誤字脱字報告や御指摘大変助かります。
遅筆が際立ってきたぞ…がんばれ私。
「ぼっちちゃんが外出れるようになったことだしそろそろSTARRY以外でもライブやっていきたいよね」
もはや定例となったメンバーミーティングで虹夏ちゃんが提案してきた。私もバンドとして成長していくためにも、結束バンドそのものをアピールしていくためにも必要だと思う。
「新曲のアピールも兼ねて手始めに路上ライブとかやってみる?」
「あっはい、いいと思います」
「路上ライブは金沢八景でしたことあるけどあの時は後藤さんいなかったから楽しみですね!」
「投げ銭箱用意しとくか」
「緊張するけど皆と一緒ならやってみたいです!」
「よし、じゃあ来週辺り下北沢でやろう!」
すぐに話はまとまり私達は行動に移した。
下北沢での路上ライブ…31年前に金沢八景でお姉さんとやって以来の外でのライブだけど不思議と不安はない。
それだけ精神が大人になってるってことかな?
路上ライブ当日
「よーし、ここでやるよ!皆準備して」
虹夏ちゃんの音頭で私達は各々準備を始める
「そういえば伊地知先輩ドラムはどうしたんですか?」
「虹夏さんのは車がないと運べないですよね?」
「ハイハットとスネアとバスドラがあれば充分だよ!そしてバスドラはこれ!!」
虹夏ちゃんが高らかに掲げたのは、以前私を詰めてリョウさんの家まで輸送するのに使ったキャリーバッグだった。
「これにキックペダルを取り付けたら簡易バスドラになるんだよ!意外とそれっぽい音になるんだから!」
身近な物でそんな代用ができるんだ…おっと私も早く準備しないと…
全員の準備が終わる頃、虹夏ちゃんが手書きの立て看板を用意する。無難な宣伝文句に物足りなさを感じた喜多さんとリョウさんが『話題沸騰!』や『全米が震撼した』等の過剰なキャッチコピーを付け足した結果、肝心の『結束バンド』の文字が埋もれてしまった…
「盛り過ぎ!クソ映画のキャッチコピーか!」
多少準備にバタバタしたものの、いざ路上ライブを始めると私が1周目にやった時や、2周目にサーヤちゃんがした時よりも遥かにたくさんの人が足を止めてくれた。
結果的に大成功、多くのお客さんに結束バンドのことを知ってもらうことができた…
ちなみにどこから聞き付けてきたのか途中きくりお姉さんが絡んできたが路上ライブ終了と同時に全員で脱兎の如く撤収することで事なきを得た…お姉さんごめんなさい
ーーーーー
4月になり、私の環境に大きな変化が訪れる…即ち秀華高への編入である。今までは通信制の高校だったが、編入試験を経て無事(勉強自体はものすごく大変だったが…)2年生として入学を果たした。進学と同時に編入だったので、私1人が注目されての自己紹介という地獄のような時間がないことに心底安堵した…。何より嬉しかったのは喜多さんと同じクラスになれたこと。人間関係を強制的にリセットされるクラス替え、友達0と1ではこれから高校生活を送る上での精神状態に雲泥の差がある。
「後藤さん!よかった同じクラスね!でもあんな遠いところから秀華高(ここ)まで通うの大変じゃない?」
「あっはいだっ大丈夫です…よろしくお願いします」
1回下北高校の編入も考えたけど私の残念スペックの頭脳じゃ無理の無理無理無無無無無…ということで断念したことは黙っとこう…
数日後、虹夏ちゃんのスマホにあるメールが届く。
「結束バンド様初めまして。音源聴かせて頂きました。私池袋の…これ!ライブのお誘いだ!」
「すごいですね!路上ライブとMVの効果ですかね!」
「結束バンドがどんどん有名になってるってことですね!」
全然知らない箱からのお誘いに陽キャギターコンビが反応する。私はといえば新しいライブハウスに萎縮と期待が入り混じったよくわからない感情が渦巻いていた…
「あれ?でもハードロックって書いてある…私達ハードロックではないんだけどな」
「ちゃんと調べた方がいいんじゃない?」
「きっと打ち間違いだよ。それにジャンルの定義なんて人によって変わるし!ブッキングライブって方向性の近いバンド同士を組み合わせて相乗効果狙ってくものだし、新しい箱でライブすれば新規のファン獲得のチャンスになるかもしれないね!」
虹夏ちゃん初めてのライブハウスからのお誘いに舞い上がってるみたい…大丈夫かな…
ブッキングライブ当日
「え~とどちらさんでしたっけ?あっけっそくバンド?さんっすか~出演ありがとうございます~ブッキングマネージャーの柳です~そんじゃリハやるんで準備お願いしまーす」
「あれ?何かあっさり…」
「バンド名も覚えられてなかったみたいですね」
「やな予感的中」
「あっですね…」
気を取り直して私達以外で今日のイベントに出演する人達に挨拶をして回る…
「おはようございます!地下アイドルの『天使のキューティクル』で~す!」
「デスメタルバンド『屍人のカーニバル』デス…」
「定年退職後弾き語りを始めましてねぇ…私臼井です」
…仮装大会かな?
