Side無し
それから、豪炎寺が再びカオス陣営を突破しようと試みるが、失敗に終わってしまう。確かに、あのダブルディフェンスを攻略するのは側から見ても困難だと分かった。そんな雷門の様子を見たバーンとガゼルはほくそ笑んだ。
「勝負あったみたいだな」
「お前たちに宇宙最強のダブルディフェンスは破れねえ!」
その余裕げな表情を見て、もちろん気に食わないと感じるのは、青木だ。青木も、あのディフェンスを自分のスピードで何とか突破出来ないものかと頭を悩ませていた。
と、ここでアフロディが円堂たちの元にやってきた。
「あのディフェンス……僕に攻略させてくれないか?」
「アフロディさん……?」
「あのディフェンスは……僕が破る‼︎」
「や、破るって……そんな簡単に破れる技じゃないぞ⁉︎」
「大丈夫さ。だから、僕にボールを集めて」
土門が反論するも、アフロディは何故か自信ありげに微笑む。青木も、彼を怪訝に見つめて詰め寄る。
「何か、策でもあるのですか」
「……とにかく、大丈夫だから。心配しないで、青木さん」
「別に貴方の心配はしてません」
ズバッとアフロディの心に槍が突き刺さるような感覚が彼を襲った。
ーーああ、この娘は人を信用しない娘なんだな……。
青木の冷たい態度に全員が苦笑いを浮かべつつ、その中で鬼道がアフロディの策に乗る形で言った。
「……よし! みんな、アフロディにボールを集めるんだ!」
「「「「おうっ‼︎」」」」
青木は未だに、彼の提案に乗れずにいた。まあ、あれを本当に破れるというのなら、それはそれで……。といろいろ考えていたが、青木は鬼道に促されたため、ポジションについた。
アフロディは、自他認めるスピードの持ち主だった。だが、そのスピードを持ってしても、カオスのダブルディフェンスを破ることは難しい。幾度も挑戦するが、ことごとく吹き飛ばされてしまう。
しかし、彼は仲間に明るい声をかけて、ボールを集めようとする。円堂たちも青木も不安げだが、今のうち打開策はないので、とにかくやるというアフロディにボールをひたすら集めるしかない。
もう、何度挑んだだろうか。アフロディの体は傷付き、足取りもおぼつかない。それでも、彼は挑もうとした。すべては、ベンチで試合を見守る……サッカーが好きで、諦めたくない吹雪のため。それだけが、今の彼を突き動かしていた。
「これで終わりだ!」
「アフロディ……!」
「イグナイトスティール‼︎」
もはや、今の彼には最初の必殺技すら避ける体力すらない。ボールは弾かれ、空高く飛び上がった。その、一瞬フリーになったボールをキープしたのは、ジャンプしてきた青木だった。まるで背中に羽があるかのように高く跳ぶ彼女に、全員が釘付けになる。
「すみません、アフロディさん。このチャンス、利用させて頂きます‼︎」
「青木さん……!」
「決める……‼︎ デモンズファイア‼︎」
卒然とした空中からのロングシュートに、誰もが息を呑んで行く末を見守った。キーパーは構えるが、そのシュートはポストに弾かれてしまった。
「ッ……‼︎」
青木が悔しさに顔を歪め、地面に着地した次の瞬間、ピッチに強烈な光が叩きつけられた。
その光の圧力に、アフロディが吹っ飛ばされてしまう。
「アフロディさん‼︎」
それに気付いた青木が、彼の背後に回り込み彼を抱きとめる。お姫様抱っこのような形になったが、今それを気にする者はあまりいなかった。
光が収まると、そこには黒いボールがポツリ。それをフィールドにいる全員が理解する前に、上空から声が降り注いできた。
「……みんな楽しそうだね」
「ヒロト‼︎」
帝国学園の建物の上に、グランが立っていた。グランは円堂の声を聞き届け、フィールドに降り立つ。
「やあ、円堂くん。穂乃緒ちゃん」
「お前……一体何しに?」
「今日は君たちに用があって来たんじゃないんだ」
「では、何のために」
一歩前に進み出た青木は彼を問い詰めるが、グランは答えず、キッとバーンとガゼルを睨みつけた。
「何、勝手なことをしている」
「俺は認めない! お前がジェネシスに選ばれたことなど‼︎」
バーンがグランを指差して吠えるが、グランは相変わらず彼らを鋭く見据えるだけだ。完全に外野の雷門はただその会話を聞いているしかなく、その間にも彼らの間で言葉が交わされる。
「我々は証明してみせる! 雷門を倒して、誰がジェネシスに相応しいのかを!」
「……往生際が悪いな」
あの冷静なガゼルが、声を荒げて叫ぶ。グランもそれに態度を変えず、冷ややかに突き返す。
そして、黒いサッカーボールから光が放たれた。
「っ……一体、何なの……待ちなさい‼︎」
珍しく、青木が去ろうとする彼らについていくかのように前に出る。それを驚いた様子で見たグランはにこりと微笑み、口を開いた。
「……また、迎えに行くよ」
その言葉を最後に、光がさらに強くなり、視界が奪われる。光が収まった頃には、彼らはフィールドから姿を消していた。
青木は睨みつけるようにその空間を見つめていたが、ふと自分の抱えているものが重く感じ、それを見る。アフロディが、目を閉じてぐったりと彼女の腕の中で気を失っていたのだ。
「アフロディさん……? アフロディさん‼︎ アフロディさん‼︎」
「アフロディ‼︎」
青木がどれだけ揺さぶっても、雷門イレブンが名を呼んでも、彼が目覚めることはなかった。
青き炎も、皆様のおかげで70話突破。ありがとうございます‼︎