青き炎、エイリアと戦う   作:支倉貢

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57話 救出作戦終了

警備の男たちを叩きのめし、全員を地に伏せさせた私は、相手の通信機器を全て破壊してから、自分のインカムのボタンを押した。

 

「……潜入を開始します。どのルートを辿れば?」

『先に渡しておいた地図があるだろう。その赤い線を辿ってくれ。安全なルートを模索したが……何があるか分からない。気を付けろ』

「了解」

 

ブツン。機械的な遮断音が耳にまとわりつく。その感覚を振り切って、気絶した男のポケットからカードを抜き取り、扉の傍らにある機械にかざす。すると、やはり扉が開いた。

 

「感謝するわ。こんな優れものをくれてありがとう」

 

叩きのめした男たちを見下しながら、皮肉を込めて言った。

ポケットから地図を取り出し、現在地を確認する。今さっき入り口を征圧したから……次は右行って左行って……。

ブツブツ呟きながら歩いていると、誰かの足音が聞こえた。私は咄嗟に、天井に張り付いた。……誰よ。忍者みたいって言った奴。

2人の黒ローブが通り過ぎたのを見ながら、静かに廊下に着地する。そういえば、ここの連中はみんなあんな格好をしていた。分かりやすいったらありゃしない。

監視カメラに気を付けながら地図の通りに歩いて行くと、一つの部屋に辿り着いた。

 

「ここが……」

 

ここに、豪炎寺さんの妹さんがいるはずだ。息を呑み、カードをかざす。ドアが、ウィンと小さな音を立てて開く。その時間が、やけに長く感じた。

奥に、1人の女の子がベッドの上に座っていた。女の子は小さく(うずくま)り、怯えていた。ドアが開く音に、ビクッと肩を震わせ、こちらを見た。豪炎寺さんと同じ、少し鋭さが残る目。その目には、涙が溜まっていた。間違いない。彼女は、豪炎寺さんの妹だ。

 

「誰……?」

「怖がらないで下さい。私は、貴女のお兄さん……豪炎寺さんの…………友人です」

 

正確には友人と言えるかどうかも分からない。でも、信じてもらうには、こう話すしかない。私は心の中で、豪炎寺さんに謝った。

 

「お兄ちゃんの……?」

「貴女を助けに来ました。さあ、行きましょう。きっとお兄さんも、貴女をとても心配しています」

「……本当に? 本当にお兄ちゃんの友達なの?」

「はい」

 

早くしなければ。でも、妹さんの了承が得られないまま連れて行っては、それこそただの誘拐だ。

私は妹さんと目線を合わせて、しゃがみ込んだ。

 

「私は、青木穂乃緒といいます。貴女は?」

「夕香……。豪炎寺、夕香」

「夕香、ですね。夕香、貴女は今自分はどんな状況か、分かりますか?」

「……怖い人がたくさんいるの」

「そうですね。私は、そこから貴女を救い出すためにここに来ました」

「え……? お姉ちゃんは、大丈夫なの?」

「大丈夫です」

 

夕香さんの頬をそっと撫で、彼女の涙を拭う。そして、優しく微笑んだ。

 

「私、こう見えてとっても強いですから。貴女を必ずここから出させます。信じて下さい」

「……うんっ!」

 

夕香さんは私の首にしがみついてきた。私は彼女の背中を撫でながら、立ち上がった。

 

「で」

 

声をワントーン低くして、振り返る。

 

「いつまで見ているつもりですか?」

 

入り口に、大勢の黒ローブが立ち塞がっていた。

 

「まさかお前がここに忍び込んでいるとは思わなかったぞ、青木穂乃緒」

「ふーん。だから何?」

「豪炎寺夕香は返してもらう」

 

そう言って、黒ローブはニヤリと怪しく笑う。夕香さんにはなんとか隠したつもりだったが、抱きついた時に、見えてしまったのだろう。夕香さんはガタガタと震えて、私のジャージを握った。

 

「お姉、ちゃん……!」

「全然大丈夫よ」

 

夕香さんの頭を一撫でしてから、彼女を降ろし、隠れさせる。

夕香さんを追おうとする黒ローブの1人を、視線で咎めた。

 

「彼女を追うなら、私を潰してからになさい。それだけいるんだから、余裕でしょ?」

 

余裕なのは、私の方だった。相手は大人だといえ、戦いにおいては私の方が先輩だ。くいくい、と人差し指で挑発する。自然と、余裕の表情が浮かんだ。

 

「手加減なしでいいわ。かかってきなさい」

 

それを見た黒ローブが、次々と襲いかかってきた。一人一人、たまに2人まとめて叩き伏せる。1人に、飛び蹴りを放った。

 

「はあっ‼︎」

 

見事顔面に直撃し、吹っ飛ばされる。まあ、私がやったんだけど。飛び蹴りは空中からの攻撃であるため、体勢が少し無防備になる。その姿勢を崩すまいと力を込めようとしたその時。

 

バチィッ‼︎

 

「‼︎」

 

ドサッと床に倒れ込んだ。何があったか分からなかった。分かるのは、体が痺れて動けない、ということだけ。しかし、視線を上に投げると、その理由はすぐに分かった。

 

(スタンガン……‼︎)

 

しまった。このままでは、私もろとも夕香さんが捕らわれる……! 必ず救い出すって……約束したのに!

 

(くそっ……くそぉっ‼︎)

 

もう終わりだ。ギュッと目を瞑ったその時。

 

「ふんっ‼︎」

「うわあっ‼︎」

「な、何だ⁉︎」

「やあやあどうも、エイリア学園エージェントの皆さん」

 

聞き覚えのある声に、私は顔だけを上げた。そこには、あの滝野さんが立っていた。

 

「滝野……さん……」

「もう大丈夫だよ」

 

滝野さんが、私に微笑みかける。ホッとした私は、ポロポロと涙を零して泣き出した。

ふと、滝野さんの背後が暗くなる。ハッと見上げると、黒ローブが拳を振り上げていた。滝野さんを守らなければ、そう思った次の瞬間、黒ローブの体は吹っ飛ばされていた。滝野さんの振り向きざまに放った拳が、黒ローブにクリーンヒットしていたのだ。

 

「あ……え……?」

「へへっ、驚いた? あ、その前にここから逃げようか」

 

滝野さんは私を抱え、走り出した。滝野さんと一緒に来た人に、夕香さんは抱えられていた。よかった、夕香さんも無事で……。

緊張が抜け、私はゆっくりと瞼を閉じた。

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