バズれアリス   作:富士伸太

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◆アリスファッションショー その5

 

 

 

 意外でしたね、ネイキッド状態でやってくるとは……。

 

『天下一ゆみみ:だって、どんな装備つけても一発殴られたら終わりだしねー』

 

 その通り。

 

 理論値で最強パワーですから、防御は確かに無駄です。

 

『天下一ゆみみ:他の装備も、瞬間的なスピードは伸びても反応速度自体は早くならない。ていうかギアを付けてるだけで1フレームだけ遅れる。極めてる人はみんなネイキッド状態でやってるじゃん』

 

 はい、ご明察!

 

 ネイキッド状態のプレイヤーと戦うには、同じくネイキッドで戦うのが正攻法なんです。

 

 まあ私自身、十回くらいしかプレイしてないんですけどね。

 

『天下一ゆみみ:じゃあ、パワーとスピードがあってもゲームの挙動を深く理解してるってわけじゃないんだ』

 

 ぶっちゃけ、ゲームの概念そのものに慣れるまで時間を費やしました。

 

 VRゲームの感覚を掴めたのが割と最近です。

 

『天下一ゆみみ:じゃあ私が勝つよ』

 

 ほほう……久しぶりですよ。私にそんな口を利く子は。

 

『天下一ゆみみ:世紀末覇者の視点でないと出ないワード来たな』

 

 では、試合開始です!

 ギロチンの鐘を鳴らせ!

 

『ゴングを死刑宣告にするな』

『天下一ゆみみ:さあ、かかってきなさい!』

 

 なっ……!

 

 えっ、それアリなんですか……?

 

『あー、それアリなんだ』

『寝そべってる』

『猪木アリ状態じゃん』

『ゲーム内でそれできるんだ』

 

 くっ……!

 

 しゃがんでもパンチが届かない……!

 

『天下一ゆみみ:判定外だからね。ぶっちゃけ無敵状態を利用したバグ技だけど』

 

 このままじゃ引き分けじゃないですかぁ!

 

 掛かってきてー!

 

『天下一ゆみみ:不用意に近づいちゃダメだよー』

 

 あっ。

 

 えーと、これ、なんていうんでしたっけ。

 

『ボクシングで言うところのクリンチだな』

『レバガチャで脱出できるけど……』

 

 えいっ、えいっ!(スポッ)

 

『天下一ゆみみ:微妙な硬直タイムが発生するので、ジャブを当てる』

 

 あっ。

 

『天下一ゆみみ:で、また寝る』

 

 えっ。

 

『すごいせこい……予想もしてなかった塩試合だ……!』

『ずるい、ずるいけど……!』

『着替えてもらうためにはしょうがないよな』

 

 ちょ、ちょちょ、ちょっとおー!

 

 これどーすんですか!?

 

『これを回避する方法もなくはないけど……対策済みのバグ技だし……』

『でも教えなーい』

『そこはなー、アリスさんの頭脳でなんとかしてほしいなー』

★☆★ステッピングマン4号:教えません \1,000★☆★

 

 そ、そんなー!

 

 みなさん裏切りましたね!?

 

『私に勝てるものはいるかって言ったのそっちじゃん』

『そうだそうだ』

『はい、時間切れで試合終了。1ラウンドマッチなのであとは判定ですね』

 

 ああっ、またクリンチされてジャブ当てられたー!

 

 も、もう1ラウンドの時間が……判定に持ち越されちゃう……!

 

 ちっ、ちくしょー!

 

 覚えてなさいよー……!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 レストラン『しろうさぎ』。

 

 誠とアリスは今、レストラン兼自宅の整理の整理をサボって動画に見入っていた。

 

 VRゲームで三連敗し、ふりふりの甘めのコーデに身を包んで歌ったり踊ったりしている動画に照れくさく思い、でもこれはこれで撮れ高あるなと動画配信者ならではの客観的評価を下していた。

 

 だが、アリスはふと気付いた。

 

「誠さん」

「どうしたのアリス」

「これ、ちょっとおかしくないですか?」

 

 アリスはパソコンで動画を見つつ、スマホでVR対戦にエントリーしてきた人々のSNSを見ていた。そこで、ある奇妙なやり取りに気付いた。

 

「……おかしいかな? おかしくないと思うけどなぁ」

「いや、絶対おかしいです。当時エントリーした人たちみんな、不審な鍵アカウントとのやりとりがあるんですよね」

「へえ」

「恐らくはゲーム攻略情報を共有しているんだと思います」

「……そういうこともあるんじゃないかな。作戦を練るのは禁止してなかったし」

「でも最後のゲーム、当時はリリースされたばかりでバグ検証もそんなに進んでいませんでした。まるで示し合わせたかのようにハメ技を食らったのは……まるで……情報漏洩でもしたかのような」

「ぎくっ」

 

 アリスの追求の視線が誠に刺さる。

 10センチ、5センチ、1センチと少しずつアリスの顔が近付いていく。

 甘い気配があるならばともかく、今ここを支配する気配は、アリスという強烈な存在が放つ疑念と糾弾だ。

 

 その圧力に、誠は負けた。

 

「……俺がやりました。あと翔子姉さんも」

「ほーらやっぱり! おっかしいと思ったんですよー!」

「いや、その、圧倒的な勝利で終わったら、視聴者の不満も残るし……! ほんとごめん!」

 がばっと土下座する誠を見て、アリスが慌てた。

「あ、いや、そこまでしなくても……。そこまで怒ってるわけじゃありません。私も調子に乗ってヘイト買っちゃうことはありましたし、こういう結末の方がバランスが良いのは認めます」

「あっ、許してくれる?」

「でも今度配信するときはちゃんと根回ししてくださいね。くれぐれも、『素の反応の方がバズりそう』とか考えないでくださいね?」

「…………うん」

「今ちょっと間がありましたよね!?」

「ない! ないよ! 絶対ない!」

「ほーんとぉーですかー?」

 

 誠はアリスに執拗な追求を受けながら、夜も更けていく。

 

 

 

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