Persona3 Temperance 作:人ちゅら
4月19日――日曜日・夜。
巌戸台分寮のラウンジには、普段より少しだけ賑やかな空気が流れていた。
テーブルの上にはスナック菓子や紙コップのジュース。
特別課外活動部の定例ミーティング――という名目だが、実態は歓迎会である。
「いやー、マジで世話になりまーす!」
その背後には、先ほど運び込まれたばかりの段ボール箱が積まれていた。
「元気なのはいいが、近所迷惑にならない程度にな」
「わーってますって」
そう答えながらも、順平は既にお菓子へ手を伸ばしていた。
あなたは少し離れた場所から、その様子を眺める。
結局、順平の入寮手続きは問題なく完了した。
電話口の母親は驚くほどあっさり承諾し、むしろ歓迎するような口調ですらあった。
本人にとっては複雑だろう。
それでも居場所が確保できたことには、意味がある。
「でさ!」
順平が身を乗り出した。
「俺、影時間のコンビニにいたんだぜ?」
「知ってるわよ」
即座に返したのはゆかりだった。
「
「そうそう!」
順平は得意げに頷く。
「つまり俺には素質があるってこと!」
「影時間の中で活動できる人間は極めて少ない」
「だろ?」
「だからと言って、ここの人間が特別視することは無いがな」
真田の言葉に、順平は一瞬きょとんとした。
そして周囲を見回す。
美鶴。
真田。
ゆかり。
退院したばかりの湊。
そして理事長。
「……あれ?」
「やっと気付いた?」
ゆかりが肩を竦める。
「ここにいる人間、全員そうだから」
数秒の沈黙。
「……マジ?」
「マジ」
順平の顔から、わかりやすく得意げな表情が消えた。
あなたは紙コップを傾けながら、その様子を見守る。
「なんだよー」
「残念だったな」
真田が笑う。
「俺だけが選ばれし戦士かと思ったのに……」
「影時間に適応している以上、それも間違いではないがね」
だが視線だけは真剣だった。
「ああ、そうそう伊織君。特別課外活動部の活動内容については、外部に話さないように」
「え?」
「家族にも友人にも、だよ」
「そんな厳しいの?」
「正義のヒーローは人知れず戦うものなのさ」
美鶴が続ける。
「我々が正義のヒーローかはともかく、影時間もシャドウも、一般には知られていない現象だ。世間に知られれば混乱の原因になる」
順平は「へー」と頷く。
そしてふと何かを思い出したように視線を泳がせた。
あなたはその理由に心当たりがあった。
数日前。
学食で交わした会話。
あの時、順平は「特別な力で戦うヒーロー」という認識を隠そうともしなかった。
「……なによ?」
ゆかりが怪訝そうに尋ねる。
「いや? 別に?」
「絶対なんか思い出したでしょ」
「思い出してねーって!」
「怪しい」
「怪しくない!」
ぎゃあぎゃあと言い合う二人を見て、真田が苦笑した。
「そろそろ切り上げるぞ」
時計は既に遅い時間を指している。
「明日から本格的に活動を始める」
その言葉で、場の空気が少しだけ引き締まった。
「伊織、荷解きは昼の間に済ませておけ。
美鶴が言う。
「今日はしっかり休め」
「了解っ!」
順平は勢いよく返事をした。
だが、その顔には不安より期待の方が強く見える。
自分は特別ではなかった。
それを知って少し落胆した。
それでも。
未知の世界へ踏み込む高揚感までは消えていない。
歓迎会が終わり、それぞれが席を立つ。
あなたは紙コップを片付けながら、ふと窓の外へ目を向けた。
明日の夜。
彼らは初めて、本当の意味で戦場へ足を踏み入れる。
順平が抱く英雄願望が、はたして現実に耐えられるものなのか。
それはまだ、誰にも分からなかった。
感想、評価、お気に入り、ここすき、いつもありがとうございます。
序盤の順平については毀誉褒貶ありますが、人間関係の摩擦で沈みやすい特別課外活動部の中では、なんだかんだで大事なムードメーカーだったと思うんですよね。
プレイ中は正直「うるさいやっちゃなあ」と思ってましたが(笑)
次回、やっとこタルタルに侵入します。
疲労システムも有りです。