なるべく頭の中にある物語をわかりやすく文字に起こしたつもりですが、不備がありましたら…ごめんなさい
私、後藤ひとりは本日、いつもとは違う意味で緊張しております…。
なぜなら…。
昨晩
「えっ…ふたり明日ライブに来るの…!?」
「うん!おとーさんと一緒に行くよ!」
「そっ…そうなんだ…」
「こどもでも大丈夫なんだって!すっごい楽しみ!おねーちゃんおうちだとギターうまいもんね!」
「えへへ…ありがと…」
「バンドだとどうなるか楽しみだなぁ!」
(えっ…まさか知ってて言ってる…?)
回想終わり。
…そう、今日のライブにふたり(とお父さん)がやってくる…!
ただでさえ最近ふたりは私をナメてるような
気がするのに、ライブで無様な姿を見せようものなら
…落ちる!ふたりの中での家族ヒエラルキー…!
せめて、せめてジミヘンより下になるのは阻止しなければ!
「今日のライブで…私の威厳を取り戻すんだ…!」
「ぼっちちゃん気合い入ってるね!」
「あっはい、妹が来るので」
「そっかそっかー、じゃあお姉ちゃんとしてかっこ良いところ見せないとだね!」
「はい…!」
虹夏ちゃんは本当によく見てるなぁ…。
「ふたりちゃんが来るのね?みによんずの歌ライブの前か後で披露できたらいいんだけど」
喜多さんふたりとの約束ちゃんと覚えてるんだ…優しいな。
「ぼっち」
「あっはい」
「そういうことなら今日のセトリ、どこかでぼっちのギターソロ入れよう」
「うええ!?そんな急にそこまでやっていただかなくても!」
「大丈夫、ぼっちならできる。その代わりご飯奢って」
「はっ…はい!」
リョウさん、そこまで私のことを考えてくれて…。
「リョウ~、ソロぶっ込むのは賛成だけどぼっちちゃんに集るな~」
「リョウ先輩になら私がいくらでも奢りますよ!」
「ほう、いくらでも?」
「おい」
「あっあはは…」
ああ、こういう何気ない会話がバンド内でできるのっていいなぁ…。私今かなりリア充寄りなのでは…?
「おねーちゃーん!」
「ようこそふたりちゃん!」
「ひさしぶり~」
「あっ虹夏ちゃんと喜多ちゃんだ!」
「このちびっ子が噂の…?」
「リョウは前ぼっちちゃんの家行かなかったからはじめましてだよね?ふたりちゃん、このおねーちゃんはベーシストなんだよ。ベースって知ってるかな~?」
「ベース…?あーーおねーちゃんに似てるけど地味な方のやつか!なんでいるのー?」
ピシッ
「洗脳開始」
「?」ドドドドボボボボベキベキベキ
「大人げないからやめろぉ!!」
ふたり…初対面のリョウさんともうあんなに打ち解けて…
「何か騒がしいと思ったらぼっちちゃんの妹と親御さん?」
「あっはい」
「父です。娘がいつもお世話になってます」
「おねーちゃんこの人だれー?」
「こっこの人はスターリーの店長さんだよ。あと虹夏ちゃんのお姉さん。失礼のないように…」
「おねえちゃん髪結んでた方がかわいいよ、ふたりがやってあげる」
ちょっとふたり…!言ったそばから勝手に…怒られるよ!
「じゃーん、でーきた!ツインテール!」
「……飴いるか?」
許された…!?
「あのおねーちゃんいい人だね!」
店長さんをあそこまで好き放題するなんて…末恐ろしい…!
「ぼっちちゃん、そろそろ準備始めるよ!」
「あっはい…じゃあふたり…行ってくるね」
「うん!おねーちゃんがんばってー!」
「がんばれよひとりー、バッチリ撮っておくからなー」
そうだ…がんばれ私…人前で弾くのは初めてじゃないだろう…?
ふたりに…今日来てくれたお客さん達に満足してもらうんだ…!!
ーーーーー
「結束バンドでした!ありがとうございましたー!!」
…うう…ミスりまくったぁ…お客さんいつもより多いから余計緊張した…あっふたりは…?
「……」
うわぁぁぁ、あれ絶対ガッカリしてるぅぅぅ
終わったぁ…ジミヘンと順位交換確定だぁ…
「じゃ、気をつけて帰って下さい」
「うちの娘をこれからもよろしくお願いします!」
「またねぼっちちゃん。ふたりちゃんも!」
「次こそはベースのなんたるかを徹底的に叩き込む」
「次はナナ雪弾けるように練習しておくね!」
「おねぇちゃん達バイバーイ!」
日が沈み、比較的涼しくなった帰り道…
ふたりとお父さんとで横並びで歩く…
気まずい…ごめんねふたり…お姉ちゃんカッコ悪かったよね…?
