暴虐の魔法帝国、地球国家と相対する   作:松雨

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番外編
どよめく先進11ヵ国会議


 地球とは異なる世界の1つ、その中でも世界に対し凄まじい影響力を持つ大国のみが出席する『先進11ヵ国会議』の議場では、開催前からどよめきが上がっていた。

 

 5ヵ国しか存在しない列強の内の1ヵ国『エモール王国』より、空間の占いを行った結果を会議開始と同時に伝えておきたいと、強い要望があったためである。

 

「これは確実に()()あったな。普通なら、わざわざこのような要望を出すなどあり得ない」

「ですねぇ。エモールのそれは的中率が98%……ほぼ必中なので、何かの内容によってはとんでもない事になりますよ」

「また自然災害か? 当時のムーとパーパルディアの民を思えば、杞憂であって欲しいな」

 

 この世界の歴史上、このようなことは今回を除けば僅か2回しかない。そして、その内の1回は列強諸国に影響しかねない大規模な自然災害の発生を予告するものであった。

 

 無論、これを機に各国が占いに基づく災害対策を打ち出したものの、自然の猛威はそれを容易く超えてきたために、少なくない犠牲者が出てしまったのである。

 

 とは言え、最悪の想定よりは対策が効果を発揮したのは間違いなく、人的や物的損害を幾分か抑える事は出来ていた。

 仮に無対策であったならば、最悪の想定通りになるどころかそれ以上に増え、その後の復興に多大なる支障をきたしていたに違いないのだから。

 

「それでは、これより先進11ヵ国会議を始めます。モーリアウル殿、よろしくお願い出来ますか?」

「うむ。では、先に実施した空間の占いの結果から申しておこう。暴虐な古の魔法帝国が……この星とは違う、地球なる(世界)に転移し、そこに住まう者の手により、()()()()()()()()()。種族としての光翼人は、保護下の4万人を残して殲滅されたとの事だ」

「「「……え?」」」

 

 そして、会議に参加する国々より派遣されてきた者が全員集い、開始と同時に司会者がエモール王国へ声をかけ促すと、竜人の『モーリアウル』は場に凄まじい衝撃と静寂をもたらす一言を口に出した。

 

 古の魔法帝国……勿論、今を生きる人々が実際に対峙した訳ではない。対峙したのは、インフィドラグーンを含めた遥か過去の人々である。

 

 しかし、エモール王国の人々を含め、異世界諸国にとって不倶戴天の敵と代々伝えられている存在であり、ミリシアルですら足元にも及ばない強力な国が知らぬ間に復活していて、知らぬ間に滅ぼされていたのだ。予想外にも程がある訳で、皆が衝撃を受けるのも無理はない。

 

「古の魔法帝国が、滅ぼされていただと!? よもやそれ程の力を持った人々が存在したのも驚きだが、一体どんな魔法を使ったんだろうか?」

「いいや、違う。信じられぬだろうが、魔法ではない。ムーと同様の技術体系、科学を極めた魔力を持たぬ人々による偉業だ」

「おぉぉ! 信じがたいが、何にせよ我々の代わりになってくれたのだ。とにかく、感謝せねばなるまい」

「ええ、違いありません!」

 

 時間にしてほんの数秒沈黙が場を支配した後、参加したほぼ全ての国は口々に喜びの声を上げたり、見知らぬ地球諸国(世界の人々)に感謝を述べたりするのはもとより、国家の代表らしからぬ暴言で魔法帝国を侮辱する者まで発生する程に盛り上がりを見せた。

 

 当然の流れとして、戦いの詳しい内容を尋ねる国も出てくる訳だが、モーリアウルは占いで判明した事であれば、特に隠したり嘘をついたりもせずに答えたため、場の雰囲気は更に熱気を帯びたものとなっていく。

 

 特に発掘かつ完全ではないにせよ、一定数の古代兵器を運用しているミリシアルに至っては、最終的に起きたコア魔法(核兵器)の撃ち合いと言う終末に耐え切った地球諸国に対し、衝撃的すぎて何も言えずに黙り込んでしまう。

 

 自分たちの運用している兵器とは違い、完全な性能を発揮していた魔法帝国の超兵器群を、自分たちから見たら()()()()()()()()()()()()で撃破したのが、ムーと同じ科学文明を発展させた人類と言う事実を突き付けられたのだ。

 

 この世界で一般的な論である、科学は魔法を超えられない常識を打ち破った訳だから、まあ致し方ないだろう。

 

「まさか……かつての故郷が、いつの間にかこことは比較にならない修羅の世界と化していたとはな」

「しかし、ヤムート(日本)も何だかんだで地球の列強上位に食い込めていたのは凄いです。そして、我が国も死ぬ気で頑張れば、魔法帝国を倒せる領域まで至れる……光明が見えてきました」

「違いない。まあ、純科学文明が我が国のみなのを考えると、とてつもない時間が必要だろうが」

 

 魔法文明の頂点を科学文明で超えた地球諸国の存在を知った、列強第2位にして唯一の純科学文明の『ムー』は、この結果を知った事で、より一層奮起した。

 かかる時間と難易度はさておいて、魔法にも科学で追いつける、または追い越す事が可能だと示されたからだ。

 

「おや? 顔色が優れていないようですが、体調でも悪いのでしょうか?」

「っ!! あぁ、ムーの方でしたか。申し訳ない、恥ずかしながら言い出す事が出来ず無理をしてしまいまして」

「いやいや、とんでもない。()()()()()()()()()()()()。それよりも、お帰りになられた方が良いのでは?」

「そうしたいのはやまやまですが、国際会議ですので帰りません。耐えられない程ではなく、意地もありますし」

「……まあ、貴殿方がそう言うなら無理強いは出来ませんね」

 

 なお、光翼人の末裔かつ魔法帝国の復活に向けて秘密裏に動いていると言う、バレたら大惨事と化す特大の爆弾を抱えているアニュンリール皇国の面々は、側に居たムーにお通夜状態(分かりにくい動揺)を悟られる大失態を犯してしまった。

 

 しかも、今回派遣されていたムーの役人の中には、少ない情報から始まる推理でも、隠された真実を高精度で導き出す超有能な男として国内では有名な人物も居た。

 結果、確たる証拠を集められるかどうかは別として、今後は間違いなくムーに要警戒対象国として扱われる未来が、確定してしまう事となる。

 

「案外科学も馬鹿に出来ないですなぁ。我々も、少しは学ぶべきなのかも知れませんぞ」

「魔力を持たない人々でも扱えるなら、簡単に軍事力を増強させられるかも?」

「極めればって注釈が必要だぞ。後は国力だな」

 

 そして、予定では30分程度で終わる手筈だったこの話は、その5倍の時間が過ぎてさえ熱量を保ち続けているため、本来議題に上がるはずだった話から大幅に逸れている。

 

 司会者や一部の参加者も時折呼び掛け自体は行っているが、その声はあっさりと場の声量と熱量にかき消され、終いには会議が先進国の交流会となる始末だ。

 

 元々1日で終わる会議ではないにせよ、時間が有限である事には違いないため、タイミングを見計らいながらの呼び掛けは続けられていく。

 

「……皆様!! ひとまず時間ですので、本日はこの辺で切り上げる事と致しましょう!」

 

 しかし、結果としては会議1日目が終了するまで、この喧騒が完全に収まる事はなかった。

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