「不思議な装いの人達が多いですね」
「あれぇ?」
よくよく調べてみるとそれぞれのグループに送られた文面が同じで、ブッキングマネージャーが穴埋めのために適当に呼び集めたことがわかった…
「皆ごめん…私がちゃんと確認せずに出演承諾しちゃったから…」
虹夏ちゃん落ち込んでる…でも新しい箱でライブできることには違いないし元気出してほし
「幼馴染チョップ!」
「ぶほっ」
「えっリョウさん?」
「リョウ先輩!?」
「何故虹夏さんにチョップを!?」
「ブッキングライブが仮装大会みたいになったくらいで私達が萎えるとでも思った?ここにいる客を全員ファンにするくらいのライブすればいいだけ。今の結束バンドならそれができる。そうでしょ?」
「確かに、別ジャンルのお客さんもファンにできたらすごいですよね!後藤さん、サーヤちゃん頑張るわよ!」
「あっはい」
「了解です!」
「皆…ありがとう。よし!超盛り上げてこのライブハウスをぶち壊そう!」
「あっじゃあ歯ギターとかやっちゃいます?」
「それはやめて」
歯ギターは止められてしまったけど私達の結束力は高まった。完全アウェイの空気感の中始まった結束バンドのライブは、虹夏ちゃんMCの下メンバー紹介から始めることにした。別ジャンルの人のでも最初に紹介して興味を持ってもらう作戦だ。
「リードギター後藤ひとり!!」
私の番、虹夏ちゃんからは上手い喋りは要らないからカッコいい演奏をとお願いされた。知らない箱で初めてのお客さんを相手にする演奏はやっぱり緊張する…1周目の私なら恥ずかしくて途中から後ろ向いちゃってたかもしれない…けど!
ギィィィィィィィィン!!
「あのギターやばくね?」
「生粋のメタラーの俺を痺れさせるとは一体何者…」
やってやる!ギター歴20年越えの私が!もはや縛るものが何もない私が!ここにいるお客さん全員を盛り上げるくらい出来ないで何がguitarheroだ!
