頭の中で出来上がってる物語を文字におこす難しさを実感しております…。
あれ…?ここはどこだろう…?
何か聞き慣れた声が聞こえる…
あれは…ふたりとジミヘン?
「あはははー♪」
「わんっわんっ!」
飛び跳ねるように私の周りを走り回る妹と犬…
いいな楽しそうだな私も混ぜて?
「えー」
「わんっ」
お願い…なんかもう何も考えたくないんだ…
「そんなことでいいのー?」
「わんっ」
もういいよ…ジミラッシュ僕は疲れたよ…
「おねーちゃんこのままだと…」
「わんわん!」
ライセはネコゼミジンコダヨ?
「ネコゼミジンコはいやぁぁ!!!」
「うわっビックリした、ね、猫背?」
「んはっあっここは!?」
「STARRYのスタジオだけど…というか大丈夫?救急車呼ぶ?」
スタジオ…?ライブを観てたはずだけど…というか店長さん!?
「あっ…だっ大丈夫です…」
「急に倒れたと思ったらなんかずっとブツブツ言ってるし…他のお客さんもいるしライブ中だったからここまで運んだんだけど…」
「あっちょっと結束バンドを観に来たら色々情報がいっぺんに流れ込みすぎてショートしただけなんですすいません…」
「それ本当に大丈夫なの!?やっぱり救急車呼んだ方が…」
「あっぜぜぜ全然大丈夫なんで、て、てて店長さんにそこまでしていただかなくても…」
「あれ?確かに私は店長だけど名乗ってないよね?」
「あっ」
しっしまったぁぁぁぁこの店長さんとはまだ初対面だったぁぁぁ…!!
「あっあっあっあのそそそそれは…」
「…?」
(結束バンドを知っててかつ私のことも知ってる…よく見れば虹夏と同年代くらいか…)
「ああ、虹夏が呼んだ友達って君のことか」
「へっ?あっ…そっそそそそそうです!」
嘘ついちゃった…でもこの状況を切り抜けるにはこれしか…
「そっか、ならもう少しここで休んでおくといいよ。もうすぐ虹夏達が戻ってくると思うから声かけていってよ。来てくれてありがとうね」
「あっあああありがとうございます!そうします!」
「んじゃ私まだ仕事残ってるからお大事にね」
「あっはい」
なっ何とかなったぁぁ……危なかった…
しかもこれはチャンスだ…虹夏ちゃん達から話を聞ける…
あの子は誰なのか…何で私のところに来なかったのか…
ん?いや待て…さっきの店長さんみたいに虹夏ちゃん達にとっても私は初対面…しかもこの状況…不法侵入したピンク芋ジャージの不審者じゃん…!最悪の場合…
「あーー!泥棒だーー!!さては貴重な機材を根こそぎ持っていく気だな!?」
「神妙にお縄につけ」
「そんな悪いこと企む人は即通報だよ!」
「御用だ御用だ」
「もちろんSTARRYも出禁だよ!2度と面見せないでよね!」
「市中引き回しの刑」
イヤァァ!!無理ぃ…出禁は、出禁は勘弁して下さい
…よし逃げよう、体制を立て直そう…戦略的撤退
慌てず騒がず急いでスタジオを出るんだ…
扉を開けて退路確認……が、
見覚えのあるサイドテールが視界に入りすぐさま閉める…
マズイ!!もう戻ってきた…
どこかに隠れてやり過ごすしかない…!!
どこか…どこかいい場所はないか…?
ゴミ箱の中…ダメだいっぱい入っててスペースが…
アンプの裏…幅が足りない…前にずらせば何とか…
ダメだこれ1つだけ移動してたら不自然だ…
ああもう時間がない
どうしよう
どうしよう
どうしよう
どうしよう
どうしよう……あ
扉が開く…
「はーー!おつかれーー!!」
「仕事の後の一杯は格別」
「ただの水でよくそんな感動できるね」
「じゃあ虹夏ジュース奢って」
「調子乗んな」
「あっはは…」
足音と声の種類的に3人入ってきたことがわかる…
虹夏ちゃんとリョウさんの2人は間違いないとして
もう1人聴いたことのない声が混じっている…
おそらくこの声の主がさっきライブで
私がいたはずの場所で演奏していた子だろう…
よかった間に合った…バレてない…
私が隠れた場所…隅に畳んで置かれていたダンボールを
急いで組み立てて上から被る…懐かしいこの狭さ…
まさか2周目もお世話になるとは思わなかった…
ありがとう完熟マンゴー…
「ミスりまくった~!」
「MC滑ってたね」
「あはは、私もたくさん間違えちゃいました…」
このままあわよくば色々聞き出せたら…
よし、物音1つたてるな…気配を消せ…
ダンボールになりきれ…私は完熟マンゴー…
「今日はありがとうサーヤちゃん、すっごく助かったよ!」
「いえ、私こそ貴重な体験ができました。ありがとうございます」
さあやちゃん…?それがこの子の名前か…
喋り方や言葉づかいの感じからして絶対いい人…
そしてやっぱり知らない子だ…1周目も今も心当たりがない
「それでなんだけどサーヤちゃん…」
あ…
「もし良かったらなんだけど…」
ああ…や、やめて…
「これからも結束バンドのギターとして一緒に活動してくれなるとうれしいんだけど」
うわぁぁぁぁ…!!
