ブラッシュ・アップ・ぼっち!   作:氷英

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後藤ひとり3周目Ⅹ

「こんにちは、結束バンドです!今日は私達を観に来て

くれたお客さんもたくさんいらっしゃるみたいでとっても

嬉しいです!」

 

喜多さんの挨拶からライブが始まりいつもならすぐ1曲目

にいくところだけど今日は違う…

 

「じゃあ1曲目…の前にギターの後藤ひとりちゃんから

一言あるそうなんで、お願いね後藤さん」

 

「あっはい」

 

エッヒトリチャンシャベルノ!?

 

「あっえっと…私はずっとこんなふうにライブハウスでみっ皆でライブするのを心待ちにしてました…」

 

ヒトリチャンガンバレー

 

「こっここに至るまで本当にたったくさんの人達に助けてもらいました…もちろん今日来てくださったお客さんにも…わっ私1人だったらとっくの昔に…音楽から退いていたと思います…家族にもバンドメンバーにもたくさん迷惑をかけました」

 

オネーチャンガンバレー

 

「きょっ今日はそんな皆さんに感謝しながら精一杯演奏します…私…私達結束バンドの結束力…観てください!」

挨拶を終えると同時に演奏を始める…1曲目は新曲

『グルーミーグッドバイ』結束バンド皆で作った渾身の曲

セトリも皆で考えた…1曲目に新曲を披露してお客さんに

インパクトを与える狙いだ…今の私達なら相応の演奏も

できる…STARRY全体を満足させてみせる!

 

喜多さんもサーヤちゃんも安定してる…新曲は演奏の

難易度が上がっているが2人とも良い調子だ…

私はというと少しだけ、ほんの少しだけ1、2弦の

チューニングが合ってない気がする…おかしいな…

直前のリハーサルでは何ともなかったのに…

 

 

 

「…?」

 

「あっ大槻ちゃんも気づいた~?」

 

「…廣井姐さんも?後藤ひとりのギター…」

 

「ひとりちゃん程の腕前なら事前に気づかないわけないよねー…」

 

どうした後藤ひとり、あなたはこの程度じゃないでしょ!

今日はあなたが主役のライブでしょう!来てくれた人達を

落胆させるような演奏してちゃダメじゃない…

 

 

「1曲目、『グルーミーグッドバイ』でした!この曲はつい先日できたばかりの新曲で…」

 

1曲目が終わる…お客さんの盛り上がりは上々…だけど…

ペグを弄ってみる…『ギチッ』っと嫌な音が鳴ったのが

聴こえた…何十年もギターに触れてきたからわかる…

限界が近い…お願い、せめてこのライブが終わるまで

頑張って…

 

「それじゃあ聴いてください、2曲目『星座になれたら』!」

 

 

 

ライブ3日前

 

「2曲目の『星座になれたら』でぼっちのギターソロ入れよう」

 

「あっえっ?」

 

皆で当日のセットリストを考えている時にリョウさんは

突然そう言った…

 

「このライブはきっと生ぼっち目当てのお客さんが多い。だったら思いっきりぼっちを目立たせるべき」

 

「いいねぇ~ぼっちちゃんの腕の見せ所だね!」

 

「後藤さん大役任されてカッコいいね!」

 

「私達は全力でぼっちさんを支えますよ!」

 

「あっはい、ががが頑張ります!」

一致団結とかチームプレイとか…前までは耳にするだけで

体調が悪くなったり体が溶けたりしてたけど…このバンドの団結は悪くないかな…プレッシャーはすごいけど最高のパフォーマンスで皆の期待に応えるんだ!

 

 

私のソロは2コーラス目が終わった後…今のところ順調…

とは言い難い…チューニングのズレは益々酷くなる。

だけどもうこのままいくしかない。お願いもう少し、

もう少しだからどうかソロが終わるまで持ち堪え…

 

 

バツンッ

「!」

1弦が切れた…!?せっせめて2弦のチューニングだけでも直して…ダメだ、ペグが故障してる…!!