私のソロを皮切りに、お客さん達の結束バンドを観る目が変わった。曲が始まると更にボルテージは上がっていき、ラストの新曲『グルーミーグッドバイ』を披露すると観客の盛り上がりは最高潮に達した。
\アリガトウゴザイマシター/\ケッソクバンドデシター/
「いや~結束バンドさん初めて曲聴きましたけどすごくよかったです~」
「初めて…」
「やっぱり適当ブッキングだったんじゃないですか!」
この人は偶々目についた結束バンドを誘っただけなんだ…でもおかげで貴重な経験ができたと思う…
「結束バンドさんライブ良かったです。あの~良かったらこの後皆で打ち上げしませんか?」
「やった~!やりましょ!やりましょ!」
「アナタ達ノ魂ノコモッタ演奏…感動シマシタ」
「皆さんも素敵なライブでしたよ!」
天使のキューティクルと屍人のカーニバルの皆さんが私達と今日のライブを讃え合う…全然ジャンルの違うグループだけど、自分達の音楽をお客さんに届けるという想いは同じようで、お互いにこのヘンテコなブッキングライブを終えた戦友として確かな絆が生まれたような気がした。
数日後…いよいよ待ちに待った未確認ライオット審査の結果が来る日…の筈なんだけど…
「着いた~!よみ瓜ランド!!」
「下北からすぐでしたね!」
「あっ…あの何故遊園地に?」
「今日はねー、ライブの打ち上げ&」
「STARRYスタッフ一同の慰安旅行です!」
でも今日って確かデモテープの結果が…
「…今日は日頃の不安吹き飛ばすくらい遊ぶぞー!!」
あっまだ来てない不安を誤魔化してるんですね…。
「ただの現実逃避じゃねぇか…」
今日は店長さん達も一緒に来ているけどなんだかやさぐれてるように見えるな…
「お姉ちゃん達も今日は楽しんでね!」
「えー…だるい」
「しんどいです…」
「うぇぇ…吐きそう…」
「やさぐれ三銃士!!」
「ダメな大人です!」
「わかりやすい反面教師達」
10分後、大人組はどこから調達したのかお酒とおつまみを買い込んでの酒盛りが始まった…
「何だコイツら…もうほっといて私達だけで周ろっか」
「そうですね…ぼっちさん行きましょう」
「あっはい」
「テーマパークマスターの私に任せてください。楽しい1日にしてみせます!」
「家でだらだらしたかった…」
それから私達は未だ届かない審査の結果を無理矢理頭の隅に追いやるように遊園地で遊び倒した。お化け屋敷やジェットコースター、アシカショーにコーヒーカップ等を楽しみ最後は観覧車で締めようという話になった。1台が4人乗りなので3人組と2人組で分かれる形になるためグッパーで決めることになり、最終的に私は虹夏ちゃんと2人組で乗ることとなった。
よく考えたらこの周で虹夏ちゃんと2人きりになったことがない…今さら緊張してしまう相手ではないが、何を話せばいいのかわからない。でも1周約13分もある中でずっと黙っているわけには…そっそうだ下の景色の感想なんかを羅列していけば何とか間を持たせられるかも…
「あっ「ぼっちちゃん」
「あっはい」
しまった発言が被った…
「なっなんでしょう?」
「いや~面と向かってちゃんとお礼言ってなかったなって思って。ぼっちちゃん、ありがとう」
「あっいえ、そんなお礼をいわれる程のことは…」
「ううん、ぼっちちゃんがいなかったら結束バンドはとっくに解散してたよ。サーヤちゃんはギターを始めなかったし、喜多ちゃんは逃げたギターのままだったし、リョウは新曲出来なかったろうし…私1人じゃ到底…」
「虹夏ちゃん…」
「最初にリョウからぼっちちゃんのこと聞いたときにさ、私の知らない子が私の知らない所で結束バンドのために自分の人生を擲ってるのが申し訳ない気持ちになってね。…ぼっちちゃんは無理して結束バンドに関わってるんじゃないのかな~って」
「そっそんなことないです!」
「あっうん、わかってるわかってるよ。実際にぼっちちゃんと接してきて、心の底からギターが好きでバンドしたくて結束バンドのこと大事に思ってくれてて、そのためにいつも一生懸命なのが伝わってきたから疑ってないよ」
「あっはい」
「それと私の本当の夢、ぼっちちゃんは知ってたけどちゃんと話しておきたくて…私が小さい頃、9歳の時かな…お母さんが玉突き事故の巻き添えで亡くなって…その後ずっと家で塞ぎ込んでてね…」
虹夏ちゃんのお母さんも交通事故で亡くなったんだ…
「でもお母さんが言ってたんだ『夢があれば辛い時でも道を照らしてくれる光になるはずだから』って。その後お姉ちゃんがライブハウスに連れてってくれて初めてライブを見せてもらった時に決めたんだ。私もバンド組んでライブしてみたいって!私の道を照らす光はここにあるんだって!それが私の夢の始まり」
虹夏ちゃんの店長さんの分まで人気のあるバンドになるって夢の根底にそんな想いが詰まってたんだ…
「すっすごく素敵な夢だと思います」
「うん、ありがとう!でもその夢を叶えるには今の5人じゃなきゃダメなんだ。だからぼっちちゃんこれからもよろしくお願いします!」
虹夏ちゃんが改まって神妙な顔つきになって私に頭を下げてきた…
「あっはいこっこちらこそよろしくお願いします!」
お互いにペコペコと頭を下げ合い、何回目かで目が合うと「えっへへ」と虹夏ちゃんが吹き出す。私も堪らず「ふっへへへ…」と不気味な失笑…この差よ。
ピロン
「あっメール来た!」
「あっ本当ですか?」
「…厳正なる審査の結果デモ審査を…通過となりました…!だって!」
「やっ…」
「「やった~!!」」
2人で抱き合って思わず飛び跳ねたらゴンドラが揺れて怖かったのですぐ止めた。
「あっ皆にも連絡しないとね!」
「あっはい、ですね!」
30秒後隣のゴンドラが揺れ始めたのは言うまでもない。
数日後STARRYにて
「結束バンドメンバーミーティング~はい拍手!」
「わー」パチパチ
「わ~」パチパチ
「う~い」パチパチ
「あっ」パチパチ
「先ずは第一関門突破だね!次はネット投票!皆どんどん宣伝していこうね!」
「SNS大臣の腕の見せ所ね!」
「私も両親や友達にどんどん宣伝します!」
「あっぼっちちゃんにお願いがあるんだけど…」
「あっはい」
もしかしてguitarheroアカウントでの宣伝かな?
