古の魔法帝国の滅亡が伝えられてから
自国外交官の大失態や、グラメウス大陸の『エスペラント王国』での事案他数々の不運が重なった結果、抱えていた火種を7割処理した時点で発火し大爆発、第一と第二文明圏全体に宣戦布告されると言う地獄と化してしまったからである。
「クソッ、何なんだあの
「まさか、ここへ来て異世界からの転移国とは……」
そこに加え、今の世界情勢を知らない不運な転移国家である『グラ・バルカス帝国』の
地球で表すと1960年代後半、一部技術は1980年代と同等の力を持ちつつ、物量が脅威的な領域にまで達しているこの国を相手に戦うともなると、1対1かつ古代兵器込みでないと、勝利の望みすらなくなってしまう。
しかも、物量は大きく劣れど技術力は地球の1970年代前半のムー、同程度の技術力かつ古代兵器をほぼ全力投入しているミリシアル、この2ヵ国も加わっている。
いくら、平均して1980年代の技術力に加え、多数の発掘古代兵器を所持しているアニュンリールとは言えど、この列強2ヵ国と
「ええい! 3ヵ国共誘導魔光弾ないし、それと同等の兵器を実用化している。まさか、鎖国政策が裏目に出るとはな」
「ですね。まあ、鎖国を解いていたら解いていたでもっと早くバレていただけでしょうけど」
「はぁ……思えば、
なお、現在の戦況は圧倒的ではないにせよ、技術力に差がない上物量差で押し込まれている状態……つまり、アニュンリール側の不利で状況が推移している訳だ。
そして、このような場合に戦況を1発逆転させる事が可能であり、諸刃の剣でもあるコア魔法を、アニュンリールは持っている。放とうと思えば、準備をした上で放てるように備えられている。
しかし、主人である魔法帝国が滅亡するきっかけになったのも、多数のコア魔法を使用した事による相手からの反撃だと、当時のエモール王国による占いで判明していた。
なので、国内の軍人の猛反発により、準備が出来ずに今に至っている。
ちなみに、ミリシアルはコア魔法、ムーとグラ・バルカスは核兵器をそれなりの数所持はしているものの、決して自分から使ったりはしないと法律で固く決められている。
例外としては、相手が大量破壊兵器を使用して自国の民に壊滅的な被害を与えた時、反撃のみに使えると法律に記されていた。
なので、アニュンリールが3ヵ国のいずれかにコア魔法を使った場合、地球で魔法帝国が辿った末路をそのままなぞるようにして、自国も同様の末路を辿る事となるのは確実だ。
国内の軍人の猛反発が、最悪の末路だけは行かぬように繋ぎ止めてくれている状態となっている。
「ちくしょう、ちくしょう……調子に乗りおって――」
「失礼します!! 会議中に申し訳ありませんが、緊急事態なため少々お時間を下さい!!」
頭を悩ませつつも、この状況を打開すべく策を練っていたその刹那、物凄い慌て様の有翼人が会議室の扉を乱雑に開けて入ってきた。当然、彼は参加者の注目を一身に浴びる事となる。
本来であれば、彼の行為は上司からの叱責に値するレベルのものであったが、どこからどう見ても緊急事態が発生したのは明らかであり、誰も咎める者は居ない。
「分かった。取り敢えず、その内容を言ってみろ」
「はいっ! 実は……」
会議参加者の1人が内容説明を促してみると、彼の口から発せられた言葉に対し、この場に居た者は例外なく一様に言葉を失う程の衝撃を受けてしまう。
何せ、このタイミングでコア魔法の保管施設に致命的なトラブルが発生、150ものコア魔法が一斉に自爆して施設ごと、街が2つ灰塵に帰したと言う報告だったのだ。誰であれ、これが衝撃でないはずがないだろう。
幸いにも、皇都や経済都市は核爆発の影響範囲から大きく外れていたものの、アニュンリールはこの事故により決して少なくない被害を被ってしまった。
何なら、3ヵ国との戦いで生まれた犠牲者と物的被害を、軽く上回ってしまっている。
「トラブルだと……ふざけるなぁぁ!! あの保管施設に、全てのコア魔法を保管していたんだぞ!?」
「地球なる星の国が持っていた数千のコア魔法、自国のコア魔法の爆発で滅亡した魔法帝国よりはマシでしょう。言いたくないですが」
「ああ。しかし、これで過激派連中の突き上げにも物理的に答えられなくなったのは、せめてもの救いか。コイツを3ヵ国の内いずれか、ないし第一・第二文明圏の国に使っていたとしたら、かの国と同じ運命を辿るだろうな」
しかし、皮肉にも今後戦争がどのような経緯で推移していくにせよ、魔法帝国が辿った末路を同じように辿る運命は回避出来た。
皇帝の『ザラトストラ』含む政府上層部の戦闘意欲は未だ下火にならず、国策としてあらゆる場所に使う資源を減らす省エネ構想が功を奏しているため、今のところは不利ながらもギリギリ持ちこたえられてはいる。
だが、魔石含む各種資源の不足は如何ともし難く、このまま戦争が続いてしまえばいずれ体力切れを起こしてしまう。敵である3ヵ国は、アニュンリールよりも経戦能力が単体で高いのだから、尚更であった。
「ともかく、この窮地乗りきらねばならぬ。皆、心してかかれ」
そうして、この事実を理解出来ていたアニュンリールの皇帝含む上層部の面々であったが、戦争を止めて降伏すると言う選択肢は、誰の頭の中にもなかった。
結果、どうにかして耐え忍びつつ、起死回生の一手を模索する事が決定してしまった。