思想はともかく、地球国家から見ても先進的な文明を築いてきたと言えるであろう、魔法帝国の巨大港町『ルカオン』にある海軍基地や超兵器基地から、総勢20隻を超す大艦隊が出港していた。
内訳はパル・キマイラⅠ型6隻に海上要塞『パルカオン』2隻、アステロイド級対空魔船3隻にノクターン級対潜魔船2隻、ユニバース級純粋魔波式空母1隻、汎用魔導護衛艦9隻に補給輸送艦3隻、テルス級魔導潜水艦2隻である。
無論、目的は自国の欲望の赴くままの地球国家の征服、住民の奴隷・玩具化であり、そこに正義など微塵もなかった。
そして、派遣された艦隊に居る光翼人の中に、これから実行される行為に対して、僅かでも疑問に思う者は当然の如く存在していない。
とは言ったものの、
「司令官、我々はどこを征服しに行くんでしょう? アメリカ合衆国ですか?」
「いいや、違う。我が帝国からほぼ西方面にある島国と大陸国……確か、偵察部隊はニュージーランドと、オーストラリアって言ってたな」
「なるほど。でも、そこ近辺に他の国ってありませんでしたっけ?」
「確かにあるが、さほど脅威にはならないとの事だ。と言うか、それら弱小国込みでの我々らしいぞ」
「そうですか。あまり荒らしすぎて、お楽しみがなくなると困りますので、ある程度は加減しなければなりませんね」
そして、そんな彼らの理不尽な毒牙にかけられようとしているのは、ラティストア大陸より西側にあるニュージーランド、およびオーストラリアである。
1人勝ち状態のアメリカを含む列強諸国と比べれば、経済規模や世界での発言力はともかく、軍事力では劣っていると言わざるを得ない。ニュージーランドに至っては、言わずもがなだ。
無論、オーストラリアに関しては無抵抗のままやられる程弱くはなく、むしろ魔法帝国の偵察部隊による攻撃を退け物的・人的損害を最小限に抑えつつ、敵であるマーハスを全滅させた上、偶然滞在中だったイギリス空母打撃群の援護や自国海空軍の大活躍で、パル・キマイラⅠ型を大破に追い込んでいる。
故に、魔法帝国内ではそれ相応の脅威であると認定、外洋派遣艦隊の2割に当たる、主に彼らを念頭においた艦艇の派遣に至る事となったのだ。
「あれは、貨物船でしょうか。何か、遠目に我が帝国の客船と似た船もありますね」
「ふむ、よし。パル・キマイラⅠ型1隻に『
「えっ、弾の無駄遣いでは? 相手が軍艦でなければ、15cm3連装速射魔導砲にするべきです。そもそもの話、軍事行動中の寄り道はまずいと思いますし、客船に至っては船体の側面に星――」
「既に許可は得ているし、お前は何も心配しなくても良い。さあ、やるんだ」
「……了解」
そんなこんなで航行を続けていた道中、運悪く何らかのツアーで航行中だった豪華客船、オーストラリアやその周辺国へ向かう貨物船数隻に対し、司令官はあろうことか撃沈の命令を下す暴挙に出てしまう。
貨物船への攻撃に関しては偶然ながら、ある程度の軍事的意味合いはあったと言えなくはないが、豪華客船への攻撃に至ってはまるで意味合いがなく、もはやただの虐殺でしかない。
ちなみに、司令官が貨物船や豪華客船への攻撃を決断したのは、
何であれ攻撃する以上、一定の死傷者が出てしまうのは自明の理なのだが、それについては特に気にしている様子は見られていない。
「魔導電磁レーダーに不具合……いや、電波妨害です!! 対電波妨害魔導装置を起動しましたが、完全には対策で……あっ、対空誘導魔光弾が多数、こちらへと接近!」
「クソっ、来たか……寄り道はひとまず中断、こちらも攻撃・敵誘導魔光弾に対する防御の準備をせよ! 我が艦含むパルカオン2隻は『
『了解!!』
無情にも、侵略者により命や尊厳が蹂躙されようとした瞬間、魔法帝国の外洋派遣艦隊への電波妨害と同時に、多数の
これも、オーストラリア軍や遠征航海中で偶々居たイギリスの『クイーンエリザベス』を旗艦とした、強力な空母打撃群によるものである。
なお、今回の派遣艦隊の司令官や侵攻を計画した上層部は、オーストラリアに滞在中のイギリスの空母打撃群について、存在を把握はしているが、計画の中止などは行われなかった。
『パル・キマイラ1号機、敵誘導魔光弾の波状攻撃により大破! 高度維持出来ません!』
『敵機2機に敵艦船1隻撃破……しかし、
『アステロイド級1隻が2発被弾、魔導電磁結界を突破され中破! パルカオン1号艦にも敵対艦誘導魔光弾の一部が飛来、されどラノスの発射準備に大きな支障はなし!』
地球国家同士ではなされる事のなかった現代戦が始まってから50分、戦況はオーストラリア・イギリス空母打撃群即席連合側の有利で進んでいた。
偵察部隊とは違い、かなり強力な艦隊を揃えては来ていた魔法帝国側であったが、
勿論、本国への援軍要請は何度も試みているものの、電波妨害の影響で通信可能エリアが極端に狭まり、届かない事態が発生している故に、全て失敗に終わっている。
「一応最新鋭の艦隊でここまで苦戦するとは……偵察部隊では勝てない訳――」
そして、何とか地球側からの攻撃に対応しつつ、もう少しで発射準備が整おうとした刹那、司令官の乗るパルカオンに警報がなり響き、強制的に電磁加速砲への電力変換用魔力の供給が停止してしまった。