後半開始早々、デザームは再びシュートを放ってきた。財前さんと壁山さんのダブルブロックも虚しく、円堂さんの正義の鉄拳も破れてしまう。このまま得点か、誰もがそう思ったその時。
「うおおおおおっ‼︎」
「⁉︎ 綱海さん‼︎」
綱海さんがゴールポストとクロスバーを利用して、シュートを腹で受けた。なんとかシュートを防ぎきり、綱海さんはフィールドに倒れ込んだ。私は綱海さんの元に駆け寄り、体を起こさせた。
「綱海さん、大丈夫ですか⁉︎」
「ああ……何てことねえよ。みんなで守って……勝とうぜ!」
「……はいっ」
力強く頷き、綱海さんを支えて立ち上がらせる。
……しかし、今のままでは状況は危うい。今の円堂さんには、グングニルを防ぐ術がない。それに、雷門には……エースストライカーがいない。今のこの空気を打開するには、どんな状況でも点を決められるエースストライカーが必要なのに……!
(豪炎寺さん……)
ふと、胸中で彼の名前を呼ぶ。お願い。鬼瓦さん、滝野さん……どうか、間に合って……!
それから、円堂さんはグングニルの強襲に遭い、ゴール前に倒れ伏してしまう。円堂さんの負担を減らそうと、奮闘する私たちのディフェンスも虚しく、デザームに攻め込まれてしまう。
後半、試合の点差は相変わらず開いたまま。みんなの体力がジリジリと削れていく。
悔しい……。私では……何もできない。仲間を守れない。救えない。力となり、支えることもできない……! 悔しい……悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい‼︎
ザッ‼︎
風に髪を靡かせ、私はデザームの前に立ち塞がった。そして、高々と右足を振り上げた。
「⁉︎ 何のつもりだ!」
「もう……こんな想いは、したくない‼︎」
私は振り上げた足を、思いきりフィールドに叩きつけた。
「デッド……スパイクッ‼︎」
ダンッ‼︎‼︎
ビキビキビキィ‼︎
地面に足がめり込み、そこから触手のようにトゲが伸びて、デザームに襲いかかる。容赦なくデザームを突き刺し、ボールを奪うことに成功した。これで、気を緩めるわけにはいかない。加速して、イプシロン改陣内に攻め込んだ。阻んでくるイプシロン改の選手を抜き去り、さらにアクセルをかける。
「どけぇええ‼︎ ソニックアクセルッ‼︎」
ズビュウッ‼︎
風を孕み、突き進む先に立つ敵を吹き飛ばした。しかし、また別の相手が現れた。
「ヘビーベイビー‼︎」
「何⁉︎」
ボールが突然重くなり、何度蹴っても動かない。
「くそ……くそっ‼︎」
ガッ、ガッ、ガッ、ガッ、ガッ、ガッ、ガッ、ガッ。
何かに呪われたように、ボールを蹴り続ける。やらなきゃ。その強い使命感だけが、私を突き動かしていた。
「この程度で……っやられるかぁあぁああ‼︎」
ガッツン‼︎
「ああああああああああああああ‼︎」
ドッガァン!
狂気に駆られた絶叫を上げた。ボールに本気で蹴り込み、無理やり動かした。そして、そのまま、ドリブルで駆け上がる。キーパーと一対一に持ち込んだ。
「ハウリングスラッシュ‼︎」
「ワームホール……ぐわっ‼︎」
決まった! と思った次の瞬間。
ガンッ!
シュートはゴールポストを歪ませ、ラインの外へ出てしまった。
「はっ、はっ、はっ、はっ……」
ガクガクと足を震わせ、髪を振り乱し、赤い目だけは
少し……久々に飛ばし過ぎた。限界を超える力を使うと、いつもこうなる。ドク、ドック、ドックンと不規則な心拍が響く。
すぐ近くにデザームが歩み寄ってきて、私を見下ろしていた。顔を少し上げ、横目にデザームを見上げる。
「これほどの力を隠し持っていたとは……なかなかだな。しかし、それがもう一度できないのなら私が動くまでもないな」
「はっ……はっ……」
何も言い返せないほど、私の体力は限界だった。手をついて体を起こそうとしても、手に力が入らない。
私では、ダメだった。どうすればいい……? 自問自答を繰り返していると、ふと誰かの気配を感じた。
見てみると、フードを被った少年が、フィールドに現れていた。誰……? フードを被っているため、顔が見えない。少年はフードを自ら脱ぐ。その顔を見た時、私たちは驚愕の表情を浮かべた。
「なっ……!」
彼の名を呼ぶ声が聞こえ、私も少し首を上げて顔を上げ、少年を食い入るように見つめる。
「……待たせたな、円堂!」
そう。現れたのは、私たちがずっと待ち続けたエースストライカーーーーー豪炎寺さんだった。
「いつもお前は遅いんだよ!」
そう言った円堂さんは、心から嬉しそうに微笑んだ。
「っ……豪炎寺さん……‼︎」
震える体を動かし、立ち上がる。しかし、すぐに力が抜け、倒れかける。そこを、豪炎寺さんに抱きとめられた。
「後は任せろ、青木」
その声を最後に、私は意識を手放した。