「おねーちゃん…ライブびみょーだった」
「ううっ…」
ですよねー、そうです私の完全なる実力不足です!
「けど…ライブしてる時のおねーちゃんすごいカッコよかった!」
「えっ?」
「あとなんかね… おうちで弾いてる時よりずっと楽しそうだった!」
「ふたり…」
いっぱいミスしちゃってダメダメだったと思ったけど…
ふたりには伝わったみたい…
「そうかそうかー、ふたりは今日のお姉ちゃんのどの辺がカッコいいと思った?」
お、お父さんナイス!
「えっとねー喜多ちゃんが歌い終わった後にお姉ちゃんだけでギュイーンって弾いてるところがスゴかった!」
リョウさんが急遽入れてくれたソロのところ…!
リョウさんありがとう!今度ご飯奢ります…!
「えっと喜多ちゃんの『星にっ!』の後にね…」
テンションの上がったふたりが縁石に飛び乗ってライブでの私を真似る
5歳児の想像力を持ってすればこの程度の段差も立派なステージである
ふたりの身振り手振りをお父さんと微笑ましく見つめる
ライブ来てもらえて良かった…もっともっと頑張ろう…!
改めて決意した瞬間だった。
しかしこれがいけなかった…
ほんの少しよぎったが気に止めなかったのを後悔する…
まだ体幹のしっかりしていない5歳の体…
視界の悪い夜の道…足元の不安定な縁石の上…
必然起こりうる事態、少し考えればわかることだ…
「わっとと…」
「「ふたりっ!!」」
車道側に倒れるふたりに私とお父さんは手を伸ばす
手が届いたのは私。我ながら早く動けたものだ…
普段使わない筋肉を総動員したから明日は筋肉痛だろうな…
私の運動神経では、抱き寄せたふたりを歩道に戻せない
近づくヘッドライトの眩しさに目を瞑る…
せめてふたりに当たらないようにと身をよじるがこれが限界…
あれ?車に轢かれるのってあんまり痛くないんだな…
というかもう眩しくない…寸前で止まってくれたのかな?
ゆっくりと目を開ける…
「…えっ?…」
一面真っ白な世界が広がっていた…
比喩的な表現ではなくそのままの意味でだ
前後左右上下全部真っ白な空間…
いつの間にかふたりもお父さんもいなくなってる…
「…ここ…どこ…?」
どこを見渡しても変わらない景色…不気味に明るくてだだっ広い
暗くて狭い所に生息する私にとってはとにかく落ち着かない場所だ…
「ふたりー…、お父さーん…」
至近距離でないと聞こえないほどの声で呼びながらあてもなく歩いてみる…
当然のことながら何も見つからないし、視界に入る情報も変わらない…
と思っていたら突然『それ』は現れた
「え?」
間抜けな声が出た。だってさっきまでそこには何もなかったのに…
まるで区役所や郵便局の窓口のようなセットができていた。
周りと同じ白を基調としたデスク、
後ろには沢山のファイルのような物が収まった同色の棚が配置されていた。
そこには1人の男が事務仕事でもしているのだろうか…視線を落としていた。
「あっあの…」
声をかけようか少し迷ったが、こんな事態だ…恥ずかしいとか人見知りだとか言ってられない…
私の声に気づいた男は慣れた手つきで1枚の紙とペンを差し出してきた。
「それではですね。ここにお名前と生年月日の記入をお願いします」
「あっはい…」
ここがどこだとか何で私がここにいるのかとか色々聞きたかったが、先手を打たれ聞くタイミングがなくなった…
「あっかっ書けました…」
「では少々お待ち下さい」
そう言うと男はその紙を頼りに後ろの棚を漁り、
1冊のファイルを取り出して30秒もしないうちにこちらに向き直したファイルを開き数ページめくる
「はい、では後藤ひとり様、15年と半年お疲れ様でした」
「ふぇ?」
さっきよりも変な声が出た
「えっと…それってどういう…?」
「先ほど後藤ひとり様は15年と半年の人生を終えました」
「え?え?え?し……んだ…ってことですか…?」
「はい」
あくまでも事務的に男は答える
「そそそそんなのおかしいです!だってこんなにピンピンしてるのに…意識だってハッキリしてますし…」
「いえ死んでますね」
「うう…」
容赦がない…
「あっあの生死の境を彷徨ってるとか九死に一生的な」
「いえ即死ですね」
「うぐぁ…」
慈悲もない…
ああ…そっか…死んだんだ私…いや待て…そういえば…
「あの…ふたり…妹は…妹はここに来てますか…?」
「妹さんですか?」
またファイルを数ページめくる。それに全部書かれてるのかな?
