なんだかんだで何故かサッカー試合をすることになった。
……納得出来るか! いきなりドッキリされて、試合だと⁉︎
「私帰ります」
「え⁉︎ ちょ、青木‼︎」
円堂さんの制止を無視して、私はさっさと元来た道を歩いていった。
ツカツカと歩いていた私は、もちろんサーターアンダギーを摘んでいた。波風に髪を
ああ。なんて美しい。ふと、頬が綻んだ。
ここに来てから何度そう思っただろう。しかし、その心はすぐに、深海に沈むように落とされる。それほど深い闇を、私は抱えていた。
「話すって言ったけど……やっぱり、苦しいな」
辛い。……悲しい。
「…………」
「あの……」
「‼︎」
声をかけられ、ハッと振り向く。そこには、若い1人の男が立っていた。顔立ちが幼く、制服を着れば高校生と言っても間違えられないだろう。しかし、彼はスーツを着込んでいた。この暑いのに大丈夫なのかしら?
「何だ」
「えと……君が、青木穂乃緒ちゃんだよね? 俺、警察官をしている
「警察官が私に何の用だ?」
冷たく、はねつけるような声を放つ。やはり、知らない人が相手になると、どうしてもこうなってしまう。
「あの、実は俺、鬼瓦さんの部下で。穂乃緒ちゃんに会えって言われてきたんだよ」
「は? ……誰だそれ」
「豪炎寺くんの妹さんを助けるんだ」
ピクリと、体が反応する。豪炎寺さんの妹を助ける……?
「……どういうことだ」
「時間がないんだ。俺と、来てくれるかな?」
「…………分かりました。いいでしょう」
岩から立ち上がり、サーターアンダギーを口に含む。黙って、滝野さんの後ろをついていった。
飛行機に乗って、東京まで戻った私は、空港でその鬼瓦さんと会った。
「君が青木穂乃緒、だね」
「はい」
「俺は鬼瓦源五郎。刑事をしている。話は移動しながらしよう」
「……あの、豪炎寺さんの妹さんを助けるって」
「ああ。そのこともちゃんと話すよ」
そう言われては、黙ってついていくしかない。この人は、豪炎寺さんのことを何か知っている。そう確信した。
車に揺られながら、私は鬼瓦さんの話を聞いていた。
「豪炎寺くんは、実は妹さんを人質にとられていたんだ」
「⁉︎」
「奈良でエイリア学園と戦った時のことを覚えてるか?」
「! まさか、あの黒ローブの男たちが?」
「ああ」
鬼瓦さんが、頷く。あいつら、私じゃなくて豪炎寺さんの監視のために来ていたの? 私を狙ってきたわけじゃなかったのか! なら何故、私を追ったんだ? 私を狙っておいて、豪炎寺さんまで狙っていたというのか! ふつふつと、怒りが湧き上がってくる。その怒りを鎮めようと、ジャージを握りしめた。
「豪炎寺くんは雷門に協力すれば妹がどうなるか、と脅されていたんだ」
「っ‼︎」
「俺たちは、奴らから妹さんを救い出す。そのために、是非君に協力をしてほしいんだ」
「…………何故?」
「すまないが、君のことを、いろいろ調べさせてもらったんだ。この件が解決すれば、君の保護者のことも、俺が何とかしよう」
「お断りします」
「え?」
「な、何でですか⁉︎」
鬼瓦さんと、滝野さんが同時に驚く。私は2人の反応など気にせず、サーターアンダギーを食べ……ようとしたが、袋が空になってることに気付いた。
「………………たい焼きか、サーターアンダギー」
「は?」
「それをたくさん買って下さるなら、協力しましょう」
「え……あ、ああ。わかった。金はこいつが出すから、好きなだけ食え」
「ちょっ! 酷いですよ鬼瓦さん‼︎」
「ありがとうございます」
「ああっ‼︎ 穂乃緒ちゃん酷いよ‼︎」
涙目で私に抗議する滝野さん。とても面白いわ。私はクスクスと笑いながら、滝野さんを見た。
「……豪炎寺さんの妹さんは、どこにいるんですか?」
「奴らの監視下にある。我々は、そこから彼女を奪還し、安全な場所に移動させる。彼女は、つい最近まで昏睡状態だったんだ。君には、彼女を安全な場所まで連れて行ってほしい。場所は、こちらでまた指定する」
「私は、妹さんを奴らの元から
「簡単に言えば、そういうことだ」
「分かりました」
簡単に答えたが、これは敵陣にたった1人で乗り込み、誘拐してこい、ということだ。自分1人で動くならまだしも、誰か足手まといを連れて逃げるなど、とても難しい。しかも、その相手は豪炎寺さんの妹。傷付けてはならない人だ。なおさら難しい。
だが、やらなくては。
「妹さんがこちらへ戻れば、豪炎寺さんも安心して雷門に戻れるのですね」
「ああ」
豪炎寺さんのため。雷門のため。
連絡機器を受け取った私は、妹さんがいる建物の付近に降り立った。耳に当てたインカムから、鬼瓦さんの声が聞こえてくる。
『それでは、始めるぞ。何かあったらすぐに連絡してくれ。こちらも対策は万全だ』
「了解」
短く切り、木々の隙間に隠れながら建物を目指す。
上等。やってやろうじゃないの。
私は赤い目を光らせ、歩き出した。