中露両国が大きな被害を出しながら魔法帝国との核戦争に決着を付け、念のために止めを刺しておこうと決めたアメリカが介入し、完膚なきまでに叩き潰した大事件は、それから2ヵ月経とうとも世界全体に爪痕を残していた。
当然1つだけではなくいくつか存在していて、その中で大きなものとしては、今回の大事件に関わった主要4ヵ国の使用した核兵器が撒き上げた、膨大な量の粉塵と有害な物質などによる地球環境への悪影響である。
無論、各地の活火山が起こす可能性のある破局噴火や、遥か古代にて寒冷化を引き起こし、恐竜を絶滅に追いやった直径10㎞級の隕石衝突に比べれば、エネルギー量は圧倒的に少ない。人間から見れば膨大だが、粉塵の量に関しても同様だ。
魔法帝国本土の魔法系燃料や
「双方で核兵器が使用された以上、放射性物質により引き起こされるとは想定していたが……これは、光の結晶?」
「はい。大きいものは拳2つ分、小さいものは砂粒程度まで様々ですが、奇妙な性質を見せる未知の光る結晶体ですね。なお、色によって違いがあります」
「ふむ、例えば?」
「赤であれば発熱および発火、黄色なら放電、青色は色の濃さにより水の生成~周囲の凍結まで様々です。現状、強い衝撃を加えた場合にのみ、上記の現象が発生すると判明していますので、回収後は頑丈なケースにて保管しています」
「……間違いなく、奴らが持ち込んだ鉱石系の資源だろうな。まあ、宇宙にそのような鉱石があってもおかしくはないか」
しかし、舞い上がった粉塵に含まれる有害な放射性物質は言わずもがな、
特に、ラティストア大陸に程近いオセアニア州の国々、アメリカ西海岸やハワイ、メキシコがその煽りをもろに受け、動植物の命や電子機器への物理的干渉を筆頭に、生活を脅かす現象を引き起こしていた。
それらの国々より距離が遠く、太平洋に面している他の国に関しては、影響はある程度小さくなってはいたものの、無視するには少し大きい損害が出ている。
「報告! ロサンゼルス郊外にて、
「何だと!? あの時生き残った奴らがまだ潜んでいたのか?」
「そうですね。限定的ながら、飛行能力を有しているらしいですし……後はどれだけ、どさくさに紛れて潜んでいる者が居る事やら」
「クソッタレ! 今のところは何とかなっているが、全員早く見つけなければ、罪なき人々が惨たらしい運命を迎えてしまうかも知れん!!」
更に、核攻撃前にラティストア大陸から出撃した艦隊が数ヵ国に対して同時多発的な特攻を行い、その過程で光翼人が僅かながら国内に侵入する事件も起きていた。
攻撃そのものは本気になったアメリカやイギリス、激昂し続けている中国やロシア、自国にも艦隊が迫っていた日本、他数ヵ国が犠牲者を出しつつも撃破している。
ラティストア大陸の各種基地および兵器群、各都市などは核の炎に焼かれて壊滅状態であり、これによって再び艦隊同士の現代戦が行われるような事態は、もう2度と起こり得ない。
知っているか否かは別にしてもこの状況下、それだけが唯一の救いと言えるだろう。
ただし、地球環境の悪化や破れかぶれで特攻した光翼人によるテロ行為は勿論、世界経済の低迷期突入や、外宇宙からの脅威への対抗を謳う過剰軍拡思想の拡大、治安の悪化など優先し対処すべき事柄はあるので、しばらくは大変な時期が続くと確定している。
「ああ、すみません。その点でしたらご心配なく!」
「ほう、何か手でもあるのか?」
「はい。実は、兵士の中に人探しや気配探知が得意だと言う者が居まして……試させたら、その兵士は実際に隠れた奴らの場所を正確に当てました。そのため彼に協力を要請、既に了承されています」
「うーむ。そいつは何ともまあ、優れた奴も居るものだ……まあ良い。他にも何かあるなら続けろ」
「えっと、今は特にないです!」
「そうか。ご苦労だったな」
だが、特攻を敢行して各国の都市に潜んでいる光翼人の数に関して言えば、合計してすら650人程と非常に少ない。
更に、日本やアメリカへ侵入した光翼人はどれだけ隠密に気をつけようと、何故か死者を出しそうになる前にことごとく警察か
排除の進み具合も両国は抜きん出ていて、事件の発生率が初期の頃と比べて右肩下がりとなっている。
他に潜まれた国……メキシコやオセアニア州に所属する国々、一部アジア圏の国家はそれらの不思議現象は起きなかったものの、官民一体の結束やイギリスの援助、自国軍の精鋭特殊部隊の投入で、かなりの速度で排除が進む。
相手が魔法を筆頭に強力な武器を使う宇宙人である以上、一定程度の死者は出てしまってはいたが、誰もが決して挫けずに立ち向かっている。
「これからの我が国……いや、世界はどうなっていくのだろうな」
「少なくとも数ヵ月、下手したら年単位で試練の時となりますよ。この時ばかりはしがらみを捨て、あらゆる国々が手を取る必要があるでしょう」
「そうだな。しかし、上手く行くかね?」
「大丈夫じゃないですか? 核攻撃による犠牲者が合計で数十万人出た中露に対する、世界的な支援の輪が広がっていますし」
「……そうだな」
ちなみに、もはや壊滅したと言っても良い魔法帝国が有るラティストア大陸については、一定の期間を置いて
なお、テロ事件を起こした光翼人を捕らえ、
そのため、まだ精神が染まりきっていないであろう子供および極々一部の異端者を除き、民間人であろうと掃討戦の際に残っていれば関係なく排除する案が、リモート会議により全会一致で可決された。
無論、いくら何でもそれはやり過ぎではないかとの声が、全く出なかった訳ではない。一部ではあるが、国連参加国の中から意見を述べる者も出てきてはいた。
中国とロシアが本気で激怒し、アメリカ含む西側の先進国もその態度を黙認した事で、その意見は無いものとして扱われると決まるが。
「さてと、今日も1日頑張りますかね」
「そうですね。G20の会合まで後3時間、当然準備は終わらせています」
「おお、ご苦労さん」
こうして、異世界で悪名を轟かせた古の魔法帝国は、大陸ごと転移した先の地球で、滅亡への道を突き進んで行ったのだった。
ひとまず、今話にて本編は完結と致します。ありがとうございました。