暴虐の魔法帝国、地球国家と相対する   作:松雨

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光翼の残り香

 ラティストア大陸ごと地球へと転移した古の魔法帝国が、列強国を筆頭とした世界連合軍の統治下に置かれ解体された日から6年半、アメリカ主導でその一角に建てられた『保護教育街』では、保護された光翼人4万人が比較的平和に暮らしていた。

 

 未だに残る光翼人の精神性に対する警戒感、魔法と言う解析し切れていない不確定要素などから、地球諸国では法的に彼ら彼女らの人権が議論の真っ最中であり、一般人(特に中露)からの印象も最底辺の1つ上程度に留まっている。

 

 しかし、この街中ではとの注釈がつくものの、保護された光翼人にも地球人類と同等の権利が与えられている。衣食住は勿論の事、地球の常識を含めた教育、提供された各種娯楽によるストレス発散も可能となっていた。

 

 当然、保護をする際には地球諸国から多かれ少なかれ人員が派遣される以上、その国から烈火の如く反対意見が上がる訳だが、無理もないだろう。

 

 だが、大人に関してはともかく子供に関しては、統治軍や生き残り光翼人(異端者)の協力による魔法帝国の調査をしていく内に、教育さえ間違えなければ危険性を大幅に抑える事は可能と判明していた。つまり、地球人の子供をしつけるやり方でほぼ問題はないのである。

 

「はぁ……つくづく思うが、核戦争で滅んでったアイツら(光翼人)、こんな無垢な子供にあんな鬼畜教育を施していたのは許せねえな。満面の笑みで、後始末を押し付けて死んでいったのも許せん」

「自分も、最初は生まれた頃から精神構造がめっきり違うせいだと思っていましたが、小さい頃からの思想教育がそもそも輪をかけてヤバかっただけと来る。本当、やるせないですよ」

「ああ。大馬鹿野郎な大人たちのせいで、故郷も友達も皆まとめて滅んだ訳だからな。今でこそ活気を取り戻しつつあるが……」

 

 ちなみに、光翼人の子供への教育を主として担当する国は日本だと、国連の会議によって決められている。日本の教育方針や他国からの押し付けなど色々理由はあるものの、1番は軍人や派遣教育者からの露骨な差別がかなり少ない点が挙げられた。

 

 無論、全く居ない訳ではない。表情や仕草で分かりやすい態度を示す者、理不尽に怒鳴りつける者、中々にえげつない事をする者も出てきてはいるものの、その時々に応じた処罰が下されている。

 

 また、良くも悪くも規律に厳しく、悪い事をすれば過剰すぎたり緩すぎたりする事もなく、まるで自分の子供を躾るかの如く真剣に向き合っているのも大きい。

 

「うおわっ!? って、ルゥか! 相変わらず好きだよなそれ」

「アハハッ! 驚いた? まあ、言うまでもなさそうだけど!」

「分かってんなら聞くなよ。それよりも、今日は学校じゃなかったか?」

「先生のお話がつまんないから、こっそり抜け出してきた! おっちゃん驚かして遊んでる方が楽しいもん!」

「あらら、完全におもちゃにされてるじゃないですか」

「うるせぇ! まあ、子供相手なら悪い気はしないがな」

「ふーん。じゃあ、おっちゃん2人はこれから僕のおもちゃね!」

「ルゥ、俺はおもちゃじゃねえ! 止めろって!」

「こっちもなのかーい!」

 

 故に、地球式教育を受けて精神もそれに準ずるものへと染まっていった子供たちに、日本人は地球人の中で最も懐かれている。

 なお、懐かれすぎているために、可愛げはあるが面倒なイタズラの対象とされているのも、同じく日本人であった。

 

 ちなみに、日本人以外だとイギリス人が1割劣る程度の割合で、懐かれている割合が高くなっている。最初はそうでもなかったが、初期メンバーを総取っ替えした上で規律で縛り、日本の真似をし続けた結果だ。

 

 それ故か、イギリスに付き従って魔法文明や技術の解析の手伝いをする大人の光翼人は、かなり協力的である。

 全体を通して多かった訳ではないものの、中国やロシア、他一部の国々とも違い、変なトラブル(実力行使を伴わない喧嘩)なども()()()()少ない。

 

 解析率に関してもアメリカに追随、日本よりも僅かながら上回っている程であり、既にいくつかの試作珍兵器を稼働状態にまで持っていっている。上手く行けばだが、()()()()の先駆けとなり得る領域に居るのだ。

 

 ただし、ラティストア大陸の魔法系資源の量がかなりのものとは言え、調子に乗り続け採掘しまくれば、いずれは枯渇してしまう。その点に関しては、今後の地球諸国の課題である。

 

「ねえ。なんでおっちゃんたちは、僕たちと仲良くしてくれてるの? 大人たち、酷い事ばっかりしてたのに」

「あー……まあ、何だ。俺たちの国は被害が比較的少なかったのもあるが、無垢な子供に罪はないだろ?」

「そうそう。後は、君たちが良い子だからかな。悪い大人たちみたいだったら、こうは行かなかったよ」

「そっかぁ……えへへ」

 

 そして、他の国々はともかくとして中国とロシアに関しては、衝撃弾頭搭載型の大陸間弾道誘導魔光弾、ならびに魔法版水素爆弾(ヴァナフォール)搭載型の着弾により、一瞬で沢山の人々の命が奪われている。

 

 大切な家族や友人、故郷や自然が理不尽に跡形もなく核の炎で消え去ったのだ。国家壊滅には程遠かったとは言え、子供にすら悪感情を向けるのも致し方ないだろう。

 

 とは言ったものの、中国やロシアの着弾地点とその周囲の加害範囲内にあった町や村には、他の国々から多種多様な理由で滞在していた人物も存在していた。

 

 なので、その2ヵ国以外にも保護された子供を含む何もしていない光翼人に、悪感情を向ける国があったとしても、決しておかしくはないのである。向けるだけであれば、だが。

 

「あっ、こんなところに居たのね! ルゥ、あんたはいつも面倒ばかりかけて!」

「ヤベッ……じゃあね! また今度会ったら遊んでよ!」

 

 色々な問題点があるものの、壊滅した魔法帝国から保護された光翼人たちは、こうして再出発の道を少しずつ歩んで行くのであった。




ひとまず、今話を持ちまして番外編も含め、完全なる完結とさせていただきます。ここまで読んでくれた方々、評価や感想を下さった方々、本当にありがとうございました。
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