ブラッシュ・アップ・ぼっち!   作:氷英

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御覧になっていただきありがとうございます。
今回でブラッシュ・アップ・ぼっち!最終話となります。
こんな妄想劇に最後まで付き合っていただきひたすら感謝の極みです。


後藤ひとり4周目

後藤ひとりまさかの4周目…どう生きる?私

 

「うわ、かわいい!ようこそ後藤家へ!」

 

「ふふふ、これからよろしくね…?」

 

4回目の若い両親との邂逅…またお世話になります。さて…勇んで4周目に来たはいいものの…どうしようか。このままだとまた15歳~16歳の間に命を落とすよね。でも、もう引きこもるのは嫌だな…。両親にあやされながら考える。なにせ最後の人生だ、大切に大切にこの時間を使わないといけない…。私のできること、私のしたいことを全力でしよう。

 

「あっおなかっすきました…」

 

「ええっ!?しゃべったぁ!?」

 

「あっあとオムツもおねがいします」

 

「あっはい。お母さん!ひとりがすごいぞ!」

 

「自分からお願いできるなんてお利口ね!」

 

両親のテンションがおかしなことになったが、お構い無しに4度目の赤ん坊生活を謳歌した。ただお父さんもお母さんもいきなりしゃべる私をすんなり受け入れてくれたのは能天気過ぎな気がしてちょっと心配。

 

 

今回はギターを3歳から始めた。考えなしの行動ではないし、ギターお預けの生活を我慢できなくなったわけでも…いやそれはちょっとあるか…とにかく早めに始めて前回よりもguitarheroのチャンネル登録者を増やしておきたかったのだ。こう見えても私、体は小さくてもギター歴20年以上の大ベテラン。お父さんを説得するのは赤子の手を捻るよりもナントヤラだ。

 

 

6歳になった頃、思いがけない訪問者が現れた。

 

「ひとりちゃ~ん、お友達がいらしてるわよ~」

 

「あっうん」

 

お母さんに促されて玄関を開けると、そこには意外な人物がいた。髪は下ろしてるし、ステージ衣装の姿しか知らなかったので、シンプルな子供服に身を包んだ出で立ちの少女が最初は誰だかわからなかった。

 

「えっとどちら様で?」

 

「後藤ひとり!今何周目!私は5周目よ!」

 

「あっ…」

その問いかけですぐ目の前の少女が大槻さんだと理解した。確かにほんのりと私を威圧してくる眼光の片鱗が見える。

「よっ4周目で「ばかぁー!!」

 

私の返答を聞き終える前に大槻さんが抱きついてきた。私と違って女の子らしい良い匂いが…って違う違う。

「あっえっと大槻さん?」

 

「なに勝手に死んでんのよ!9割死ぬ時期乗り越えたんじゃなかったの!あんたがいなくなったら張り合いがなくなってつまんないでしょうがー!!」

 

「あっはい…」

大槻さんそろそろ離れてほしいかもです…後ろでお母さんがニヤニヤしてこっち見てます…。

 

「…まあまた会えたしいいわ。ギター辞めてないわよね?」

 

「あっはい。やっ辞めないです」

 

「そう。それきいて安心したわ。じゃあ、はいこれ!」

 

そう言うと大槻さんは小さな紙袋を差し出してきた。

「えっあっあのこれは?」

 

「御守りよ、交通安全の。わざわざ日枝神社まで行ってもらってきたんだから!」

 

「御守り…?」

 

「あなたの死因が大体交通事故って山田リョウから聞いてね。…気休めかもだけど無いよりはマシでしょ?肌身離さず持ってなさい」

 

「あっはい…ありがとうございます大槻さん」

 

「ヨヨコでいいわよ。私達はもう…とっ友達でしょ?」

 

「あっはい。ありがとう、ヨヨコさん」

 

「じゃっじゃあね!また来るから。生存確認も兼ねて」

 

「あっはい」

 

その後ヨヨコさんは、私を心配してか度々後藤家を訪れては私の様子を見に来てくれた…。まだ子供なのにお金とか大丈夫なのかな?だけどヨヨコさんのおかげで1つ思い付いたことがある…うまくいくかはわからないけど。

 

 

7歳になったある日、私は前回同様リョウさんの家へ訪れていた…。

 

「あっリョウさん…えと、私は4周目です」

 

「…6周目」

 

「「はぁ~…」」

 

それぞれの言葉と同時に出た安堵のため息でお互いの状況を理解する。

 

「あっあの、すいませんでした…完全に油断してました」

 

「まあ、あれはどうしようもないよ」

 

「あっあの後は…大変でしたよね?」

 

「大変だったよ。すごく。」

 

ですよね。これ以上は聞かないでおこう…。

 

「それで今回はどうするの?また1年引きこもる?」

 

