「よろしくな、雷門イレブン!」
早速、最初にみんなと別れた場所に一回集まり、雷門イレブンのみんなと顔合わせをしてもらった。
「……で、何で割烹着? 炎のストライカーって、この人……?」
「いや、そうじゃないんだけど……」
木野さんの問いに、円堂さんは苦笑する。
「土方は、すごいディフェンス技を持ってるんだ!」
「雷門の円堂にそう言ってもらえるのは嬉しいね! ハッハッハッ!」
「それで、みんなに紹介しようと思ったんだ! 俺たちのチームに入ってもらおうと思ってさ!」
「おっと、そいつは出来ない相談だ」
円堂さんの提案を、あっさりと否定する土方さん。それに、鬼道さんが問う。
「何故だ?」
「さっき見たろ? 俺には兄弟がいっぱいいる。あいつらの面倒見なきゃいけないんだ。だけど、もし……ここが襲われたら、俺は戦うぜ」
「だから力を貸すって言ったのか……。お前の強さの秘密は、守りたいものがいっぱいあるからだったんだな!」
「みんなだって、そうだろ?」
「へへっ……ああ!」
円堂さんが笑う横で、私は土方さんの言葉を反芻していた。
守りたいものがあるから、強くなれる。今まで、そんなの考えたことなかった。じゃあ、何故私は強くなった?
いや……私が力を求めた理由は、円堂さんたちのお力になりたかったから。今なれてるのかは分からないけど、いつかきっと……。
守りたいもの……それだけは、絶対に違えないようにしよう。
私が守りたいものは、この先何があっても円堂さんたちのみだ。
「じゃあさ、一緒に練習しようぜ!」
「おうっ、掃除が終わったらな」
「分かった!」
なるほど、だから初めて会った時、箒と塵取りを持ってたのね。
一人で勝手に納得し、もぐもぐとサーターアンダギーを食べていると、今度はまた別の声が聞こえた。
「おーい!」
「炎のストライカー、見つけたぜー‼︎」
聞こえてきたのは、吹雪さんと土門さんの声だ。しかも、炎のストライカーを見つけたとのこと。
豪炎寺さん……⁉︎ 期待する私の心は、すぐに沈められた。
「豪炎寺さんじゃないッスよ……?」
「なんや、違うの?」
「ああ……」
問いかける浦部さんに、一之瀬さんが答える。私もショックだったが、すぐに吹雪さんたちを見た。が、ずっと視線を感じる。視線の元を見てみると、あの炎のストライカーだった。
真紅の髪を自由に跳ねさせ、挑戦的な黄色い目を私にずっと当てていた。
何なのかしら……?
横で土門さんたちに土方さんを紹介しているため、この視線に気付いているのは私だけ。
「……でも、もうその必要はなくなったよ? 炎のストライカーは、この南雲だ」
「つーわけだ、俺は南雲晴矢。キャプテンの円堂だろ? よろしくな」
「……ああ! よろしく!」
期待を見事裏切られ、円堂さんも複雑な笑顔。
「こいつ、俺たちがあちこち探してるのを聞きつけて、自分から売り込んできたんだぜ?」
「この辺に住んでるの……?」
「まあね」
土門さんが笑みを浮かべながら言い、財前さんの問いに南雲さんは肩を竦めて言う。ところが、突然睨むような目つきで南雲さんを見据える土方さん。
「本当かあ?」
「いっ……⁉︎」
睨まれると思ってなかったらしく、少々驚いていたが、すぐにニッと笑みを見せる。
「見ねえ顔だな……」
「俺もあんたを見たことねえな……?」
睨み合う2人に、私たちの間にも不穏な空気が流れる。
一体、何なんだ彼は。私はどうも、彼のことを好きになれなかった。むしろ、ここから出て行けと言いたかった。
「見せてやれよ、さっきのシュート!」
「強力なシュートだったよね」
「……ただ見せるだけじゃあつまんねえな……」
彼はそう言って、右足の爪先でキープしていたボールを上げ、片手でキャッチする。その言葉に、鬼道さんが問うた。
「……と言うと?」
「俺をテストしてくんねーか? あんたらのチームに、相応しい強さかどうか、その目で確かめてほしいねぇ。雷門イレブンVS俺! どうよ? あんたらから1点取れば俺の勝ち。テストに合格だ」
「……テストしてくれ、と言うわりには随分と仕切るのね。大した自信だわ」
私が腕を組みながら、少し嘲るように声をかける。どうも気に入らない、こいつ。さっきから私をずっと見てくるし。テストなんて、ただの口実なのではないか。どちらかと言えば、雷門と戦いたいだけだろう。
「自信があるから言ってんだよ」
「そう」
私は短く切り、南雲さんから視線を逸らした。
円堂さんは嬉々として、このテストを承諾していた。
