青き炎、エイリアと戦う   作:支倉貢

54 / 97
52話 土方雷電

1日挟んだものの、ようやく沖縄に着いた。響木さんの情報によれば、ここに、炎のストライカーがいるとのこと。炎のストライカーが、果たして豪炎寺さんなのか。

私は島で既に買っておいたサーターアンダギーを頬張りながら、ふと視線を他所へやる。すると、サッカーボールがポーンと飛んでいるのが見えた。

 

「あれは…………」

「どうしたんだ? 青木……あっ」

 

私の視線の意味を意図したのか、円堂さんの目にも、ボールがとまる。

 

「もしかしたら、何かヒントが得られるかもしれませんね」

「よし、行ってみようぜ!」

 

私は円堂さんと鬼道さんの背中を追いかけ、ボールが飛んでいる辺りを見に行った。

 

来てみると、そこには小さな子供が5人、サッカーボールで遊んでいた。見た目が似ているから、兄弟だろう。1人の男の子がトラップミスをして、ボールがこちらへ飛んでくる。円堂さんはそれを軽々と受け止めた。円堂さんは彼らを楽しませるつもりだったのか、笑顔を浮かべながらリフティングを続ける。

しかし、1人の男の子が目を潤ませ、涙をいっぱいに溜める。それに気付いた円堂さんはギョッとして、ボールを手に取った。

男の子はついに泣き出し、周りの4人の子供たちも、つられて泣き出す。

 

「……何やってるんだ、円堂」

「な、なんにもしてないよ〜……」

「円堂さん、そのボール貸して下さい」

「え? あ、ああ……」

 

円堂さんからボールを頂き、子供たちの元に歩み寄る。子供たちと目線を合わせるためにしゃがんで、泣いている子にボールを差し出した。

 

「はい。これ、ごめんなさい」

 

1人の男の子にボールを持たせ、何とか泣きやませようと頭を撫でる。しかし、子供たちは泣きやまない。どうしたものかとオロオロしていると、女の子がくんくんと鼻を動かした。

 

「何か、いい匂いがする……」

「?」

 

もしかして、と思い、私はサーターアンダギーを取り出した。

 

「あの、これ……食べますか?」

「「「「「食べるっ‼︎‼︎」」」」」

 

子供たちの勢いに気圧されながらも、子供たちにサーターアンダギーを渡す。これで一件落着か……と思われたが。

 

「こらぁぁぁあぁあ‼︎」

 

遠くから聞こえてきた怒号に、ビクッと肩を揺らす。声の低さからして、男だと分かった。ドスドスと大きな足音と共にこちらへ向かってきた人物の姿に、私たちは唖然とした。

だって……割烹着(かっぽうぎ)を着て、(ほうき)塵取(ちりと)りを持っていたから。何かの趣味なのか? 今回はお母さんコスなのか?

子供たちは彼を見て、彼の元に駆け寄る。

 

「「「「「あんちゃんー‼︎」」」」」

 

……は? え、この人お兄さん⁉︎ でもよく見れば、似てる……。

 

「誰だ、俺の弟たち泣かしたのはぁ⁉︎」

「あのお兄ちゃん、ボール取ったぁ!」

 

1人の男の子が、円堂さんを指さす。どうやら、子供たちから完全に敵に見られてしまったらしい。今度は、女の子が私を指さした。

 

「あのお姉ちゃんがおやつくれた!」

 

……それ報告することでもないような気がする……。子供たちの兄は、ジロリと円堂さんを睨む。円堂さんはたじたじで、弁解を試みる。

 

「え、あ、ごめんごめん! そんなつもりじゃなかったんだ!」

「……本当だろうな? 大体! お前‼︎」

 

彼は信用出来ない、と言うように今度はビシッと箒で鬼道さんを指す。

 

「怪しすぎだろ! そのメガネ……」

「……失敬な奴だな」

 

……ぶはっ‼︎ 怪しい! 怪しいだって! 確かにそれは怪しいよね、ゴーグルかけてる人なんて! はははっ‼︎ これは笑える‼︎

私は必死に笑いを堪え、クククッと肩を震わす。それを鬼道さんに見つかり、睨まれた。まあ、やると言うなら上等だけど。

男はしばらく私たちを睨んでいたが、警戒を解いたように視線を外した。

 

「あ、ちょっと待ってくれよ!」

 

それを呼び止めたのは、円堂さんだった。

 

「俺たち、みんながサッカーやってるのを見て、少し聞きたいことがあったんだ。君もサッカーを知ってるんなら、分かるだろ? 雷門中サッカー部!」

 

彼はピクリと眉を動かし、円堂さんを見つめ、目を伏せた。

 

「……フッ。ハッハッハッハッハ‼︎ いやぁ、悪りぃ悪りぃ! お前らか、宇宙人と戦ってるサッカーチームは!」

 

豪快な笑い声を響かせ、彼は自ら名乗った。

 

「俺は土方(ひじかた)雷電(らいでん)! お前らと同じ中学生だ。サッカー部に所属している」

「俺、円堂守! 雷門中サッカー部のキャプテンだ! よろしく!」

 

円堂さんは彼ーー土方さんと握手を交わす。

 

「で? 何だ? 沖縄で宇宙人の襲撃予告でもあったのか? だったら、力貸すぜ。地元荒らされるなんて……」

 

そう言いながら、土方さんは弟からボールを受け取り、それを宙に投げ……。

 

「我慢ならねぇからなっ‼︎」

 

高く蹴り上げられたボールは遥か空高く舞い、風圧を私たちに残して行った。その威力に、円堂さんは感嘆の声を漏らす。

 

「何てパワーだ……!」

「あんちゃん、蹴っても止めてもスゲーんだぜ!」

「……凄いのか。だったら、これはどうだ⁉︎」

 

ニヤッと笑みを浮かべた鬼道さんが向かう先は、ボールの落下地点。ボールをトラップした鬼道さんは、土方さんに仕掛けていく。対する土方さんは、いわゆる相撲の四股踏みの動きをしてみせた。

 

「スーパーしこふみ‼︎」

「! 必殺技……」

 

必殺技で出現した大きな足が、鬼道さんを潰そうとする。鬼道さんは寸でのところで、バク宙してかわした。結構ギリギリだったらしく、鬼道さんも苦笑している。

皆さんが楽しんでいるところで、私は本題を切り出した。

 

「あの……貴方は、炎のストライカーをご存知ですか?」

「炎のストライカー?」

「私たちは、炎のストライカーが沖縄にいる、との話を聞き、ここへ来ました」

「知ってる⁉︎ 今、俺たちの探してる仲間かもしれないんだ‼︎ 聞いたことないかな?」

「……いや、聞いたことねぇな?」

 

記憶を辿るように視線を外す。どうやら、知らないらしい。円堂さんも、残念そうに肩を落とした。

 

「あの……少し、雷門の皆さんと会いませんか? せっかく出会ったのですし……これも、何かの縁です」

「いいのか?」

「あ、ああ! もちろん! 大歓迎さ! 行こうぜ‼︎」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。