「あっそれなんですけど、私今回が最後って言われてて…」

 

「そう。奇遇だね私もだよ」

 

「リョウさんも?…あの、リョウさん私考えたんですけど…もうリョウさんの好きなように生きてください」

 

「どういう意味?」

 

「あっあのリョウさんは今まで、私のために色々頑張ってくれてて…こうしてまた繰り返して、でも今回お互い最後ですし好きなように、やりたいように生きませんか?あっもちろん私はギターもバンドも諦めてません。死亡率の件も乗り越える気満々です」

 

「…ぼっちがそうしたいなら反対しないよ。まあ私は初めから好き勝手生きてきたから今までと変わらないかな」

 

「リョウさんらしいですね。…あっでも最後に1つだけお願いしてもいいですか?」

 

「何?」

 

「あっこれを虹夏ちゃんに…虹夏ちゃんのお母さんへって言って渡してくれませんか?」

 

「これは…お守り?ああ…なるほど」

 

「気休めかもしれないのはわかってます。けど何がきっかけでどんな未来になるかはわからないので…やれること、やりたいこと全部やっておこうかなって…」

 

「わかった。必ず渡しておくよ」

 

「じゃっじゃあ私帰ります。また会いましょう」

 

「うん、またいつでも来るといいよ」

 

リョウさんの家を出て家路へ…ではなく、もう一ヶ所行かねばならない所がある。さっきリョウさんに言った「やれること、やりたいこと全部」の1つを早速実行する。やってきたのはごくごく普通の一軒家。この家の女の子に用がある。2周目の時に訪れていてよかった…としみじみ思い、表札を確認してから呼び鈴を鳴らす。玄関が開き、おそらく母親であろう女の人が顔を出したので事情を話して娘さんに会わせてもらう。見た目は7歳なので特に警戒はされなかった。まさか中身が合計50年以上生きたおばさんギタリストだとは夢にも思うまい…。さて、もうすぐあの子が出てくる…彼女にしてみれば初対面の女の子がいきなり訪ねてきたことになるんだけど、私は知ってる…この子のギターの才能を。自分の楽しい感情が周りに伝染させるくらい素直な音色を奏でることを。第一声は決めている…引かれたって構うもんか。私は「はーい」と元気よく出てきた幼くも面影のある未来のバンドメンバーに声をかけた…

 

「私と一緒にギターをやりませんか?」

 

 

 

 

さらに8年後の5月某日 とあるライブハウスにて

 

「ミスりまくった~」

 

「MCスベってたね」

 

「だね~次からは喜多ちゃんにお願いしようかな」

 

「私ですか?はい、頑張ります!」

 

私達結束バンドの初ライブ…私にとっては6回目だけど。ぼっちが前回よりも早めに郁代用動画をアップしたおかげで郁代が逃げずに戻ってきた。合わせの練習があんまりできなかったからライブの出来はイマイチだったけど…。でもぼっちはこれでよかったの?郁代が逃げたからこそ虹夏がサポートギターを探しに行ってぼっちかサーヤを見つけてくるのにそれがなくなった。今日だってインストバンドの筈だったけど郁代のボーカル入りに変わったし前までと大分変わってきてる。けど一番の違いは…

 

「まあそこそこバンドらしい感じは出せてたから私はよかったかな。お客さんも結構盛り上がってくれてたみたいだし」

 

「そういえばお客さんの中に車椅子の人がいましたよね。STARRYに入るの大変そうなのにわざわざ来てくれたんですかね」

 

「あ~あれ私のお母さん」

 

「えっ伊地知先輩の?」

 

「うん!今日ライブやるって言ったら『絶対行くから』って張り切っちゃって。STARRY入るのもお姉ちゃんやスタッフさんの手を借りてね」

 

そう、一番の違いは虹夏のお母さんが生きてること。ぼっちに言われた通り、虹夏にお守りを虹夏のお母さんへって渡した。お守りが効いたのか、お守りを持ったことで危機管理ができたのかはわからない。

 

「車椅子ってことはどこか悪いんですか?」

 

「7年前に玉突き事故の巻き添えに遭ってね…」

 

「あっそれは…ごめんなさい、嫌なこと思い出させちゃいましたね」

 

「ううん、大丈夫!それが不思議なんだ。その玉突き事故なんだけど相当酷いものだったらしくて、人が巻き込まれたらまず助からない程だったって警察の人から聞いてね…お母さんが一命を取り留めたのは奇跡としか言いようがないんだって!リョウがくれたお守りのおかげだね!」

 

「リョウ先輩が命の恩人なんですね!やっぱり素敵!」

 

「もっと誉めていいよ。あとご飯を奢るといいよ」

 

「調子乗んな~。…でもありがとう、お母さんにもしものことがあったら私はバンドどころじゃなかったかも…」

 