ガタン!!
「え!?」
「お?」
「なっ何ですか!?」
しししししまったぁー……!!
「いいいい今あのダンボール動いたよね!?」
「うん、中に新鮮なナニかが入ってる」
「新鮮な!?」
完全にバレた…終わった…
「てーい」
「いやリョウ!何の躊躇いもなく!?」
視界が明るくなり私に注目する視線が3つ…
確保…通報…逮捕…起訴…前科持ち…あああ…
「え…とどなたですか?」
当然の質問…何か答えろ私!何か!
不審者じゃなくてただ道に迷ったお客ですよ
って納得してもらえる何かを!!
その時ふと脳裏に浮かぶ記憶…
あの悪天候の中来てくれて私に言ってくれた
あの人達の言葉……気分が高揚し力が溢れる
バンドマンにとっての魔法の言葉…
「私たち、ひとりちゃんのファンだし!」
ファンだし!
ファンだし…
「…ファンです…」
「え?」
「結束バンドのファンになりました」
「えっと…」
「皆さんの演奏がとても楽しそうで自分も音楽やるんですけど、初めてライブハウス来たんですけど、同世代でこういう場所で演奏してる御三方がすごく輝いて見えて、スゴいなカッコいいなと思えて、応援したいな支えたいなとも思えて、是非一言ご挨拶したいと考えましてつい出来心でスタジオまで入って来てしまいましたすいません、申し遅れました私後藤ひとりと申します大変申し訳ございません!!」
超高速で頭を下げ続ける。角度は90度!角度は90度!
「わかった!わかったから落ち着いて!」
「ロックだね」
「ロックなんですか!?」
無限に謝罪を続けるつもりだったがすぐに体力が尽きる…
我ながら取り乱しすぎた…
「…落ち着いた…?」
「はい…すいませんでした…」
「もういいから…えーと後藤…」
「ひとりです…後藤ひとり」
「ひとりちゃん私達のファンってことでいいんだよね?」
「はい!それはもう…」
「そっか、ありがとう!スゴいよリョウ、サーヤちゃん、初めてのライブでいきなりこんな熱狂的なファンができちゃったよ!」
「私がいるんだから当然のこと」
「本当その自信はどこからくるんだ?」
「でもスゴいです!ファンができるってうれしいことですね!」
情けないくらい強引な力技だったけど…
これで話聞けるかな…?
「その…皆さんのお名前とか教えていただいても…?ライブでは自己紹介とかされてなかったので…」
「あー!そういえばそうだったね!私はドラム担当の伊地知 虹夏」
はい、知ってます…
「で、こっちの表情わかりにくいのがベースの山田リョウ」
「こんにちは」
はい、存じております…私が知りたいのは…
「それでこっちの子なんだけど…実は今日急遽入ってもらったサポートギターの子でね?」
「富田サーヤですよろしくお願いします」
こんな私に軽くお辞儀をして微笑んでくれた…
これだけでわかる…この人は陽の人だ…
「本当はギターの子がいたんだけど突然やめちゃって…」
やっぱり喜多さんは今回も逃げちゃってるんだ…
「よ、よく見つかりましたね…ど、どちらにいたんですか?」
「それがね、リョウとどうしようかって相談してたら『今の時間なら下北沢駅周辺探し回ればギター背負った子の2、3人すぐ見つかる』って言うからその通りにしてみたんだよ!」
つまりそもそも公園まで探しには来てないんだ…
「そしたら丁度駅から出てきたサーヤちゃんを見つけたって訳だよ!もう奇跡だね!」
「あっえと…リョウさんはなんでそう思ったんですか…?」
「ああ、それは…これ」
リョウさんはスマホを操作して画面を見せてくれた…
オーチューブの見覚えのあるアイコンとアカウント名…
guitarhero…
「えっこれ…」
「この人の影響でギター始めてる子が多い。下北沢は特に」
「私も知ってるよー、ずっと前から滅茶苦茶上手いので超有名だよね!」
「私もこの人の弾いてみた動画大好きなんです!」
「あっあっああ…」
そうなのだ…6年早く始めたギター…
小学1年生からプロ級の演奏をしてそれを投稿すれば
注目されるのは必然…今ではチャンネル登録者数100万人超えの超人気チャンネルとなっている…
しかし私は再生数やコメントが1周目よりも多くて嬉しい
くらいにか思っていなかった…
完全に軽視していたのだ…今のguitarheroの影響力を…
今日教室で話しかけられたのもバンドグッズ云々の問題じゃなかったってこと…?
