暴虐の魔法帝国、地球国家と相対する   作:松雨

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新たなフロンティア

 魔法帝国内でも屈指の経済規模を誇り、魔導工業や多種多様な魔法技術研究が行われている場所な故に、国力維持に一役買っている『シルヴァー』の港町へ向けて、中国とロシアの即席連合艦隊67隻は航行していた。

 

 衛星などから仕入れた情報を元に自国への被害を最小限にしつつ、相手へ最大限の被害を与えられそうな上、最も近い場所がその港町だったからである。

 当たり前だが、この2ヵ国が港町の名前や経済規模云々を知る由などない。

 

「まさか、このような形で出撃するとは思わなかったな。しかし、流石は大陸ごとやって来た宇宙人だ。結構ミサイルは撃ったはずなんだが、大したダメージは与えられなかったらしい」

「そうらしいですね。しかも、あの移動海上要塞(パルカオン)とやらが3隻向かってきていると」

「数百の対艦ミサイル、多数の誘導魚雷、艦載機の爆弾に耐えきってたヤバい奴って、イギリスとオーストラリアの連中が言ってたぞ。アメリカの援護もあって、最終的には2艦撃沈出来たらしいが」

 

 なお、中国とロシアが即席とは言え連合を組み、魔法帝国へ戦争を仕掛けた理由は2つあり、1つは偵察部隊によって自国民に僅かながら被害が出たため、それの報復を行うと両国政府が決めたからだ。

 

 防空識別圏内に偵察部隊が入った事による監視のため、出撃した戦闘機が不意打ちを受けた際に、中国が2機でロシアが1機撃墜されている。

 その後に現代戦へともつれ込み、勝利するまでに大破撃墜されたのが中国は3機でロシアは2機と、これが被害の内訳となっていた。

 

「はい。それに、武装搭載量も相当ながら、最も警戒すべきは1隻につき2基2門の()()()()()と、言ってましたね」

「最大射程は不明、軍艦2隻を容易に撃ち抜いた上でシドニーの建造物すら撃ち抜く貫徹能力、爆発と同時に電磁パルスを発生させる弾頭……相手をするにはかなり面倒だが、上手く行けば我々と中国で技術を盗れるかも知れん」

「それだけでなく、資源も領土も文句を言われずに取れる大陸な訳ですから、まさにフロンティア。上が喜ぶのも頷けます」

 

 ただし、両国にとってはそれよりも2つ目の理由……西側諸国を含む世界から非難されず、各種資源やオーストラリア大陸の約3倍もの大陸を、やろうと思えば自国のものに出来るのが大きかった。

 

 何なら、大半の国々がこの事実に沈黙で肯定の意を示す中、アメリカやイギリスに至っては()()()()()()()()や敵の情報などを餌に、上手い具合に(さりげなく)推奨する始末である。

 

 無論、中国やロシアを焚き付けて敵の戦力を少しでも明るみにするとともに、何かと厄介な両国に戦力を減らしてもらい、自国の脅威を取り除く意図がある故の推奨ではあるが。

 

「あっ。敵艦艇と空母艦載機、および敵空中艦より多数の対艦ミサイルが発射されました! 亜音速で低空飛行はしていませんが、200発近くと数が多いです!」

「200発か。かなり厄介だが、距離も比較的ある……よし、こちらも対空ミサイル(S-300F『フォールト』)を発射だ! 敵空中艦は中国軍に任せつつ、状況に応じて対処せよ!」

「了解! 敵艦への艦対艦ミサイル(P-1000『ヴルカーン』)振り分けは如何しましょう?」

「敵の移動海上要塞に2割、残りは周辺の護衛艦(対空魔船)と空母を優先して狙え!」

 

 そして、港町シルヴァーや周辺の基地から出撃した、魔法帝国本土防衛艦隊と中露連合艦隊の距離が120㎞を切った瞬間、互いにミサイル(誘導魔光弾)を撃ち合う現代戦が始められた。

 

 防衛側と言うだけあり、魔法帝国側の通常艦艇数は初動で50隻近く集まり、超兵器数もパル・キマイラⅠ型は4隻でパルカオンは3隻と、かなり多い。当たり前だが、放たれる誘導魔光弾の数もまるで鉄の暴風の如き多さとなっている。

 

「迎撃、迎撃……迎撃!! 順調に数は減っていますが、未だに100発以上は健在!」

「よし! だが、油断するなよ。こちらの攻撃はどうなっている?」

「おおよそ7~8割が迎撃を免れて現在も飛翔中! 味方原子力潜水艦も対艦ミサイル(3M-54E『クラブ』)、周辺軍事基地と思われる場所に対しても巡航ミサイル(3M-14TE『クラブ』)の波状攻撃を開始!」

「なるほど。とにかく奴らが居る以上、物量で押し込まなければ危険だな……うむ。我々は変わらず、このままで進むぞ!」

 

 しかし、技術力にあまり差がなく、物量に関しては今現在中露連合艦隊が優位性を保っているのに加えて、20隻近くの中露艦隊が援軍として現場海域へ向けて航行中だ。

 

 その上、核かつ多弾頭ではないものの、衛星による地形情報を元に大陸間弾道弾の発射場所の選定・態勢構築が完了していて、命令が下れば即座に発射される手筈となっている。

 

 とは言うものの、()()()()()()核弾頭搭載型大陸間弾道弾の発射も考えられてはいるが、あくまでも最終手段としての立ち位置にいた。

 

 環境面での影響が無視出来ず、相手側が核兵器やそれに類するような大量破壊兵器の所持の可能性、せっかくのフロンティアを台無しにしたくない、政府上層部の思惑があるためなのだけど。

 

「敵艦艇3隻撃沈。にしても、バリアは本当に厄介なものだな」

「はい。それに、周辺の艦艇であればまだしも、奴のバリアだけ耐久力が桁違いですしね。空中艦だって、航空機として見れば要塞レベルの耐久力――」

 

 戦闘を開始してから30分、相手からの第1波を何とか防ぎきり、逆に対空能力の低めな相手艦を3隻撃沈、パル・キマイラⅠ型1隻を大破と、僅かに優勢へと持ち込めていた中露連合艦隊であった。

 

 しかし、同時にある報告が旗艦『アドミラル・クズネツォフ』含め、艦隊全てに伝わってしまっていたため、心の中を含めて少しでも喜ぶ者は、1人も出る事はなかった。

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