古明地こいしの異世界旅行   作:アステラ000

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どうも、湊本です。

ここからはほとんどリムル視点となります。


2話 洞窟

(そういえばコイシ、さっき言ってた『無意識を操る』って一体何なんだ?)

 

ヴェルドラを喰い、コイシと洞窟を進み始めた俺は、突然現れて成り行きで一緒に旅することになったコイシに気になっていたことを聞いた。

 

「ん〜?そのまんまの意味だよ。みんなの心の奥底にある無意識を私は操れるんだ〜」

 

(なんとなくわかるようなわからないような…)

 

「初めてリムルたちと会ったとき、私が声をかけるまで私に気づかなかったでしょ〜?あれも無意識だからだよ!他人に認識されないんだ〜」

 

(認識されない…なるほど、じゃああの時コイシは気配を消していたのとは違ったんだな。というか、『無意識を操る』ってのもスキルの一種なのか?)

 

「スキル〜?」

 

(あれ…違うの?)

 

《解。魂の回廊から個体名:コイシ=テンペストのスキルを解析しましたが、『無意識を操る』に該当するスキルはありませんでした》

 

おお、大賢者さん…ん?じゃあコイシが言ってる『無意識を操る』ってのは一体なんの能力なんだ?

 

《解。おそらくこの世界のスキルではないと思われます》

 

この世界のスキルじゃない…コイシは異世界から来たのか?

うーん、コイシが不思議な子だということしか分からなかった…。

 

まあ、いっか。これから一緒にいればお互いのことも色々知れるだろうし。

 

そう思いながらふと周りを見回すと、俺はコイシの姿が見当たらないことに気づいた。

 

(!?コイシ?どこ行ったんだ!?)

 

「ここにいるよ?」

 

(うわっ!)

 

俺が慌ててコイシに呼びかけた瞬間、あたかも最初からそこに居たかのように隣から声が返ってきて、驚いてしまった。

 

(あれ…今俺コイシのことが一瞬認識できなくなっていたのか?)

 

「そうかもね〜。私自身が無意識だから、意識しないで無意識の能力使っちゃうんだ」

 

(ええ…無意識って厄介だな…)

 

なるほど、なんとなくわかってきたぞ。コイシの『無意識を操る能力』が使われると、たとえさっきまでコイシのことを認識していたとしても、目を離した瞬間に認識できなくなってしまうのだろう。そんでもって、本人も無意識と。…やべえ、無意識がゲシュタルト崩壊しそうだ。

 

(よし、とりあえず俺の側から絶対離れないでくれよ?さっきみたいに見えなくなった上にどっかに行かれるとまずいからな)

 

「はーい!」

 

うん、元気なお返事だ。なんだか妹ができたみたいでいいな…。

 

そんなことをふわふわ考えていたこの時の俺は、このあとコイシの『無意識』に何度も翻弄されることになるとは思いもしなかったのだった。

 

★★★★★★

 

その後、俺はスキルの練習をしながら洞窟を進んでいった。

コイシが見えなくなったり、急に目の前に現れたりするのにもようやく慣れてきた。やんちゃな子供を持つお母さんって、こんな気持ちなのかな…。

 

そんなことを考えながらぽよぽよ進んでいると、大きな扉が見えてきた。

 

(おお…人工物だ。うーん、どうやって開けようか…水刃で切り刻めるかな?)

 

「私が開けてみようか〜?」

 

(お、できるか?だいぶ重そうな扉だが)

 

「やってみる!」

 

そう元気よく返事したコイシが扉に小さな手を伸ばしたその時、

 

ギギギィィーーーーー!

 

と軋む音をたてて、扉が開き始めた。

 

(やべっ!)

 

俺は慌てて隠れようとしたが、すっとコイシに持ち上げられた。

 

(コイシ!?ほら、隠れないと!)

 

「大丈夫だよ〜」

 

そう言うと、コイシは少しだけ道の端によった。

 

「はぁ、やっと開きやがった。錆びついちまって、鍵穴もボロボロじゃねーかよ…」

 

「まあ、仕方ないっすよ。もう300年、誰も中に入ったっていう記録がないでやんすから

 

「そんなことより、本当に大丈夫なのぉ?いきなり襲われたりしないわよね?」

 

扉の向こうに見えたのは、三人の…冒険者かなにかか?

 

なんだか騒がしい連中が、目の前にいるコイシと俺を()()()()()()()()スルーして洞窟に入ってくる。

 

(…コイシ、本当に誰にも見えないんだな。というか、なんで俺まで?)

