フィールドには、既にザ・ジェネシスが並んで立っていた。その中心には、グランがいる。
「……とうとう来たね、円堂くん。穂乃緒ちゃん」
私たちを認めたグランの口が、弧を描く。円堂さんは数歩彼に歩み寄り、大声で返した。
「ああ! お前たちを倒すためにな!」
「俺はこの戦いで、ジェネシスが最強の戦士であると証明してみせるよ」
相変わらず、グランは余裕を崩さない。その態度が少しイラついて、意地悪な言葉を放った。
「最強だけを求めたサッカーの、どこが楽しいのですか?」
「!」
明らかに、グランの表情が変わった。しかし、彼は私の言葉に反論する。
「……それが……父さんの望みなのさ」
「?」
「父さん……?」
私は眉を顰め、円堂さんは疑問を持った単語を復唱する。
「俺は父さんのために最強になる。……最強にならなければならないんだ」
「誰のためとかなんて、関係ない! ヒロト、お前自身はどうなんだ⁉︎」
「円堂くん。お互いの信じるもののために、全力で戦おう」
円堂さんの問いには答えず、ジェネシスはポジションについていった。
私はそれを見て、円堂さんに向き直った。
「円堂さん。私たちもポジションにつきましょう」
「……青木」
「私も、彼の真意はわかりません。なら、この後に知ればいいだけです」
「…………ああ、そうだな! よし、みんな! みんなもポジションについてくれ!」
円堂さんを促してから、背を向けてポジションにつくグランを見つめる。
あの時見た弱々しい彼は一体何だったのだろうか。私だけに見せた弱みなのか。それとも、あの姿はまやかし……? いや、戦いにそんなことを考える必要はない。余計なことを考えすぎては、命取りになる可能性だってある。……まあ、サッカーでそんなことはありえないが。
エイリア学園最強にして最後のチーム、ザ・ジェネシス。彼らを倒せば全てが丸く収まる。私はそう確信していた。
雷門イレブンもポジションにつき、全ての準備が整った。円堂さんはリベロとしてフィールドに立っている。私も、FWのポジションにつき、豪炎寺さんと並んでいた。
ーーピィィィィッ‼︎
最終決戦の始まりを告げるホイッスルが鳴り響き、ジェネシスのキックオフで試合が動き出した。
相手はパスワークを利用して、次々と雷門イレブンをすり抜けていく。流石、エイリア学園最強を名乗るだけあって、なかなかこちらの流れに乗らせてくれない。まあ、当たり前か。
相手が遠くからロングシュートを放つが、飛び出してきた円堂さんのメガトンヘッドで止められる。すっかりリベロが板についたようだ。私は少し笑みを浮かべてから、前線へと攻め込んだ。
鬼道さん、一之瀬さんとパスが繋がり、さらに私へとボールがまわった。
「……!」
必ず、点を取る。決意を込めて足を動かした。
だが、もちろんそこにDFが阻んでくる。私は体勢を低くした。
「邪魔をするな」
グッと地面を強く蹴り付け、駆け出した。
「ソニックアクセル‼︎」
進化して更に強くなった必殺技。巻き起こした風でDFを蹴散らし、シュート体勢に入った。
「行くぞッ! デモンズファイア‼︎」
渾身の力で蹴り飛ばしたボールが青い炎を纏い、GKに向けて飛んでいく。しかし、相手の小さいGKは余裕の表情を浮かべてキーパー技を発動した。
「プロキオンネット‼︎」
三角形のオーラの中にシュートが吸い込まれ、GKの手中に収まってしまう。
「‼︎ くそッ……」
悔しさに、奥歯をギリッと強く噛み締める。豪炎寺さんも驚いた様子で相手GKを見た。
ボールは気付けば中盤まで運ばれ、私はバッと振り返る。私よりも淡い青髪を靡かせた少女が、ゴール前にいるグランにパスを送った。
しまった。だが、時既に遅し。
「流星ブレード‼︎」
「止めろ、立向居‼︎」
円堂さんの激に応えようと、立向居さんは究極奥義を放つ。
「ムゲン・ザ・ハンド‼︎」
黄色く輝く4本の手が、流星ブレードを食い止めようとがっちりボールを抱える。しかし、その威力はやはり並ではなく、流星ブレードはムゲン・ザ・ハンドを粉砕しゴールネットを揺らした。
先制点は、ジェネシスからだ。
「くっ……!」
「……わかっただろう? 最強はどっちなのか」
グランは余裕の笑みを浮かべて、ポジションへ戻っていく。そんな彼の姿を苦々しく見つめながら、私は拳を握り締めた。
苦戦は、覚悟していた。恐らく、今まで以上に激しい戦いになるとは。
しかし、グランが私たちに与えた先制点の衝撃は、私たちを揺らすのに充分だった。