「嘘だろう……? まさか、こんな方法で回避されるとは!」
「ええい! 我が艦も同時に放てていれば、こんな事にはならなかっただろうに!!」
オーストラリア・イギリス空母打撃群連合の猛攻を凌ぎつつ、パルカオン1号艦が
航空機や艦船からの100を優に超える
更に、防空や対潜の要となる艦艇を含め、およそ半数の艦艇が中破以上の損害を受けていた。パル・キマイラⅠ型は4号機までが大破ないし撃沈、パルカオン1号艦も火災や大規模誘爆により瀕死とも呼べる惨状である。
「あの様子だと、1号艦は再発射出来そうにないな」
「恐らくは……いえ、十中八九出来ないでしょう」
「クソッ。我が艦はどうだ?」
「無理です! 言いたくないですが敵の技術も物量も凄く、防空網を全力で稼働させてもすり抜けて来ます!」
「ちっ! こんな時に警報システムが足を引っ張るとは……
ただ、パルカオンの150mm魔導電磁加速砲は最大射程が200㎞あり、マッハ7を超える弾速と特殊弾頭、雷と火の複合属性魔法による非常に高い装甲貫徹能力を誇る、必殺兵器の1つである。
お互いの距離も30㎞程度しかなかったのもあり、狙っていたクイーン・エリザベスの側、大規模誘爆でズレた射線上に居たオーストラリア軍のフリゲート艦1隻、イギリスのミサイル駆逐艦1隻に命中し貫通撃沈させる被害を与えていた。
更に、それでも破壊力を保持したままの特殊弾頭がシドニーのビル街へ突入、いくつかの建物を貫いた後に強力な魔法雷を伴う爆発、電磁パルスによる750m圏内のあらゆる電子機器の破損も発生させている。
『パルカオン1号艦、大規模誘爆に端を発した火災が収まりません! 死傷者多数、もうどうしようも――』
「ぐぉああっ!? おのれぇぇぇ、下等種族の癖にぃぃ!!」
「司令官、今発狂している場合じゃないですって――」
しかし、パルカオン1号艦が致命的な箇所での大規模誘爆発生後に沈没、2号艦でも誘導魚雷や多数の
なお、パル・キマイラⅠ型に搭載されている超望遠魔導波検出装置を使用すれば、近場で撮影したかの如くシドニーの様子を鮮明に知る事自体は可能である。
「ん? 少し敵の弾幕が薄くなってきたか?」
「弾切れが近いのかも知れません。と言っても、我々も魔力残量は厳しい領域に突入していますが」
「こちらの防空能力を飽和させる程の誘導魔光弾、対潜能力を飽和させる程の誘導魔雷を使えば、弾切れも当然の話だろう……ならば、ここを乗り切れば勝機が見えてくる! 踏ん張れよ!」
端から見れば、オーストラリア・イギリス空母打撃群連合へと天秤が傾いていると言えるだろう。実際、それは反論の出来ない真実だ。
とは言え、彼らも用意している各種弾薬の在庫が尽きかけている上、軍人たちの精神的疲労も無視出来ない領域へと入りかけている。
武器を持たずとも、生まれ持つ膨大な魔力がそのまま色々な用途に使える光翼人の存在は非常に大きく、この戦闘
「報告! およそ200の敵誘導魔光弾を探知! 着弾まで残り2分弱! なお、ありとあらゆる方角から放たれていて、恐らくその内の一部は現在対峙中の敵とは別の敵から放たれています! 」
「200だと? どこの国が放ってきた……いや、それどころではないな。とにかく迎撃だ! ちくしょう、電波妨害されていなければまだマシだったのに!!」
一縷の望みを賭け、被弾や撃沈艦艇を増やしながらも何とか堪え忍んでいた刹那、それを打ち砕く報告が司令官の乗るパルカオン2号艦へと行った。
全艦が万全の状態でさえ、迎撃が容易ではない強力な攻撃およそ200を、防空能力の大幅減衰した艦隊で防ぎきる必要性が生じたのだから、艦内が慌ただしくなるのも致し方ないだろう。
なお、その攻撃を放ったのは、政府によりあり得ない早さで議論が成された後に援軍派遣命令が下り、魔法帝国艦艇を射程圏内に収めたアメリカ海軍の『第7艦隊』である。
「迎撃、迎撃!! されど、数が多すぎます! 未だに170発が接近……あっ、本艦には130発!」
「130発!? ただでさえ、アイツらの攻撃で中破していると言うのに何と言う事だ!」
地球最強のアメリカ海軍、その中でも守備範囲の広大さ故に最大級の規模を誇る彼らの攻撃の大半は、オーストラリア・イギリス空母打撃群連合の奮戦で中破しているパルカオン2番艦へと向けられている。
魔法帝国偵察部隊のパル・キマイラⅠ型を撃墜したアメリカ軍が、見た目からして厄介かつ純粋に強固な防御力を誇っていそうなパルカオンにもバリアがあると踏み、確実に仕留めるためにはこの程度必要との判断が下されているのだ。
「アトラタテス砲Ⅱ型稼働、更に数発撃墜……あぁぁ、115発が迎撃出来ず!!」
「クソッ、どこのどいつがやりや――」
結果、アメリカ海軍の読みは正しく、魔法帝国の防空網をすり抜けた115発の対艦ミサイルは、イギリスの原子力潜水艦から放たれた誘導魚雷による誘爆が発生中のパルカオン2番艦に直撃し、ダメージコントロールが追いつかない致命傷を負わせ、撃沈へと追い込んでいく。
そして、残りの40発と追加で放たれた対艦・対空ミサイルは、雨の如く死に体だった残存艦艇へと襲いかかり、その全てを海の藻屑へと変えていった。