青き炎、エイリアと戦う   作:支倉貢

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59話 vsイプシロン改・吹雪の喪失

「ここからは、俺たち警察に任せてくれ。必ず、豪炎寺くんを自由にさせてみせる!」

「……お願いします」

 

そう言って、サムズアップをして笑う滝野さんたちを見送り、私は回れ右して円堂さんたちの元へと走っていた。鬼道さんからの連絡で、大海原中にイプシロン改がやってきたと聞いた。

街に並ぶ屋根をトントンと飛び回り、大海原中に急ぐ。どうか、間に合って……!

 

 

 

 

 

 

ザザッ‼︎

 

「あっ、青木さん‼︎」

「青木! 戻ったのか!」

 

木野さん、鬼道さんの声を聞き流し、大海原中のグラウンドに立つ。顎に滴る汗を手の甲で拭い、荒い呼吸を整える私に、円堂さんが駆け寄ってきた。

 

「青木、今までどこに行ってたんだ? ていうか、連絡が取れなくて困ってたんだぞ」

「……すみませんでした。円堂さん」

 

そうだった。私は、連絡先をこの雷門イレブンの誰にも教えていない。知ってるはずがない。私は小さく謝ることしかできなかった。瞳子監督も、「一応私と連絡先を交換してくれないかしら?」と名乗り出る程だ。……なんか申し訳ないわ。

 

「それより……」

 

チラ、とイプシロン改を見る。どこがどう違うのか見た目だけではわからないが、雰囲気がまったく違う。大阪で戦ったイプシロンとは、さらにパワーアップしたようだ。

 

(今度こそ、決着をつける……!)

 

これで、お前たちとの戦いを終わらせるんだ。お前たちよりも上の存在を知ったからには、もうお前たちには負けられない!

私はギッと赤い目を光らせ、彼らを睨んだ。

 

 

 

 

 

前回は選手以外誰もいなかったが、今回は大勢の人が大海原中グラウンドの周囲の席に、たくさん入った。大勢が見守る中、前半開始のホイッスルが鳴り響いた。

私はベンチで、みんなの戦いを見守った。やはり、自然と目にとまるのは……吹雪さんだ。吹雪さんは、弟のアツヤさんの人格と自分の人格との間で揺らいでいる。……デザームは、吹雪さんに執着していた。きっと……この試合でも、何かしてくるに違いない! 私はジッと、吹雪さんを見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

案の定、デザームは吹雪さんを挑発してきた。吹雪さんはその挑発に乗り、エターナルブリザードを放つ。しかし、やはり止められてしまう。ドリルスマッシャーからワームホール、最終的には片手で止められてしまった。ダメだ! このままじゃ、吹雪さんが……!

そして、ついにデザームは吹雪さんに向ける目を冷たくした。

 

「……楽しみにしていたが、この程度とはな。お前はもう、必要ない」

 

この言葉を境に、吹雪さんは固まったように立ち尽くした。

 

「……吹雪さん? 吹雪さん⁉︎」

 

何度も、名前を呼んでみる。しかし、彼は動かない。そして、ゆっくりと膝が崩れ、尻餅をつくように倒れてしまった。

 

「吹雪さん‼︎」

「吹雪‼︎」

 

私は一目散に吹雪さんに駆け寄り、円堂さんたちも吹雪さんの元に集まる。私は彼の肩を掴んで、揺さぶる。

 

「吹雪さん……吹雪さん! しっかりして下さい! 吹雪さん! 吹雪さん‼︎」

 

何度呼んでも、反応を示さない。まるで死んだようだ。いや、これは……完全に吹雪さんの心が死んでいる。アツヤさんと士郎さんの人格のバランスが、ついに崩れてしまった……。

悔しさに、思わず顔を歪める。自然と、彼の肩を掴む手に、力が込もる。彼を、救えなかった。こんなになるまで……彼はムリをし続けたんだわ。

 

「吹雪さん……後は任せて下さい。貴方の分まで……戦い抜いてみせます」

 

私は吹雪さんを抱え上げ、戦意喪失した吹雪さんをベンチに座らせた。そして、瞳子監督を見上げる。瞳子監督も、私を見下ろして頷いた。

 

