Persona3 Temperance   作:人ちゅら

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 すみません。
 予約投稿の設定時間を魔法科SSの方と間違えました...orz
 気付いて即時投稿にしなおしましたが、おかげで中途半端な時間に。


#016 学生の本分は

 4月13日――月曜日・昼休み。

 

 あなたは職員室の端、自分の席で書類を捲りながら、小さく溜息を吐いた。

 

 緊急入院となった結城(ゆうき)(みなと)について確認した結果、普通に急病扱いで処理されることになった。

 小テストについては、退院後に別日程で再試験を行うらしい。

 

 まあ結城は転入組だし、成績が悪いってことはないだろう。

 不公平感は有るが、こればっかりは仕方がない。

 

 書類を纏めて立ち上がろうとしたところで、職員室の扉が勢いよく開いた。

 

「シンせんッ――!」

 

 伊織(いおり)順平(じゅんぺい)だった。

 騒々しい。

 学校で叫ぶな。

 

「そんなことより聞いてくれよ! 小テスト! マジ終わった!」

 

 まだ始まってもいないだろうに。

 

「始まる前から終わってんだって!」

 

 順平は頭を抱え、その場に崩れ落ちる。

 周囲の教師が苦笑しながらこちらを見ていた。

 

 あなたは机へ肘をつき、順平を見下ろす。

 

――どこがどのくらい“終わってる”んだ?

 

「えーと……全部?」

 

――なるほど重症、ですね。

 

 順平は「だろ!?」と半泣きで頷いた。

 

 

*   *   *

 

 

 放課後。

 

 巌戸台分寮のホールには、参考書とノートが広げられていた。

 結局、泣きつかれたあなたが勉強を見る流れになったのである。

 

「うわ、マジで勉強会だ……」

 

 ソファへ座った岳羽(たけば)ゆかりが、露骨に面倒そうな顔をする。

 

「お前が一番関係ねぇだろ!」

「いや、だって順平一人だと絶対逃げるし」

「信用ゼロかよ!?」

「ゼロ? マイナスでしょ?」

 

 即答だった。

 

 テーブル向こうでは、美鶴(みつる)が既に英語の問題集を解き始めている。

 真田(さなだ)は何故か数学ノートの横にプロテインの容器を置いていた。

 

 あなたは順平のノートを覗き込み、小さく眉を寄せる。

 ……基礎が抜けている。

 

「マジっすか」

 

――まず公式からやりましょうか。

 

「そこから!?」

 

――そこから。

 

 順平は机へ突っ伏すものの、投げ出しはしなかった。

 文句を言いながらも鉛筆を持ち続けているあたり、根は真面目なのだろう。

 

 あなたは問題を一問ずつ区切りながら説明する。

 

――ここで符号が逆転します。だから答えは……

 

「……あ、マジだ」

 

――途中式を飛ばすから混乱するんですよ。

 

「いやー、シン先生(センセー)わかりやすいわ」

 

 率直に褒められ、あなたは少しだけ視線を逸らした。

 その横から、ゆかりが覗き込む。

 

「へー、順平でも理解できるんだ」

「なんだよその言い方!」

「事実でしょ?」

「うっせ!」

 

 再び言い合いが始まる。

 あなたは額を押さえた。

 

――静かにしてください。

 

「「はーい」」

 

 返事だけは良い。

 

 

 数時間後。

 順平の集中力が明らかに切れ始めた頃、あなたは立ち上がった。

 

――休憩にしましょう。

 

「賛成!」

 

 順平が即座に食いつく。

 

――買い出しに行ってきます。

 

「え、マジ?」

 

 甘い物でもあれば多少は頭も回るだろう。

 財布を取り出したあなたへ、ゆかりが「じゃ、私も行く」と立ち上がる。

 結局、真田以外の全員がついてくることになった。

 

 

*   *   *

 

 

 ポロニアンモール。

 夕方のスーパーを、制服姿の学生たちが歩いていく。

 

「これうまそー」

「順平、それ勉強中に食べるやつじゃないから」

「何で!?」

「匂いキツいでしょ!」

 

 騒がしい。

 だが、その騒がしさは不思議と不快ではなかった。

 あなたは少し後ろを歩きながら、そんな光景を眺める。

 

 放課後に友人と寄り道をし、菓子を買い込み、試験勉強をする。

 そういう高校生活を、自分は殆ど経験しなかった。

 

 理由はいくらでもある。

 だが今更、取り戻せるものでもない。

 

「……先生?」

 

 振り返ったゆかりが、不思議そうにこちらを見る。

 

「何ぼーっとしてるんです?」

 

――いえ。別に。

 

 あなたは軽く首を振り、歩き出す。

 その時だった。

 

「あ、そうだ」

 

 果物売り場の前で、ゆかりが立ち止まる。

 

「結城のお見舞い、何か買ってかない?」

 

 一瞬だけ、その場が静かになった。

 そして順平が「あー、いいなそれ」と頷く。

 美鶴も静かに頷いた。

 

 

 あなたは、少しだけ目を細めた。

 

 大型シャドウとの戦闘。

 昏睡状態の転入生。

 

 そんな非日常の直後だというのに、彼らは明日の小テストと見舞いの果物について話している。

 

 それは案外、悪くない光景かもしれなかった。

 




 感想、評価、お気に入り、ここすき、いつもありがとうございます。

 P3といえば“隣り合わせの死と青春”であります。

 人修羅さん、お勉強はそこそこ出来ます。大学受験で苦労したので。

 次回でキタローが復帰します。
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