 

どうしよう…もうすぐソロがくる…私の機材トラブルが原因で折角のライブが台無しに…頭の中が真っ白になる…どうしようどうしようどうしようどうしようどうしよう

 

 

「…」

後藤ひとり、あなたはよく頑張ったわよ…大丈夫、この場にいる人達は誰もあなたのことを責めたりしない。こんな機材トラブルなんてライブを繰り返していれば必ずあるんだから気を落としちゃダメよ!…後で慰める言葉考えとかないと…

 

 

視界の端に違和感を感じて視線を向けてみれば、後藤さんが膝をついている。あきらかにギターの不調、そんな…

もうすぐ後藤さんのソロなのに!…演奏は止められない。

なら私がやることは1つしかない!視線をサーヤちゃんに向けると目が合った…お互いに小さく頷く。サーヤちゃんもわかってるみたい…じゃあやるよ!サーヤちゃん!

 

 

すぐ側にいるぼっちさんが急に腰を下ろした…ギターに目を向けると弦が切れている…機材トラブル…もうすぐぼっちさんのソロがくるのに…何とかしないと。私にできることはたかが知れてるけど喜多さんと、皆と一緒なら!あ…喜多さんと目が合った!やろう喜多さん、私達でぼっちさんの活路を開くんだ!

 

 

ぼっちの音が消えた?見てみればぼっちがしゃがんでる…

トラブルか。ソロが無理そうなら通常の間奏にシフトするけど…いや、郁代とサーヤが諦めてない。それなら私達も

やるしかないな。虹夏準備はいい?今日はぼっちの為の

ライブだ。死なばもろとも骨は私が拾ってやるぜ!

 

 

ぼっちちゃんの音が止まり、喜多ちゃんとサーヤちゃんが

何かやろうとしてる…リョウと目が合い覚悟を決める…

わかったよ!皆が安心してアドリブできるよう私とリョウ

がキッチリ支えるからやるだけやってみな!ぼっちちゃん

君ならこの状況を打破できるって信じてるからね!

 

 

間奏に突入、本来なら私のソロパートだが私はまだ演奏

できないまま…それなのに曲は止むことなく続く…

喜多さん、サーヤちゃんも!打ち合わせしてないのに

アドリブで間奏を弾いてる…!?2人の顔を交互に見ると

それぞれ目が合って微笑みかけてくれた…それだけで2人

の想いは伝わった。2人ともまだ私のソロを諦めてない。

リョウさんと虹夏ちゃんもそうだ…そうだ…私が諦めて

どうするんだ…皆私のために時間を繋いでくれてるんだ!

でもどうする?どうすればいい?あれ?そういえば

さっきからお尻の辺りに違和感が…あっこれは…大槻さん

から貰ったけど途中でトイレに行きたくなるから飲まずに

ポケットに入れてた…そうだこれを使えば…!!

 

 

ギター2人が何とか繋いだみたいだけど…ここから残り

ラスサビで何とか終了ってとこかしら。…え?後藤ひとり

それって私が直前にあげたエナドリ…まさかその構えは…

「この土壇場でボトルネック奏法…!?」

 

「やるねぇひとりちゃ~ん。あれならチューニングズレてても関係ないもんね~」

 

後藤ひとり…あなたはどこまで…遠いの?

 

 

『星座になれたら』の演奏が終わる…。と同時にSTARRY

全体に響く割れんばかりの拍手が起こる…

 

「ひとりちゃーん!ステキー!抱いてー!!」

 

「これは惚れる!!」

 

「さすがはguit…ゲフンゲフン、ひとりさん!これは記事の書き甲斐があるわー!!」

 

「おねーちゃんカッコいい!!」

 

「うっ…うっ…ひとり…あんなに立派になって…」

 

たくさんの声援と拍手の音が届いてる筈なのに自分の

息遣いしか聴こえない…何度も頭の中で妄想した状況

が今目の前で起こってるというのに…まさかこれも妄想?

 

 

「え~と…本当はこのまま3曲目にいく筈なんですけど…

これだけは言わせてください!今日は本当にありがと~!

