なんだか悲しくなってきた。
それではどうぞ。
試合の準備がされ、円堂さんがみんなに声をかけた。
「しまっていこうぜー‼︎」
「よーし、決めるぞ旋風陣‼︎」
どうやら今回も自分のいい所を見せようと張り切る木暮さん。そして、目金さんが自信満々に自分の眼鏡をクイっと上げる。
「フン、僕達に勝とうなんて五百万年早いんですよ!」
一体どこからそんな自信が出てくるのか。もう私を含めた全員が呆れている。いつも円堂さんと一緒に熱くなっている財前さんでさえ、気が進んでいない様子。ホントに大丈夫なのか。
「一之瀬さん、先に謝っておきます。ごめんなさい」
「いや、待って⁉︎ 絶対に勝ってもらわなきゃダメだから‼︎ 頼むよ‼︎」
「私には今の所駄目な予感しかしません」
ふと相手側のベンチを見ると、大きな旗を振り回した女の人が立っていた。なんでも、あの人は一之瀬さんの未来のお嫁さんらしい浦部リカさんの母親だそうだ。親が親なら子も子だな。ケバい。
「フレッ、フレッ、ギャルズー‼︎そんな東京モンに負けたらアカンでー‼︎」
「任しときー! ウチが必殺、通天閣シュートぶち込んだるでー‼︎」
通天閣シュート? そんな必殺技があるのか、と雷門イレブンが食いつく。そこで、背番号11の女子がツッコミ? に入った。
「そんなシュートあったっけ……?」
「アホやなー。そんなんテキトーに言うとったらええねん。どうせ分かれへんねんからー♪」
「じゃあ言う必要はあったんですか……」
私がボソリと呟くと、雷門イレブンが全員ズッコケた。
「大丈夫かしら、このチーム……」
あの温和な木野さんまでもが溜息混じりに呟く。
しかし、まさかちょっとした気持ちで始まったこの試合があんな展開になるなんて、私達は思いもしなかった……。
古株さんが審判を務め、ホイッスルが鳴った。あ、言い忘れてたけど、今回私はベンチです。目金さんが出る、というので。キックオフはギャルズからだ。
ボールをキープしているあの背番号11の女子選手が風丸さんにウインクをした。そして彼が動揺した隙を狙って風丸さんを抜き去る。
彼女は浦部さんにパスを出し、そこから浦部さんはシュートした。かなり距離のあるロングシュートだ。しかも狙ったのは円堂さんの真正面。円堂さんは当然、がっちりとシュートを阻止した。そして、こちらからの攻撃ーー。
「……何やってんのよ」
まあ、この後の状況と言えば酷いモンだったよ。オブラート? に包むとかそんなの論外。無理。あまりにも酷過ぎる。
相手は大阪人独特の少々姑息というか汚い手でボールを奪っていくし、それに惑わされる彼らも彼らだ。油断し過ぎている。
こうなれば、みんなの視線は自然とその当事者の目金さんに向くわけで。目金さんは冷や汗をかきながら必死で弁明する。
「ま、まぐれですよ、まぐれ! こんな地元チームがあんな必殺技、まぐれに決まってるじゃないですか……」
ここで、何故かこちらを見る目金さん。目があった私は、少々殺気を孕んだ冷たい視線を返してやった。これで、目金さんが涙目になって震えていたのは言うまでもない。
私はもう一度彼女達のプレイを見直した。実力はあるのは分かる。しかし、雷門からすれば、本当に大したことのない相手のはずだ。なのに何故、こんなに手こずるのか。
木暮さんが旋風陣でボールを奪い、決めポーズをとっていたところ、さらっとボールを奪われてしまった。横を見ると、音無さんが引きつった笑み。
「バタフライドリーム‼︎」
相手FWの2人が、必殺技を放つ。迎え撃つ円堂さんは、爆裂パンチで止めようとしたが……。
ボールは円堂さんが突き出した拳をふわっと柔らかく避け、ボールはゴールに吸い寄せられるように入ってしまった。
ここで、前半終了のホイッスルが悲しげに鳴り響いた。
相手側のベンチで呑気にお好み焼きパーティーが行われているのと対照的に、こちらのベンチでは何だか暗い雰囲気が漂っていた。
私は溜息をつき、腕を組みながら先程からずっと思っていたことを一気に吐き出した。
「貴方方本当に何をしていたんですか? あの程度の相手、サッカー経験が浅い私でも分かる程の大した相手ではありません」
「いや、強いよ、彼女達……」
「貴方方が本領を発揮して戦えば、普通に勝てる相手です。貴方方は奴らのペースに惑わされているだけです。ですから、貴方方は貴方方のサッカーを貫けば良いのです」
そうだ。いつもの雷門イレブンなら、簡単に勝てる相手なのだ。私はベンチに音を立てて座り、たい焼きを乱雑に取り出した。
そんな私の様子を見てか、円堂さんが尋ねる。
「何だか機嫌悪そうだな」
「そりゃ、あんな試合見せられましたからね。敢えてオブラートに包むなら、酷過ぎる。です」
「オブラート⁉︎ 青木、オブラートに包めるようになったのか⁉︎」
「まあ、少しは」
私もいつまでもズケズケと言ってたらみんなが辛いだろうからちょっとでも言い方を変えようとしてるのよ。
え? オブラートに包まなかったらどうなるかって?
ーーーーお前ら何やってんのよアホなの? あんな程度の奴らにリードされるなんてホントにバカやってるのもいい加減にしなさいよ。油断してるからこうなるんでしょ、分かったらさっさとピッチに行きなさいゴラァ‼︎
最後の方に青木さんのキャラ崩壊失礼しました。そして久々の更新。
またこれからボチボチ更新します。