 

「私が触れたものも無意識の対象にできるんだ〜」

 

(そんなことまで…)

 

ん?そういえば、俺すっごい自然に冒険者たちの言葉が理解できたな。

 

《解。発せられた音に意思がこめられている場合、『魔力感知』の応用で理解できる言葉へと脳内で変換されます》

 

なにそれ便利ぃ。

こちらからは話しかけられないが、言葉は理解できるというのか。

 

それはともかく、どうしよう?

この世界に来てようやく会えた人間だ。ぜひともついていきたいが…。

 

…まあ、やめておいたほうがいいだろうな。

魔物の俺たちじゃあ即刻討伐されそうな予感しかしない。

コイシの安全のためにも、ここは我慢だ。

 

「さあ二人共、そろそろ静かにしてください。あっしの“隠密スキル”発動させやすんで」

 

冒険者の一人がそう言うと、三人の姿が薄れて見えづらくなった。

 

ふむ、隠密といえどその程度なのか。

あらためて、コイシの“認識できなくなる”という能力の凄さがわかる。

 

三人が洞窟の奥へと進むのを横目に、俺たちは扉の外へと進むのだった。

 

★★★★★★

 

(水刃っ!)

 

ぷよぷよボディから放たれた水の刃が、目の前の蛇のような魔物を真っ二つにする。

 

「すご~い!」

 

気配がなくなっていたコイシが真隣にフッと現れて、ペチペチと拍手を響かせた。

 

それにしても、慣れたものだ。

扉を抜けてからはこうしてちょくちょく魔物に襲われるようになったが、水で遊んだときに会得していた“水刃”だけで思ったよりも楽に倒せる。

その上、倒した魔物を『捕食者』で取り込み対象のスキルを得ることまで出来た。

 

『捕食者』…便利すぎるぜ…!

 

一方コイシの方はというと、相変わらず消えたり消えなかったりしているが、俺の側を離れないという約束は律儀に守ってくれているようではぐれたことはない。

魔物とエンカウントした時もコイシは能力で隠れ、戦闘は俺に任せっきりだ。

 

まあ俺としては女の子に戦わせるわけにはいかないしそれでいいのだが…魔物が出るとフッと姿を消し、戦闘が終わるとまた何事もなかったかのようにフッと現れるのを見るとなんともいえない気持ちになる。

 

真っ二つになった蛇の死体を怖がりもせず、物珍しそうに見つめるコイシに俺はふと思ったことを言った。

 

(そういえば、コイシの種族ってなんなんだ?)

 

「んっとね〜、覚だよ」

 

(サトリ?ってたしか、妖怪の?)

 

前世の知識を思い出しながら、そう聞き返す。

覚妖怪…たしか、山にいる猿のような妖怪で、読心の能力を持っているとかだった気がする。

 

目の前にいる少女は間違っても猿に似ていないし、心が読めるといった話や素振りもなかったが…

 

(えっと、俺の知ってる覚妖怪は心が読めるはずなんだけど…違うのか?)

 

「ううん、()()()()

 

(…()()()?)

 

過去形…?

 

「うん。この『サードアイ』で心を読むんだけど…私はほら、閉ざしちゃった!」

 

そういってコイシは、その『サードアイ』に手をかざす。

 

なるほど…それは目だったのか。変わった装飾だと思っていたが、コイシの体の一部だったらしい。コイシの体に複雑に纏われている藍色のコードに繋がれた、胸のあたりにある丸い物体が、閉ざされた目のようだ。

 

(その目が開いてないと、心は読めないってことか。開けないのか?)

 

「うん。だって、心を読んだって何もいいことないんだもん!だから私は人の心は読まないんだ。その代わりに、無意識の能力を使えるようになったんだよ〜」

 

(…そっか)

 

心を読んだって何もいいことない…もしかしたら、読心の能力のせいでなにか嫌な思いをしたことがあるのかもしれない。

コイシの言動は明るく、辛いことを語っているような様子ではなかったが、まだ出会って間もないのに彼女の過去を掘り下げるなんてことはしないほうがいい。

 

俺は話題を変えながら、出口を探して洞窟を進むのだった。

 




コイシ=テンペスト
 ステータスに変化なし

気まぐれに日付設定で投稿。基本的には書き上がったらすぐあげるんですけどね…一回使ってみたかったんですわ…。


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