「ネット投票の間guitarheroを使っての宣伝はしないでほしいんだ!」
「えっ…あの、どうして?」
まさかの逆パターン…
「多分…というか確実にguitarheroの力を使ったら30位以内に入れちゃうし、首位通過だって目じゃないと思うよ?でもねそれじゃダメなんだ…私はこの5人の力で頑張りたいの!ワガママなのは承知の上だけど我慢してもらえないかな?」
「そうね、私も賛成だわ!私も…ひとりちゃんとやる結束バンドがいい!」
「ぼっちさんと私達なら大丈夫ですよ!」
「今の私達なら余裕」
「あっ皆さん…」
我慢も何も宣伝をお願いされたら断ろうと思ってたから全く問題ないんだけど…でも…
「えへへ…あっありがとうございます」
何か…心が通じ合ってるみたいで嬉しいな。
guitarhero封印の約束をしていざネット投票が始まると、中間結果21位と通過圏内の順位に着けることができ、これに勢い付いた私達は慢心することなく地道に宣伝活動を続けた…。そして
「「「最終順位14位~!?」」」
「フッだっ、だから言ったじゃん私達なら余裕だって」
「よく言うよ。中間の順位維持できるか内心ハラハラしてたクセに」
「でも良かったです!皆が最後まで頑張った結果ですね!ね、ぼっちさん!」
「あっはい」
本当に良かった…次はいよいよライブ審査。結束バンドを最高のバンドにするために…虹夏ちゃんの夢を叶えるために。絶対ファイナルステージに進むんだ!その先にきっと理想の未来が待ってるはずだから!
次回 ラストステージ
↓おまけ
観覧車3人組の方の会話
「…はぁ」
「サーヤどうした?連絡来ないの焦ってる?」
「あっはい。それもあるんですけど…できれば私もぼっちさんと2人きりで話してみたかったなーって思って」
「あっ私もそう思ってたわ。後藤さんにちゃんとありがとうって言えてないから」
「ほう、ぼっち3周目にしてモテ期が来たか」
「そっそんなんじゃないですよ!まあもう少し親密になりたいとは思ってますけど」
「そろそろひとりちゃんって呼んでもいいのかしら」
「ぼっちは対人関係が苦手なだけ。ぼっち自身もきっと仲良くなりたいと思ってるよ」
「そうですよね!今度話しかけてみます!」
「そうしてあげて」
「あれ?リョウ先輩!後藤さん達のゴンドラが揺れてます!」
「ん?ほほう、おっ始めたか」
「え?何をですか?」
「そりゃ若い2人が密室ですることなんてナニに決まって」
「ません!もうリョウ先輩、変なこと言っちゃダメですよ!あっほらもう収まりましたよ」
「チッ早いな…」
ピロン
「ん…、虹夏から?…!?2人ともこれ!」
「何ですか?あっ」
「これはっ!…厳正なる審査の結果デモ審査を…通過となりました!」
「「「やった~!!」」」
その後、5人全員スタッフに怒られましたとさ。