「そうなの?」

 

「そうだよ。お姉ちゃんもね『母さんに世界一仲のいい姉妹ってところを…ちゃんと支え合って生きていけるってところ見せないとな』って言ってこのSTARRYを始めたけど、きっとお母さんを失って家族がバラバラになる未来があったかもしれないって思ってすごく怖かったんだと思うよ。私なら一生立ち直れない自信があるもん」

 

そんなことないよ。虹夏はどんな未来でも…。

 

「店長さん優しいんですね」

 

「おーい、お前ら今大丈夫か?」

 

店長?何の用だろう。

 

「あっお姉ちゃんお母さんは?」

 

「ここでは店長と呼べって…まあいいや。母さんなら父さんが迎えに来てくれたよ。今日は虹夏の初ライブ記念にご馳走作るって張り切ってた」

 

「本当!?楽しみ~!」

 

「で店長、用があったのでは?」

 

「ああそうだった。お前らにお客さんだぞ。なんかギター背負った女の子2人組だったな…お前らと同年代くらいの」

 

「へぇ~誰だろ?」

 

「ファンになってくれたとかじゃないですか?」

 

「…」

おかえり…ぼっち、サーヤ。

 

 

 

 

「あっあのひとりちゃん、本当にこんな強引に乗り込んで大丈夫なんですか!?」

 

「あっうん、大丈夫大丈夫」

 

「このライブハウスの店長さんって人も少し怖かった気がするし…」

 

「あっ店長さんは見た目は少し怖いけど優しい人だよ」

 

「それにバンドやってるレベルの人達に私達のギターを受け入れてもらえるかな?」

 

「あっ安心して。私達なら大丈夫だから…行こうか」

 

「あっはい」

 

今でもこの選択が正しかったかはわからない。けど、もう決めたんだ…。死なないように生きるのではなくて、生きたいように生きるんだ。昨日を生きた私のことを、今日の私が悔やまぬように…。今日を生きた私のことを、明日の私が誇れるように…。相変わらず陰キャでコミュ障で青春コンプレックス拗らせてる私だけど、全力で生きてる今がとても充実してる。

 

「失礼します!」

 

「あっ失礼します」

 

「あっ結束バンドさんですね?私後藤ひとりって言います。こっちは友達で相方の」

 

「とっ富田サーヤです…」

 

「突然すいません、わっ私達をこのバンドに…」

 

現実は怖い…でもこれからとっても楽しいことがきっと待ってる!いや、楽しくしてみせる!!それが私の…

 

 

「結束バンドに入れてください!!」

 

 

 

 

 

 

ブラッシュアップだから!!

 

 

 

ブラッシュ・アップ・ぼっち!(完)

 




↓おまけ

もし他のキャラが“あの”場所へ行ったら その3
(このおまけは本編との関わりはありません)

伊地知星歌の場合

「待ってくれ…まだ私には守らなきゃならない妹とライブハウスが…」

「こればっかりは残念でしたとしか…」

「くそっ…」
(こいつに文句言ってもしょうがないのか…)

「それでは新しい命にご案内しますね」

「新しい命…来世ってこと?」

「そうなりますね」

(来世か…こんな親不孝な不良娘かつ無責任な姉なんて碌な生き物じゃないだろうな…)
「ちなみに私があれに入ったら次は何になるんだ?」

「えー…伊地知星歌様の来世は…人間ですね」

「えっ人間?私が?」

「はい」

「あー…あれか?不幸な人生になることが確定してる人間とかか?」

「えー…伊地知星歌様は…下北沢在住の後藤虹夏様から産まれる体重2969グラムの女の子ですね」



「…え?」


↓あとがきのようなもの

私がこの話を思い付いたのは、テレビドラマ『ブラッシュアップライフ』を視ていた時にふと、ぼっちちゃんが同じ状況になったらどうなるだろう?と考えたことが始まりでした。そこから妄想は膨らみ、「ぼっちちゃんなら絶対調子に乗って1周目よりも早くギター始めるよね」「そしたらguitarheroもチャンネル登録者数増えてるな」「ギター始める人も増えるだろうな」「あれ?そうしたら虹夏ちゃんがぼっちちゃん見つける前に他のサポートギター見つけて来ちゃうんじゃね?」「あっぼっちちゃん結束バンド入れないじゃん」とどんどん思い付くようになり、この段階で勢いだけで連載を始めてしまいました。本当は10話くらいで終わる予定がここまで長く続いたのは、読んでくれたり、感想、評価、御指摘をくださる皆様に支えてもらえたからです。物書き初心者の私にこのような機会をくれてありがとうございました。ぼっち・ざ・ろっく!で考えている話がまだあるので、また会うことがありましたら応援のほどよろしくお願いします。
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