青木side
「壊せましたか?」
バーン達が隔壁を壊し終わっている頃だろう、と私は何事も無かったかのように現れた。
隔壁は、案の定無残な形で壊されていた。しかし、たかがサッカーボールで分厚い隔壁がこんなボロボロになるなんて。日本のサッカー界は大丈夫なのだろうか。
バーン達は何度も全力でシュートを打ったせいか、呼吸は乱れ、肩で息をしている。
「あ、ああ……なんとかな」
「……随分お疲れですね」
「ったりめーだろ! コレと格闘してりゃ汗だくにもなるっつーの‼︎」
「近寄るな。汚い」
「うるせえ‼︎」
バーンと軽口の叩き合いをし、私は隔壁を背にした。
「え? おい、どこ行くんだよ青木!」
「帰る」
「はぁ?」
「帰って、円堂さんたちと合流します」
肩越しに、バーンやガゼル、ジェミニストームとイプシロンの連中を見る。
「私は、ジェミニストームとイプシロンを救ってほしいと頼まれたから手を貸しただけです。それは達成された。もう協力する必要はありません。では」
一方的にそう押し切って、とっとと帰ろうとした。
早く戻らねば。昨日の吹雪さんの話によれば、もう雷門中を出発しているはず。もしかしたら既にここに着いているかもしれない。どこで合流出来るかわからない。とにかく、一分一秒が惜しかった。
だが、バーンとガゼルが私を呼び止める。
「青木! 待て‼︎」
「最後に一言言わせろ」
「……」
私は黙って、また振り返る。バーンとガゼルは、私を真っ直ぐ見つめて言い放った。
「「ありがとう」」
「……いえ」
ボソッと短く答えて、私は駆け出した。
胸の奥が、むず痒い。この感覚が何なのか。答えも出さぬまま、私は加速した。
「…………どこ、ここ」
エイリア学園の施設は、壁と廊下だけしかなく、どこがどこなのかがまったくわからない。私は完全に迷子になってしまった。
バーン達に出口まで案内してもらえばよかった。後悔して、溜息を一つ吐く。
どうすればよいものか……途方に暮れていると。
ーータッタッタッタッ……。
「……?」
人間の足音……? 走ってる。しかも、何だが音の数が多いような……。バーン達か? それとも……?
意識を音に集中させ、全神経を張り詰める。私の前方から音は聞こえてきた。そして、どんどん大きくなってくる。
こっちに来る……?
見えてきた大勢の見覚えのある人物たちの顔に、私は思わず動揺した。
「……⁉︎」
「えっ……青木⁉︎」
「青木さん‼︎」
「青木……? 何故ここにいる⁉︎」
「み、皆さん……」
駆け寄ってきたのは、雷門イレブンのみんなだった。ホッとした私の背後に、別の気配が忍び寄る。それに気付いた私は、振り向く勢いで足を突き出した。
私の足が捉えたのは、あの警備ロボットだった。その後ろに控えていた警備ロボット達に向かって飛んでいき、ドミノ倒しのように綺麗に倒れていく。しかし、すぐに立ち上がってきた。
「ハイジョ、ハイジョ」
「……うるさい」
警備ロボットが足元にあるボールを蹴ろうと前屈みになった一瞬で私は距離を詰め、足を叩きつけた。それから、拳で殴りつけ、潰し、破壊する。
相手はロボット。装備や武器を使わずに戦えば痛いはずなのに、何度殴っても何度蹴っても痛みを感じなくなってきた。
慣れたのだろうか。そうなのかもしれない。でも、今はそんなの関係ない。
最後の一体を潰して、私は円堂さんたちを振り返った。
「皆さん、ご無事ですか」
「あ、ああ……」
「それよりも青木、どうしてここに……?」
豪炎寺さんの問いに、私は黙って彼らの元へ近付いた。
「…………皆さんよりもお先に、着いていました」
「へ? 何だよ、それ……」
「あまりっちゅーか、全然答えになってへんで?」
財前さんと浦部さんがポカンとする。私はそれらを無視して先を急ごうとみんなを先制した。
「……多分、こっちが正解の道だと思います」
「た、多分⁉︎」
「勘なので」