1日挟んだものの、ようやく沖縄に着いた。響木さんの情報によれば、ここに、炎のストライカーがいるとのこと。炎のストライカーが、果たして豪炎寺さんなのか。
私は島で既に買っておいたサーターアンダギーを頬張りながら、ふと視線を他所へやる。すると、サッカーボールがポーンと飛んでいるのが見えた。
「あれは…………」
「どうしたんだ? 青木……あっ」
私の視線の意味を意図したのか、円堂さんの目にも、ボールがとまる。
「もしかしたら、何かヒントが得られるかもしれませんね」
「よし、行ってみようぜ!」
私は円堂さんと鬼道さんの背中を追いかけ、ボールが飛んでいる辺りを見に行った。
来てみると、そこには小さな子供が5人、サッカーボールで遊んでいた。見た目が似ているから、兄弟だろう。1人の男の子がトラップミスをして、ボールがこちらへ飛んでくる。円堂さんはそれを軽々と受け止めた。円堂さんは彼らを楽しませるつもりだったのか、笑顔を浮かべながらリフティングを続ける。
しかし、1人の男の子が目を潤ませ、涙をいっぱいに溜める。それに気付いた円堂さんはギョッとして、ボールを手に取った。
男の子はついに泣き出し、周りの4人の子供たちも、つられて泣き出す。
「……何やってるんだ、円堂」
「な、なんにもしてないよ〜……」
「円堂さん、そのボール貸して下さい」
「え? あ、ああ……」
円堂さんからボールを頂き、子供たちの元に歩み寄る。子供たちと目線を合わせるためにしゃがんで、泣いている子にボールを差し出した。
「はい。これ、ごめんなさい」
1人の男の子にボールを持たせ、何とか泣きやませようと頭を撫でる。しかし、子供たちは泣きやまない。どうしたものかとオロオロしていると、女の子がくんくんと鼻を動かした。
「何か、いい匂いがする……」
「?」
もしかして、と思い、私はサーターアンダギーを取り出した。
「あの、これ……食べますか?」
「「「「「食べるっ‼︎‼︎」」」」」
子供たちの勢いに気圧されながらも、子供たちにサーターアンダギーを渡す。これで一件落着か……と思われたが。
「こらぁぁぁあぁあ‼︎」
遠くから聞こえてきた怒号に、ビクッと肩を揺らす。声の低さからして、男だと分かった。ドスドスと大きな足音と共にこちらへ向かってきた人物の姿に、私たちは唖然とした。
だって……
子供たちは彼を見て、彼の元に駆け寄る。
「「「「「あんちゃんー‼︎」」」」」
……は? え、この人お兄さん⁉︎ でもよく見れば、似てる……。
「誰だ、俺の弟たち泣かしたのはぁ⁉︎」
「あのお兄ちゃん、ボール取ったぁ!」
1人の男の子が、円堂さんを指さす。どうやら、子供たちから完全に敵に見られてしまったらしい。今度は、女の子が私を指さした。
「あのお姉ちゃんがおやつくれた!」
……それ報告することでもないような気がする……。子供たちの兄は、ジロリと円堂さんを睨む。円堂さんはたじたじで、弁解を試みる。
「え、あ、ごめんごめん! そんなつもりじゃなかったんだ!」
「……本当だろうな? 大体! お前‼︎」
彼は信用出来ない、と言うように今度はビシッと箒で鬼道さんを指す。
「怪しすぎだろ! そのメガネ……」
「……失敬な奴だな」
……ぶはっ‼︎ 怪しい! 怪しいだって! 確かにそれは怪しいよね、ゴーグルかけてる人なんて! はははっ‼︎ これは笑える‼︎
私は必死に笑いを堪え、クククッと肩を震わす。それを鬼道さんに見つかり、睨まれた。まあ、やると言うなら上等だけど。
男はしばらく私たちを睨んでいたが、警戒を解いたように視線を外した。
「あ、ちょっと待ってくれよ!」
それを呼び止めたのは、円堂さんだった。
「俺たち、みんながサッカーやってるのを見て、少し聞きたいことがあったんだ。君もサッカーを知ってるんなら、分かるだろ? 雷門中サッカー部!」
彼はピクリと眉を動かし、円堂さんを見つめ、目を伏せた。
「……フッ。ハッハッハッハッハ‼︎ いやぁ、悪りぃ悪りぃ! お前らか、宇宙人と戦ってるサッカーチームは!」
豪快な笑い声を響かせ、彼は自ら名乗った。
「俺は
「俺、円堂守! 雷門中サッカー部のキャプテンだ! よろしく!」
円堂さんは彼ーー土方さんと握手を交わす。
「で? 何だ? 沖縄で宇宙人の襲撃予告でもあったのか? だったら、力貸すぜ。地元荒らされるなんて……」
そう言いながら、土方さんは弟からボールを受け取り、それを宙に投げ……。
「我慢ならねぇからなっ‼︎」
高く蹴り上げられたボールは遥か空高く舞い、風圧を私たちに残して行った。その威力に、円堂さんは感嘆の声を漏らす。
「何てパワーだ……!」
「あんちゃん、蹴っても止めてもスゲーんだぜ!」
「……凄いのか。だったら、これはどうだ⁉︎」
ニヤッと笑みを浮かべた鬼道さんが向かう先は、ボールの落下地点。ボールをトラップした鬼道さんは、土方さんに仕掛けていく。対する土方さんは、いわゆる相撲の四股踏みの動きをしてみせた。
「スーパーしこふみ‼︎」
「! 必殺技……」
必殺技で出現した大きな足が、鬼道さんを潰そうとする。鬼道さんは寸でのところで、バク宙してかわした。結構ギリギリだったらしく、鬼道さんも苦笑している。
皆さんが楽しんでいるところで、私は本題を切り出した。
「あの……貴方は、炎のストライカーをご存知ですか?」
「炎のストライカー?」
「私たちは、炎のストライカーが沖縄にいる、との話を聞き、ここへ来ました」
「知ってる⁉︎ 今、俺たちの探してる仲間かもしれないんだ‼︎ 聞いたことないかな?」
「……いや、聞いたことねぇな?」
記憶を辿るように視線を外す。どうやら、知らないらしい。円堂さんも、残念そうに肩を落とした。
「あの……少し、雷門の皆さんと会いませんか? せっかく出会ったのですし……これも、何かの縁です」
「いいのか?」
「あ、ああ! もちろん! 大歓迎さ! 行こうぜ‼︎」