですよ」

 

 特別感が薄れていくのを感じる、最初この世界に生まれたときはラノベの主人公みたいだと思っていたがたった半日で自分はモブではないかと思わされてきている。

 

 そうこうしていると酒場に着いたようで大きな扉の前に着いた、リリさんは俺に一枚のカードを渡して来た。

 

「これは……」

 

「冒険者カードです、これ一枚で依頼確認、ご自身の階級など幾つかの特典があるので無くさないでくださいね」

 

 そう言いリリさんは扉を開ける、そこで俺は────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『そうして俺の冒険は始まったのだった……』まる」

 

「うおおぉぉ!! 放せカナデ二世!! 俺はあのマスターを殺さねぇといけねぇ!!!!」

 

「落ち着けゴードンさん!! あと二世はやめろ!!」

 

 俺は酒場の酒を一人で全滅させたゴードンにお仕置きとして冒険者たちの子供を呼び寄せて黒歴史を紙芝居形式で公開している、未来ある子供たちにこいつの黒歴史を晒すのだ。

 

「どうした、俺はお前の輝かしいデビューを子供たちに読み聞かせているだけだぞ? 40過ぎたお前にはきつかろう!!」

 

「ふんぬぅぉぉぉぉぉぉ!!!! 絶対殺す!!」

 

「落ち着け!! 私はその……カッコいいと思うぞ!!」

 

「その優しさが辛ぇよカナデ二世!! ていうかマスター他言無用って言ったよな!!! 絶対言うなって言ったじゃん!!!」

 

「俺の日本酒まで飲んだお前が悪い、大人しく第二章『初の任務で大失敗! カイルに助けられギャルゲーのヒロインみたいになる』編を聞くんだな」

 

「あああああああ!!!! マジで放せカナデ二世……っていうかマジで放れねぇな!! これだからミストラル家は!!!」

 

「なっ……人をゴリラの家系みたいに言うのはやめてくれないか!?」

 

「それじゃあ子供たち~、第二章の始まり始まりだ~」

 

「殺す!! 絶対殺す!!! っていうか……俺を殺せえぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」

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