「あっ、そうだ! そこの青髪の女! お前は絶対にこのテストに参加しろよ」
「は……?」
「俺はお前の実力が見てみたい」
南雲さんに突然言われ、睨みながら返す。断る、そう言いかけたが……。
「いいじゃないか! な、青木!」
「……はい」
円堂さんに言われては、断れない。私は渋々承諾した。
私はMFの位置につき、南雲さんをずっと睨み据える。さっきからも言っているが、彼に腹が立って仕方ない。どうも好きになれない。
古株さんのホイッスルと共に、南雲さんがボールを蹴り出す。それを見た私たちも動いた。南雲さんはそんな私たちを見て取って、ボールを軽く蹴ったかと思うと、さらにボールを蹴り、高く飛ばした。そして、自身も飛ぶ。
「すげえな……」
「空中戦が得意なんでしょうか?」
土方さんと立向居さんが感嘆して南雲さんを見上げる。私はしばらく南雲さんを見上げていたが、膝を折って屈んだ。
「その程度の高さで……敵うと思うな!」
足をバネにして、南雲さんとほぼ同じくらいの高さまで飛ぶ。私の方が、少し高いけどね。
「なにっ……⁉︎」
「はあっ‼︎」
南雲さんがキープしていたボールに鋭く蹴りを入れ込み、ボールをサイドラインの外へ飛ばした。
「くそっ!」
お互い地面に降り立つと、睨み合う。ベンチに跳ね返ったボールを片手で受け止め、スタート地点に戻す。
その時、また南雲さんと視線が合う。私は不敵に笑ってみせた。それが気に食わなかったのか、南雲さんは怒りながら笑みをこちらに向けた。
「やるじゃねえか」
「褒め言葉としてもらっておくわ。……これじゃあ貴方の目的は果たせないわね……。諦めて帰るなら今のうちよ? 尻尾巻いて大人しく帰りなさい、南雲さん」
「ああん? んだよ……何なら、このままあんたを連れてってもいいんだぜ? 俺は」
「っ⁉︎」
その言葉に、動きが止まる。相手に驚愕を悟られないように、ぐっと拳を握った。相変わらずニヤニヤしながら私を見る南雲さんに殺気を孕んだ視線を送る。
「……やっぱり、貴方のこと嫌いだわ」
「褒め言葉としてもらっとくぜ。安心しな。手を出さなきゃあんたには何もしねえよ」
クックッと歪んだ笑みを刻み、楽しそうに笑う南雲さんにまた苛立った。
しばらく私はこのテストに手をつけず、ただ見守っていた。雷門のディフェンスを難なくかわし、円堂さんの守るゴールへと走る。
「紅蓮の炎で焼き尽くしてやる! アトミックフレア‼︎」
「よし、来いっ! マジン・ザ・ハンド‼︎ ……うわっ⁉︎」
マジン・ザ・ハンドもすぐに吹き飛ばされてしまい、ボールがゴールに入りかける。
ふざけるな。奴は絶対に入れさせない……!
「はぁあっ‼︎」
ゴール前まで戻り、右足を旋回させてボールに足を叩きつけた。ボールにはまだ必殺技の威力が残っていたが、私の全力を持ってすれば、どうってことない。
ボールを弾き飛ばし、南雲さんが背にしているゴールポストに当たる。ボールはまたサイドラインを越えた。
「……っ、サンキュー! 助かったぜ、青木!」
「大丈夫ですか?」
「ああ!」
私は円堂さんに手を貸し、彼を起き上がらせた。また、南雲さんの鋭い視線を感じる。
「チッ……邪魔しやがって……」
この際、奴に連れて行かれようがどうでもいい。円堂さんたちを守れるのならば、それでいい。
私の重々しい雰囲気を感じ、鬼道さんが問うた。
「どうした? お前が人が苦手なのは知っているが、やけに奴に食いつくな」
「……彼は、宇宙人です」
ボソ、と言い放った私の言葉に、周りに集まっていた雷門イレブンが驚く。
「宇宙人……って、ことは……」
「エイリア学園……⁉︎」
吹雪さんと土門さんの言葉を聞き、みんなの視線が南雲さんに集中する。彼はすこぶる機嫌が悪いらしく、ずっと私を睨みつけていた。
「おいおい、もう終わりだって言うのかよ? 面白くねえなぁ?」
「……はっきり聞くぞ、南雲晴矢」
ツカツカと彼に歩み寄り、彼との距離を、なるべく近く置く。そして、彼の胸倉を掴んで顔を近付けた。
「お前はエイリア学園か?」
「…………」
南雲さんは黙ったまま、私を見つめ返す。しばらく、沈黙が続いた。
「……エイリア学園だよ。君の言う通り」
答えたのは、南雲さんではなかった。空から降ってきた声に、私たちは空を仰ぐ。高い塔の上に、誰かがいた。南雲さんとはまた違う赤髪に、翡翠色の目が私を見据える。
「ヒロトッ!」
「待て、円堂!」
駆け寄ろうとした円堂さんを、鬼道さんが制止する。私は視線を基山さんに向けつつ、南雲さんの胸倉は離さなかった。