青き炎、エイリアと戦う   作:支倉貢

49 / 97
47話 命の恩人

鬼道side

目金を助けて、青木が落ちてしまった。酸素を求めてすぐ浮かび上がるかと思ったが、青木は全く浮かんでこない。

 

「青木‼︎ 青木ーー‼︎」

 

船の上から呼んでも、青木は浮かび上がってこない。いや、もしかしたらこの声は届いてないのかもしれない。

助けなければ、と手すりに手をかけたその時、少し遠くから誰かが泳いできた。その人物は青木が落ちた辺りに着くと海に潜り、しばらくすると海面へ上がってきた。彼の腕の中には、溺れた青木がぐったりと目を(つむ)って気を失っていた。

 

「青木!」

「よかった……」

 

青木の姿を見て安堵する仲間に、俺はすぐに言い放つ。

 

「何を言っている。まだ青木の意識があるかわからないんだぞ!」

 

早く船が着かないのか、俺はぐっと手すりを握りしめた。

 

 

 

船が港に着き、みんなと港の近くで彼女を診ている少年に駆け寄る。少年の傍らにはサーフボードが置いてあり、サーファーであることが分かった。海の中にいたからか、全身びしょ濡れになっている彼女は、いつもより艶やかに見えた。

 

「おい、しっかりしろ! おい!」

 

ペシペシと少年が青木の頬を叩いて意識を確認するが、彼女はこれという反応を示さない。少年は彼女の顔に耳を近づけ、呼吸を確認する。

 

「っ……おい、こいつ息してねえぞ‼︎」

「「「えっ⁉︎」」」

 

その言葉に、全員が驚愕する。ウソだろ……? 青木……このままじゃ……‼︎ ふと、視界が揺らいだ気がした。

 

「監督‼︎ 救急車を呼んで下さい‼︎」

「分かったわ」

 

瞳子監督も緊急事態だと判断し、携帯電話を取り出す。

するとその時、ピクッと青木の手が動いた。

 

「げほっ‼︎ ごほっ、ごほ……!」

 

青木は体の中に入っていた海水を吐き出そうと、咳込んでいた。俺はやっと、安堵の息を吐く。

 

「青木! よかった……」

「大丈夫か?」

 

少年に抱き起こされ、背中をさすられる青木に、少年はバスタオルを口元に押し付ける。しばらく青木はずっと咳込んでいて、目元には苦しかったのか、若干涙が溜まっていた。

 

「大丈夫か?」

「はい……けほっ、あの……助けて下さり、ありがとうございました……」

「よせよ、礼を言われるようなことはしてねえって。それよりお前……海で泳いだことあるか?」

「え………………。ありません……」

「なっ⁉︎ バカヤロウ‼︎」

 

突然青木を怒鳴りつけた彼に、青木はビクッと肩を揺らした。

 

「海を甘く見んな。海は命が生まれるところだ。命を落とされちゃたまんねーよ」

「…………すみませんでした……」

 

俯く青木に、彼は今度はニカっと笑って青木の頭をぐしゃぐしゃと撫でた。

 

「ま、とにかくさ! 無事で何よりだ」

 

彼は青木の頭から手を離すと、さっさと立ち去っていった。円堂が慌てて彼に手を伸ばしたが……。

 

「あっ……」

「じゃあな〜」

 

そう言うと、彼はこちらを振り向きもせず歩き去った。

青木は体にバスタオルを巻いたまま、呆然と彼を見ていた。それに気付いた浦部が青木に話しかける。

 

「なんやなんや? 青木……まさか一目惚れか?」

「は?」

「さっきからずーっと見て……脈アリか⁈」

「……あの、先ほどから一体何を(おっしゃ)っているのかよく分かりませんが……」

「も〜あんたも結構やるもんなぁ。なあなあ、誰にするん⁉︎」

「? 何のことですか?」

「運命の人や!」

「……?」

 

コテンと首を傾げる青木を見た浦部は、ハァッと溜息を吐き、何故か俺の元に近付いて肩を掴んだ。

 

「あんた、苦労してはるな」

「……………どういう意味だ」

「お? 今間があったで、間が‼︎」

 

今度は浦部がニヤニヤしてくる。からかわれるのは気に食わないが、俺の本心に嘘を吐いていることは確かだ。

またライバルが増えた気がする……。いや、本人にその気がないのは分かるが……。俺はまた行き場のない溜息を吐いた。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。