青き炎、エイリアと戦う   作:支倉貢

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60話 vsイプシロン改2・青木の焦燥

猛攻してくるイプシロン改。その雨のようなシュートの連続を、正義の鉄拳で凌いでいる円堂さんたちの負担を減らすために、自身のスピードでボールを雷門陣から遠ざける。

 

「ハウリングスラッシュ‼︎」

「ワームホール‼︎」

 

ドオンッ!

 

また地面にボールがめり込み、シュートが封じられる。なかなか得点できず、私の苛立ちは募っていた。

 

「くそっ……!」

「期待していたが……この程度とはな。まだ、ドリルスマッシャーを出すまでもない」

 

デザームはキャッチしたボールを、ポイとラインの外に放り出した。

 

「何⁉︎ 何のつもりだ、貴様‼︎」

「審判。FWのゼルと交代する。ポジションチェンジだ」

 

そう言うと、デザームは胸のボタンを押して、ユニフォームを変えた。私は数歩下がって、同じく驚愕の表情を浮かべている鬼道さんに問うた。

 

「鬼道さん……GKとFWが交代なんて……」

「ユニフォームを交換すれば、ルール上問題は無い……だが、実際にそれを行うことは……滅多に無い」

「あいつ、一体何考えてんだ?」

 

財前さんも、私と並んでデザームを睨み据える。こちらへ歩み寄ってきたデザームは、不敵な笑みを浮かべて円堂さんの前に立った。

 

「あの男がいない今、興味はお前だ」

「俺?」

「宣言する。正義の鉄拳を破るのは、この私だ!」

 

雷門イレブン全員に、衝撃が走った。冗談じゃない。何としても、守りきる。私はジッと、デザームを睨みつけた。

 

 

 

 

 

試合が再開された。雷門の守備はあっという間に突破され、デザームにボールが渡ってしまった。なんとか防ごうとして追うものの、速くてあと少しで追いつけない。

 

「くそっ……!」

 

こうしてる間にも、デザームはどんどんとゴールに迫っていく。そして、ついに、ディフェンスラインを突破され、円堂さんと一対一になった。

 

「グングニル‼︎」

 

見たことのない、必殺技。しかも、他のイプシロン改メンバーの必殺技とは桁違いのパワーだ。円堂さんは、片足を高々と揚げ、負けじと必殺技を放った。

 

「正義の鉄拳‼︎ うぉおぉおおおっ‼︎」

 

グングニルの威力に押されかけるも、気合いで押し返そうとする円堂さん。しかし、その努力もむなしく、正義の鉄拳のオーラは消え、シュートはゴールに突き刺さった。

私たちは、愕然とした。あの、究極奥義と呼ばれた正義の鉄拳が、通用しない。その動揺は、円堂さんも同じようだった。

 

 

ここで、前半が終了。私たちは、重い足取りでベンチへ戻った。

 

「っ……‼︎」

 

何もできなかった。豪炎寺さんを守ることも、吹雪さんを救うことも、円堂さんたちの力になることも。私には……誰かを守れる力が、なさすぎる。

悔しさに、ボトルを握りしめた。もちろん、壊さない程度に。

ふと、円堂さんを見やると、ジッと大介さんのノートを見ていた。究極奥義が破られたもの……きっと、とても動揺してるはず。

そして、吹雪さんに視線を移す。吹雪さんは相変わらず項垂れていた。あれから、何の反応も示さない。あんなになるまで……吹雪さんは、自分を追い詰めていた。私に自分の過去を話してくれた時も……とても辛そうで、誰かに助けてほしくて、でも誰にも言えなくて。彼の目には、光が宿っていなかった。

チームのムードが暗くなっていく中、綱海さんが、そのムードを破壊するように声を上げた。

 

「なーに! 正義の鉄拳が通用しねぇなら、その分俺たちが頑張ればいいだけだ! だろ⁉︎」

「そ、そうッスよ! 俺、頑張るッス!」

 

壁山さんが綱海さんに同調すれば、財前さんも力強く頷く。しかし、一之瀬さんは俯きがちに言った。

 

「でも、点を取らなければ、勝てない……」

 

一之瀬さんの暗い声を聞き、私はまた吹雪さんに視線を移す。私が、救いたかった。なのに、私では救えなかった。

円堂さんたちも、豪炎寺さんも、吹雪さんも。悔しくて、悔しくて、悔しくて。

 

「…………私……何も、できなかった……」

 

ポツリと、誰も聞こえないほど小さい声で呟く。もちろん、これは誰にも聞かれることなく、大海原中の潮風に掻き消された。

鬼道さんが、この空気を変えるように私たちを見渡して言った。

 

「チャンスがあれば、積極的にシュートを狙っていこう。今、GKをしているゼルが、デザームより劣るとすれば……」

 

確かに、ゼルのGKとしての実力はまだわからない。でももし、デザームより上だったら? そんなマイナスなことを、頭の片隅で考えてしまう。

しかし、今そんなことをくよくよ考えても仕方ない。私は鬼道さんの言葉に同調し、立ち上がった。

 

「鬼道さんの言う通りです。まだ、きっとチャンスはあります。必ず点を取りましょう。そして、勝つんです!」

 

こんなこと、みんなの前で初めて言った。みんなは私を見上げて、力強く頷いてくれる。まだだ。まだ、私たちは諦めていない。必ず、勝ってみせる! 私は一度深く呼吸をし、フィールドへ戻っていった。

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