「妹さーんはー…かすり傷で済んでるようですね。こちらにも届けが来てないのでご存命かと思われます」
「そっそうですか…」
ふたりは無事か…なら…
「よろしいですか?」
「あっはい」
それはそれとして全然よろしくないけど…
「それでは新しい命にご案内しますね」
「えっあのまっ待ってください」
「はい?」
…急じゃない?
「えと…天国とか地獄とかの裁判的なやつは」
「そういうのはないですね」
「ないんだ…」
「はい、ないです」
ハッキリ答えるなこの人…
「…よろしいですか?」
「えっあっはい…」
「それでは後藤ひとり様から見て左の扉入られますと次の命が始まりますので」
男が促した先にはいつの間にか背景と同じ色の扉があった
「いつの間に…あのあれに入るともう来世なんですか?」
「はい」
「後藤ひとりはもう終わりなんですか?」
「はい」
「うう…」
その場にうずくまる…無理です…心の準備が…
「よろしいですか?」
徹底してるなこの人…!
「わかりました…」
諦めて立ち上がる…仕方ない…悔いしか残ってないけど…
来世に希望を託すのも悪くないのかな…?
…ん?来世?
「あっあの…」
「はい」
「ちなみに私の来世ってどんなですかね…?できれば今度は喜t…明るくて前向きな子に生まれたらなって思うんですけど…」
「えー、後藤ひとり様の来世はですね…」
私の事が記されているであろうファイルをまた数ページめくり出す。教えてくれるんだ…そこは親切だな…
「アフリカのタンガニーア湖に生息するネコゼミジンコですね」
「えっ」
「アフリカのタンガニーア湖に生息するネコゼミジンコです」
「えぇ!?」
今日1番大きな声が出た気がする…いやそんな事はどうでもいい…!!
「ミジンコですか…!?私の来世…!」
「はい、こちらですね」
ご丁寧に写真も用意されていた。…理科の教科書で見たような微生物の写真だ…
「あの扉入ったらミジンコなんですか…?」
「はい」
「…むむむ無理です…!なんとかなりませんか…?」
「いやこればっかりは後藤ひとり様が生前積んだ徳の量に依存しますので」
はい無理ー…まさかリアルにプランクトン後藤になるとか笑えない…
「私…そんなに悪いことしましたか…?」
「そうですね…後藤ひとり様の場合は…15年半という人としては短い期間であることもあって
圧倒的に積んだ徳が少ないですね。それに加えてご両親よりも先に亡くなったことが大きく徳を失った原因となってるようです」
「そんな…」
力なくその場に倒れこむ…涙は出ない…
魂だけの存在になってるからだろうか…
ネコゼミジンコ…イヤイヤイヤどう希望を持てというのか…!
しばしの沈黙が続く…男はこちらに視線を向けたまま表情を変えない…
これがこの人の仕事で何事にも動じないくらいに慣れているのだろう…
「来世にご不満なようならもう一度後藤ひとり様の人生をやり直すこともできますがどうされますか?」
「うえぇ!!?」
今日1番大きな声以下略…
「それってどういうことですか!?」
「つまりですね、後藤ひとり様の人生を最初からやり直して改めて徳を積み直して来世の命をご希望のものにしていただくということですね」
「そういうのもアリなんですか!?」
「はいできますよ」
「そ、それでお願いします!」
即決即答、当然だ。ネコゼミジンコの何倍もマシだ!
「それでは、後藤ひとり様から見て右の扉入っていただきますともう一度人生が始まりますので」
右を見ると先ほどと同じ扉が出現していた
もう今さら驚かない…
「あっちですね」
「はい」
「あっちに入ると私の人生がもう一度始まるんですね…?」
「はい」
「じゃ、じゃああっち行きます…!」
「はいいってらっしゃいませ」
「はいいっ行ってきます…!」
決意をかためドアノブを握る…
大きく深呼吸をして扉を開く…
徳を積むっていうのはよくわからないけど、
1つだけ揺るがない目標はある…!
今度こそ…ギタリストとして結束バンドを最高のバンドにするんだ…!
こうして私後藤ひとり2周目人生が始まった…!!
先ずうまく投稿ができているかすら怪しい超絶初心者ですが
、少しでも誰かの楽しみの1部に成れたならこの上ない幸せです。