このライブを皆が将来自慢できるくらいのバンドになりま~す!!」

 

さすがにこれ以上の演奏は困難だと判断して虹夏ちゃんが

締めの挨拶をしてくれた。お客さん達も目の前の私の状態

を理解してくれてるようで

 

「ひとりちゃん頑張ったね!」

 

「これは惚れた!!」

 

「弦が切れたのによく持ち堪えた!」

 

 

等々温かい言葉をかけてくれた…私やりきったんだ…

 

 

\アリガトウゴザイマシター/\ケッソクバンドデシター/

 

 

ライブが終わり来てくれたお客さん達にご挨拶の時間、

またたくさんの応援の言葉をもらった

 

「ひとりちゃん良かったよー!ますますファンになっちゃった!」

 

「あっはいありがとうございます」

 

「ひとりさーん、任せてください!今日のライブしっかり宣伝しますので~あっもちろん約束は以下略ですよ!」

 

「あっはいよっよろしくお願いします」

 

「おねーちゃんがんばったね!」

「ひとり…お前はお父さんの誇りだ…うっ…」

 

「ありがとうふたり…もう!お父さん、恥ずかしいから

いい加減泣き止んで…」

 

 

「ま、まあまあいいライブだったわ後藤ひとり…いや、違うわね。その…良かった。すごく。感動した」

 

「あっ大槻さん…そのエナドリ…ありがとうございました。たっ助かりました…」

 

「次は最後まで聴かせなさいよね」

 

「あっはい」

 

こうして大波乱のライブが終わった…結果的には概ね成功

お客さん達も盛り上がってくれたみたいでよかった…

 

 

翌日…

「お父さんごめんなさい。お父さんから借りたギター壊してしまいました…」

 

「顔をあげてよひとり!ペグが壊れただけだろう?心配しなくていいよ」

 

「でも…」

 

「それにライブ中に壊すなんてお父さん興奮しちゃったなぁ!破壊専用ギターってやつもあるらしいし次のライブでしてくれよ」

 

お父さんは娘をどの方向に持っていきたいんだ…?

 

「まあそれはそれとしていい機会だしひとりも自分のギター買ってみたらどうだ?」

 

「うん…それは私も考えてた」

今回みたいなトラブルの時にすぐ対応できるしいつまでも

お父さんのを借りる訳にはいかないから…

 

「よし、じゃあこのお金を持っていきなさい。よく考えて使うんだよ?」

 

お父さんはそう言って諭吉さんの束をポンッと私に手渡した

 

「えっこんなに!?」

 

「もちろんこれはひとりの動画広告収入から出してるから安心しなさい」

 

「…ありがとうお父さん」

 

 

予想外の軍資金を手にして虹夏ちゃん達に相談したら

御茶ノ水の楽器店で実物を見て決めることになった。

店内は他のお客さんで賑わっていて、店員さん曰く

ここ数年でギターを始める人がかなり増えたんだそうだ…

これもguitarheroの影響が少しくらいあるのかな…

 

 

新しいギターを構えて姿見の前に立つ…うんカッコいい…

お父さんのギターを初めて借りた時の事を思い出すが、

不意に私の後ろの相棒と鏡越しに目が合う…ごめんなさい

ごめんなさい!君の事も忘れてないよ?

 

ギターを新調して外にも出られるようになって枷の外れた

私は本格的にバンド活動に注力し始めた。 先ずはMV撮影

メンバー会議でどんなMVにするかを話し合って自分達

だけで撮影するかと思っていたけど、虹夏ちゃんが超強力

ゲストと称して1号さん2号さんを召集していた…

なんでも1号さんと2号さんは美大の映像学科生らしく、

今回のMV撮影に協力してくれるそうだ。

というか虹夏ちゃん、いつの間に2人とそんなに仲良く

なったんだろう…これがコミュ力上位勢の成せる技か…

 

 

3月になり完成した審査用のデモテープを投函しに行く…

私を含めた5人がポストの前で神妙な面持ちで佇んでいる

 

「じゃあデモテープ投函するからね」

 

「あっはい」

 

「お願いします!」

 

「…何か念とか入れた方がいいかな?」

 

「念ですか?えっと審査通れ~通れ~」

 

「いや、サーヤちゃんもっと強く!はぁぁぁぁ!!」

 

「太陽拳!」

 

「あっわっ私も」

臨!兵!闘!者!皆!陣!烈!在!前!

 

「ぼっちちゃんの念がえげつない!」

 

「後藤さんの本気度がすごいわ!」

 

各々一通り念じた後、通行人の視線を感じながら無事

デモテープは投函された…審査通りますように…

 




次回 夢を叶えたその先に
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