「選手交代よ! 青木さん、行けるわね」

「……上等」

 

私は吹雪さんと交代してFWに入り、浦部さんの隣に立った。

 

「行くで、青木!」

「はい!」

 

試合再開のホイッスルが鳴り、私が浦部さんへボールを流す。ドリブルで浦部さんが上がるが、すり抜けた時に相手に奪われてしまった。

 

「……っ、くそっ‼︎」

 

吹雪さんがいなくなったことで、今の雷門には決定打が完全になくなった。このままじゃ、負ける……! こんな時、こんな時に……高いボールのキープ力を持つ、エースストライカーがいれば……! 私の頭に、ふと彼の顔が浮かぶ。

豪炎寺さん……!

 

 

 

 

守備に徹するしかない私たちは、どんどんと体力を奪われていった。イプシロン改の強烈な絶え間ない攻撃に、防戦一方だ。このままじゃ……‼︎

 

「やあっ‼︎」

 

イプシロン改のパスをカットして、ボールをキープする。私が動いたのを見た鬼道さんが、攻撃を仕掛けるため、号令を放った。その声に、私と鬼道さん、浦部さん、一之瀬さんが、相手陣営に走り出す。

ボールを奪おうと、敵DFが阻んできた。

 

「ここで取られるわけにはいかない! ソニックアクセル‼︎」

 

必殺技で相手を抜き去り、前線を走る浦部さんと財前さんに向かってパスを出した。2人は飛び上がり、手を繋いだ。

 

「「バタフライドリーム‼︎」」

「ワームホール‼︎」

 

シュートをあっさりと止めたデザームは、今度は鬼道さんに向かって、ボールを投げてきた。鬼道さんはすかさず上空にいた一之瀬さんにパスを出し、さらにそれを一之瀬さんが返した。

 

「「ツインブースト‼︎」」

「ワームホール‼︎」

 

これも、デザームによって軽々と止められてしまう。そして、デザームは一之瀬さんにボールを投げた。一之瀬さんは土門さんと円堂さんに声をかけ、2人を呼んだ。

 

「「「ザ・フェニックス‼︎」」」

「ワームホール‼︎」

 

翼を広げた不死鳥も、吸い込まれて止められてしまった。雷門のシュート技が、まったく通用しない……! 愕然とデザームを見つめる私の赤い目と、デザームの赤い目が交差した。

 

「お前が、青木穂乃緒だな。今度は、お前がシュートを打て‼︎」

「⁉︎」

 

私は、デザームに投げつけられたボールを足元に落ち着かせ、キッとデザームを睨む。こいつ……一体何を考えているの⁉︎ この試合だって、あのザ・ジェネシスの指示じゃないっていうじゃない! 一体……何を考えているの? とにかく、ここは何としてでも点を取らねば。

 

「っ……‼︎ 分かりました。お望み通り、打って差し上げますよ‼︎」

 

ダン‼︎

 

強く地面を足で叩きつけ、雄叫びを上げる。絶対に、点を取る‼︎ 強い想いと共に、私はボールを蹴りつけた。

 

「ハウリングスラッシュ‼︎」

 

ズバッ‼︎

 

切り裂くような音を率いて、ゴールへ一直線に飛ぶ。デザームは顔色一つ変えずに必殺技を発動した。

 

「ワームホール‼︎ ……っ⁉︎」

 

ゴシャァッ‼︎

 

強く、地面を破壊するかのような地響きが体を揺らす。シュートは止められてしまったものの、地面にかなりめり込んでいた。

 

「ほう……これはまだまだ少し、楽しめそうだな」

 

ニヤリとほくそ笑むデザームに、鋭い視線を送る。

 

「何……?」

「よし、決まったぞ。今度はお前だ! 私を楽しませろ、青木穂乃緒!」

「貴方ッ……‼︎ そうやって、吹雪さんも壊したのか‼︎」

 

許さない。吹雪さんの仇……必ず取ってみせる! 見ていて下さい。吹雪さん。私はチラリとベンチで項垂れる吹雪さんを見つめた。

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