「guitarhero様様だね!おかげでサーヤちゃんに会えたから」
「私がギターを始めたのもguitarheroさんのこの動画がきっかけなんです!」
サーヤさんもスマホの画面を見せてくれた…
そこには私が1年くらい前に上げた動画のサムネが写っている…
「この動画のguitarheroさんのコメントが心に響いたんです…」
guitarhero・1年前
あと1年…高校に入ったら早くバンド組んでライブとかしたいな…
あと1年で結束バンドに戻れるからその気持ちを書いたコメントだったんだけど…これのどこが…?
「んーこのコメント見たところ結構普通のこと言ってる感じだけどどの辺が心響いたの?」
「普通だから、ですかね…」
「その心は?」
「私…今までいろんな習い事や趣味をやってきたんですけど、三日坊主でどれも長続きしなくて…このままじゃダメだなって思ってた時にguitarheroさんの動画を見つけてその演奏のスゴさに感動したんです!」
私動画をそんなにも…
「同い年でこんなにスゴい人がいるってわかったのと同時に、コメントで、誰かと一緒に人前で演奏したいっていう楽器を演奏できる子の誰もが持つような願望を書いてるのを見て、guitarheroさんが遠い存在じゃないって思えて…」
サーヤさん…
「この人も普通の学生で、普通に生活してる中で誰よりもギターと向き合ってきたから今があるんだ…私も本気で向き合えば何か1つ“これ”と言えるものができるかもしれない!って」
そういうことだったんだ…
「そう思ったら自然と楽器屋さんに足を運んでて…貯金とかお年玉とか全部使ってこれを買っちゃいました…」
背負っていたギターを見せてくれた…
「そんな感動秘話があったんだねー…」
「これはメジャーデビュー時のインタビューで語れば売り上げ爆上がり間違いなし」
「台無しだよ」
はは…これはもう…私が入り込む余地はないじゃないか…
「い、いい話ですね…」
「あっあの…今日はステキなライブありがとうございました…あとすいませんでした…もうこんな無茶はしません…ではこの辺で失礼します…」
そそくさとその場を離れる…逃げちゃダメだってわかってるけど…ここからサーヤさんを結束バンドから引き離すなんてできない…できるわけない…!!
「あ、ひとりちゃん!」
「あっはいなっなんでしょう…?」
「まだ未定だけど、次のライブも来てくれたら嬉しいな!」
「あっはい…その時は是非…」
こんな不審者の私に最後まで…虹夏ちゃんは優しいな…
そこから家に帰るまでの記憶がない…
帰ってからも何も考えられない…考えたくない…
何が人生最高の日だ…私の人生は私のせいで大きく変わってしまった…
夕食も喉を通らず布団に突っ伏してふて寝…寝れるわけないけど…
サーヤさん…いい子だったな…あの子なら結束バンドもいいバンドになっていくだろうな…
「おねーちゃんご飯はー?」
愛しの妹よ今はそっとしててくれ…
「おねーちゃん元気ない?」
ないどころかマイナスです…プラスになることはもうないでしょう…
「ギューッ」
「え?」
私の頭を抱き締めるふたり…フヘヘやめてとろけるからやめてフヘヘへ…
「私はギター弾いててときどき気持ち悪いおねーちゃんが好きだよ?」
「ふたり…」
「ご飯食べてギター弾こ?」
「…はい」
なんと単純な私…少し元気出ました…ご飯…食べよう…
満腹になり少し頭が働くようになった…
これからどうするか考えよう…
先ず結束バンドに関わらずにいるなんてイヤだ…
でも私はバンドメンバーじゃない…
私は虹夏ちゃんの夢を知っている…
せめてそれを叶える手助けはしたい…
今の私が結束バンドにして上げられることは…
…あ
「喜多さん!!!」
はい、オリキャラですすいません。
物語の進行上どうしても必要になり登場させました。
次回 逃げたギターを連れ戻せ