バズれアリス   作:富士伸太

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◆アリスと誠、炎の魔女ランダと出会う

 

 

 

「ふふん、どうやら恐ろしさに声も出ないようね」

 

 あ、はい。

 めちゃめちゃ強そうでびびってます。

 

「……素直に言われるとそれはそれで困るんだけど。ま、いいわ。このまま階層を進めていけばまた会うこともあるでしょう。それまでリタイヤしないことね」

 

 ありがとう、がんばります!

 

「……別に励ましたとかじゃないけど、が、がんばりなさい」

 

『いい人じゃん』

『かわいい』

『ゴスっぽいドレスがまた似合ってる』

 

「は、はぁ!? 可愛いってなによ可愛いって! ていうか変な声してるわね……? もしかしてあなたがしゃべってるんじゃなくて、何かしゃべったり意思のある魔道具でも持ってるの?」

 

 これ、配信中のコメントの読み上げ機能です。

 

「配信?」

 

 ボクの頭についてるカメラで映像を撮って、異世界……地球ってところに流してるんです。変な声は、その地球の方で見てる人からのコメントです。

 

「んん? よくわからないのだけれど」

 

 えーと、つまり……かくかくしかじか……。

 

『なんか説明してる』

『配信の仕組みを知らない異世界人、案外新鮮だ』

『むしろ他の異世界人が配信に慣れすぎなんだよw』

『情報の授業で出てきそうな落書きを地面に書いてる』

『流石配信者。説明が慣れてる』

『おっ、終わったかな?』

 

 これが、その、配信の仕組みです。

 

「えっと、その……つまりあなたの見てるものは、異世界に伝わっている」

 

 うん。

 正確にはカメラで捉えてるものかな。

 

「しかも見てる方は自由にコメントができる」

 

 そうだね。

 

「……ってことは……私とあなたの会話もまるっと伝わってる?」

 

 イエス。

 

「何やらかしてくれちゃってんのよおおおおおおお!!!!!????? もうちょっとおめかしくらいさせなさいよおおおおおおお!!!!!!」

 

『あっ、逃げた』

『新鮮な反応』

『推せる』

 

 あっ、アリスちゃん召喚カード……返して……。

 

『持ってかれてたw』

 

 

 

 

 

 

 霊廟内をくまなく探索したり特定の魔物を倒したりすると、アリスの描かれたカードを発見することができる。

 

 それを使用申請することで一時的にアリスを出現させて、誠……もといシェフ・ラビットちゃんが守護精霊を撃破したり難関を突破できたりする、というシステムをスプリガンは想定していた。

 

「そう思ってたんだけど、盗られちゃったねーあはは」

 

 ミニ『鏡』の前で、スプリガンがけらけらと笑った。

 

「あははではなく! 誰ですかあの女! けっこうバズってるのでもう一度会わせてください! ありがとうございます!」

「怒ってるのか感謝してるのか、どっちさ」

「どっちもです……というのと……」

 

 アリスは、隣に座っているちらりと誠を見る。

 誠は申し訳なさそうにしみじみ語る。

 

「いや、その、悪気はなかったんだ。なかったんだけど……配信で姿を流しちゃったのは申し訳なかったなぁ……」

「見ていてなかなか気まずかったです」

 

 ランダが走り去った後、配信も終了予定時刻を迎えてひとまず終わることとなった。

 コメント欄やSNSでは、「あの謎の美少女は一体誰なのか」というテーマで大賑わいとなっている。

 だが誠はもちろんのこと、アリスもそれに答えうる知識は持っていない。

 

「一応ランダも守護精霊だけど、ちょっとポジションが特殊でさー」

「そういえば、私が攻略したときは見ませんでしたね……? どの階層を守ってるんですか?」

 

 アリスはすでに地下100階層まで攻略し、幽神の骸にダメージを与えている。

 だがその中でランダと合ったことはなかった。

 

「今は丁度、支配領域をもってなかったと思う。それに挑戦者が少ないときは寝てるんだよねー」

「ダメじゃないですか」

「そろそろ配置換えするタイミングだったんだよ。あの子の支配領域をどこにするか幽神様が決めかねてて、宙ぶらりんだったみたい」

「なんか普通の職場みたいですね……」

「だから、なんか挑戦者と戦い損ねたからちょっとスネてるっぽいんだよね」

「スネてるって何よスネてるって!」

「うわあっ!? 出た!?」

 

 霊廟地上層の、スプリガンが寛いでいるところに噂のランダがいきなり突撃してきた。

 鮮やかな赤髪に、ドレスのようなワンピーススカート姿。

 人目を引く、どきりとするような美人だ。

 

「あんたがアリスね? それと……そこの男。あんたがさっきのうさぎちゃんの中身?」

「うさぎをちゃん付けで呼ぶタイプなんだ」

「ええと、夫が失礼しました。今コーヒー淹れますね」

 

 誠とアリスが、圧倒されながらも落ち着いて応対した。

 バズりちらかしたり世界間を移動したりバ美肉したり、二人はちょっとやそっとのことでは驚かなくなっていた。

 

「あ、ありがと……じゃないわよ! 文句を言いに来たのよ!」

「オフショット勝手に映像を流したようなもんだしなぁ……本当すみません」

 

 誠がぺこりと謝る。

 

「ふ、ふーん、素直じゃない。でも、なんかお詫びの品とかないわけ?」

 

 ランダは、チラッチラッとミニ『鏡』の誠たちの、さらに奥を見ている。

 地球のものが珍しいのかなと思ったが、スプリガンが答えを出した。

 

「あー、わかった。ランダ、命の水しか飲んでないからシャバのご飯食べたいんでしょ。それともお酒?」

「なっ、なによ! そんなことないんだけど!?」

「いーじゃん素直になりなよ。僕らと違って食事の必要はあるんだしさぁ」

「食事の必要がある? 守護精霊って、食事しなくとも生きていけるんじゃありませんでしたっけ?」

 

 アリスが質問した。

 

「僕らはそうだけど、ランダは後からスカウトされて守護精霊に就職したタイプだから違うんだよ。命の水っていう完全栄養食みたいなの飲んでたよね」

「ま、まあ、そうよ。神々が生み出した至高の水。これさえあれば麦も肉も食べる必要がないの。だから勘違いしないでよね」

「よし、コースメニューにしようか。丁度、動画撮影用の食材もあったことだし」

「あ、私、手伝います」

 

 誠とアリスが立ち上がってエプロンを身に着けた。

 

「ちょっと! 話聞いてるぅ!?」

 

 

 

 

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